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裏S区
裏S区
九州のある地域の話。
仮だがS区という地域の、山を越えた地域の裏S区って呼ばれてる地域の話。
現在では、裏とは言わずに『新S区』って呼ばれてるが、じいちゃん、ばあちゃんは今でも裏S区と呼んでる。
まぁ、裏と言うのは良くない意味を含んでる。
この場合の裏は、部落の位置する場所を暗に表してる。
高校時代は部落差別の講義も頻繁にあるような地域。
そこでの話。
(あくまで体験談&自分の主観の為部落差別、同和への差別の話ではありません)
今から何年か前に、男の子(仮にA)が一人行方不明になった。
(結局自殺してたのが見つかったけど)
俺はS区出身者。
彼は裏S区出身者だけど、S区の地域にある高校に通ってた。
まぁ、彼は友人だった。
あくまで「だった」だ。
1年の頃は仲良かった。
彼が一人の生徒をいじめるまでは。
いじめられたのは俺。
周りはだれも止めない。
止めてくれないし、見てもない。
傍観者ですらなかった。
必死にやめてと懇願しても殴る、蹴る。
俺は急に始まったから、最初はただの喧嘩と思い殴りあったが、彼の体格と俺のでは全く強さが違う。
でも次の日も急に殴ってきた。
意味も無く。
理由を聞くも答えない。
薄っすらと笑ってたからもう兎に角怖かった。
ある日、いきなりAが学校に来なくなった。
俺はかなりうれしかった。
でも、もうその状況では誰も俺に話かける奴はいなかった。
初めての孤独を味わった。
多数の中に居るのに絶対的な孤独だった。
それからAが3週間学校を休んだある日、先生が俺を呼び出した。
ここからは会話。
先生「お前Aと仲良かっただろ?」
俺「いえ・・。」
先生「う~ん・・・。お前Aをいじめてないか?」
俺「はい??え?俺が??それともAが俺を???」
先生「いや、お前が。大丈夫誰にも言わんから言ってみろ。問題にもせんから」
俺「いや、俺がですか???」
このときは本当に意味が分からなかった。
先生の中では俺がいじめてることになってるし。
で、俺は本当のことを言うことにした。
俺「本当は言いたくなかったけど、俺がいじめられてました・・。皆の前で殴る蹴るの暴力を受けてましたし・・・。」
先生「本当か??お前が??他の生徒も見てたか??」
俺「見てましたよ。っていうか何で先生は俺がいじめてるって思ったんですか?誰かが言ったんですか?」
先生「いや・・・。いや、何でも無い。」
先生の態度がこの時点で明らかにおかしい。
何故か動揺してる感じ。
それから数分二人とも無言。
その数分後にいきなり先生が言い出した。
先生「Aがな、休んどるやろが?なしてか分からんけど、登校拒否みたいな感じでな家に電話しても親が出て、おらんって言うてきるんよ。」
俺「・・・。」
先生「そんでな、昨日やっとAと連絡とれて、色々聞いたんよ。そしたらAが言ったのが、お前が怖いって言うんよ。」
俺「はい??俺が???」
先生「う~ん・・・。そうなんよ。お前が怖いって言って聞かんのよ。」
俺「いやいや、俺が?逆ですけどね。俺はAが怖いし」
先生「ほうか、いや、分かった。もっかい聞くけどお前はいじめてないな?」
俺「はい。」
って言うやりとりの後、解放されて自宅に帰った。
実際のイジメって、多人数を1人でイジメルものだと思ってた。
中学生の時にイジメを見たことあったから、そのときのイメージをイジメだと思ったし、よく聞くイジメも大体が多人数が1人にお金をたかる、トイレで裸にする、こういうことをすることだと思ってた。
まさか、たった一人の人間がたった1人の人間をイジメるのに先生まで巻き込み、俺一人だけをのけ者にしようとしてるとは思わなかった。
生まれて初めて人に殺意を抱いた。
ぶん殴るとかじゃなく、ぶっ殺したいって本気で思った。
その次の日から俺は学校を休んだ。
行く気にはなれんし、行っても一人だしと思って。
ただ、この登校拒否中にありえないものを見てしまい、俺はちょっと頭がおかしくなりかけた。
起こったのは飛び降り自殺。
俺の住んでたマンションから人が飛び降りた。
たまたまエレベーターホールでエレベーター待ちだった俺の耳に『ギぃーーーーー』って言う奇怪な声と、その数秒後に『どーーーーん!』っていう音。
そのどーんっと言う音は、自転車置き場の屋根に落ちたらしいのだが、それを覗き見たときは本当に吐き気と涙がボロボロ出た。
これはただの恐怖心からなんだが、でもイジメにあっていた俺にはとてつもなく大きな傷だった。
これは本当にトラウマになっていて、今でもエレベーターに乗れなくなった。
会社とかにある建物の中にある奴はまだ何とか乗れるが、マンションにあるような外の風景が見えるものには全く乗れなくなった。
なぜなら、このときに絶対ありえないものを見たから。
自転車置き場を見下ろしてた俺が、前を向きなおした瞬間に螺旋階段が見えた。
そこに下に落ちてる人間と全く同じ服で髪型(これは微妙で下にあるモノとは異なってたようにも見える)のニンゲンが立ってた。
これは多分、見てはダメだったんだと思う。
螺旋階段を下に向かってゆっくり降りていってたんだ。
すごくゆっくり下を向いたまま歩いてた。
下にあるものと瓜二つのニンゲンが。
ここでエレベーターが来たときの合図の『ピン』って音が鳴ったんでビク!ってなり後ろを振り向いた。
そこにも居た、と思う。
多分いたんだろう、でも良く覚えてない。
今考えれば居たのか?と思うけど、そのときは居たって思ってた。
『ピン』の音に振り返った瞬間にどーんって再度聞こえたんだ。
でも、今度の音はエレベーターの中から。
どーん、どーーん、どーーーん、どーーーーん、って。
俺はもう、発狂状態になってそれから倒れたみたい。
直ぐに病院に連れて行かれた。
見たもの、聞いたものを全て忘れるように医者から言われて薬も処方されてそれから、1週間は「うぅぅ」ってうめき声を上げてるしかなかった。
1週間過ぎぐらいには大分良くなっていたのだけど、本当は親や医者をだましてた。
よくなってなんか無かった。
寧ろ、そのときからその「どーん」って音はずっと着いて廻ってた。
その後、学校に行こうと思い出した頃にAの存在を思い出した。
俺がそもそもこんな事になったのもAのせいだ。
あいつがあんなイジメをしなければこんな目にもあわなかった。
アイツは俺をこんな目にあわせる様な奴だから居なくなればいい。
そうだ、この『どーん』って言う音に頼もうって本気で思ってた。
俺は本当におかしくなってたんだと思う。
本気でこの『音』の主にお願いしてた。
