怖っ!怖っ?怖い話

いろんな怖い話を集めています。

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「 怨恨 」 一覧

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慎ちゃんの前

慎ちゃんの前  

おとといの晩のことです。
深夜、3歳になったばかりの娘がうなされている声で目がさめました。
「うぅ~ん…いやだぁ~!……うぅん…」
首をイヤイヤするように左右に振り、苦しそうに顔をゆがませています。

ここ最近でも寝苦しい夜も続いていましたが、今夜はやけに苦しそうです。
妻も気づいたらしく目を覚ましました。
「麻衣、なんか悪い夢でも見てるんじゃないの?」
「ああ、そうかもな。どれ起こすか…麻衣ちゃん。麻衣ちゃん起きなさい。」

しばらくゆすっていると、娘がパチッと目をあけました。
そして、見る見る目から涙を溢れさせ「うわぁ~ん!」と泣き出しました。
抱き上げ、背中をさすりながら「どしたの?怖い夢でも見たか?」と聞きますが、なかなか泣き止みません。

すぐ隣には麻衣の下の1歳になる弟の慎二も眠っている。
『こいつが起きてしまっては大変。』とちと焦りながら
「大丈夫。大丈夫。」ととんとんと背中を叩きながら数分、ようやく落ち着いてきた娘が少し話し始めました。

「あのね。なんか白いお姉ちゃんがいたの。」
「何処にいたの?」
「うーんとね。ベランダ。」
「それで?」
「慎ちゃんの前がって言ってた。」
「?…慎ちゃんの前がなんだって?」
「慎ちゃんの前って言ってたの!すごい怖かったの!」

慎ちゃんというのは麻衣の弟の事であろう。
それと家はマンションの3階に住んでいるのでもちろんベランダもある。
にしても、このぐらいの年の子の言葉は理解が難しい。

多少寝ぼけているとはいえその後、いろいろ聞いてみたが要領は得なかった。要約すると
『家のベランダから白い(格好をした)女の人が、娘の麻衣に向かって「慎ちゃんの前が…」と言っていた。それがとても怖い声だった。』
と言うことらしい。とにかくそんな人はベランダに居ないし夢を見たんだろうから安心してお休み、と娘を寝かしつけました。

昨晩。やはり同じでした。
うなされ泣き喚く娘。
起こすと同じ話の繰り返し。

「慎ちゃんの前。慎ちゃんの前なんだよう!」と言う娘。
今日は部屋の中、娘の枕もとでその白い女性が話し掛けていたようです。
その後何とか娘を落ち着かせ寝かしつけましたが、2日続くと何かやはり気持ちが悪いものです。
すっかり目がさえてしまい、夜中キッチンで妻と話しあいました。

「まあ、何かの前触れってことではないけど慎二のことは注意して見ててくれよな。」
「うん、分かったわ。」
「しかし、慎二の前がなんだってんだろうな?」
「慎二の前ねえ…あっ!!!!!」
「ん?どうした?」
「あなた、もしかして…その白い女の人が言ってたことって…」
「なんだ?」

「『しんじまえ』じゃないの………?」
「………………」

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私の足を返して

私の足を返して 

当時、独身サラリーマンだった僕は、道路に面した小さな一戸建ての住宅に住んでいました。
玄関のドアを開けるとほとんど目の前が道路という、敷地面積ぎりぎりに建てたのだと一見して分かるような家でした。
しかし、家賃の安い割には交通の便がよい場所にあり、安月給の僕には、そう悪くもない条件だったのです。

ある日、数日間の出張から帰ってみると、僕の家の前の道路に、脇にある電信柱から玄関にかけて、大きく黒っぽいシミのようなものがついていました。

『誰かが何かをこぼしたんだろう』ぐらいに思った僕は、深く考えることもなく、家に入りました。
その夜の事です。

『ドンドンドンドン!ドンドンドン!!』

という物音で僕は目が覚めました。
時計を見ると午前三時です。
いったいなんだろう、と不審に思いながら、僕は玄関に出てみました。
すると、安普請の薄いドアが揺れるような勢いで、何者かが外側からドアを叩いているようです。

