出張だった時に泊まった郊外のビジネスホテルでの話。
飯は外で済ませてホテルにチェックイン。
深夜の1時を回ったくらいでホテルは静まりかえっていた。
6階の一番奥の部屋。
狭いけど小綺麗なユニットバスで体を流し、疲れていたのでテレビを見るでもなくすぐに寝ようと思い、2時には消灯。
「はぁ、今日は疲れたなぁ。」
と、独り言をつぶやいて目を閉じる。
うとうとしてきた時に、ふと『ザー ザー ザー』っと何かを引っ掻くような音が聞こえてきた。
やたらとハッキリと聞こえる。
真っ暗な部屋。
見える光と言えばドアの下の、廊下の電気のわずかな光。
ドアの下の光に目をやると 人間の手のようなものが床のじゅうたんを爪を立てて引っ掻いている。
『ザー ザー ザー』っと。
しかも、その手はドアの外ではなく、明らかにドアの内側で動いている。
今自分に見えるのは、手の影とドアの下のわずかな光。
電気のスイッチはドアの横にある。
何があるか確かめたいが、怖くて動けない。
我慢できなくなり、とうとう
「誰だ!」
と、叫んだ。
すると手は引っ掻くのをやめ、手も消えた。
幽霊…?と思ったが、取り合えず電気をつけて状況を確かめたかった。
ドアまで走って電気をつける。
振り替えって部屋を見渡す。
窓がいつの間にか開いていて、そこから真っ黒な床まである長髪を引きずりながら何かが飛び降りていった。