次の日に学校に行った俺は、昼休みの時に早退したいと先生に言った。
先生も、俺がどういう状況かを知っていたからすぐにOKを出してくれた。
Aはその日も休みだった。
その帰りがけに、先日部落差別を無くそうという話を学校でしていた(講義で)、おじさんに出会った。
そのおじさんはAのおじさんにあたり、何度か会って話したこともあった。
だけど、そのおじさんが俺を見た後からの様子や態度が明らかにおかしい。
最初見かけた時は普通に挨拶をしたのに、その後俺を二度見のような感じで見ていきなり
「あ~・・・。」
とか言いだした。
俺は『こいつもAに何か言われてんのか?』って感じで被害妄想を爆発させて、怪訝な態度のこのおじさんを無視して横切ろうとしてた。
そのとき、急にそのおじさんがブツブツブツブツお経のようなものを唱え始めた。
俺はぎょっ?!っとして、そのおじさんを見返した。
いきなり会って「あ~」などとわけのわからない態度をとり、それだけならまだしも俺にお経を唱えたのだ。
生まれて初めて自分から人をぶん殴った。
言い訳がましいけど、精神的におかしかったから殴る事の善悪は全くなかった。
ただ、苛々だけに身を任した感じ。
いきなりでびっくりしたのか、そのおじさんもうずくまって「うぅ。。」って言ってたが無視して蹴りを入れてた。
Aの親戚ってだけでも苛々してたのもあり、
「こら、お前らの家族は異常者のあつまりか?人を貶めるように生きてるのか??お前、差別をどうのこうの言ってたが自分がする分にはかまわんのか?あ~??何とか言えや。こら!お前らは差別されるべき場所の生まれやけ、頭がおかしいんか?」
って感じでずっと蹴り続けてた。
でも、ここで再度予想外のことが起きた。
おじさん「ははははははははは」
俺「!?なんか気持ち悪い。いきなり笑い始めやがって!」
おじさん「あははははは。お前か、お前やったんか。はははは」
俺「??まじ意味分からん、なんがおかしいんか?」
(未だ蹴り続けてたけど、この時は大分蹴りは弱くなってる。)
おじさん「ははは、やっと会えたわ。はははそりゃAも****やなー。ははは」
(何を言ってるのか意味不明。)
俺「は???お前ら家族で俺をイジメようてしよったんか?」
(この辺りで怖くなって蹴らなくなってた)
おじさん「おい、お前がどうしようが勝手やけど、○○(俺の名前)が痛がるぞ。アニキは許しても俺は見逃さんぞ」
俺「は???マジでお前んとこはキチ○イの集団なんか?おい?」
おじさん「○○君、ちょっと黙っとき。おじさんが良いって言うまで黙っとき」
俺「いや、意味わから・」
「どーーーーーん」
いきなり耳元で音が鳴った。
俺はビクってして振り返ったら、目の前にのっぺりとした細面の顔が血だらけのままピクピクしながら笑ってた。
俺はまた、発狂した。
この顔の見え方がかなり異常で、通常ニンゲンの顔を見る場合に半分だけ見えるって言うのはありえない。
でもこの目の前の顔は、例えていうとテレビ画面の中にある顔がカメラのせいで半分だけ途切れてて半分は見えてる状態。
その瞬間に、Aのおじさんに力いっぱい殴られて意識を失った。
起きた時に、俺は家の自分の部屋ではなくてリビングの隣の両親の寝室で寝かされてた。
時間を見たら20時。
リビングからの明かりが漏れてて、両親が誰かと話をしてた。
俺が起き上がり、寝室のドアを開けてその人物を見たときにすぐに飛び掛った。
AのおじさんとAの叔母にあたる人がそこに座って両親と話てたから、それを見た瞬間にもう飛び掛ってた。
直ぐに親父に抑えられてたけど、俺は吼えてたと思う。
Aのおじさんは
「ごめん、本当に悪かったね」
を繰り返してたけど、どうしても許せなくて親父の腕の中でもがいてた。
母親がイキナリ俺の頬をひっぱたいて
「あんたも話しを聞きなさい!」
とか言い出してたけど、俺はもう親にまで裏切られた感じがして、家を飛び出そうとして親父の手から抜け出し、自分の部屋に向かい上着とサイフをとった。
が、上着を羽織ろうとした瞬間に、上着の腕の中に自分以外の手があった感触がして再度叫んだ。
両親とAのおじ、叔母が直ぐに来て、Aの叔母がブツブツ言いながらお経みたいなものを唱え始めだして、おじが俺の服を掴んで踏み始めた。
親父は青ざめてそれを見てて、母親は一緒に手を合掌して俺を見てた。
この時は、マジで自分が狂人になったのかと思った。
数分後、俺も落ち着いてきて、両親とAのおじ、おばと共にリビングへ向かった。
それまでの短い時間、Aのおじさんはずっと俺に謝ってた。
それからのリビングでの話は今でも忘れられないし、そこで再度起こったことも忘れられない。
以下会話。Aのおじさん=Bさん、Aのおばさん=Cさんとする。
Bさん「本当に、殴ってしまってごめんな。」
俺「いや、いいです。こちらも苛々してましたのですみません。」
親父「ん?お前なんかしたんか?」
俺「いや、俺がBさんを殴ってしまった。」
Bさん「あ、いや、それは俺が○君を見て、いきなりお経とか唱えたから嫌な気がしたんやろ?○君のせいじゃないわ。俺がいきなりすぎたんがいけんかったやから」
親父「申し訳ございません、それは聞いてなかったので」
俺「え?なんの話をしよん?俺がBさんを殴ってBさんがいきなり」
ここまで言って気絶前の事を思い出した。
俺「あれ??俺気絶する前にナニカ見たわ・・・」
Bさん「うん、そやろな。俺は○君みて直ぐに気づいてなぁ。何かおるって、それでお経を唱えたんよ」
母「大丈夫なんですか?何かって何ですか?」
Cさん「えっとね、私らが住んどる地域がなんで裏S区って言われるか知っとる?」
親父「えっと、失礼かもしれませんが、差別的な意味ですよね?」
Bさん「それはそっちだけの認識やな、じいさん、ばあさんによう言われたやろ?裏Sには近寄るなて」
親父「言われましたね。でもそれは部落差別的なもんやと思ってましたけど、違うんですか?」
Bさん「いや、そうや。そうなんやけど、差別があるけ言うても、今も言い続けよるんは裏Sの歴史がちと異常なんや。」
親父「いや、私も妻も生まれはS区やからその辺は分かってますけど、部落とか集落系での差別ってどっこも同じようなものでしょ?だから、異常っていうのはわかります。」
Bさん「はは。そうやろ?そういう風にとらわれてしまってるんやな。裏S区は部落やからって事でも他国のモンの集まりでもなく昔からこの地域に住んでたモンの集まりなんや。」
親父「はい。ただ、違いが私にはちょっと・・。」
母「あれですか?あの鬼門がどうのとかって言う話ですか?」
Bさん「ん?鬼門の話か。まぁ、そんな感じなんやろうけど、裏Sにうちと同じ苗字が多いやろ?」