「・・・・・何の用ですか?」

僕は玄関の明かりをつけると、ドアの前に立って、向こう側に呼びかけました。
しかし、その何者かは僕の声が聞こえなかったのか、返事もせず、いっそう激しくドアを叩きつづけるのです。
ほうっておけば、ドアを破られそうな勢いでした。

ドアの覗き窓から見ると、ドアの前にいるのは若い女のようでした。
一瞬、子供かと思ったほど背が低く、上のほうにある覗き窓からは頭のてっぺんしか見えません。
女は僕が覗いている気配に気づいたらしく、叩くのをやめ、上を向いて覗き窓のほうへ、ぐっと顔を寄せてきました。
血の気の引いたように白い顔がいきなりレンズいっぱいに広がり、僕は驚いて後退りました。

「こんな時間にすみませんけど、お願いですから・・助けてください」

切羽詰った声が聞こえてきました。
何やら、ただならぬ様子です。
僕はチェーンをかけたまま、細くドアを開けました。
細く開いたドアの隙間から、若い女の顔が見えました。
そのロングヘアの頭は僕の胸のあたりまでしかありませんでした。
息を切らし、引きつったような表情で、上目遣いに僕を見ています。

「いったいどうしたんですか?」

と、僕が聞くと、若い女は

「大切なものを、この家の前でなくしてしまって、でも、暗くて、いくら探しても見つからないんです。一緒に探してください。お願いします・・・・・」

隙間からじっと僕を見ている女の目は異様なまでに見開かれ、充血していました。

「いったい、何を探しているんですか?」

「あたしの、足を・・・・・・」

「足・・・?」

反射的に僕は女の足もとに目をやりました。

すると、女の膝から下はぶっつりと千切れていて。
その端はぐしゃぐしゃに潰れ、皮膚のはがれた赤黒い筋肉の下からは、血にまみれた骨のようなものが覗いています。
もちろん、コンクリートのたたきには大きな血溜まりができ、そうしているあいだにも、赤黒いシミがジワジワと、玄関の内側、僕の足元のほうへ向けて広がっていたのです。

僕が悲鳴をあげると、女は急に、激しくドアを外側から引きました。

しかし、ガツンとという音とともに、かけてあったチェーンが引っかかりました。
それに気づいた女は、隙間から手を差し入れ、チェーンを外そうとします。
僕は死に物狂いでドアを閉めようとしました。
しかし女の手が、がっちりと挟まっていて、閉めることができません。
女は両手をドアにかけながら、隙間に物凄い形相をした顔を押し付け。金切り声をあげて絶叫し始めました。

「あたしの足を返して!あたしの足を返してぇぇっ!!」

僕はなんとかしてドアにかかった女の指を引きはがそうとしましたが、女も恐ろしい力でドアをつかみ、離れようとはしません。
薄いドアが壊れてしまうのではないかというような必死の攻防の結果、僕はなんとか女の手を押しやり、無理やりにドアを閉めました。
それでもしばらくのあいだ、女はドアを叩きながら叫び続けていました。
僕は恐怖のあまり、声が聞こえなくなったあとも、背中でしっかりとドアを押さえて立ちすくんでいました。

やがて夜が明け、新聞配達の物音が聞こえるころになって、初めて、僕はチェーンをかけたまま、恐る恐るドアを開けて外を見ました。

すると、女が立っていたあたりのコンクリートには、べったりと赤黒いシミが残っていて、昨夜の出来事が夢でなかったことを、僕は改めて思い知らされたのです。

後日、近所の商店で聞いた話ですが、ちょうど僕が出張に出ているあいだに、僕の家の真正面の路上で交通事故があり、若い女がトラックの車体と電信柱のあいだに挟まれ、膝から下を切断されたのだということでした。
引きちぎられた脚はズタズタになり、それは無残な状態だったそうです。
彼女は運ばれた病院で亡くなったそうです。

