友人が大学生の時、当時付き合ってた男性が母子家庭だったそうです。
その割に、元々裕福な家系らしく高級マンション。
しかも大学から近かったので格好の遊び場になっていた。
友人もしょっちゅう遊びに行き、時には泊まる事も。
とはいえ実家だし一応遠慮はするものの、彼の「大丈夫大丈夫」の一点張りに負け(お互い浮かれていたのもあり) そんな日々がズルズル3ヶ月程続いた。
問題は彼のお母さん。
結構若いが特に働くでもなく、いつもほぼ在宅。
それはいいのだが、本当にこんな人いるのかというぐらいひねくれた性格なのだという。
息子の男友達には騒ごうが泊まろうが愛想をふりまくが、同性相手には冷たい。
まして彼女である友人にはあからさま。
打ち解ける気皆無。
まぁしょっちゅうお邪魔すれば、そりゃ誰でも不愉快になるよなーと思い、これからは彼が何と言おうが控えようと決意し、いつもすみませんと菓子折りを差し出した。
ところが、バカにしたように鼻で笑い「そういうわざとらしいのいいからw」と突き返された。
わざとらしい!?
意味不な上、四十路の大の大人がそんな言い草ないんじゃないか?と友人は憤慨し、今まで通り、彼の言う事にだけ従えばいいやと開き直ってしまった。
ちなみに母側は息子に溺愛(一人っ子だし余計)だったらしいが、幸いにも彼はマザコンではなかった。
寧ろ、そんな母親を若干鬱陶しがってたとか。
いつもあんなんだから気にすんな、みたいな。
ところがある週末、泊まって彼の部屋で寝ていたら、友人はトイレで目が覚めた。
携帯を見るとAM4:34頃。
変な時間に起きたなー、と爆睡中の彼を尻目にトイレへ行き用を足す。
部屋へ戻ろうと廊下を歩いてると違和感に気付く。
先程部屋を出てトイレへ向かった時は視界がほぼ真っ暗だった。
だが、今はリビングから漏れている電気のオレンジ色で薄ら明るい。
おばさんが起きたのかな…?
と一瞬ドキっとして、すぐ部屋へ引っ込もうとドアノブに手を掛けた。
「ピーちゃん!ピーちゃん!」
心臓が止まるかと思ったと。
暗闇に突如響いた異質な声が気になり、そっとリビングを覗き込む。
声の正体は九官鳥だった。
ピーちゃんであろう、その九官鳥が入った鳥篭はテレビボードの横の棚に置かれていた。
リビングにおばさんはいない。
今までリビングにこの鳥篭が置かれているのを一度も見た事がなく、しかしそういえば彼が以前、母親が部屋で鳥を飼っていると一言呟いていたのをその時思い出したそう。
どうでもいいと記憶から抹殺してたらしいが、誰もいないのでつい鳥の前まで行きマジマジと観察する。
くちばしで篭を突いたり、鳴き声ともつかない声を出したりしている。
そして時折「ピーチャン、イイコネ オリコウサンネ」とか喋るのだという。
友人は思わずスゲー…と漏らしてしまう程、素直に感心したという。
よく仕込んであるなーと。
しかし次の瞬間
「マユミシネ。マユミシネ。マユミシネ。マユミシネ。マユミシネ。」
マユミは友人の名前である。
友人は目を見開き戦慄した。
すると後ろから笑い混じりの大きな咳払いが一つ。
驚いて振り返ると、そこはおばさんの部屋。
ドアは閉まっている。
しかし今の咳払いから考えると、おばさんはドアにベッタリ張り付いて明らかに聞き耳を立てていた。(もしかして覗かれていたかも?)
その咳払いは、それこそいかにも『わざとらしい』不自然な咳払いだったそう。
友人はすぐさまダッシュし、荷物を持ち一目散に逃げた。
始発までコンビニだかで時間を潰して、ショックのあまり頭は真っ白だったがメールで彼に別れを告げた。
当然暫らく揉めたし、未練があって大泣きもしたが、もうそんな事どうでもいいぐらい別れてよかったと言ってた。
この先、あの母親がいる限りうまくいく筈がないと確信して。
何が怖いって、友人がトイレ行ってる間にわざわざリビングの明かりつけて、仕込んだ暴言聞かす為に鳥置いたのかな?と思うと…
あと全国のマユミさんすみません、お気を悪くなさらずに。