母「はい。多いですね、A君とことBさんの家は親戚やから当たり前やけど、それにしても多いですね。S区には全然いないのに裏S出身者では結構みかけますしね」
Bさん「あの辺は昔から霊の通り道って言われとんな。ナメ○○○(なんて言ったかは不明)とかそんなの聞いたことないですか?」
親父「いや、名前はしらないですけど、聞いたことはあります」
Bさん「まぁ、その地域はそういう地域でして、うちらの家系はほとんどが霊感があるっていわれてたんですね。それが原因で発狂する奴もおれば、いきなり何するかわからんって感じで、いつの間にかそういう集落、部落になっていき差別されるようになったんですわ。」
母「でも、それやと裏S区はかなり広いからおかしくないですか?Bさんとこの家系だけで裏S区自体がそういう風にわかれますかね?」
Bさん「うん、わかれるんやろうな。最初は3、4の家のもんが発狂し始めてて、でも、それが村中で始まってってなってって最終的に4、50件も起きれば、その周辺全体がおかしいって思われるやろうし、昭和の時代にそんなアホみたいな話を信心深く聞く人間が少なくなってきてるしな」
親父「それでも、それで部落になるんかなぁ。」
Cさん「まぁ、うちらの家系ではそう教わっとるんです。だから生まれてきた子らには霊が見えるってことを前提に接しとる。見えん子もおるやろうけど、霊は居るって教えとるんですよ」
俺「いや、それと俺が体験しとるのとBさんの話と何が関係するんですか?」
Bさん「○君。最近Aの様子がおかしくなかった?いきなり学校休んでるのは置いといて、それ以外になんかおかしいことなかった?」
俺「最近っていうか、わからん。急に殴りかかってきたりしてたけど。」
Bさん「急にか、なんも言わんかったか?」
俺「いや、急に。意味わからんし。あ!そういうことか。Aが急に異常になったってこと?霊が見え初めて発狂し始めたんっすか?」
Bさん「いや、Aはまともや。でも何をすればいいかわからんかったよ」
俺「は?まともじゃないっすよ。あいついきなり殴り始めたし、しかも笑いながら。皆怖がって俺を助けようともせんかったし」
Bさん「○君、殴られたときに怪我するようなこと受けてないやろ?いや、殴る事自体は悪いことやから庇ってるんじゃなくてな。うちの家系での霊を見つけたときの対応は笑う事なんよ。やけん、異常者に見られることもあるけど、普通は無視してるんやけどな。」
母「ってことは、○に霊がついてたって事ですか??」
Cさん「うん、今も憑いてる。それと○君ベランダに誰か見える?」
俺「はい??なんですか?ベランダですか?」
ここで俺は、気絶する前に見たモノとは別のモノを見て発狂しそうになった。
Cさん「大丈夫。絶対にココには入れんから。」
親父「え?なにがですか?」
親父には見えてないし、もちろん母にも見えてない。
Bさん「あ、いえ。それでね○君にはちょっと憑いてるんや。」
俺「あ、あれか。。。飛び降りの奴、見てしまったからか。。」
Bさん「いや、ちがうよ。あれは多分たまたま。本当に偶然。でもその偶然がベランダの奴で、それ以外に憑いちゃだめな奴が憑いとる。」
俺「 え?」
Bさん「うん、それが憑いちゃだめなんよ。厳密に言うと霊とかじゃなく、うちの家系では××××って言うんよ。それを言葉には出しちゃだめですよ。すぐ移るから」
(両親を見て)
母「××××」
(なんて言ったか忘れた・・・、バラ??なんとかだったけど不明。)
俺「!?」
母「これで私に憑いたけん、○は大丈夫でしょうか?」
Bさん「いや、そういうもんでもないけど、本当にそれは言わないでください」
母「息子が困るのは一番いやですから」
Bさん「多分、それをするともっと困ります」
俺「もう、やめていいよ。っていうかなんなん?俺が霊に呪われててAはそれみて俺をなぐってたん?でも、それはおかしいやろ。そんなんします?普通。っていうか、笑いながら殴ったらいいん?霊が追い払えるん?」
(ちょっと困惑しててまくしたてた)
Cさん「ごめんね、そういう風にしか教えてなかったからやったんやろうね」
Bさん「お払いするときにはな、絶対に笑いながら相手を追い出すんよ。こっちは余裕だ、お前ごときって感じで。んで憑かれてる者を叩くと憑いてるものが逃げ出すって感じなんよ。もちろんお経やったりお呪いやったりが必要なんやけど、あいつは見様見真似でやってしまったんやろうな」
俺「でも、あいつ蹴ったりもしたし」
Bさん「うん、それは行き過ぎやな。でも、Aが学校休んでる理由は○君が怖いって。まぁ、○君に憑いてる者が怖いってことなんやけどな。」
それから数分、そういう話をした後にCさんが御祓いする為の道具を駐車場に取りにいって、Bさんが俺を守る形で周りを見張ってた。
その後準備が整い、御祓いが始まったけど、今まで見たどの御祓い方法よりも異常だった。
神社のような御祓いでもなく、お寺のようにお経を唱えながら木魚を叩いてるわけでも無い。
ただただ笑いながらお経を読んでる感じ。
そのお経もお経という感じではなく、ブツブツブツブツを繰り返してて、小声でただ話してるような感じだった。
それから何度か手を叩かれたり、頭を払われたりした。
それが終了してBさんが、
「もう大丈夫」
と俺に言い、Cさんが
「もう見えないでしょ?」
って言うので、ベランダを恐る恐る見てみたが何も無かった。
次の日から俺は、普通通りに学校に行くようになった。
(ただし、エレベーターは一人で乗ることが出来ないため、いつも親と一緒に乗ってた・・・。)
ただし、この日Aに異常が起きたらしく、その日の夜に
「Aが居ないんだけど、○君の家に行ってないか」
という連絡がAの父親からあり、次の日からBさんやAの両親が捜索願いを出して探してたらしいが、家に家出をするといった感じの手紙が置いてあり、家出人の捜索のため警察が捜索をするということは無かったらしい。
Aの親が電話をしてきた理由は、その手紙に俺の名前が何個も書かれていたことが起因らしい。
俺は、霊が乗り移ってたからと言う理由があったからと言ってAを許してはなかったから、どうでもいいって思ってた。
Aが行方不明になって3日目の朝に、どーーーん!っていう音が聞こえて起きた。
俺はもうそんなことがないと思ってたから、本当に汗がびしょびしょになり、直ぐに親の部屋に逃げこんで少したって夢での出来事だったことに気付いた。
(というか、そういう風にした)
ただ、その日にAが飛び降り自殺をしており、時間帯も朝方であったと聞いて、その夜から怖くなってきて一人で寝ることが出来なくなった。
遺書が見つかっている事から自殺で間違いないようで、遺書の中に俺宛の部分があり
