「 月別アーカイブ:2013年06月 」 一覧
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隣人
十年近く前のことですが、学生時代一人暮らしをしたときの隣人が変だった。
三十歳くらいの小柄な男で、引越しの挨拶に行ったらいきなり
「俺が隣でラッキーだね。なんでも教えてやるよ。ところでまさか彼氏とかいないよね?」
遠恋中の彼がいたけど、詳しく言いたくなくて
「はあ、まあ」
とか適当に答えた。
そしたら人差し指でおでこを突かれて
「見栄張んなくていいって」と。
呆然としていると手を出して
「合鍵渡しなよ。普通預けとくもんだから」
そんな話聞いたこともないし、鍵を渡す気なんてなかったから急いで自分の部屋に戻った。
次の日の夕方、ドアチャイムが鳴った。
ドアスコープから見ると、隣人。
気味悪くてドア開けなかったらドア越しに
「俺これから仕事だけど、戸締りちゃんとするんだぞ」
それからも、ほとんど毎日のようにピンポン。
「もう荷物片付いただろ?部屋見せろよ」
「合鍵早く作れよ」
「じらすのってやりすぎはよくないぞ」
その度に、彼氏がいますからとか関係ありませんからとか言い返したのに効果なし。
その男は夕方から明け方にかけて働いてたみたいで、外で出くわさないのが唯一の救いだった。
学校から帰るのも、男が出かけた頃を見計らって帰るようにした。
するとそのうち、早朝、壁をトントン叩いてくるように。
無視していると、今度はぶつぶつと愛?の言葉を呟く。
「素直になれよ」
「俺とおまえは運命の相手なんだよ」
「全部教えてやるから怖くないよ」
もう、実家に帰ろうかと思っていたとき、彼氏が県外から来てくれて泊まることになった。
その翌朝早くのこと。
夜明け前に、私はなぜか目を覚ました。
今思えば、ドアが開く音がしたんだと思う。
部屋は暗かったけど、カーテンの隙間からすこしだけ外の光が入っていて、そこに誰かが立っているのがわかった。
一瞬、彼がトイレにでも行ったのかなと思った。
でも、彼は腕枕をしている。
そこにいるのは別人だと気づいた。
その途端、ものすごい恐怖に襲われた。
声は出なくて、彼を必死で揺り起こした。
目を覚ました彼は、私の様子が変なのに気づいて、すぐにベッドから出て部屋の明かりをつけた。
そこに、隣の部屋の男が立っていた。
男は彼氏を見て呆然とした顔をしていた。
「おまえだれだ?」
と彼氏が聞くと、おびえたように
「いや、部屋を間違えて」と。
そして私に向かって、
「なんで?話が違うじゃない」
「こんなあばずれだったのかよ」
と、わめき始めた。
でも彼氏が
「警察呼ぼう」
と言った途端、男は我に返ったみたいに慌てて出ていった。
いつもは玄関の鍵は必ずかけてたのに、彼が来ている安心感でかけ忘れてたみたいだった。
彼に
「もしかしてあの男、毎日この部屋の鍵がかかってるかどうか確認してたんじゃないのか?そうでもないと、偶然すぎる」
と言われて、ものすごく怖くなった。
明るくなってから、彼が
「ちょっと調べてみる」
と言って、ベランダに出た。
ベランダは二部屋ずつ繋がってて、部屋と部屋の間は薄い板みたいなもので仕切られてる。
彼氏がその板を軽く押すと、板は簡単に外れた。
板の周囲は削られて枠より小さくなっていて、隣のベランダの側でガムテープで押さえてあった。
多分、隣の男はベランダにも出入りしていたんだと思う。
部屋の中からはよくわからなかったけど、ベランダから見ると、窓ガラスに手の跡と、顔を押し付けたような跡がたくさんあった。
その後、彼に手伝ってもらって、荷物をまとめた。
我侭を言って一人暮らしをさせてもらったので気が引けたけど、そんなこと言ってられなかった。
その後、私はそのときの彼と結婚し、今に至ります。
娘がいますが、大人になっても一人暮らしはさせたくないです・・・。