あの出来事以来、僕は悪夢にうなされることが多くなり、しばらくして、その家を引っ越しました。

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お母さんのお守り

お母さんのお守り 

貧しい母子家庭ながらも仲が良く、助け合って生活していた母娘。
母親は娘を育て、大学を卒業するまで一所懸命に働き、娘は家事の手伝いをしながら勉強を。
そして大学受験の時、母親は手作りのお守りを娘にプレゼントしました。

母「頑張ってね。これはお母さんからのお守り」
娘「ありがとう。大事に持っていくね」
母「気をつけて。お守りって中身を空けると効果がなくなるから空けちゃだめよ」

娘は母親を心から感謝しました。そして大学にも合格し、その後も勉強を怠ける事なく大学生活を終え、就職。
やっと社会人になり、初任給で母親へ旅行をプレゼントしました。
ところが何と、その旅行途中で大切な母親は、不慮の事故で突然この世を去ってしまいました。

いきなり一人ぽっちになってしまい、悲しみに暮れた娘には母の形見すらない。
その時、受験の時にもらったお守りを思い出し、娘は母親の「空けるな」という言いつけも忘れ、急いでお守りを開けてみた。
中には紙切れが。そしてその内容は…

「お前がいなければもっと楽な生活が送れるのに。大学なんて…
お前なんか死んでしまえばいいのに。シネシネシネシネシネ」

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裏の世界

これは裏の稼業の世界であった話。

某組の親父が病気で早死にしたんで跡目を誰にするか?って話になった。

普通、若頭が跡目に決まりなんだけど、その組は少し事情が違ったんだよ。

映画やドラマの世界では極道女がしゃしゃり出てきたりするけど、現実の世界では殆どありえない話。

しかし、この組の跡目争いでは死んだ親父の姐さんが本当に出張ってきた。

この姐さん、先代の娘で親父の妻になった人だから我が強いって言うか根っからの極道と言うか、とにかく男に負けないぐらいの女。

で、この姐さんが、跡目は若頭に譲らない、親父と自分の実子に譲るって言いだしたから問題勃発。

何故なら、実子はまだ小学六年生の小僧だったからだ。

姐さんは実子が大学を卒業するまで、組を自分があずかるとまで言いだす始末。

舎弟衆や若衆は、この組にしたら血筋豊な姫みたいな人だから、強い発言も出来ない状態。

でも、跡目は当然、自分と思ってた若頭は黙っていられないよな。

もともと、姐さんは若頭とは折り合いが悪かったらしい。

姐さんからしたら、キレ者かなんか知らないけど、自身過剰で生意気な奴。

若頭からしたら、自分よりも年下の女の癖に組の事に一々口を出す腹立たしい女って感じだったみたいだ。

姐さんは歳こそ35歳だけど、見た目も若く綺麗な女だったから、27、28ぐらいに見えた。

出るところは出てるから余計にね。

で、その黙ってられない若頭は当然動きだした。

組で扱ってる仕事に細工して死んだ親父に莫大な借金を背負わせた。

最初の内は姐さんも若い衆で何とかしなさいとか、若頭がはめたとか言っていたが、若頭の細工で裏の世界の金では無く、カタギの世界で作られた借金だけに誰も味方は出来なかった。