「ごめん、本当にわるかったね。多分俺らの家系は部落でちょっと頭がおかしい家系が多いんやと思う。自分の家系のせいにしたくないけど、お前を殴ったのは本当に悪かった。ごめん。」
って書かれてた。
それからその次の夜にお通夜があり、俺も両親とともに行ったのだが、俺はすごく嫌がってた。
ただ親が
「一応供養だけはしとかな変なことあったら嫌やろ?」
って言うので、仕方なく行くことになった。
お通夜もかなり変わっており、通常のお通夜と違い遺影など無く、その代わりに紙にAの名前が書いており、それを御棺の側面にびっしり貼り付けていて、近づくのも嫌になるような不気味さを漂わせてた。
Bさん曰く
「写真を置くと写真の顔が変形するんだよ、それを見るのが耐えれないほどの奇怪なモノだから、この地域ではこういうやり方でやるんだ。名前の書いた紙をびっしり貼ってるのはコイツはAだ。××××ではないんだ、っていう証なんだ」
との事。
(本当に意味不明、奇怪すぎる内容にひいた。)
そのとき、Aの父親が俺に話かけて来て
「迷惑かけてごめんね。」
と、Aが家出したときに書いた手紙と遺書を見せてきた。
遺書の部分は上記の通りだが、この時は本当は見たくなかった。
家出をした際に書かれた手紙には
「○(俺の名前)にあいつが憑いてたんだけど、ずっと俺を殺そうと見張ってる。おじさん(Bさんのこと)が○のあいつを御祓いしたからもう大丈夫って言ってたけど、あいつは俺に来たみたい。でも、おとうさんはあいつを御祓いできないだろうし、おかあさんの家に行ってきます。行く道であいつがついてきたら、他に行ってみるね。」
とあった。
Aの両親は別居中だった為、Aは母親方の実家に向かったらしかったが、そのまま行方不明になったらしい。
ただ、何故か警察は家出だと言って、行方不明というよりは家出人としてしか扱わなかったそうだ。
それは本当に見なかったほうが良かったって思った。
あいつとか書かれてるし、意味も不明なので、その日までの現実離れした出来事をかなり思い出されて怖さで震えてきた。
Aの自殺した時間が朝方だったことも怖さを増して、ココには居たくないって本気で思った。
俺がおかしかったんじゃなく、こいつらが異常だって思った。
お経も無く、変な平屋のような場所に棺桶が置かれており、びっしりとAの名前が書かれた札を貼っていて、その挙句親戚の何人かは笑っているのである。
韓国だかどこかで、泣き子といって泣くだけの為に葬式に参加してるってやつがいるって気味の悪い話も聞いたことがあるけど、この集落に伝わる葬式も気味が悪いを通り越して異常でしかなかった。
うちの両親も、さすがにこの状況は怖かったらしく
「もう、帰るか」
と挨拶も早々に切り上げた。
それから数日後に、Bさんが両親に言ったのが、俺に憑いてたのはAのおばあさん(つまりBさんの母親)が××××になって(霊だろうけど、そうは言わなかったので)憑いてたとのこと。
もう、そんな話はどうでも良いから聞きたくも無かったけど、聞いといてとの事なので聞かされた。
飛び降り自殺をしたニンゲンも、裏S区出身者で××××に追いかけられてた事。
俺に取り憑いた理由はわからないが、以前Aの家に行った時に憑いたのかもとの事、等を聞かされた。
そこで俺も怖いと思ってたことを2つ聞いた。
1つ目は、Bさんに殴られる前に見た 顔。
2つ目は、飛び降りしたはずの人間が階段に居て、下の遺体の元に駆け寄ろうとしてたがアレは何なのか。
そうするとBさんは2つ目については
「死んだ人間は死んだことを分からない事が多い。だから下に自分が居たので取りに行こうとしたんじゃないかな」
との事。
ただ、そこで邪魔をされると呪いをかけようとするとの事。
ここで俺は邪魔をしてないと口を挟んだところ、
「お前、エレベーターを呼んだだろ?「ピン」って音が邪魔なんだよ。」
ってBさんの口調が、かなり強い言い方に変わった。
本当に飛び跳ねそうになった。
俺の両親もかなりびびってきてた。
Bさんはその口調のまま言った。
「お前なぁ、見ちゃだめだろ?俺はいいがお前はだめだろ?見んなよ。俺をみんなよ。なぁ?おい。聞いてるか?おい?」
って感じで。
さすがに親父が怒って
「何言ってんだ?怖がらせてどうする!」
と言うと、Bさんがビクンってなって、
「あ、ごめんなさい。もうしわけない、ちょっと来てたので聞いてみようと思ったんです、もうしわけない」
って言い出して口調を戻した。
「見てはダメだったと言っても、見たくて見たんじゃないから、もういいだろ?な。」
と自問自答を繰り返し、その後俺に向かって
「もう、絶対に大丈夫、本当に申し訳なかった。この亡くなった奴も××××に追いかけられてて、○君に乗り移ってたあいつに怒ってしまって、○君のとこにきたみたい」との事。
1つ目の質問については
「それが××××」との事
(この名前はもしかしたら日本語とかでは無いか、もしくは方言なのかなぁとこのときに思った。)
そしてAのおばあさんが××××になってしまった。
でも、Aの父親が自分の母を消すのは心許ないとの事で御祓いを避けてたとの事。
ただし、Aが亡くなってしまったため、流石にもう腹を決めたらしく御祓いを昨日済ませたとの事、等を聞いた。
そしてBさんが帰るとの事だったので玄関で見送りした。
Bさんが玄関を出た直後に、いきなりBさんの笑い声が聞こえた。
「あはははははは。ははははは」って。
俺はびくっ!ってなり膝から崩れた。
親父は
「やっぱりあそこの連中はおかしいわ」
と怖さからか、それとも本当に怒ってるのか怒鳴る感じでそういってた。
母は
「もう、あの人らに関わるのはやめようね」
と言い出して涙目になってた。
あんな話をしてて、笑いながら御祓いすると聞いてても、流石に家を出た瞬間にあんな笑い声を張り上げている奴を同じ人種とは思えない。
「あはははははははは」
と笑ってて、その声が聞こえなくなって初めて三人とも動けるようになり、リビングに戻った。
俺が
「あいつらはおかしいよ、絶対異常やって。っていうかあいつエレベーターで帰ったんやろうか?」
と言ったら、親父が
「あいつとか言うな、一応年上やろうが。はぁ。。。もう、関わらんようにしとけ」
と言って鍵を閉めに行った。
その直後に
「はやくかえれ!!」
っていう怒鳴り声が聞こえて心臓が止まりかけた。
母親も「ひぃ」ってなってた。
親父が鍵を閉める前に夕刊が郵便受けに入っており、それを中から取ろうとしたら上の部分に引っ掛ってしまっており、外から取ろうとしたらしい。
しかし、Bさんがまだエレベーターホールでニヤニヤしてたらしい。
親父はぶち切れてて
「警察よぶぞ!」
とか言い出しており(怖かったんだと思う)横の家の人とかも出てきて、Bさんは
