去年の秋の話なんだけど、田舎に住んでるから、近所の山にキノコとりに行ったんだ。
山の入り口に車を止めて、だいたい徒歩で3時間くらいのコースなんだけど、ナラタケとかブナハリタケとかがけっこう採れる場所でさ。
で、歩き出して1時間位したとき、40歳くらいのオバチャン三人組とすれ違ったんだ。
話し方からして、どこか関西方面の人達らしかった。
で、すれ違うとき、オバチャン達がぶら下げてた袋の中がチラッと見えたんだけど…
入ってたのが、多分ネズミシメジとツキヨタケ。
しかも大量に。
知らない人の為に一応説明すると、両方とも毒キノコね。
ツキヨタケの方は死人が出るくらい強力。
俺は『おいおい、ヤベーだろうが、バカだな、コイツら』って内心思いながら、オバチャン達を小走りで追いかけて、
「そのキノコどうするんですか?」
って聞いた。
突然声をかけられて、かなり怪訝な顔してたけど、オバチャンAが、
「どうするって、もってかえるよ」って。
案の定だったんで、俺が毒キノコだってこと説明すると、オバチャンBが、
「あー、やっぱり! さっきのオッサンの言うてたとおりやわ… うちらは騙せへんで。あんた、このキノコほしいんやろ?」
って言い出して…
そのままオバチャンの話を聞いていると、どうやらオバチャン達は、今日、山で会った年配の男性に『美味しくて珍しいキノコ』って教わって、ネズミシメジとツキヨタケを採ったらしく、しかも、その時に、
「珍しいキノコだから、『毒キノコだ』って言って騙そうとする人がいるから」って聞かされたらしいんだね。
何だよ、それ? そのジジイ何考えてんだよ?
キノコは間違いなく毒キノコで、しかも少し知ってりゃ、見間違うことなんてあり得ないキノコなのに…。
取り敢えず、オバチャン達を説得しようとしたんだけど、完全に疑われちゃって無理だった。
最後には、
「図鑑見てください」
とは言ったんだけど…
あんときは、山にもキチガイはいるんだなーって思った。