「 月別アーカイブ:2013年04月 」 一覧
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おっさんの妖精?
リクルートスーツを見る季節になると、毎年思い出す話。
今から10年以上前、俺は就職活動してた。
正確な年は言えないんだけど、バブル崩壊後の冷水ぶっかけられた氷河期世代あたりだと思ってくれ。
俺は理系で一応研究職希望だったけど、求人自体がほとんどなくて、滑り止めに受けた営業や販売すら落ちまくりだった。
そんな中で、一つだけ最終面接まで進んだ会社があった。
ノルマなしの営業で、しかも待遇がめちゃくちゃいいところだった。
OBも
「お前が来たいなら採用出してもらう」
と協力的。
そのOBから最終面接の前日に、
「お前は合格確実、ていうか合格決定だから。一応面接だけ受けてもらってから入社承諾書に判子持って来い」
と連絡もらった。
最初は滑り止めって思ってたけど、他は全然受かんないし、こんなに熱心に誘われたらどんどん気持ち傾いて、本当に承諾書出されたら判子捺して入社しようかなと思ってた。
最終面接の日。
控え室で待機してると、40過ぎくらいのおっさんが入ってきた。
最初会社の人かな?と思ったら、受験者みたいな素振りで俺の隣に座った。
そしていきなり場を弁えずに、大声で俺に話しかけてきた。
面接は待機から見られてるなんて常識だから、びびって最初は諌めたり無視したりした。
でも、おっさんは何も気にしないで、
「この会社、きれいなのは見えてるところだけだぞ!」
「トイレとかすげー汚かった!この会社もうダメだな!」
「あと○○(会社の商品)もだめだ。もうここは先無いぞ!」
周りもチラチラ見るだけで助けてくれない。
俺がいや…あの…とか、ろく返事もできないでいると、
大声は外まで聞こえていたらしく、すげー怒った顔で会社の人が入ってきて、
「社長室まで聞こえてたぞ!ふざけるな!出て行け!」
と、2人で追い出された。
俺、しばらくポカーンとしちゃって、その後で当たり前だけど急速に怒りが湧いてきた。
おっさんに
「どうしてくれるんだよ」
って掴みかかったけど、おっさん平然としてんの。
うまく言えないんだけど、馬鹿にしてるとか基地害とかじゃなくて、普通に平然とした顔で
「大丈夫だよ~。君は大丈夫、大丈夫~」
と言って頷いてた。
俺も何か怒りがすっと引いて、よく考えたら別にそんな入りたい所じゃなかったなって冷静になった。
おっさんの胸元掴んでシワシワになってたんで、
「すんませんでした」
と謝ったら、おっさんはまた普通の顔で
「大丈夫だよ~」
と言って去っていった。
OBからは連絡なかったけど、本命じゃなかったのに流されそうになってしまったその会社の熱意?というか強引な口説き方が、遅まきながら怖くなったから俺からも連絡しなかった。
それから2ヶ月後。
ちょっとだけ条件を譲歩したら、元々の希望だった研究職の内定もらえた。
俺はおっさんに感謝した。
でも本当に驚いたのは、それから3年後だった。
昼休みに食堂で見たニュース。
俺とおっさんが追い出された会社が、謝罪会見やってた。
詳しくは書けんが、会社ぐるみで犯罪やって社長以下、幹部はほとんど逮捕。
平社員もノルマの名の元に犯罪行為させられてて、かなりの人が客から訴えられたそうだ。
一緒に飯食ってた同僚に、
「もしかしたら自分は、ここではなくこの会社に入るかもしれなかった。いや、おっさんが邪魔してくれなかったら、確実に入ったと思う」
と話したら、
「もしかしてそのおっさんって、幸福の妖精じゃねーの?」
と言われた。
小太りでダサくて、しかもハゲてるおっさんの妖精かwww
でも本当に感謝してる。
いつか会ったら礼を言いたいけど、あれ以来会ってない。
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異空間
そのとき僕は実家の部屋にいました。
退屈だな~と思い、ドライブでもすっかと外に出ました。
空は晴れてドライブ日和でした。
エレベーターに乗りB1ボタンを押す。
エレベーターは動き出しました。
5分前後は過ぎたんじゃないか?と思うくらいでした。
チーンと鳴り扉が開く。
辺りはシーンと静まり返っていた。
自宅から出たときは、車や街ゆく人の賑やかな音が聞こえていたけどな?と、多少気にかかったものの気にせず車に乗り、さてドライブだ!と表に出ると辺りは一面赤黒い空で、見た事のない夕焼け?になっていました。
道に出てしばらく走ってても先程とは違い、誰も居ない。
車もボロボロの廃車が点々と辺りに並んでいる。
というか、灯りが無くハイビームにしないと、とてもじゃないが走れない程の暗さ。