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占有屋
もうかなり前の話だけど…
土方やってたんだが、給料の不払いなんかがあって仕事辞めた。
無職で金もなく職場の寮も出た為、やむを得ず、しばらく連絡もとってなかった悪い友達に連絡した。
友達の先輩の更に先輩って感じでタライ回しに紹介されて、最終的に893屋さんのSさんに紹介された。
Sさんや、Sさんの知人(カタギ)の仕事の手伝いをしてお小遣をもらい、しのいでた時期があるんだけど…
仕事っつっても違法なもんじゃなく、解体現場の手伝いとかね。
まぁ、時には多少違法な仕事もあったかも…
893屋さんも不景気だったし、毎回小遣いもらってたわけじゃなく、一日肉体労働して飯食わせてもらうだけのときもあった。
文句なんてなかったし、あっても言えなかったが…
住んでたのも、そのSさんの家。
まぁ、俺は後輩の後輩って感じで紹介されたわけで、俺自身は893じゃなかったし、目指してるわけでもなかったから『部屋住み』なんて堅苦しい感じじゃなく居候って感じだったけどね。
洗濯なんかも奥さんがしてくれてたし。
でも、はたから見たらチンピラだったろうな…
別に、チンピラな俺!イイ!なんて思ってなかったし、早くそんな生活抜け出したかったけど、ああゆう世界ってのは爪先だけでも踏み込むと容易には抜けられないのよね。
そんな居候時代に知り合ったTさんって人がいる。
俺より3歳年上で、元自衛官。
お世辞にもいい人とは言えず、無責任でキレやすい。
金もあんまり持ってなくて、誘われて飲みに行ったのに会計は俺なんてこともあった。
(もちろん、ある時はTさんが払ってくれたが)
893ってよりチンピラだったな。
年齢的にも若かったし…
今はもう付き合いがないが、居候生活抜け出してしばらくは付き合いがあった。
居候生活から抜け出したばかりの頃。
夜中にいきなり血まみれでやってきたこともある。
ケンカって言ってたが、ケンカであんな返り血見たことない。
まぁ、真相はわからん…
服を借りると、血のついた服は適当に処分しといてと言い残して帰ってった。
今考えるとこっちのほうが洒落怖だなw
当時は麻痺してたわ…
ある日、Tさん電話があった。
T『今、暇か?』
俺『はぁ、まぁ…』
T『家の前にいるから出てこい』
暇じゃなくても連れ出すつもりだったんだろな。
そんな自分勝手な人。
車に乗せられ、到着したのは普通の一軒家だった。
そこまで理由も目的も聞いてなかった俺は、誰の家か尋ねた。
Tさんは『俺の家』ってあっさり答えた。
Tさんが一軒家なんて持てるわけがないと思ったが、もしかしたら後輩におごらせて地味に貯金してたのかとも思った。
そんぐらいセコい人だったから。
しかし、詳しく聞いたらどうやら占有屋的なことをやってるらしい…
『~~~~とゆうわけだから今は俺の家』だってさ。
占有屋手伝わされるんだと思って慌てた。
仕事もあるし無理だと伝えたが
『おもしろいもん見せてやるから一晩だけ泊まってけ』
とのことだった。
家の回りにはカタギには見えない債権者(おそらく)がいて俺はガクブルだったが、Tさんには逆らえなかったので一晩だけ泊まることにした。
家の中は、テレビもねぇ!ラジオもねぇ!って感じ。
Tさんが売り払ったのか債権者が回収したのかは知らんけど、空っぽだった。
クリーニングも済んでない。
まぁ、Tさんが占有してんだから当たり前だが。
中にはTさんの後輩の坊主頭がいたけど、すぐにTさんが帰らしたんで二人っきりになった。
話すこともないし酒飲んだ。
たいした会話もなく、しばらく飲んでるとTさんが酒買ってくると言い出した。
俺も行こうとしたんだが、家を空っぽにはできないとのことで却下された。
(そういや、おもしろいもんって何だったんだ?)
