「 月別アーカイブ:2013年08月 」 一覧
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旧家の言い伝え
俺の実家は海沿いの田舎町。
メチャ綺麗な海が有名なんだけど、色々とイワクがあるんだよね・・・
幼馴染のKの実家は代々続く名家なんだけど『そこの家の嫡男は、15才の誕生日に海に近づくと命を落とす』って言い伝えがあったんだ。
死ぬって言うのは、海神(地元の言い伝えでは美しい女)が死んでしまった自分の子供を生き返らせようと、選ばれた家の嫡男の魂をもって行くって話しなんだけど、俺もKも眉唾だと全然信じてなかったんだよね。
誕生日当日、Kは学校を休んだ。
俺は昼休に学校を抜け出して、様子を見に行った。
Kの家に着いて呼び鈴を押すと、Kの母親が出てきた。
話を聞くと、今日は大事をとって家の座敷に缶詰状態らしい。
Kに会いたいと伝えると、
「今日で最後かも知れないから・・・」
と、家に上げてくれた。
俺はそんな与太話本気で信じてるのかと思ったが、町中その噂で持ちきりだったので、ナーバスになるのも仕方ないかと、座敷に向かった。
座敷の前にはKのオヤジと爺さんが、ふすまの前に厳しい表情で座り込んでいた。
俺に気づいた二人に軽く挨拶をし、Kに会いたいと伝えると座敷に通してくれた。
ふすまを開けると、缶ビール片手にくわえタバコのKが、ダビスタに夢中だった。
本人は全く緊張感が無く、何故かホッとした。
Kが俺に気づき「オウ」と、いつもの様に挨拶を交わした。
しばらくは下らない話をしていたのだが、Kが急に
「なぁ今日本当に俺が死んだらどうするよ?」
と聞いてきた。
一瞬返答に困ったが、
「俺が死に際見取ってやるよ」
と冗談ぽく言った。
Kの話では、Kのオヤジさんも爺さんも嫡男で、15の誕生日には同じように座敷に缶詰だったらしい。
2人とも全くその日の記憶が抜けていて、何も憶えていないとの事だった。
俺は今日一日Kと一緒に過ごすと決め、食料とタバコの買出しにコンビニへ向かった。
コンビニから戻ると、何やら座敷の方が慌ただしい様子だった。
何やらエライ坊さんが来て、結界だの魔除けだの準備をしていた。
Kはと言うと、酒を頭からかけられ灰をかけられ、物凄い状態になっていた。
Kが体を洗って帰って来ると、2人でお札がビッチリと貼られた座敷へ戻った。
特にやる事が無いのでDVDを観てた。
座敷の前では、近所のオッサンどもが順番で番をしていた。
特に何も起こらず、夜もふけて来た11時過ぎに便所に立って、戻るとふすまが開き、番をしていたオッサン2人が眠りこけていた。
まさかと思い、座敷を覗くとKがいない。
オッサン達をたたき起こし、家の人間にKが居ない事を告げた。
その日Kの家に詰めていた人間全員で、Kの捜索がはじまった。
俺はバイクを飛ばし、すぐに海へ向かった。
海岸線の国道を走っていると、すぐに砂浜に立っているKの姿を見つけた。
俺はすぐ携帯でKの家に連絡を入れ、Kに走り寄った。
「オイ、Kお前何やってんだよ」
と肩をつかむと、物凄い力で振り払われた。
無言で振り返ったKを見ると、白目を剥きヨダレを垂れ流した状態だった。
これはヤバイとKを羽交い絞めにしたのだが、Kは海へと向かう足を止めない。
物凄い力で海へと引きずられてしまった。
何を言っても聞く耳を持たないので、仕方なく後頭部を力一杯ぶん殴った。
4~5発は殴ったのに、こっちのコブシが腫れ上がっただけでビクともしない。
そうこうしてる内に、大人達が集まって来た。
10人以上でKを取り押さえたのだが、引きずられるばかりで止める事ができない。
海水が胸位まで来た時、昼間の偉い坊さんが現れ、お経を唱え始めた。
するとKは、意識を失った様に海に沈んでしまった。
慌ててKを引き上げて浜へ上げた。
坊さんがKの額にお札をはり、お経を読み始めた。
読経は日が昇るまで続けられた。
読経が終わり、坊主がKの背中を叩き、
「アイ!!」
と気合を入れるとKが目を覚ました。
Kは目の前で何が起こっているのか、全く理解できていない様子だった。
「何故俺は海にいるのか?」
「何でお前まで水浸しなのか?」
と、状況を理解しようと必死なようだった。
Kに昨晩起こった事を話すと、
「マジ?」
と唖然としていた。
本当に何も憶えていない様子だった。
それから町ではその話しで持ちきりだったが、すぐに噂は絶えて、誰もその事を口にしなくなった。