いつも見慣れ、通り慣れた道が別世界に来たかのような感覚に襲われ、不安になりUターンし自宅に戻りました。
車から降りエレベーターに乗る。
先ほど5分前後かかったかのように感じた感覚は無く、30秒ほどで8階に着き扉が開く。
外は自宅を出たときと同じく、晴れ空に賑やかな街並みも見下ろせた。
僕は別世界にいったのだろうか。
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隣の家の娘
中学校2年のとき。
隣の家に一つ年上の女子が住んでいた。
この娘は不良というほどでもないが、あまり学校に行かず、さぼってばっかりだったので隣の家からは、夜になると父親の怒鳴り声、娘の泣き叫ぶ声が聞こえていた。
ある日、夜11時頃にいつも通り隣の家から怒鳴り声が聞こえてきて、その後にうちの家のチャイムが鳴った。
うちの母親が開けてみると、その女子が立っていて
「もう家に帰りたくないから、ここの家の子にしてほしい」とのことだった。
「そういうわけにもいかないから母親が家に帰りなさい」
と告げるとその娘は家の中に入って俺の部屋に入り、いきなり服を脱ぎだした。
ブラジャーをはずし、そしてパンティーも脱いで全裸になった後、俺のベッドに入りこう叫ぶ。
「○○くん(俺)とこういう関係だから私はここにいる権利がある」
もちろんそんな事実はなく、困っていたら隣の家の父親がやってきて全裸のまま娘を家に連れ戻した。
その夜、その娘は怒り狂った父親に殴り殺されたらしい。
父親は翌日警察に連れて行かれ、弟と母親はその家から姿を消した。
俺の中で強烈な事件だったので、いまだに女の裸を見るたび、あの時の裸体が頭に浮かぶ。
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運転中の電話
電話相手が正面衝突で即死。
こっちから電話を掛けたんだが、
「運転中だけど、まあいいよ」
と言ってくれたんだ。
こっちも急ぎの用だったので話を続けた。
変な間があって、一瞬、会話が途切れた後、
「あああああああ、どーーーーんん!!!」
しばらくして警察から電話があり、状況を聞かれたりしたが、当然、自分は法的には不問。
正面衝突した相手の車も炎上3人即死で1人が重傷。
電話の相手には奥さんと子供3人が残され、向こうの車は家族で両親と子供1人が即死。
重傷で残されたのは小学4年の女の子だった。
顔にひどい火傷を負ったと聞いた。
自分を責める者は誰もいなかったが、自分の電話で2つの家庭を崩壊させたのは辛かった。
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砂風呂
昔ね、友達と海に行った時の話なんだけど。
砂風呂をやろうとして、あんまり人目が多い場所だとちょっと恥ずかしいから、あんまり人気のない所で友達に砂かけて埋めてもらったんだ。
顔には日除けのパラソルが掛かるようにしてもらって快適だったし、すぐにウトウトし始めた。
その時、不意に誰かが近づいてくる気配がして
「オキテタラヤル」
と、若くはない女性の声でしゃべったのよ。
友達の声じゃなかったし、妙に抑揚が無いしゃべり方だった。
かなり眠かったから無視したんだけど、結局それきり声はかけてこなくて気配もすぐ立ち去った。
しばらくして、砂から出て海で遊んでたんだけど、人も少なくなった帰りの時間にパラソルをあの場所に置いてきてしまったことを思い出して取りにいったのね。
言い忘れてたけど、あの時、砂から出る際に人がまだいるかのように砂を盛り上げて、パラソルも顔に当たる部分が見えないように配置していたわけよ。
友達を驚かそうとしていたんだけど、結局待つのがめんどくさくて、すぐに別の場所で合流してしまったんだけどね。
で、パラソルを取りに戻った俺が見たのは、俺のじゃない別のパラソルが砂の盛り上がった部分に何本も突き刺さっていたのね。
俺のパラソルは切り裂かれて、顔があるはずだった場所に垂直に突き刺さっていた。
あと何故かカミソリが頭と胴体の間にめり込んでいた。
正直怖かったし、怖い話のテンプレみたいだなと考える自分もいたけど、とりあえずゴミはまずいから自分の分のパラソルの残骸は持って帰ろうと思って、思いっきり深く刺さってたそれを軽い怒りと共に引き抜いたのね。
そしたらさ、遠くからなんか声が聞こえてきて、視線を向けると結構長い砂浜の向こうからものすごい勢いで走ってくる奴がいるのよ。
で、そいつがなんか叫んでるの。
まだ残っていた人たちが、そいつから後ずさっているのはよく見えた。
俺もすぐに走って車に戻って、よくわかんない顔してる友達を車に乗せてさっさと逃げた。
焦ってはいたが距離はかなりあったから、結構余裕ではあったが、笑いながら
「オキテル」「オキテル」
と走ってくる姿は忘れられない。