命の恩人
バイクで交差点に進入した際、無理な右折をしてきた軽自動車と接触・転倒。
路面をゴロゴロと転がって、ガードレールに思いっきり体を叩き付けられた。
激痛と意識の混濁の中で、俺はこのまま死ぬんだと朧気ながらに思った。
身を横たえたままピクリとも動かない、というか動けない俺。
そんな俺の様子に、軽の運転手の女性が駆け寄ってきて必死で声をかけてくる。
「大丈夫ですか!?大丈夫ですか!?」
(うるせぇ 大丈夫もクソもねぇよ おまえのせいで俺は死ぬんだよ)
(そうだ 死ぬ前に顔を見てやろう 死んでから化けて出てやる)
そんな、なんともネガティブな思いから苦労して瞼を持ち上げると・・・
最初はなんだかわからなかった。
ぼやけた視界の中に、ただ白っぽいものが見えた。
だんだん視点が定まって映像がクリアになってきて・・・
その瞬間、俺の心臓は大きく脈動した。
(おいおいオネーチャン!あんたパンツ丸見えですがな!!!)
よっぽど気が動転していたのだろう。
オネーチャンは俺の顔の真ん前で屈み込んで声をかけているのだ。
そっと眼球だけ動かして彼女の顔を確認する。
よっしゃ!
ええお顔立ちしてなさる!!
死を覚悟していた体に、正確には体の《一部》にグングン活力がみなぎる。
(死んでなるものか・・・死んでなぁるぅもぉのぉかぁぁぁぁ!!!!)
眼前の桃源郷を目に焼き付けんと、体から半分出かかった魂を必死で押さえつけ、意識の無いフリをして思う存分オネーチャンの純白のデルタ地帯を鑑賞しつづけた俺。
そのおかげで、どうにか病院に担ぎ込まれるまで命を繋ぎ止めることができたのだった。
後に治療にあたった医師は語る。
「こんだけボロボロになったのに、病院来るまで意識がハッキリしてたのはスゴイ。普通は痛みやショックで気絶してるもんだよ」
俺が、何故にそれが可能だったかを自分の口から語ることはないだろう・・・
ありがとう軽のオネーチャン。
ありがとう白パンツ。
あなた達は俺の命の恩人です。