「え、い、いや、今帰ろうとしてたとこです。え?なんですか?」
とか言ってたらしい。
言った瞬間に又、ケタケタと笑い始めてエレベーターに乗って帰ったらしい。
親父が「塩まけ。塩!」と言い出し、狂ったように塩をまいていたので隣人からしたら親父も異常にみえたかも。
その後、両親と一緒に有名な神社に行って御祓いを受けて、家を引っ越した。
S区からは移動してない為、同じ学校の地域だったが、俺は他の地区の学校に転入をしてもらい、それ以降は一切裏S区には近づいていない。
今は新S区と名前を変えてるが、地域性自体は変わってないようであり、従兄弟の通うS区の学校では、未だに同和教育があり、地域は言わないものの、差別的な事が現実にあると教えてるとの事。
しかしアクマで部落、集落への差別としか言わず、裏S区の事情、情報は皆無で、裏S区と呼ぶと教師が過敏に反応し新S区だ、と言い直したりとかもするそうである。
(これは九州特有の人権主義、日教組等によるものだと思うけど。)
Bさんに関しては一切関わりを絶っているため、今はどうなってるかは不明。
うちの両親は、この事件までは裏S区に関しての差別意識は皆無だったが、これ以降はかなり毛嫌いしており、その地域の人達との関係をかなり制限してる。
俺はそれ以降、霊的な出来事は皆無だけど、エレベーターだけは一人で乗れず、はずかしながら一人で寝ることも出来ないので妻にすごく馬鹿にされている状態。
終った直後の頃は、トイレに行くときも親を起こして(高校生なのに。。。)一々行ってた位に心身が恐怖で埋まってた。
俺に関しては、裏S区の出身と聞くと差別というよりも恐怖だけが全身を駆け巡り話も出来なくなる。
駄文、かなりの長文失礼しました。
一応体験談として置いておきます。
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予感
予感
彼女とデートの日、
待ち合わせ場所へ向かう途中、
携帯が鳴った。彼女からだった。
「今日は行けない」
と言う。
「もう会わない方がいい」
と言う。
理由を訊いたが答えない。
しつこく訊くと
「会うと良くないことが起きる」
と言う。
「私は生きてちゃいけないの」
と言う。
納得できなかった俺は
「会おうよ」
とごねた。
「死んじゃうかもしれないんだよ」
と彼女が言った。
「死んでもいいから会ってよ」
と俺は言った。
ここで引き下がって、
納得できないまま生きるのは耐えられないと思ったから。慌てた感じで彼女が
「そんなこと言っちゃだめだよ!」
と言った。
「本当に死んじゃうんだよ!」
って。
30分ほどやりとりの後、彼女が折れた。
来てくれることになった。
しばらくして、また携帯が鳴った。
「やっぱり行けない」
と言う。
「今、どこにいるの?」
「東京駅」「じゃあ、あとは乗りかえるだけじゃん」
「できないの」「ハァ? 何で?」
「悪い人が中に入って邪魔するの」理解できなかった。
俺に会いたくなくて、
そんなことを言ってるのかな、
とも思った。「じゃあ、そこにいて。俺がそっちに行くから」
「来ない方がいいよ」「そこにいて。すぐ行くから」
俺は改札を抜けて、登り電車に乗った。
東京駅に着いた俺は、彼女に電話をかけた。
「着いた。今どこ?」
と訊いた。
彼女は
「○○って喫茶店の前」
と駅構内の店名を言った。
「わかった。すぐ行く」
と答えて、俺は走った。
見なれた店の前に彼女がいた。
ほっとした。
なんか悲しそうに
「何で来ちゃったの?」
と言われた。
「会いたかったから」
と答えた。
彼女が笑った。
その店に入りコーヒーを飲みながら話した。
彼女は妙に周囲を気にしていた。
しばらくして、彼女の携帯が鳴った。
中学の友達からだった。
数年ぶりの連絡だという。
三人で一緒にゴハンでも食べようということになった。
有楽町で待ち合わせ、食事をした。
その友達曰く
「なんとなく久しぶりに会ってみたくなった」
とのことだった。
食事を終え、三人でぶらぶらした。
彼女はときどき周囲を気にしていた。
さほど遅くならない内に、別れて帰途についた。
別れ際、彼女が俺の手を握って
「気をつけてね」
と言った。
「よくないことがあるかもしれないから」
って。
俺は本気にしなかった。
六日後、彼女が死んだ。
事故だった。
もし、彼女が言っていたことが事実だったのなら、
俺が殺したようなものかな。俺が殺したのかな、と思った。
確かに、よくないことが起きた。
俺自身が死ぬよりも、よくないことだった。
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こっちにおいでよぉぉ…
こっちにおいでよぉぉ…
僕は子供の頃、東京の外れに住んでいました。
森林に覆われた丘陸地帯に囲まれた、都内とは名ばかりの外れた町でした。
遊戯施設などはほとんどないような場所でしたが、町外れに町営の小さなスケート場がありました。
夏場はプールとして利用されるところを、冬にはコンクリートの底に浅く水を張り、スケート場として開放していたのです。当時、小学生だった僕は、テレビで見たフィギュアスケートにすっかり夢中になっていて、その年の冬休みには、連日、夕方五時の閉場まで、その小さなスケート場に通いつめていました。
僕が奇妙な体験をしたあの日も、いつもと同じように、僕はスケート靴を抱えてリンクへ向いました。子供に特有のあの熱心さで練習を続け、気づいた時には五時を知らせる町役場のチャイムがあたりに鳴り響いていました。
山あいの町では平地よりもずっと早く日が沈みます。
冬のことでもあり、すでにあたりはすっかり夕闇の中に沈んで薄暗くなっていました。
足を止め、あたりを見まわすとリンクの上にいるのは僕一人でした。
まわりにある休憩用のベンチにも人影は全くありませんでした。
それに気づいた時、僕はなんとも言えないいやな気分に襲われたのです。そこはもともと利用者が少ない場所であったし、ましてや、ナイター設備もない野外で、陽も落ちて冷たい夜風が吹き始めるまでスケートに没頭するような物好きはほとんどいませんでした。
閉場のころに僕ひとりだけが残っているようなことは、決して珍しいことではなかったのです。
なのに、その時だけはひとりっきりで冷え冷えとした空気に晒されながら薄暗いリンクの氷の上に立ってることが、やけに不安なものに思えたのです。
昼間のうちは表面が溶けてシャーベット状になっていたリンクも再び凍りつきはじめています。
その鋭く光を反射する表面に、一瞬何か人影のようなものが映った気がして僕は慌てて振り向きました。
