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山の祭り

何処かわかってしまいそうなので、方言などは省かせていただきます。

子供の頃の話です。

私が住んでいた山奥の村では、年に一度、奇妙な祭りがありました。

松明を持って、村の大人(男の人達)が山に入っていくだけの祭りです。

この祭りの日は、子供は外に出てはいけないことになっていました。

一度外に出ようとして、すごく怒られたのを覚えています。

ばあちゃん曰く、

「知らんでいい」

だそうです。

私には、B君という幼馴染が居ました。(私をAとしておきます)

B君とは、よく親と一緒に川に行って泳いだり、近所の山にいって野苺とかを食べたりして遊んでいました。

B君はとてもやんちゃな子でした。

いつも危ない所や、行ってはいけないと言われている所に行こうとするので、私はいつも

「あそこは行っちゃダメだって言われてるから、怒られる」

と言って止めていました。

実際、山や川は都会のように整備されておらず、マムシが出てくることも多かったので、大人の言っていたことは正しかったのだと思います。

あそこの山はマムシがよく出る、崖が多い、あそこの川は昔子供が溺れた、流れが速い・・・等々、どれもちゃんとした理由があるものばかりでした。

しかし、一つだけはっきりとした理由を教えてもらえないまま、行ってはいけないとされている場所がありました。

それが祭りのときに大人が入っていく山でした。

あえて理由を探すなら、ばあちゃんの忠告くらいでしょうか。

ある日、B君が綺麗な水晶のたくさん付いた石を見せてくれました。

どこで取ってきたのかと聞くと、

「あの山で採ってきた」

と言い、また明日にでもその場所に行くから、Aちゃん(私)も付いてくるといいよと言ったのです。

大人たちからはハッキリとした理由を聞かされずに行ってはいけないとされている山だったことと、何より綺麗な水晶を羨ましく思った私は、嬉々としてその言葉に頷き、次の日に山へ行くことを約束しました。