そんなことを考えながら、ぬるいビールを飲んでたら2階から足音がした。
俺はとっさにゴルフクラブ(Tさんが持ち込んだ)を片手に身構えた。
債権者が2階の窓から侵入したと思ったから。
今考えればそんな無茶するわけないけど、そん時はそう思ったんだよね。
殺られる前に殺れ!じゃないが2階に特攻した。
2階の4畳くらいの和室にオッサンがいた。
50代くらいの作業衣着た工場の社長サンって感じのオッサン。
マジで債権者が侵入してきたんだと思った。
そんぐらいハッキリ見えるオッサン。
でも、生きてる人間とはちょっと違った。
うまく表現できないけど幽霊だってわかった。
頭に浮かんだのは自殺。
競売物件だったし。
気付いてないふりして、そーっと忍び足で1階に降りたよ。
触らぬ神になんとやらだし。
俺は『見える』んだけど『祓える』わけじゃない。
祓う力があったとしても方法を知らない。
それに、他人の家でたまたま遭遇した幽霊を祓うなんて、幽霊にしてみりゃ迷惑な話だ。
とにかくTさんの帰りを待つしかなかった。
『おもしろいもんって、多分アレだな…』
とか考えながら一度読んだヤンジャンを何度も読み直してると視線を感じた。
Tさんか?と思い振り返ると…
オッサン下りてきやがった。
オッサンから目が離せなかったよ。
でも、どうやら気付いてるのは俺の方だけ。
オッサンは気付いてないみたいだった。
ずーっとオッサンを眺めてた。
最初の印象は、オッサンが何か探し物をしてるんだと思った。
でも、どうやらオッサンに目的はないみたい。
俺にも全然気付かずに家中を徘徊してる。
例えるならSIRENの前田父って感じ。
前田父と違うのは規則性がないことかな?
階段と玄関の間をふらふらしてる…だけ。
なんか漠然と『無害かな?』って思ったんだが、得体の知れないものはやっぱり怖い。
そんな状況でも逃げ出さなかったのは、オッサンよりTさんが怖かったからだな…
オッサンから一瞬たりとも目を離せなかった。
だって、ちょっとでも目を離したら、次に後ろ振り向いたときに超近くにオッサンの顔が!、とか色々考えちゃって…
そんな状況が1時間ぐらい続いたかな?
人間ってのは適当なのか、それとも防衛本能なのかわかんないけど、緊張が続くと寝ちゃうのねw
酒のせいもあるかもだが…
目が覚めて部屋を見渡したら、もうオッサンはいなかった。
時計見たら3時くらいだったかな?
時間確認した瞬間、再び背後に気配感じた。
振り向いたら階段からオッサン下りてきた…
ずっといたんだorz…
自分が寝てる間にもオッサンが家中を(自分のいる部屋も含め)徘徊してたって考えたら全身鳥肌立ったよ。
相変わらずオッサンは徘徊するだけだった。
次に2階に上ったのが最後で、オッサンが下りてくることはなかった。
今度こそ怖くて眠れなかったよ…
5時頃になって外が明るくなるのを確認したら、少し安心して眠りに就いた。
結局、Tさんは昼頃帰ってきた。
酔っ払ってたよ…
俺が昨夜のオッサンの話をすると『忘れてたw』って…
あらためて幽霊よりTさんが怖いって思ったよw
『あのオッサン、ここに住んでた人ですか?』
って聞いたら、住んでたオッサンは普通に生きてるよってさ。
『じゃあ、なんなんすか?』
って聞いたら
『知らねーよ!貧乏神じゃね?』って…
『貧乏神ってw』
って笑ったんだが、ちょっと考えたら『なるほどな…』とも思った。
幽霊?と一晩過ごしたのは後にも先にもこの日だけ。
どうせならオッサンじゃなくて美人の幽霊がよかったよ。
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白いカオナシ
やばいです。
さっきTSUTAYAにDVD返しに行こうと思って家出た。
TSUTAYAは歩いて20分位のとこにあって、俺はいつも歩いて行ってる。
都内なんだけど、畑ばっかで大きい道路外れたら車通らないし、いつもすげえ静かで暗くて、ちょっと怖い感じもあったんだけど歩くの好きだから歩いてた。
その途中に2階建てのアパートがいくつかあるんだけど、通り掛かったアパートの駐輪場みたら何かが動いてた。
(駐輪場は明かりがついてて、自転車はあまりなかった)
ちょっと距離があったんで見えずらくて、始めは自転車のカバーが風で動いたのかと思ったんだけど、気になったんで少し近づいてよくみてみたら白いシーツ?みたいなのに人が包まって、後ろ向いてなんかしてた。
ヤバイと思ったけど、体は硬直。
なんか全身鳥肌立って、すげえ悪寒した。
どうしようと思ってたら、向こうが気付いたみたいでこっち振り返った。
なんか、白いリアルカオナシって感じで、顔を真っ白く塗ってる女だった。
目があった瞬間に、向こうが「ニタァ~」って笑って、マジにヤバイと思って猛ダッシュで逃げてきた。
こういう時って恐怖で声でなくなるな。
途中で一回後ろ振り向いたら、追っ掛けてきてたけど、すごいへんな走り方(なんか、がに股で跳びはねる感じ)であんま速くなかった。
とりあえず、真っ直ぐ帰るとヤバイと思ったんで、家の方向と違う道に入って(多分見てたと思う)そっから遠回りして今帰ってきたんだけど、震えがとまらん…。
あの目が頭から離れんわ。
幽霊みたことないからわからないけど、なんか幽霊って感じじゃなかった。
でもあんな人間いるのか?