しかし、当然そこには誰もいません。どうにも心細くなり、いつもなら管理人が追い出しにくるまで粘るところを、途中で切り上げて、僕はいそいでリンクの出口を目指して滑っていこうとしました。
その時です。
どこかで小さな音がしました。それは、小さくひそめた人の囁き声のように聞こえました。
僕はゾッとして反射的に逃げ出しそうになりました。しかし音の原因が分からないままでいることは余計にいやな気がして、怖いのをこらえてリンクの中央へ振り向き、あたりを見渡しました。
それでもやはり、リンクの上には何も見当たらないのです。<なんだ。きっと町の物音が風に流されてここまで聞こえてきたんだ>
子供ながらに、僕は理屈の通る答えを自分で思いつき、それに励まされるように管理人が来るまでのあいだ、もう一周だけリンクをぐるっと滑ってみることにしました。
その途中、ちょうどリンクの中央あたりでなにかがクッと、エッジに引っかかったのです。
僕はエッジを立ててその場に止まったのと同時に、ふたたび声が聞こえてくるではありませんか。
今度ははっきりと人の声、しかも僕の名前を呼ぶ声でした。僕は一瞬にして恐怖のあまり凍りつきました。
そのあいだにも、声は僕の名前を何度も呼び続けています。
そして、どうやらその声は、すぐ近く、僕の足元のあたりから聞こえてくるようなのです。
僕は怖さで動きもままならない首を無理矢理ねじるようにして足元の氷の上へ視線を落としました。
そこには子供の姿がありました。僕の姿が氷の表面に映っていたのではありません。
まるでガラス窓を覗くように、見知らぬ子供が向こう側から氷の裏に両方の手のひらを押し付けて、じっと無表情にこちらを覗きこんでいるのです。身動きすらできずに凝視しつづける僕と目が合っても、その子供は少しも表情を変えませんでした。
頬のこけた青白い顔のなかで、目だけが黒々と大きく、異様な光を宿してこちらを見ていました。やがて子供は、その血の気が失せた紫色の口を開きました。
『・・・・・・こっちにおいでよぉぉ・・・・・・おいでよぉぉ・・・・ぉぉぉぉ・・・・・』
キイキイと金属をひっかくような何とも気味の悪い声が、氷の上に響きました。
そして子供は僕に向って手を伸ばしてきたのです。
信じられないことに氷の表面から白い指先が何かを探し求めるようにうごめきながら突き出されてきたのです。
やがてその指は、僕の足首をしっかりと握り締めました。
そして次には手首が、腕が、ジワジワと氷の中から現れてきたのです。僕が覚えているのはそこまでです。
母の話では、誰もいない夕暮れのスケートリンクの上で放心状態ですわりこんでいた僕を管理人が見つけてくれたのだそうです。
そのとき僕は全身冷え切って、目は開いているものの話しかけても反応しない状態で、すぐに運び込まれた病院の先生の話では凍死寸前だったのだそうです。そのあと僕は一週間ほど入院しました。
退院するほど回復したころには、足首をつかまれたあとの記憶をまったく失っていたのです。あのあと、僕自身の身に何が起こったのか。
それはいまだに謎のままです。
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忌箱
忌箱
これは高校3年の時の話。
俺の住んでた地方は田舎で、遊び場がなかったんで近所の廃神社が遊び場というか、溜まり場になってたんだよね。
そこへはいつも多い時は7人、少ない時は3人くらいで集まって煙草を吸ったり酒飲んだり、たまにギター持って唄ったりしてた。
その廃神社は人がまったく来ないし、民家や商店がある場所からはけっこう離れていたから、高校生の俺達には、もってこいの溜まり場だった。
ある日学校が終わって、まあその日も自然と廃神社に溜るかぁみたいな流れで、俺と他の3人の計4人で自転車で廃神社に行ったんだ。時間は4時過ぎくらい。そこで煙草吸ったりジュース飲んでたりしてた。
11月頃で、ちょっと寒いなぁなんて言いながらくだらない話に花を咲かせて溜ってたんだよね。そしたら、ザッザッザッザッって神社の入り口から足音が聞こえてきたんだ。
最初は他の連れが溜まりに来たのかなぁと思ってたんだけど、神社の境内に入ってきたのは、70代位のおばあさんだった。俺を含めた4人とも会話がピタッと止まってね。
その廃神社に溜まり始めたのが高校1年の頃からで、約2年間溜まり場にしてたけど、これまで一度も人が来た事がなかったんでビックリしたというか、人が来る事自
体が意外だったんだよね。俺たちは神社内の端側にある段差のある場所に溜まってたんで、おばあさんは俺たちの存在に気づいてない。
俺や俺以外の連れも、なんとなくバレたらいけない気がしてたのか、みんな黙ったままジッとおばあさんを見てた。
おばあさんは神社の賽銭箱(賽銭箱には落ち葉やゴミしかないのは2年前にリーサチ済みです)の前に立って拝んでた。拝んでた時に聞き慣れない言葉で何かを呟いてた。
1分くらい拝んだあとに、賽銭箱の後ろのほうに、片手に持っていた鞄を置いて帰っていった。
「おぉビックリした!」
「まさか人が来るとはww」
「ちょっと怖かった~」とか話してたんだけど、当然気になるのは、おばあさんが放置した鞄。俺はなんとなく嫌な予感がしてたんだけど、連れのAが賽銭箱のとこまで走って鞄を持ってきた。
「札束が入ってたりしてw」とか言ってるんだけど、俺はわざわざ神社に置き去ったものだからロクでもないモンなんだろうなぁと思って「そんなもんあそこに置いとけよぉ~」とか言ったんだけど、他の3人は興味しんしん。
仕方なくA達が鞄を開けるのを見てた。
「なんだコレ」と言うBの手には古新聞。相当古そうなのは新聞の黄ばみ方で分かったんだけど、
記事はよく覚えてないけど「なんたら座礁」「○○が逮捕」みたいな文字が書いてあったのは覚えてる。
新聞の日付は1972年って書いてあった。
「なんで24年前の新聞が…」ってみんな不思議がってた。
Cもちょっと気持ち悪くなったのか「やめとくか?」と言い始めたんだけど、AとBは更にガサゴソと鞄を物色しはじめた。
今度は財布。Aは「おぉ金入ってたら○○ストアで酒買って宴会するかw」と言いながら財布を開けた。
見た事もない札が一枚(昔のお札じゃなくて外国の札?)とお守りとレシートと紙切れが入ってた。AとBはすぐに興味なくして「なんだよ~金入ってねぇよ」と言ったんだけど、俺は中身に興味があったんでCと一緒に見てみた。
お札はたぶん中国か韓国のかなり昔の札。レシートはボロボロでよく読めない。
お守りには梵字みたいな、たぶん梵字ではないけど、中国語か韓国語で書かれたお守りかなぁって感じの物。俺とCが財布をくまなく調べてると、Aが中から小さな木製の箱を取り出した。
