近くの公園に、いつもポコさんという大道芸人みたいなおじさんが週に3回来てた。
顔は白粉か何かで白く塗り、眉毛を太く塗り、ピエロの様な格好でいつもニコニコしてた。
ある日は紙芝居をしたり、また別の日にはジャグリングをしたり、風船で動物を作ったりと多才な人だった。
ポコさんが来る時には、何時も決まってラッパの様な笛で『ポーポー』と音を鳴らしながら空いてる手で小太鼓を叩く。
「だからポコさんって呼ばれてまーす。」
と本人が言ってた。
そのポーポーコンコンの音を合図に近所の子供は勿論の事、中学生や子連れのママさん達も集まるぐらいに人気だった。
それがある日、急にぱったりと来なくなった。
楽しみにしていた子供達は、今日こそは今日こそはと待つも、とうとう4ヶ月たってもポコさんは来なかった。
それから4ヵ月後、ポコさんの笛の音と太鼓の音が公園から聞こえた。
ワイワイガヤガヤと子供達が集まっていく。
私も同様に、友人達とそこへ向かった。
すると公園の中央で笑い声とも叫びともつかぬ、ざわめきが聞こえてきた。
私達がそこに着く頃には、16人ぐらいの子供達がポコさんの前で座ってたが、何故か子連れのママさん達は皆帰っていった。
そして何時もなら『ポコさーん』と声を掛け合っている子供の集団も、不安げに静まり返っていた。
それらの違和感の正体は、ポコさんの顔を見て直ぐ分かった。
事も在ろうに、ポコさんは白塗りの顔に赤い血を目や口から出してるペイントをして、髪の毛を白髪にしていたのだ。
ポーポーコンコンの音を鳴らしながら見開かれた目は血走っていた。
しかし、それも演出の一つなんだろうという思いから、私や友人もみんなの和に入り、座って演目の開始を待った。
それから数分後、その日用意されたのは紙芝居だった。
いつも通りの明るい声で
「さーて、始まるよー。今日の紙芝居はー」
と捲った瞬間、子供達は悲鳴をあげた。
『最愛(さいあい)の死(し)』とタイトルされた赤い手書きの文字。
そして正真正銘の死体の写真(グロでは無く死装束で棺おけに入ってるもの)が紙芝居には掲げられていた。
子供達のあまりの悲鳴に大人が何人か来て、その写真を見つけ、
「おいおい、ポコさん、これはあまりにもひどいよ・・・。」
と言うのを無視してポコさんは話を進める。
さらに捲られた一枚には血まみれの死体(グロ写真)が。
流石に子供達は散散と逃げまわり、2人の大人がポコさんを止めにかかったが、
「お、おーまーえーか!!!」
と大声をあげながら、持っていた太鼓の鉢や笛で叩いて錯乱状態。
取り押さえられて、連絡を受けた警察に連れていかれた。
どうやら、紙芝居の中身は大人が吐く位のものだったらしく、片付けを手伝ったママさんの一人がもどし、伝播したおじさんの一人も吐いた。
あとで聞いた話では、ポコさんの身内で不幸があったとの事だった。
町内の噂では、ポコさんの目の前で起きた轢き逃げ事故だったらしい。
犯人は捕まったものの、やりきれない思いから『壊れた』のだろうとの事だった。
この話には続きがある。
ある朝の5時ごろに、ポーポーコンコンという音を聞いた。
8時ごろ学校に行く為に外へ出たら、公園の方向が騒がしく、向かうとビニールシートで囲まれていた。
いつもの格好のまま、ポコさんは自殺したらしい。
それからというもの、誰もいない公園から笛と太鼓の音が聞こえたとか、朝、家の前の道を誰かがポーコン鳴らしながら歩いてたという噂が後を絶たない。
私も何度か体験しているが、それは何だか悲しい音色でした。
ポコさん、そんだけ奥さん愛してたんだろうね。
でも、やりすぎです。
トラウマになってピエロを見るとそれを思い出すし、子供を巻き込んじゃだめだよ。