亡くなった祖父が体験したこと。
戦争前、大学出てそのまま大陸の鉄道会社に就職したそうで、重慶付近だったかどこだったか、とにかく大陸でのこと。
あるとき、祖父の住んでいた町の近くで蝗の大発生が起きた。
当時この地域は、何年かに一度こうした異常発生にみまわれたらしい。
蝗の大群は田畑の作物をことごとく食い尽くしてしまい、食料不足・飢餓も起こったという。
そしていよいよ祖父の住む町にも蝗の大群がやってきた。
家の窓という窓を締めきり、蝗が入ってこないようにして、ただただ通り過ぎるのを待つ。
祖父にできることといえばそれだけ。
ただ窓越しに蝗を見つづけるしかなかった。
蝗の群れの中に祖父は変なものを見つけた。
それは異常に大きな蝗。
蝗の体長なんて知れたもの。
大きくても数センチくらいのものである。
しかし、その蝗は桁ひとつちがった。
子犬くらいの大きさはある巨大な蝗が飛んでいた。
しかも、体の色は燃えるように赤い色だった。
祖父は大きさよりも、むしろこの色で巨大蝗に気がついたという。
祖父は、同僚もその蝗を見たということを後日知る。
しかも同僚は、複数匹が群れて飛行していくのを見たらしい。
祖父と同僚は自分たちの見たものが信じられず、いろいろ調べたが、そんなものが載っている資料は当然なかった。
地元の中国人に聞いたりもした。
同じようなものを大群の中に見たものはいたのだが、それがなにか説明できるものはいなかったそうだ。