と言うよりも、しなかったが正解か。

この稼業のやっかいなところは、まっとうな金の借りは自己責任。

子分に助けてもらうなんて、正直いい笑い者。

結局、姐さんはキレ者の若頭に完敗。

自分ではどうにもならないし、子供も抱え、自分も働いた事もない。

莫大な借金で組にも迷惑をかけてしまった。

こうして全ては若頭の狙い通り事が運んだんだよ。

若頭が、組を壊滅の危機に陥れた責任を姐さんに取るように迫った。

形式上とは言え、組を預かると自分で言って杯も返させないで親分代理に付いたのは姐さん自身なのだから。

若頭はまず、姐さんに代紋を自分に渡す事を承知させた。

基本的に姐さんは誰からも杯を受けてないただの組長妻だが、代理として立った以上破門扱いとされた。

これで姐と子の縁を完全に切れさせたわけだ。

それから、借金は若頭が負担する代わりに、若頭の愛人になる事で罪を償うようせまった。

嫌なら将来を待たずに実子に責任を取らせる、とまで言った。

裏の世界では世間の常識が通用しない事を解っていた姐さんは、泣く泣く若頭の条件をのんだ。

前代未聞だが、業界から後ろ指刺される事もない方法で若頭と姐さんは愛人契約を結んだ。

姐さんは三代目となった若頭の家に子供と共に住み込む事になり、その妻(以後、若妻)のお手伝いにまで身分を落とされた。

若妻も三代目と同じく、お互い内心敵視しあっていたから、若妻の喜びも相当だったようだ。

最初の内は姐さんと呼んでいたのに、コイツ、オマエ呼ばわり。

姐さんも元部下の妻、しかも年下の嫌いだった女の言いなりだから、相当の屈辱だっただろうね。

まぁ、この程度の事は後の事を考えれば屈辱でもなんでもなかっただろうけど。

ある日、旅館の宴会場で現三代目体制が祝いの為に勢揃いした。

その席には姐さんや三代目体制の妻たちも。

若妻の命令で、姐さんは全員に酌をして回るように命令された。

ひとり全裸となって組員全員と妻たちに詫びをいれながら回れと。

拒否できない姐さんは涙を浮かべながら酌をして回る。

酔いも手伝ってか、高貴な人物の惨めな姿には全員笑みすら浮かべた。

三代目が恐ろしい提案をした。

全員で姐さんを輪わして結束を固めようと。

女に関しては親も子も無い、穴兄弟になろうじゃないかって言いだした。

そして三代目が姐さんの中に出すともう歯止めがきかない。

周りの妻たちもあきれ気味の態度を取るものの、内心、嫌いだった女の惨めな姿には心底喜んでいた。

一晩で二十数人に輪わさせても、女の恨みは消えないのか、若妻が姐さんをソープランドで働かせる事を提案する。

姐さんは元子分達に輪わされて肉体も精神もボロボロなのに、更に地獄に落とされた気分だろう。

ソープランドで働かされる事に抵抗しても息子の事を出されると従うしかない、可哀相な姐さん。

若妻に借金を組に少しづつでも返していけと言われ納得した。

若妻は一人客をとったら千円の小遣いをやる、と笑いながら小馬鹿にする。

しかも、客にコンドームを付けさせるな、姐さんにもピルを飲むな、と若妻は言う。

何処の誰とも判らない子供を孕み産め、と。

姐さんの力では何世代も返すのにかかる莫大な借金だから、子を産んで借金を分担しろ、と。

姐さんの子なら父親が誰だろうと、可愛い子が産まれるよ、と若妻は高笑いした。

その後の姐さんっていうと…まぁ、悲惨なもんだよ。

ソープで朝から晩まで働かされてるのに、仕事の後に組の若い衆達に輪わされるし、それも頻繁に。

若い衆達にしたら高嶺の花だった姐さんとやれるなんて夢のような事だからな、無理もない話だが。

それでも姐さんにしたら、それすらもマシだって思う事もあるんだよ。

それは、実子である小学生息子の扱い。

姐さんによく似て可愛い顔してるんだが、この業界、因果なもので、そっちの気がある奴も多い。

学校には通わせてもらっていたが、組の若い衆の餌食にもなっていたんだ。

休みの日には、裏のその手の店で客までとらされたりな。

姐さんもそれだけは我慢が出来なくて、三代目の女房に抗議したんだが…

三代目の女房は全く聞き入れない。

逆に海外に売り飛ばしたら高く売れる、と脅される始末。

姐さんからしたら、そんな目にあうぐらいなら、今は息子に我慢してもらって自分が頑張るしかないって感じで泣き寝入りだよ。

しかし、二代目の女房で誰からも羨ましがられた美貌の姐さんが、ソープ嬢にまで身を落とすなんて誰が想像したよ?

