母から聞いた話。
(若い頃)母は、いつもの仲良しグループ5人で湖にドライブに行く事になったんだって。
その湖はどこにでもあるような普通の湖だったんだけど、いわゆるドライブスポットって言われる所じゃなかった。
地元の人しか知らないような、こじんまりした湖だったのね。
母達はよくドライブしててその湖にも行ってた。
その日も、いつも通りに車を走らせてた。
片道1時間くらいで湖に着いた。
景色を楽しんだり湖畔で談笑したりしているうちに、日がすっかり暮れて夜になった。
5人は帰ることにした。
車を走らせて30分位したら、5人の中のSさんが急に
「ついてきてるよ…」
って言い出したのね。
最初他の4人は「なにが?」って感じだったんだけど、今度はSさんが急に震え出した。
その震え方が尋常じゃなかったんで、母含め他4人は
「大丈夫?!」
とか言って、車の中にあった白いタオルとか自分のパーカーをSにかけてやってた。
そしたらSが
「白はダメ!連れてかれる!」
とかいって、頭を抱えてまたガタガタ震えていた。
母達は何がなんだかわからなかったけど、しばらくしてその異変に気付いた。
車の窓ガラスが誰かに叩かれてるのに気付いた。
低い音で何回も何回も。
でも、車は時速50キロはゆうに越えてたし、叩いてる人なんてもちろん誰もいない。
ただ音だけが響いてたんだって。
5人は悲鳴をあげ、Sと同じように震えた。
ドライバーも気を失いそうだったらしいが、なんとかこの状況から抜け出そうと必死で運転してたらしい。
1つトンネルがあったんだけど、トンネルに入ると叩く音はだんだん小さくなっていった。
そしてトンネルを出るころには音が無くなってた。
5人はなんとか戻ってこれたらしい。
母がゾッとしたのは、この体験だけじゃなかった。
翌日、あの湖から死体が上がった。
後でSに話を聴いてみると、車を叩かれてるとき意識は朦朧としてたんだけど、はっきりと
「おいてかないで」
って聞こえてたらしい。
Sはいわゆる霊感体質で、人よりもこういうことに敏感らしかった。
母が言うには、後にも先にもあれほど恐怖を感じたことはないそうです。
私も話を聞いてゾッとしました。