「 月別アーカイブ:2014年02月 」 一覧
-
-
放課後のプール
小学校の頃の話。
俺はクラブ活動である理科クラブを終え、友人達と一緒に帰ろうと、体育館にいる卓球クラブの友人の元へ行った。
俺達はいつも4人で帰っており、うち3人が理科クラブ1人が卓球クラブだった。
体育館に行くと卓球クラブは片付けをしていて、友人も片付けの手伝いをしていた。
「もうちょっと時間がかかるから待ってて」と言われたので待っていることにした。
俺達は暇なので、体育館の上(2階?)にコッソリ上って遊んでいた。
ふと隣接しているプールを見ると、誰かが泳いでいるのが見えた。
多分、身長から考えて高学年の女子かと思う人が、頑張って泳いでいて、手を振ってみたら気づいたらしく、こっちに返してくれた。
そして、また頑張って泳ぎ始めた。
その後、友人の片づけが終わり、体育館を閉め帰ることになった。
また別の日もそのまた別の日も、この前と同じように彼女は泳いでいた。
小学校最後の1学期も終わりに近づき、夏休みに入ろうとしていた時だった。
卒業アルバム用に、クラブ活動の写真を各クラブが撮っていた。
俺の理科クラブが最後に写真を撮ったらしく、できあがっている他のクラブの写真を見せてもらっていた。
「お、○○じゃん」とか、「こんな部もあったな」とみんなで見ていた。
そこには水泳クラブなど無かった。
そして、俺はその時に気が付いた。
卓球クラブが終わると、カギを持っている卓球クラブの生徒により体育館は閉められる。
プールの出入り口は体育館にしか無く、更衣室も体育館内にあるのだった。
そのことに気付いたが恐怖心は無く、むしろ好奇心の方が強かった。
下校時刻の6時前くらいに、体育館でプールを見てみようと思った。
そこに答えがあるはずだと、子供なりの探求心とかあったんだと思う。
例のごとく彼女は泳いでいた。
そして、6時の下校時刻になってもずっと泳いでいた。
俺が「閉めるよ」と、卓球クラブのヤツからカギを預かってるため、閉められないが、そろそろ閉めなければ俺が怒られると思い、迷った末に帰る事にした。
最後に霊と思わしき彼女を見ようとプールに視線を送ると、彼女は背中を向けて浮いていた。
やばい!溺れたのか!?と思い、慌ててプールへの出入り口を開けた。
霊とか人間とか関係無く、溺れてるのを見てほっとけなかったのか、俺は必死だった。
プールを見ると、彼女は変わらず現実味の無い光景を見せ付けていた。
どうにかしないとと思って、火災報知機のボタンを押した。
その間に彼女の体はどんどん沈んでいく。
職員室から先生が駆けつけて来て、俺は「プールで誰かが溺れている」と言った。
すると「プールなんて使われてないんだ、誰かが泳いでるはずないだろ」と、当たり前の事を言われた。
念のためプールを棒などで探ってもらったりしたが、何も見つからなかった。
もし俺が先生に頼らず、沈んでいった彼女を必死で助けたらどうなっていたのか。
彼女を助けられたのか、それともどこかに引きずられたのか・・・。
そんな不思議な夏の出来事。
-
-
法律
『法と怪異の接点』という観点でひとつ。
先日、親戚の葬式があった。
そこで、検事をやってる叔父と久しぶりに会った。
通夜の席で叔父と2人で酒を飲んでいると、自然と話題は叔父が関わった事件の話になる。
叔父がしたのはこんな話。
広島のある個人経営の商店の店主が、夜半にふと目を醒ますと物音がする。
廊下に出てみると、全身黒づくめで小面の能面をかぶった『何か』にでくわす。
驚いた店主は、廊下に立ててあったゴルフクラブを手に取り、その能面をめった打ちにし、その『何か』を階段から突き落とした。
その『何か』の正体は能面をかぶった空き巣で、殴打による頭蓋骨陥没骨折、そして階段から転げ落ちたときに頚椎を折って死亡した。
店主は、不法侵入に対する正当防衛が認められ無罪。
店主いわく
「悪霊かと思った」
僕はその話を聞いて、ふうっとため息をついた。
「丸腰の相手を凶器を持って一方的に殺害しても、正当防衛で通るものなの?」
「場合によるが、通る」
叔父がうなずく。
で、このあとの叔父の言葉に、俺は少し震えた。
「そもそも、不法侵入に対する正当防衛は、法的に幽霊や化物の存在を、暗黙のうちに前提にしている」