「なんだよコレ!お宝っぽくないか!?」と言ってAは開けようとするんだけど開かない。俺は「やめとけよ。どうせロクなもん入ってないって」って止めて、Cも「気持ち悪くなってきた…」って言うのに、AとBは必死に開けようとしてる。
最初はコイツら馬鹿だなぁwって思ってたんだけど、AとBはその箱を地面に叩きつけたり、二人が引っ張り合いをし始めたりして、開けようとする行為がだんだん激しくなり始めた。
「ちくしょぉぉ開けよコノヤロ~」
「なんで開かないんだよぉぉぉ」
AとBはそう叫びながら必死に木箱を開けようとしてるんだけど、その姿が尋常じゃないって感じになってきて、俺もCも唖然として見てた。力づくで止めさせようとも思えないくらい、目が血走ってて必死なんだよ。
「お、落ち着けよ」と言ったんだけどAとBには、俺やCの存在すら目に入ってないみたいな感じで木箱をガンガン地面に叩きつけたり踏んづけたり、引っ張り合いしてる。
ヤバイなコレと思ってさすがに止めに入ったんだけど、Aはガグガッと口からわけのわかんない声というか音を出して俺を突き飛ばした。
俺とCだけじゃどうしようもないから他の連れを呼ぼうにも、当時まだ誰も携帯電話を持ってなかったから、誰かを呼ぶにもその場を立ち去らないといけない。
俺もCも一人になりたくないけど、仕方ないからCとジャンケンして俺が勝って、俺が他の連れ達を呼んで来る事になった。
もう五時過ぎくらいで、少しずつ夕陽が落ちかけて暗くなり始めたんで、Aたちの行動とか周りの雰囲気がすごく気味悪く感じた。
2年間溜まり場にしてた場所がまるで別の空間に思えたんだよね。AとBがコンビプレーしながら木箱を必死に開けようとしてる異常な姿を見ながら
「じゃすぐ戻る!」と走り去る俺に
「頼むから早めに帰ってきてくれよ~」とCは泣きそうな感じで返事した。神社の階段をダッシュで降りて、自転車を置いてる場所まで走って自転車に跨いで走り出そうとした時にギョッとした。
さっきのおばあさんが神社の向かい側の道でニタニタ笑ってた。俺の方じゃなく神社方向を見て笑ってた。
俺は神社に戻るわけにもいかず、おばあさんに話かけようなんて事も怖くて出来ず、必死に自転車をこいで、神社から一番近いDの家に向かった。
家から出てきたDは最初「は?なにそれw」と言っていたが俺が必死に説明してたら、ようやくヤバイ状況に気づいたみたいで、
「早く行こう!いや、Eも呼ぼう」とDの自宅からEに電話して「早く家に来てくれ」と頼んでEの到着を待ってたんだけど、
Eは20分以上待っても来ないし、外がかなり暗くなり始めた事に焦って、Dの弟にEが来たら神社に来るように伝言を頼んで、俺とDだけで神社に戻る事にした。
二人で自転車こいで、神社に到着した時は、さっきいた場所におばあさんはいなかった。
俺とDは神社の階段を駆け上がった。
以下、記憶はここまで。
次の瞬間俺は病院にいた。
エッと思って起き上がろうとしても起きあがれない。一生懸命起き上がろうとしたら、足にギプスがはめてあって、腕には手首に包帯。急に全身に鈍い痛みが走って「うぉぉ」って小さい声が自然に出て、寝たまま苦しんでたら、しばらくして病室に看護婦か入ってきてそこからもよく覚えてないけど、とりあえず家族が来たり先生が来たりして慌ただしい感じになった。
どうやら交通事故に遭って4日間目を覚まさなかったらしい。
「Aは?Bは?神社は?Dは?」とまくしたてて聞く俺に、母さんは最初は「今はいいの。今はゆっくり休みなさい」とか言ってはぐらかしてたんだけど、
何度もしつこく聞いたら、「A君もB君も亡くなって…D君は重体で…」と言われた。意味が分からずポカーンとしていると、
ABD俺の4人が自転車に乗って歩道を帰っていたら、トラックが突っ込んできて、AとBは即死。Dは意識不明の重体。
(後日、図書館で地元新聞読んだらたしかにそう書いてあった)駆けつけた担任の先生はボロボロ泣きながら「よかったなぁよかったなぁ」って言ってくれてるんだけど、
「おかしい…俺は神社に向かってたんだけど。AとBは箱を開けようとしててDに助けを呼んで神社に行ったんだけど」と説明した。支離滅裂だったのか親や先生は理解してくれなかった。
その日の夜は寝たり起きたりを繰り返しながら、連れが死んだショックより(もちろん悲しかったけど)「おかしい…」という感情が強かった。
翌朝一番でCとEが見舞いにきた。Cは泣きながら「すまん!俺、30分待ってもお前が帰って来ないからAとBを置いて逃げた」と言った。
俺は「あ~そうなのかぁ」としか返事が出てこなかった。せめて神社付近で待っておけよと思ったけど言えなかった。
Cは「あの後、Aが「もう少しで開く!開く!」って叫び出したんだよ。Bも「開く!開く!」って…それが怖くて逃げたんだ」と言った。
Eは「よく分かんないけど、Dの家に行ったら、Dの弟から神社に行くから来てくれってお前らが言ってたって聞いて、すぐに神社に行ったんだけど、お前らいなくて、別のがいたから仕方なく帰ったら、次の日事故ったって聞いて驚いたよ」
「別のって?」
「いつも溜ってる場所に何人かいて、暗くてよく見えなかったけど、お前らの自
転車はないし、雰囲気がなんかおかしかったからすぐ帰ってきたんだよ」CとEと神妙な顔をしたまま、20分くらい話して帰っていった。
その後は、刑事が来ていろいろ聞かれたから正直に全部話したけど、神社の話より事故の瞬間の話しか興味がないみたいで、
「事故前後はまったく覚えてないです」って言ったら、残念そうに帰っていった。
後日、何度かまた刑事や相手の保険屋や弁護士が来て、話を聞かれたけど、神社のくだりより、事故の時の話しか興味ない感じだった。
事故を起こしたトラック運転手は精神的な疾患を持ってたらしくて、事故後に逃走して自殺を図ったらしい。
でも死にきれずに病院にいて、会話にならない状態だって聞いた。重体だったDは結局あの後亡くなった。Dの弟は俺を恨んでいるみたいで、退院後にDの家に線香あげにいった時も無視された。
俺は、もともと東京の大学に進学が決まってたから、一月から学校に登校して3月に卒業した。周りは妙に優しくしてくれたけど、俺は気まずくてCやEとは距離を置いた。
Cは4年前に自殺したらしいけど、俺は長い間地元に戻ってないから疎遠になってて詳しい話はしらない。
いろいろあったから地元とは距離を置いてきたけど、昨年11月に親父が亡くなったから12年ぶりに地元に帰った。
大学卒業の時に一度帰ったけど日帰りで一時間位しかいなかったから、じっくり帰るのは12年ぶり。葬式など全部終わって、すぐ東京に帰ろうと思ったけど、母さんがなんか不憫でギリギリまで実家にいる事にした。
