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お祓いのバイト

えーと、自己紹介から始めると、30代前半の未来に絶望している派遣社員です。

東京にずっと住んでます。

独身で、両親は死んで大分経ちます。。

妹と弟がいますが、もう既に離れて暮らしてます。

奇妙なのか分からないですが、僕の知り合いにお祓いの仕事をしている人がいる。

知り合いというか、最寄り駅の近くの立ち飲みで出会ったおばさん。

それが今から数えて7年前ぐらいかなと思う。

引越したての頃で、仕事帰りに一緒に飲む友達がいなくて、気軽に入れそうな立ち飲み屋で飲むようになったのがきっかけ。

で、そのおばさん、俺を見るなり、

「ギャーッ」

って叫び始めた。

実を言うと、結構慣れっこで、よく知らない人から叫ばれます。

叫ぶならいいんだけど、

「あの人、怖いんです。捕まえてください。」

って通報されたこともあった。

なんで、『またかよ…』みたいな気持ちで無視してた。

けど、そのおばさんは今までの人と違って話しかけてきた。

「どこからきた?」

「仕事はなにしてる?」

「両親はなにしている?」

なんて、まるで尋問のように矢継ぎ早に質問された。

まぁ、こんなおばさんの友達も良いかと思って質問に答えていた。

それからしばらくして、そのおばさんが、

「今度、あたしの店に来い!」

って言いながら、お店のカード?みたいなものを渡された。

まぁ、興味ないし、凄い上から目線で話されてムカツイていたから、直ぐ様、そのカードは捨てた。

ところが後日。

その立ち飲み屋でまた会ってしまい、その時は無理やり店に連れてかれた。

というのも、おばさん以外に痩せたおじさんと若い女がいて、ちょっと逃げれなかった。

ちなみにおばさんは『トキコさん』、若い女は『ケイちゃん』、おじさんは『ヤスオさん』て言う。

『絶対、宗教の勧誘だよなぁ…』そう思いながら、その3人の後ろに付いていった。

店に行くまで誰も喋らないもんだから、ケイちゃんに話しかけてみたら、

「ヒィぃいー。」

とか言って、会話ができなかった。

それからヤスオさんに、

「ごめんな、君が怖いんだ。」

なんて言われたから、なんか凄い悲しかったの覚えている。

で、店に着いた訳だが、だたの占いの館だった。

宗教の勧誘じゃなさそうだなと思い、占いでもしてくれんのかなと期待していた。

で、店に着くなりトキコさんが、

「あんた、私たちと仕事しないか?」

って言われた。

「はぁ?」

と言いながら聞いていたら、なんでもその3人はお祓いを仕事にしているらしく、僕に、ついてきて欲しいと言われた。

その当時は一応、ある会社の社員だったので、

「仕事あるんで、無理ですよ。」

と断った。

でも、そのおばさんは引き下がらず、

「土日のバイトだと思ってやってくれないか?」

と頼まれた。

まぁ幽霊とか神様とかまるで信じないので、まぁいいかなぐらいでOKした。

早速、次の週末にお呼びがかかり、○○区のある一軒家に連れてかれた。

家からそう遠くは無いので、自転車で待ち合わせ場所に行ったら、

「徒歩で来い、アホ」

と怒られた。

渋々、近くに自転車を止めて、その一軒家に入っていった。

入った途端、トキコさんと連れのケイちゃん(おじさんは都合が悪くて来なかった。)が、

「あぁ、いますね、いますね。」

とか言い始めて、しかめっ面になった。

ただ、僕には何がいるかも分からなかった。

普通の一軒家だと思った。

居間には中年夫婦がいて、僕らにお茶やらお菓子を出してくれた。

笑ってたけど、かなり引き攣ってたの覚えている。

しばらくすると、トキコさんが、

「早速、始めましょう。その部屋に案内してください。」

と言って立ち上がった。

何が始まるのか、よく分からないまま、二階に案内された。

階段上がると左右に二部屋あって、その右側の部屋の扉の前で止まった。

扉にはアルファベットで『TAKAO』って書いてあった。

「ここです。」

そう中年夫婦に言われた。

トキコさんとケイちゃんは、背負っていたリュックサックの中から塩を出して、ペットボトルの水を振りかけ、両手にまぶした。

何が始まるんだろう?とか思いながら、俺も両手に塩まぶした方が良いのか聞いてみると、