Kは今、北海道で牛を飼いながら元気に暮らしている。
来年結婚するそうだ。
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血まみれの手紙
知り合いの旦那が失踪して居なくなった。
原因はよくわからないが、その奥さんが言うには、旦那失踪当日に届いた血まみれの手紙。
その日の朝に新聞を取りに行ったら、ポストに入ってたらしい。
宛名が旦那宛て、直ぐに旦那を叩き起こして見せたら、中身を見る前に真っ青に青ざめて、何を聞いても答えてくれなかったそうです。
警察にも失踪届を出してるけど、まだ見付からない…。
何が怖いかって言ったら、警察の方にもこの事を言ったけど、取り合って貰えなかったと…。
旦那が失踪して10日位たったある日の朝、旦那の両親の位牌(旦那の両親は他界してる)が、縦にまっ二つに折れていた事。
その次の日には、奥さん宛てに例の手紙。
手紙は、直ぐに警察呼んで見て貰おうと思ったら、突然燃えた。
警察も、突然燃えた手紙に驚いていたみたいだが、悪質な悪戯で手紙に燃える様に仕掛けがあったと、無理矢理つじつまを合わせたみたい。
結局、旦那は見付からない。
奥さんは精神的におかしくなり、奥さんの実家のある街の病院に入院だそうです。
その奥さんの友人から聞いた話です。
最近、その友人が激痩せし、連絡つけても体調が悪いからって直ぐに電話を切られるし、
正直自分にも不安になって来た…後から、友人の旦那さんから電話を貰って、激痩せの原因は、肝臓が悪くて激痩せしたと連絡貰ったけど…。
友人の旦那さんも、例の失踪事件の事を凄く気にかけてました。
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海の生物
女房の祖父が昔、貨物船の船乗りで、おもしろい話をいくつか聞いています。
そのひとつ、『肉』というやつを。
その名の通り、肉の塊らしいんですけれども、直径3~5メートルぐらいで、表面に毛がびっしりと生えていることもあれば、象かカバのような皮膚のようなこともある。
顔も何も無く、ただの円形の肉布団のようなこともあれば、顔のようなものがついていて、1メートル近い長い鼻がついていることもある。
ただ波間に漂っていることもあれば、明らかに意思を持って泳いでいたりする。
祖父はパナマやキューバの方で、10回ぐらい見たことがあるそうです。
もうひとつ、『ブヨブヨ』というのも聞きました。
これは半透明のブヨブヨした感じの物体で、空に浮かんでいるそうです。
大きさはコンビニ袋ぐらいのものから、直径2メートルぐらいまで色々。
夜だと、ほんのりと光っていることもあるそうで。
これまた、何をするわけでもないんだそうですが、祖父は一度捕まえようとして触れてみましたが、プヨプヨとした触感だけで、ツルンと逃げられてしまったそうです。
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知らない女の子
俺の親父は教師で、俺は小学校二年まで教員住宅に住んでたんだ。
俺の家の裏は林になっていて、そこに『そこなし沼』って俺らの間で呼ばれてた沼があったんだ。
ほんとはちょっとした水溜りのようなもんだったんだけど、その周りではクワガタがたくさん捕れるんで、よく友達と遊びに行ってた。
ある日の事、いつものように友達とクワガタ捕りに行くと、その沼の奥になにやら白い人影が見える。
白いワンピース着た中学生くらいの女の子。
普段人気のまったくない所だし、道なき道を泥まみれになりながら進まないと来れないような場所だったんで、不信に・・・は思わなかったw
小学生だしね。
「遊ぶ?」
って尋ねると、その女の子は
「ちょっといい所しってるんだ。カエルがいっぱいいて面白いよ」
って言って、俺の手を引っ張って工事現場みたいな所に連れて行かれた。
近くには田んぼがあって、確かにカエルがウヨウヨいた。
その女の子とカエル捕まえたりして遊んでるうちに遅くなったんで、その子と別れて家に帰る事にした。
初めて来た場所とはいえ『そこなし沼』からはそう離れてなかったし、沼までたどり着けば後は勝手知ったる土地。
暗くなり始めてはいたけど、10分もあれば着けるだろと思ってた。
そして沼も通りすぎて我が家が見えてきた。
「ただいまー」
いつものように玄関を開けると、なんだか様子がおかしい。
