平日冬、シーズンオフのキャンプ場を貸し切りにした。
霧雨の海辺、松林の切れ目にテントを張った。
中に座って前室で夕飯を炊いてると、後ろで、かしょかしょかしょかしょ…と音がする。
床とグランドシートの間あたり。
鼠かね、と思って物を投げると鳴り止む。
それでも、10分するとまたかしょかしょ…その繰り返し。
この警戒心の無さは鼠じゃねえな、とビビり出した。
酒飲んで気分が乗ったタイミングで来るのでタチが悪い。
夜も更けて角瓶が空く頃にやっと閃いた。
そういえば、近くでアカテガニがいたな、大きさといい間違いない。
アルコールも手伝って、絶対捕まえてやろう、って思ったわけ。
鳴った瞬間に床のシート越しに掴もうと。
かしょかしょかしょ、掴んだ。
完全に「子供の手」だったわ。
薄いシート越しに妙に暖かいの。
スッと引込んでったけどね。