「お前には必要ない。ただ言われた通りにしろ。」

と言われた。

中年夫婦には何があっても、絶対に取り乱すなと注意をしたトキコさんは、扉を開け中に入った。

僕も後ろに続こうとした時、中から黒い影がトキコさんに覆いかぶさってきた。

TAKAOという中学生ぐらいの少年だったが、異様に眼がギラギラして歯をむき出しにして、

「ガジャガジャ、ガジャー!」

みたいな事、叫んでた。

トキコさんの首に噛み付こうとしていたので、流石に僕もこりゃイカンと思い、少年を引き剥がそうと彼に近寄った。

TAKAOくんは僕の顔を見るなり震え始め、ベッドの隅っこに逃げて身を丸めた。

「体のどこでもいいから、引っ叩け!」

トキコさんにそう怒鳴られた。

なので、悪いなぁとは思いながら、丸まってる背中を引っ叩いた。

そんなに強く叩いた覚えは無かったが、

「うぎゃー!」

とか言って、TAKAOくんは泡吹いて倒れた。

倒れているTAKAOくんを介抱しようと両親が近寄る。

『そんな強く叩いてないよな』とか思いながら横目で、トキコさんを見ていると、

「これでお祓いは終りました、もう大丈夫。」

そう言った。

たしかそう言ったと思う。

それから、TAKAO君をベッドに寝かして、中年夫婦にお礼を言われながら帰った。

なんでもTAKAO君が大人しく寝たのは、半年振りだったそうだ。

ちなみにTAKAOくんの部屋は物凄い事になっていた。

物は多分危ないから片付けたのだと思うけど、壁という壁に切り傷や穴があった。

帰り道、あまりに意味がわからなかったので、トキコさんに、

「意味がわかりません。」

と素直に言って、色々聞いてみた。

可哀想に、一緒に来ていたケイちゃんは帰り道の途中でゲロを吐いていた。

「あんたは相当なモノをもってるね。」

トキコさんにそう言われた。

初めはちんちんの事かと思ったが、そうではないらしい。

どうやら、言い方は宗教やお祓いの流派によって変わるらしいが、『守護霊』や『気』なんて言われてるものらしい。

そんなに凄いのかと思って、

「そんなに良いんですか?」

と尋ね返すと、

「いや、逆だ。最悪なんだよ、あんたの持ってるもの。」

そう言われた。

最悪じゃダメじゃないか、と思ってたので、

「最悪って、それじゃ駄目じゃないですか。」

と言うと、

「普通はな。だけどお前は普通じゃない。なんでそれで生きてられるのかおかしい。」

トキコさんに言わせると、俺のもってる『モノ』ってのが、相当ひどいらしい。

実はケイちゃんがゲロを吐いたのも、俺がTAKAO君を叩いたときに祟られたらしい。

まぁ色々聞きたかったのだが、あまりにケイちゃんが気分が悪くなってしまったので、トキコさんとケイちゃんは先にタクシーで帰った。

僕は止めておいた自転車で帰った。

トキコさんのお店でなんと10万円ももらえた。

本当はいくらもらってんだろう?そう思ったけど、中学生の背中引っ叩いて10万円ならいいや、と思って喜んでた。

実を言うと、それから少しして僕は留学した。

その当時の仕事よりも、やりたい事があったのが理由だ。

まぁ結局3年前に戻ってきたものの、仕事がなくキャリアも無く、派遣をやりながら生活している。

3年前に帰国した後に、トキコさんに会った時に言われたのが、

「あんたのそれ、かなり逞しくなってるよ。」

そう言われニヤっと笑われた。

なんでも僕の『モノ』は異国の地でセイリョク(精力、生力?どちらかわかりません。)を養ったらしく、以前よりパワーアップしているらしい。

一応、真面目に勉強してただけなんですけどね。

それから3年、お祓いのバイトをしている。

ただ、トキコさんやケイちゃん、ヤスオさんは、いわゆる霊感的なものがあるらしく、色々見えるらしい。

ところが僕は本当に何も見えない。

なので、今でも引っ叩いたり、話しかけたりするだけである。

残念なのは、今でもケイちゃんは仕事が終わるとゲロを吐く。

僕のせいなので、いつも申し訳ない気持ちで一杯になる。

で、明日も実は一個仕事が入り、終わったら風俗行こうと考えてます。

あ、ちなみにドMです。

【 極秘裏ワザ 】

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