いつもはまだ帰ってきてないはずの父がいる。
いつもの我が家とは違う変な空気。
「お前・・・何処行ってたの!!!」
突然母に怒鳴られた。
わけがわからない。
「探したんだから!近所中で!」
時計を見てみると、なんと深夜の二時。
外を見て愕然とした。
闇。
とても林の中を歩いてきたとは思えないくらい真っ暗。
さっきまで、ちょっと日が落ちかけたくらいだったのに・・・
結局その後、さんざん怒られて、この事は俺が道に迷ったって事でかたがついた。
あまりに不思議な出来事だったんで、俺と一緒に遊んでた友達にも聞いてみた所、
「昨日お前と遊んでないじゃん」
と言われた。
確かに思い出してみても、友達との記憶は沼までで途切れてるんだよね・・・
そこからは、なぜか俺と女の子との記憶しかない。
沼から帰ってきた時も一人。
最近この話思い出したんで、親にも聞いてみた。
「全然知らなかった・・・気持ちわる・・・あの時さぁビービー泣くと思ってたんだよ。怒った時さ。でもあんた、なんかボーっとしてるんだよね。確かにちょっと気味悪かったよ。それに、あそこ工事現場も田んぼもないよ。ただの山だもん」
俺が深夜遅く一人で帰って来て、様子が変だったって所までは事実っていえるんだけど・・・その他の記憶はいったいなんなんだ。
冷静に考えると、俺は一人で沼に行って、一人で深夜二時頃まで沼で遊んで帰ってきた、って事になるんですよね・・・
ほんとどうしちまったんだ俺?ですよ。
何度思い出しても寒気がします。
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防空頭巾の集団亡霊
三重県津市の海岸には、海の守りの女神の像が立っている。
ここは、昭和三〇年七月二十八日に、市立橋北中学一年生の女子三六人が水死した所だが、当時の生き残りの一人だった梅川弘子さん(二一)は、週刊誌「女性自身」(昭和三八年)に、その時の恐ろしかった手記をサイン、写真入りで寄せている。
いっしょに泳いでいた同級生が、
「弘子ちゃん、あれ見て!」
と、しがみついてきたので、二、三〇メートル沖を見ると、その辺で泳いでいた同級生が、つぎつぎと波間に姿を消していくところだった。
そこで弘子さんは、『水面をひたひたとゆすりながら、黒いかたまりが、こちらに向かって泳いでくる』のを見た。
それは何十人もの女の姿で、ぐっしょり水を吸い込んだ防空頭巾をかぶり、もんぺを履いていた。
逃げようとする弘子さんの足をつかんだ力はものすごく、水中に引きこまれていったが、薄れゆく意識の中でも、足にまとわりついて離れない防空頭巾をかぶった無表情な白い顔を、はっきり見続けていたという。
弘子さんは助け上げられはしたが、肺炎を併発し二十日間も入院した。
「亡霊が来る、亡霊が来る」
と、よくうわごとを言ったという。
『防空頭巾にもんぺ姿の集団亡霊』というのには因縁話があって、津市郊外の高宮の郵便局長・山本剛良氏によると、この海岸には、集団溺死事件の起こったちょうど十年前の、月日も同じ七月二八日に、米軍大編隊の焼打ちで市民二五〇余人が殺されており、火葬しきれない死骸は、この海岸に穴を掘って埋めたという。
山本氏からこの話を聞かされた弘子さんは、手記の名中で、
「ああ、やっぱり私の見たのは幻影でも夢でもなかった。あれは空襲で死んだ人たちの悲しい姿だったんだわ」
と納得している。
なお山本氏が聞いて回ったところによると、この亡霊は、弘子さんを含めて助かった九人のうち五人までが見ているばかりか、その時、浜辺にいた生徒たちの内にも、何人かが見たと語っているそうだと、弘子さんは伝えている。
その後、こうした体験をした弘子さんは、卒業してガソリンスタンドの事務員に就職したが、自分でも積極的に調べてみると、次つぎに怪異な事件が起こっていいることを知ったと、次のような報告を併記している。
○溺死事件の前日、大きな火の玉が浜辺の某家の屋根に落ちたのを釣りをしていた何人もが見たが、その家の娘も弘子さんといっしょに遭難、水死した。
○腰まで海水に浸って釣っていた人が、突然何かに憑かれたように沖へ沖へと歩いていって、そのまま海中に姿を消し、死体も揚がらぬ事件が、四年間も続いている。
○渡辺小三郎という人は幸い救われたが、病院で「亡霊を見た」とうなされ続け、意識不明のまま二〇日後に死去している。
注:この海辺は現在は遊泳禁止になっている。