とりあえず怖い。
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昨日のその後、また色々あって、やっと気持ちが落ち着いてきたんで報告します。
今は自分の家じゃなくて友達の家にいます。
昨日投稿した後、体の震えが止まらなかったんでシャワーを浴びて、とりあえず布団にもぐった。
目つむってもあの女の顔が浮かんできて、なかなか寝れなくて、ずっと寝返りうってた。
やっとウトウトし始めたあたりで、
「ピンポーン」ってチャイムが鳴った。
(俺はアパートの一階に一人暮ししてる)
え?!と思って時計見たら3時半くらい。
また体が震えだした。
そしてまた「ピンポーン」
もしかしたら、近くの友達が携帯と鍵を落としてうちにきたのかも、と思って(今考えたら、そんとき友達実家帰ってた)勇気を出して、部屋のインターフォンとって
「誰ですか?」
「………」
返事なし。
マジで頭がパニックになって、どうしようと思ってたら、今度はチャイムを連打し始めた。
パニックになって部屋をウロウロしながら、気持ちを落ち着かせようと思ってタバコ吸った。
ほんで思い付いたのが警察に電話。
この間チャイムの嵐。
110番に電話して
「誰かが部屋のチャイム鳴らしてる」
って言ったら、近くの交番の人が今から行くっていわれた。
布団に潜り込んで震えながら待ってたんだけど、いつの間にかチャイムが鳴り止んでた。
電話して20分くらいして(4時過ぎだったと思う) 警察到着。
チャイムが鳴ってびっくりしたけど、インターフォン出たら
「警察です。大丈夫?」って。
マジでホッとした…。
ほんで鍵開けて、玄関開けたら警察の人が
「ちょっと見て。」
って言って玄関のドア(外側)指差した。
言われるままに見てみたら、玄関ののぞき穴に顔を押し付けたような白い跡と、その両サイドに白い手形。
警察の人も
「何これ?」って焦ってた。
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中古車屋
ある中古車屋で働いていた頃の話。
誰が見ても商品の割りにメチャクチャ安い車が1台あった。
車は高級だし、年式も新しく、キレイで程度もいい。
俺は、てっきり事故車か何かだと思って店長に聞いてみたら、
「あーあの車は七輪で3人自殺した車なんよ・・・。」
その遺族が処分して欲しいと、タダ同然で置いていったらしい。
案の定、次の日に速攻売れました・・・
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赤い服の女
大阪 梅田 泉の広場 赤い服の女。
三年近く前、泉の広場のところで、ヘンな女がうろついていた。
通勤の帰りによく見かけた。
三十前後で、赤い色のデザイン古そなドレスっぽい服着てて、小柄で顔色悪く目がうつろ。
髪は背中近くまであって、伸ばしっぱなしに見えた。
目立つ服の色と、なんか独特の雰囲気があって目がいってしまう。
でも怖い(キ印っぽい)感じして、何気なく観察はしても目はあわせんようにしてた。
女はいつも広場の中をうろうろしてた。
地下出口出たとこの何本か外れた飲み屋筋に、立ちんぼのねーちゃんの多い場所があって、そこのねーちゃんかな?と思ってた。
ある日の仕事帰り、広場内の薬局の店頭でコスメの安売り見てた。
私は買い物するの時間かけるほうで、そん時も多分一時間近く店にいたと思う。
その夜も女は広場をうろついていて、いつものことなんで特に気にとめてなかった。
でも店から出た時、視線感じて顔上げると、広場の真ん中の噴水を隔てて、女がこっち見てた。
なんかヘンな感じがした。
私は目が悪くて、眼鏡かけてても少し離れた場所だと相手の顔とかよく見えないのに、女は妙にくっきり見えたんよ。
3Dみたく。
目があった途端、気持ち悪くなった。
何か本能的に怖くて、びしぃ!とチキン肌立って。
(うわ、ヤバい)
(でも何が?)
