小学生の時、夕方ランドセルを忘れたので学校に取りに戻ったら、廊下の突き当たりの戸のガラスの部分に、自分が映ってなかった。
廊下のかわりに、小さい部屋と男の子が映っていた。
その男の子は、顔だけは隣のクラスのタムラ君だったけど、絶対違う。
野球帽も違ったし、体型も違ったし、何より目つきが違う。
体育座りで膝と帽子の隙間から、もの凄く暗い目でジーッと見ている。
すっとんで逃げた。
幻覚だったかもしれない。
なので小学生以来、ガラスが怖い。
それから去年、バイト先の大きい棚のガラスに、女の人の目だけが映っていて目が合った。
自分の目じゃなかった。
もっとちゃんと化粧した、大きくてきれいな無表情な目だった。
ドキッとした。
その2時間後、営業で来た人が、
「すぐそこの交差点で死亡事故があって酷い渋滞ですよ」
と話してた。
死んだのは老人だった。
でも死亡時刻が、私が女の目を見た時間と同じ10時半だった。
数ヵ月後、バイトの子が、
「この店に霊がいる気がする」
と言い出した。
まさかと思って聞くと、やはり若い女で、棚の中に居るらしい。
(建物ができる前から居て、居場所に棚を置いた為に重なっているらしい)
だからあの目は映ってたんじゃなく、中から覗いてたのかもしれない。