昼間やる事もないんで、12年ぶりに徒歩で田舎町をウロウロしてたら、急にあの廃神社が気になった。
本当は思い出したくもないんだけど、その気持ちに反して神社が気になる!行きたい!と強く思った。
あの時の関係者といえばEだけど12年間疎遠になっていたし、連絡しにくい。仕方なく一人で行った。
歩いてみると、神社は家や学校からかなり遠かったんだなぁと思った。
神社に比較的近かった行きつけのスーパーは潰れてビルになってたり、近くにコンビニや大きなショッピングモールやマンションが出来てたり、12年前とは景観がかなり変わってた。
神社はまだあった。あの日以来の神社だった。俺は急に怖くなった。心臓が高鳴り、手のひらは汗でジトッとしてきた。
引き返そうと思ったけど、わざわざここまで歩いて来て今さら引き返すのも抵抗があって
思いきって恐る恐る階段を昇った。変わらない風景のはずだった。でも変わっていた。
神社は綺麗になっていた。賽銭箱や社や石造りの道も綺麗になっていた。
近くに若い女の子が箒を持って掃除していた。可愛い娘だった。俺は人見知りするタイプだから、普段は絶対に声をかけたりしないんだけど、神社のこの変貌っぷりを目の当たりにして、迷わず声をかけれた。
「すみません。あの…あのですね。10年以上前に神社に来てた者なんですが」
すると女の子は「はい?」と答えた。
関係ない話だけど顔はアッキーナにソックリだった。髪のとても長いアッキーナだった。
「10年くらい前に神社によく来ていたんですよ、実は」
と言ったら「少しお待ち下さい」と箒を置いて誰かを呼びに行った。
俺は周囲を見渡した。12年前にはなかった神社の横のアパートのバルコニーで洗濯物を干している主婦が見えた。
「どうされましたか?」神主さんなんだろうけど、私服を着た上品な顔立ちの年輩の白髪のじいさんが近寄ってきた。
アッキーナは箒を持ってお辞儀して別の場所を掃除し始めた。
「すみません。12年前に…」と説明をしたら、神主さんは驚いた表情をしながら聞いていた。
一通り話をした。二年間溜り場にしていた事や、おばあさんの話、事故の話。
「あ~なるほど…。実はこの神社は3年前に○○神社(よくわかんない)から分祀されて復興したんです。」
俺は「はぁ…そうですか…」と答えた。
「まさかそんな話を聞けるなんて思いもしていませんでした。その箱はその時におそらく開いたんでしょうなぁ…。アレは冥界の門みたいなもんで、私も実際に手にとった事はないんですが…」
「なんですか?冥界の門って?あの箱どこに行ったんですか?」
「いやぁアレにはいろいろな呼び方があって私どもは忌箱(キバコ)と呼んでます。私がここに来たのが半年前で前任の者が失踪したんですよ。詳しい事は私も聞かされていないんですが、前任者が忌箱に取り込まれたという話を聞きましたが…」
「ええ~!!忌箱ってなんなんですか?Aたちが死んだのも何か原因があるんですか?!」
「分かりません。う~ん…命をとる事もあるのかもしれませんね…申し訳ないですが…」
それから神主さんはお祓いをしてくれた。神主さんは神主衣装に着替えて、30分くらい物々しい雰囲気の中でお祓いの儀式をしてくれた。
アッキーナはたまに様子を覗きにきた。俺は正座してお祓いをしてもらいながらアッキーナにさりげなく微笑んだ。
アッキーナはたぶん微笑み返してくれて、出て行った。
「忘れなさい。アレはあなたの人生にたまたま通りかかった通り魔のようなもの
ですから」と言われた。俺は話せて良かった事と、お祓いのお礼を言って帰った。
その後は東京に戻って普通に生活している。
東京に戻ってしばらく経った頃から夢をよく見るようになった。3日に一回は見る。
あの日、Dと神社に到着した後の光景だった。
神社に到着した後から事故に遭うまでの内容が断片的に夢に出てきた。
この前は、トラックにひかれたのは運転手の責任じゃなく、俺とDがAとBと車道で揉み合いになっていたところに衝突してきた内容だった。他にも神社の境内でのおぞましい内容の夢を見た。内容は誰にも言っていない。
夢の内容を口にしたら、とても恐ろしい事が起こりそうだからだ。
最近になって俺はこれは夢じゃなく記憶なんじゃないかと思い始めている。
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案山子の神様
案山子の神様
俺が高校の時の話
田舎住まいなので
通学するときにはいつも
田んぼの脇道を通っていた。その日も家に帰る為、
いつものように田んぼの脇道を
カエルの鳴声を聞きながら歩いていた。すると田んぼの中に
ピンク色の割烹着のような服を着た人が
立っているのに気が付く「ああ、田植えか何かしているんだな」
そう思って良く見てみると、
何か動きがおかしい。片足で腰をクネクネさせながら
白いビニールの紐のようなものを
新体操をしているかのように
体の回りでグルグルさせている。何と言うか、
フラフープをしているような、
そんな動き。変な汗が俺の体中からフツフツと湧き出てきた
しかもソレは片足でケンケンしながら
少しずつコチラに近付いて来ているゲコゲコと蛙の鳴声が響く夕焼けの田んぼの中で
俺は何故か動けずにソレを見ていた。腰をクネクネさせて
ピョコピョコとコチラにやって来るソレに
顔は無かった、と言うか見えなかった。写真でブレた時みたいな、
激しく顔を振っているそんな感じ。体は普通に見えるのに、
まるで顔の部分だけぼやけていると言うか・・・。俺は目がかすれたのかな?
と思い何度も目を擦ってみたが
ソレの顔は相変わらず見えない。しかも、もう目の前まで来ている
「ああ、こらもう俺の人生終わったな」
そう思ったと同時に涙が物凄い勢いで流れた。
目が痛くて開けていられない程に・・
俺はその痛みと恐怖で気絶してしまったらしく、
次に目を開けた時には自宅の布団の中でした。そこには俺を囲むように親父と祖父、
祖母と近所の坊さんが居て、
なにやら念仏のようなものを声を揃えて唱えている。なんだかその状況が可笑しくて
「ブフッ!」
と、吹き出すと祖母が
「ジッとしてろ!」
グッっと俺の体を押さえ付けて
低い声でそう言った。結局それは俺が目覚めてから
1時間程続いたのかな。その後、祖母に聞いた話しでは
俺が出会ったアレは「案山子の神様」とかなんだけど、
その案山子は寂しかったのか何か知らないが、
俺を自分の仲間にしようとしたらしい「連れてかれたら一生泥の中で暮さなきゃいけねえんだぞ」
と祖母は最後に言いました
おかげで今でも田んぼに
案山子がポツンと立っていると
恐くてしょうがないです。