自分でも思考回路謎のまま、それでも反射的に店内に戻ろうとしたけど、金縛りかかったみたいに身体が動かん。
助け求めようとして声すら出ないことに気付いた。
いつもふらふら歩いてるはずの女が、すっと素早く近寄ってくる。
明らかに普通じゃない様子で、髪振り乱してドレスの裾ゆらしてこっち来るのに、誰も気付いてくれない。
もの凄い顔で笑ってて、その表情の怖さにふーっと気が遠くなった。
だって、目のあるとこ、全部黒目にかわってるんやで。
怖い、もうあかんって思ったときに、いきなり誰かが後ろからぎゅっと腕を掴んできた。
驚いて顔上げる(ここで身体の自由が戻った)と、男の人で、話しかけようとしたら「静かにして」って小声で注意された。
呆然として顔見上げてると、男の人はますます手をぎゅーっと握ってきて、怖い顔で前を見てる。
吊られて視線戻したら、女がすぐそばに立ってて、男の人を呪い殺しそうな目つきで睨んでた。
すごい陰惨な顔してて、怖くて横で震えてたけど、女はもう、うちのことは眼中にない感じで、
「…………殺す……」
って、つぶやいて、男の人の横をぶつかるみたいに通りすぎて店内に入ってった。
男の人はその後、私をぐいぐい引いて駅構内までくると、やっと手を離してくれた。
駅が賑やかで、さっきあったことが信じられんで呆然としてると、
「大丈夫か?」
って声かけてきたんで、頷いたけど、本当はかなりパニクってたと思う。
相手の名前聞いたりとか、助けてもらった?のにお礼言うとか、まともにできなかった。
男の人は改札まで見送ってくれた。
別れ際に、
「もうあそこ通ったらあかん」
とか言われて、
「でも仕事あるし」
「命惜しかったらやめとけ」
答えようがなくて黙ってると、
「今日は運よかったんや。あんたの守護さんが俺を呼んであんたを守ってくれたんやで」
「………………」
「たまたまやねん。わかるか?あんたが助かったの。たまたま守護さんがわかるもんが、たまたまそばにおった、それだけやで。あいつにとり殺されたくなかったら、もう通らんとき」
(守護さんって何やのん。守護霊のことか?)
霊なんて見たことなかったから、自分の体験したのが何なのかわからなかった。
正直、今もわからない。
女はどう見ても生身の人間に見えた。
それで返答に困ってると、その人は私に何度も「一人で通るなよ」と繰り返して行ってしまった。
未だにアレが何だったのかわからない。
私は二ヶ月後、そこの仕事場辞めたけど、その間、夜は泉の広場は一度も通らなかった。
男の人も、女も共に謎。
男の人の名前、聞いておけばよかった。
助けてくれたんなら(今も半信半疑だけど)お礼言いたかった。
反面、かつがれたんかな?と思わなくもない。(でも目的は何さ?)
すっきりしない。
怖い目にあった次の日、性凝りもなく泉の広場を通ろうとしたのな。
霊体験の少ない悲しさ(ワラ
で、なんか日が変われば白昼夢(夜だったけど)見たみたいな感じで、恐怖感が薄れたんさ。
実際、昼間通った時は何ともなかった。
で、帰り道。
さすがに暗くなってると、あの男の人の『とり殺される』って言葉が浮かんで怖かった。
ただ、梅田界隈って賑やかやから、警戒心は薄れてた。
自分の中に、女が人間かどうか確かめたい気持ちもあった。
でも、甘かった。
泉の広場に続く階段を途中まで降りると、赤服の女がしっかり居たのな。
下から三段目ぐらいの階段右の隅っこのほうに、背中こっちに向けて座ってた。
(もしかしてこれは待ち伏せ?)
反射的にそう思った。
私は広場をうろつく姿は見てたけど、女が階段に座ってるのを見たことはなかった。
妄想かも、と思ったけどぞっとした。
逃げたほうがいいと思った時、女がゆらぁと立ち上がった。
まるで、操り人形の糸を引いたみたいな不自然な立ち方で、何故かその瞬間(あっ、こっち向く!!)って判って、慌てて階段駆け上がって後も見ず逃げた。
その時は体動いたんで、神様ありがとうと結構マジに思った。