本当に三代目夫婦は恐ろしい人達だよ。

まぁ、裏の世界ってのは一度落ちると表の世界と違って二度と浮き上がれない恐ろしい世界ってのは少しは解ってもらえたかな?

【裏ワザ】

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常連客

某チェーン店の居酒屋でバイトしてた頃の話。

Mさんという40代の常連がいた。

常連といっても、俺がバイトを始めた頃から店に一人でやってくるようになったのだが、ほぼ一月ほどは毎晩のように通ってきた。

何でも、居酒屋近くのビジネスホテルに滞在しているらしく、だいたい閉店間際にふらりとやって来て、本人定番のつまみを注文する。

それでお互い顔を覚えて、いつしか気安く対応する間柄になっていた。

何せ小さな店舗で、オヤジ系居酒屋だったこともあって、カウンター内で洗い物をしているとよく話し掛けてきた。

いつものようにモツの煮込みを出すと、Mさんは気味の悪い話を始めた。

若い頃にヘマをしでかし、その筋の方に拉致されて、ダムの工事現場に連れて行かれた時の話だそうだ。

Mさんは普通の労働者とは違って、飯場のような所に軟禁させていたらしい。

そこには似たような境遇の人たちが十人ほどいたという。

場所は人里離れた山の中。

食事の支度は飯炊き女(50代)がまかなっていたそうだが、当然食材は近くの村から配達してもらったという。

ある夜、工事現場に繋がる唯一の道路が、大雨で不通になってしまった。

復旧の目処がたたないうちに、三日が過ぎたそうだ。

蓄えていた食料も底を尽き、全員パニックに陥ったらしい。

その時みんなが目をつけたのは、飯炊き女が残飯を食べさせていた雑種犬。

Mさんは詳しく話さなかったが、とにかくその犬を食べて飢えをしのいだという。

「それからなんだよ。動物って分かってんのかね?俺を見たらどんな犬も吠えやがるんだ。睨みつけてよ」

俺もMさんが裏稼業の人間であることは薄々分かっていた。

相手は店の客だし、深い付き合いにはならないつもりでもいた。

でもMさんは俺のことを気に入ったらしく、仕事が終わったら飲みに行こうと誘ってくるようになった。

最初は断っていたが、ある夜、すすめられたビールで少し酔った俺は、誘いに応じてしまった。

「顔の利く店があるから」

Mさんは、東南アジアからタレントを連れてくるプロモーターだと自称していたが、実はブローカーだった。

連れて行かれた店もフィリピンパブ。

かなりきわどい店だったが、貧乏学生だった俺は結構楽しんでしまった。

Mさんは女の子と延々カラオケを歌っていたが、俺はカタコトの英語で片っ端から女の子を口説いていた。

一人すごくかわいい女の子がいて、その子にも話し掛けようとした時、Mさんは突然マイクを置いて、テーブルに戻ってきた。

「その子はだめだぞ。俺のお気にだからな」

Mさんの目は笑っていなかった。

ぞっとするくらい凄みがあった。

回りも雰囲気を察して、場はしらけたようになった。

俺も萎縮して、すっかり酔いが覚めてしまった。

Mさんは何も無かったように、再びカラオケで歌いだした。

その姿を黙って見ていた俺に、さっきのお気にの女の子がつたない日本語で耳打ちしてきた。

「店ノ女ノ子、全部アイツ嫌イ」

「何で?」

と俺が訊ねると、

「ワカラナイ。デモ、ナンカ見エル時アルヨ」

「何が?」

「死ンダ女ノ子ネ。イッパイ見エルヨ」

俺は思った。

分かるのは犬だけじゃないみたいだぞ。