翌日、大人たちにバレないように、野苺を食べに行くとかそんな理由で家を出ると、水晶の採れる場所までコソコソと向かいました。

山に入ってからしばらくすると、目的の場所に着きました。

雨で崩れ、山肌が露出した場所です。

私たちは手を傷だらけにしながらも、綺麗な水晶をたくさん見つけていきます。

そして、だんだん何処に大きな水晶があるかわかってきました。

それに従うように、どんどんと場所を移動していると、森の奥に少し開けた場所を見つけました。

ちょうど、お腹のすいていた私は野苺でもあるだろうと、B君を誘ってその場所へと足を向けました。

鬱蒼と茂る森の奥に、それはありました。

少し苔むした祠のような物で、周りに岩を幾つも置いている、そこだけ特別だと一目でわかる場所です。

そして、これがあの祭りに関係している物だということもすぐにわかりました。

「これって祭りの・・・」

「そうだと思う」

何の祭りか聞かされていなかった私達は、その祠に興味津々でした。

「ここって開けられそう」

「開けたら怒られると思う」

そう言って私が止める間も無く

「何が入ってるんだろう?」

そう言って、B君は祠を開けてしまいました。

中には、白や茶色の石のようなものがたくさんありました。

後になって知るのですが、それは子供の歯でした。

「何?これ。気持ち悪い」

「もう帰ろう?怒られるよ・・・」

私が帰りたいと言っても、B君は

「もっと調べるから」

と言って、祠の周りを漁りだしました。

その時、急に寒気を感じました。

肌を刺すような痛みと、呼吸ができない程の息苦しさ。

いつの間にか、周りから聞こえていた蝉の声が聞こえなくなっています。

「・・・ダ・・・オッタ・・・」

そんな声が聞こえたので慌ててB君を見ると、B君は気味の悪い満面の笑みで

「???コノ??????モウ???(憶えてません。何かの唄かも)」

と言うと、森の奥へと走り去っていきました。

途端に怖くなった私は、泣きながら急いで山を駆け下りました。

そして、山から出ると、運良く近所のおっちゃんに見つかりました。

山から出てきた私を見つけるなりオッチャンは

「なんで山に入った!?」

と怒鳴りつけてきました。

「祠でB君がどこか行った」

と、私がしどろもどろ伝えるなり、おっちゃんは真っ青になりながら

「・・・お前はオッチャンと一緒に家に帰ろう。Bはすぐに皆で探す。絶対に一人でいるな。家に帰ってからもだぞ!」

そう言うと、おぶって家に連れて行ってくれました。

家に着くと、オッチャンはすぐにBの家、そして近所へと知らせに行きました。

私はなんとか両親と祖父母に先程の出来事を伝えると、父はすぐに山へと向かい、母は泣き出してしまいました。

「Aは何を見た!?」

とばあちゃんが聞くのですが、私はもう母の動揺ぶりを見て泣き止まない状態。

それを見かねたじいちゃんは、家の奥からペンチを持ってきて、いきなり私の歯を抜きました。

もう私は訳がわからず泣き喚くばかり。

「もうAは大丈夫」

とだけ言い、じいちゃんはそれを持って家の外へ出て行きました。

もう空は赤く染まり始めていましたが、村じゅうの大人達がB君を探しにあの山へ向かいました。

ようやく泣き止んだ私は、ばあちゃんと母にすがるように家の前でB君の帰りを待ちました。

何時間たったかわかりません。

もう日が沈んで随分経った頃、道の奥が騒がしくなりました。

B君が見つかったのです。

それがわかるとすぐ、ばあちゃんと母は嫌がる私を家へと押し込もうとしました。

家に押し込まれる間際、私はB君を見ました。

大人たちに引きずられるB君は、縄で手足を縛られて全身血まみれでした。

しかも、それはB君自身がつけた傷で、B君は自分の体を食べようとしていたのです。

B君の母は泣き喚いて、B君の父は呆けたようにしてB君を見ていました。

B君は手当てをされた後、お寺に連れていかれたそうです。

その後、私は両親と一緒に違う土地へ引っ越しました。

B君がどうなったのか、知りたくないというのが本音です。

もう私は村へ帰ることはできなくなりましたし、あれ以来、山が怖くなってしまいました。

後日談として、つい最近、祭りとあの山について教えてもらえました。

以下、父の話を思い出しながら書きます。

あの山には昔、人食いの化け物(?)がいたそうです。

村にたびたび下りてきては子供を攫っていき、山で食べていたらしいのです。

それをどうにかしたいと思った村人達は、旅の偉いお坊さんに化け物を殺してもらうことにしました。

そしてお坊さんと村人達は、なんとか化け物を殺します。

しかし、お坊さんは

「これはまだ自分が死んだとわかっていない。だから本当の意味で死んでいない。これからもこれを殺していかなくてはならない。それでもし死なないなら、それでも子供を救う手はある」

と、その方法を教えたそうです。

子供を救う手というのは、じいちゃんがやった歯を使うやり方だそうです。

アレは骨や歯を食べなかったそうで、その食べない部分を見せることで、

「お前はもうこの子を食べた」

と思わせていたようです。

普通は、自然に抜けた乳歯をあの祠に持って行くんだそうです。(そういえば、抜けた乳歯はばあちゃんに取り上げられていました)

私はアレに姿を見られていたので、もう一度歯を抜かれ、そしてもう一度見られない為に村を離れることになったというわけです。

そして、あの祭りはアレを殺した時の再現なんだそうです。

しかし、殺すというより封じると言ったほうが良いかもしれません。

B君の件で、若い村人達(といっても全然若くない)もアレの存在が伝承ではないと知ったようです。

なにより、まだ人を食おうとしているのですから。

本当なら、この話は乳歯が全て永久歯に生え替わった時点で聞かされる話だったようです。

知らない方が山に関わるまいとのことらしいですが・・・

私は土地の人間ではないことになっていたので、最近になってやって聞けました。

そして話の中で、父から村の過疎化を聞かされました。

もしかしたら、近い内に廃村になるかもしれない、とも。

もし誰もアレを殺す人が居なくなったら、アレはまた人を食おうとするのでしょうか?

止めてはならない祭りというのもあるのだと、そう思いました。

【ブレイク】

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