俺がK津園で経験した話。
K津好きなら誰でも知ってる高給店。
俺なんかだと、本当に偶にしか行けないような店なんだが、そこに新人が入ってネットで結構評判良かったから行ってみた。
評判通り可愛い娘で、とても礼儀正しい。
した後に、煙草を吸おうと自分のセカンドバックに手を伸ばすと、
「煙草持ってないんでしょ?ハイライトなら買い置きがあるよ」
と姫が。
そんなはずは無い。
朝、新品を開けて、まだ5~6本しか吸ってないはず。
でも、いくら探しても見つからない。
それより、何で俺がハイライトを吸ってることを知ってるんだ?
「さっきノワール(喫茶店:仮名)でコーヒー飲んだとき、忘れて来たんでしょ。はい、どうぞ」
そう言って新品のハイライトを開け、火をつけて俺に渡した。
「ねえ、何でそんなことがわかるの?ひょっとして、さっきノワールにいたの?」
「ううん(笑)貴方がコーヒー飲んでた頃は、出勤途中でタクシーの中だったよ。」
「え?え?え?」
「うふふ」
少し気味が悪いなと思ったけど、姫が余りにもあどけなく可愛いので、取り敢えず俺も笑って、
「へえ、凄いなぁ」
などと言って、その場ではそれ以上追求しなかった。
それからしばらくして、
「もうすぐ○○さんに、いいことがあるよ」
と姫が。
程なくして俺の携帯にメールが、
「やりましたね、3000円付きましたよ。俺も○○さんに乗ったんで一気に取り返しました」
中京競馬場に行ってた同僚からだった。
メインレースだけ頼んで買ってもらった馬券が当たったのだ。
「ねっ(笑)」
背筋が一気に寒くなった。
「ね、ねえ、な、なんで?」
「内緒っ」
「ちょっと~、マジ怖いんだけど」
「どーしよっかな、私の話聞いても引かないでね、お客さん良い人だから教えてあげるわ。実は私、2回目の今日なの」
「はぁ???」
「私、死んだの」
「そして生き返ったの」
「私、今日の夜、帰り道で車に跳ねられて死ぬの」
おいおい、この娘は何を言ってるんだ?・・・
薬とかなのか?
「そうしたらね、凄く広いお花畑にいるの。でもお花は白黒なの。私はどうしたらいいのかわからずウロウロしていると、一箇所凄く明るくなってる場所があって、そっちに近づこうとしたの。」
「でも、何だかそこに行っちゃいけないような気がして、やっぱり引き返したの。」
「でも、その明るい場所は、どんどん大きくなって私を飲み込もうとしてね。私、走って逃げて、頑張って走って、そうしたらなんか落とし穴みたいのに落ちたの」
『お客さん、よく眠ってましたね、付きましたよ』
「わたし、マンションからいつもタクシーでお店に来るのね。朝弱いから寝ちゃうこと多いんだけど、運転手さんに起こされて、あれ?夢だったのかな?でも凄いリアルだったなと思ったんだけど、お店始まっちゃうから、急いで控え室に行って準備したの。」
「それで最初のお客さんで貴方が入ってきたのよ。私にとっての昨日と同じ貴方が。」
全身鳥肌が立ち、震えている俺の手を姫は握ってくれた。
「でも、私、今回が初めてじゃないの。子供の頃、まだ保育園に入る前なんだけど、同じような経験があるの。」
そこまで姫が話した所で、タイマーが鳴った。
「あ、時間だね、シャワーは石鹸無しの方がいいんだよね。奥さん臭いに敏感だから(笑)」
もう何が何だかわからなくなって、俺も笑うしか無い。
顔は思いっきり引き攣ってたが。
最後に、
「また来てね」
と言い、Dキスした姫の舌は、何だか冷たい感じがした。
「え、でも今日の帰りに・・・車に・・・」
「今日は、ココの近くのホテルに泊まることにするから、きっと大丈夫だよ」
それからしばらくの間、毎日ネットで彼女のシフトをチェックした。
時々、予約する振りをして、電話で在籍の確認もした。
「お客さん。あの娘人気あるんで、すぐ予約埋まってしまうんですよ」
元気に働いてるようで安心した。
俺が行ってから3週間程で、理由はわからないが彼女は退店した。
もう何年も前の話。
何だか誰にも話しちゃいけない気がしたから、ずっと俺の心の中にしまっておいた話。