私が中学生の頃、合唱コンクールっつーのがあった。
なんか、うちの学校では妙に力の入ったイベントらしくて、放課後でも皆残って練習したりしてた。
で、まずは曲を何にするか?っつーのも、教師が勝手に決めるのではなく、生徒達で決めたりもした。
最終的には担任が決定するけど。
で、ある日私たちは音楽室で何を歌うか選んでいた。
たぶん英語担当の教師(以下K先生)が一緒だったと思う。
生徒も私以外に10人くらいいたと思う。
随分昔の話なんで、当時はテープだった。
で、候補曲をテープレコーダーで聞きながら決めるわけだ。
数ある合唱曲の入ったテープを見ていたら、K先生が、
「面白いのがあるぞ」
(っぽいことを言ったと思う)
とか言って、1本のテープを出した。
その合唱曲は『木琴』だった。
で、K先生がレコーダーに入れて再生開始。
最初は普通に曲が始まった。
K先生が、
「ここからがな・・・」
とか言って皆が妙に緊張した。
間奏だったと思う。
急に戦火(WW2だと思う)の悲鳴やら轟音がしだした。
で、間奏が終わり、歌が始まったらそれは止んだ。
その時は、その『木琴』という曲が中学生には難しいだろうという事でコンクールには歌わないことになった。
しかし、なぜか当時の私はそのテープを持ち帰らせて貰った。
ただの好奇心だった。
コンクールが終わった頃、友人たちとテープを聴きなおした。
戦火の部分が、聞いたときよりも長くなって鮮明になっていた。
悲鳴やら『おかあさん』と呼ぶ声や、多分戦闘機の音だと思うけど『ゴォー』という音や火災?のような音もあった。
妙に生々しかった。
好奇心はあったものの怖かったので、そのテープはそのまま返しそびれ、自宅に残したままだった。
今、私は社会人になって実家を出ている。
たぶん、そのテープはまだ実家にあると思う。
怖いので、あれから聞きなおしはしていない。
後になってウィキとかで『木琴』について調べたら怖かった。
『木琴』金井直
妹よ
今夜は雨が降っていて
おまえの木琴が聞けない
おまえはいつも
大事に木琴を抱えて 学校へ通っていたね
暗い家の中でも おまえは木琴と一緒に歌っていたね
そしてよくこう言ったね
早く町に 赤や青や黄色の電灯がつくといいな
あんなにいやがっていた戦争が
おまえと木琴を 焼いてしまった
妹よ
おまえが地上で木琴を鳴らさなくなり
星の中で鳴らし始めてから まもなく
町は明るくなったのだよ
私のほかに 誰も知らないけれど
妹よ
今夜は雨が降っていて
おまえの木琴が聞けない