「 月別アーカイブ:2013年09月 」 一覧
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屋上へのエレベーター
3年くらい前の夏。
当時勤めていた会社のビルでの出来事です。
会社はビルの7階(たぶん)にあり、エレベーターに乗って帰ろうとエレベーター乗り場に行きました。
夜9時半くらいのことで、周りは非常灯程度の明るさでした。
9階で止まっていたエレベーターが7階に着き、乗ろうとしたその時、中に40代~50代くらいの女の人が乗っていました。
あれ?9階で止まったままだったし、8階で止まった様子もなかったよな?
と思いましたが、疲れていたし早く帰りたかったので、まあいいやと思い、エレベーターに乗り込み、1階のボタンを押しました。
すると、その女性に話しかけられました。
「これって、屋上へは行かないの?」
驚いて彼女を見ると、泣いています。
何でこんな時間に屋上・・・?それに何で9階でずっと止まってたんだ?
と思いましたが、とりあえず
「この時間はたぶん閉鎖されてると思いますよ」
と返事をしました。
するとさらに泣き出しました。
え?まさか自殺志願?なになに、どうしよう困ったな。
と思いつつ、他に何もできず、ひたすら彼女を慰め励ましていました。
こんな年(当時23歳)の、しかも見ず知らずの小娘の言う励ましが、どの程度彼女に届いたかはわかりませんが、彼女はビルの出口までついてきて、泣きながら
「ありがとう、あんたいい子だね。あんたにはきっといいことがあるよ」
と、お礼のようなことを言ってきました。
なんとなく不安だったので、タクシーにのせるか、駅まで一緒についていくかしたかったのですが、彼女に頑なに拒否され、入り口に彼女を置いて帰ることになりました。
翌日、会社の先輩にその話をしたところ、
「私、あなたの帰ったすぐあとに帰ったけど、そんな人見なかった」
と言われました。
まあ、それは彼女が私の帰った直後にそこを去っていれば、当たり前のことなのですが・・・。
でも気になるのは、なぜ9階で止まったままのエレベーターに乗っていたのか。
また、泣いていたのは、屋上に行きたがっていたのはなぜなのか。(やはり自殺・・・?)
そして、彼女は今どこでどうしているのか。
この季節になると思い出します。
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入れ替えろ
数年前、親父が死んだ。
食道静脈瘤破裂で血を吐いて。
最後の数日は血を止めるため、チューブ付きゴム風船を鼻から食道まで通して膨らませていた。
親父は意識が朦朧としていたが、その風船がひどく苦しそうだった。
その親父がかすれた声で、
「鼻を入れ替えろ、鼻の名前を入れ替えろ」
と言った。
名前?
俺や家族は、『チューブを通す鼻の穴を入れ替えろ』という意味だと思ったんだが、『名前』というフレーズの意味が分からない。
結局、「意識も混濁してるようだから、言い間違えくらいあるだろう」という結論になった。
親父はその次の日亡くなった。
慌しく葬式の用意。
その用意中、献花の配置がおかしいことにお袋が気づいた。
遠縁の親戚からの花が真ん中にあって、親父の勤めてた会社社長からの花が端っこに追いやられてたのよ。
そして葬儀屋に言った訳だ。
「すいません、あの二つの花を入れ替えてください。大変でしたら、花に付いてる名前を入れ替えてください」
その時、俺と祖母が同時に気づいた。
「お袋・・・今、なんて言った?」
「『鼻』の名前を入れ替えろ」
「『花』の名前を入れ替えろ」
親父はこのことを言いたかったのだろうか?
お世話になった会社社長に失礼を働くのが嫌で、こんな予言を残したのだろうか?
もう真実は分からない。
その社長は、とてもとても良い人で、母子家庭になった我が家を助けてくれた訳だが、それはまた別の話。
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話しかけてくれた人
夏の修学旅行に行った時に、俺は転校したて+人見知りが激しくて友達いなかったので、一人寂しく外に抜け出して花火をしてた。
そしたら地元の子か知らないけど、ぼーっと一人で花火をしてる俺の横にいつの間にか座っていて、こう言った。
「こんなところ(海岸の崖から海に向かって花火してた)で花火なんて珍しいですね」と。
人見知りの激しかった俺はずっと無視してたんだけど、その子はずっと俺に話しかけててくれて、次第に俺も慣れてきたのか、こっちからも話しかけようとした。
しかし、そのときにはもうその子はいなくなってた。
でも、見知らぬ人とも会話しようとしてたので、今なら慣れない人との会話が出来そうな気がしたので、すぐにホテルに帰った。
そしたら、いつもモジモジしながら話してた俺が、結構すらすらと会話できるようになって、その修学旅行のうちに、クラスの殆どのヤツと友達になれた。
その子のことをずっと無視してて悪かったけど、おかげで友達が出来るようになった。
今度バイクの免許でもとって、その旅行で行ったところにもう一度足を運んでみようと思う。
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幽霊が追いかけてくる
母親の実家の話。
段々に連なる下の家で、夏の夕方になると時々騒ぐ声が聞こえてくる。
その家で「幽霊だ~ゆうれい!」と逃げまどっているらしい。
一家6人が「追いかけてくるー」と母の実家にも飛び込んでくるのだが、指さす方向を見ても、他の家の者には何も見えなかったらしい。
一家全員が「あそこに、あそこにいる!」と指し示すのだが、納戸の暗がりには何も見えなかったそうだ。
夏になると10回ほどそんなことがあるので、近所ではだれも相手にしなくなったらしい。
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実家の職業
俺の実家、京都の“ある地域”にあるんだけど(ていうかあったんだけど)、○○省と10年位前までいざこざしてた。
明治時代まで○○の行事に関わる職業というか、それだけで生活してたわけじゃないけど、祭事の時に呼ばれて出てく役目を担っていた。
これは知識としてそうだったって聞かされただけだけどね。
だけど明治になって、○○が東京に住むようになっちゃったんで放り出された。
まぁこの際ハッキリ言ってウチはBなんで、それまでの何十倍もSABETSUされるようになってしまった。
親から聞く話だと、ここから当家の苦難と恨み辛みの歴史が続くんだけど割愛するね。
で、東京に行った人が亡くなったんだけど、その時、時代の名前も変わるし節目だから色々整理する事になり、行事関係の“関係各位様”にも宜しく言う事になった。
だけど、もう定年で辞める直前のような爺が、
「○○の住所はまだ京都にあるから、ちゃんと昔からの人脈を復権させるべきだ」
とか言い出したんだな。
で、わざわざ高級官僚(コイツの家だって代々この仕事してんだぞ)がやってきて、
「来年は東京に来て昔の仕事を復活させようね」
って言ってきやがった。
無論、当時の当主である親父(ホルモン屋経営)が激怒して追い返した。
彼らの名誉のために言っておくけど、この紛争において○○省からの嫌がらせや恐喝・呪詛行為は一切なかった。(こっちからは呪った)
だけど腹立たしい事に、そのいざこざに横から入ってきてカネを掠め取ろうとする団体が出てきて、本当に滅茶苦茶になった。
こいつらは人間のクズで今すぐ地獄に送り返してやりたいが、元々地獄から生まれてきたようなヤツらなのでどうしようもない。
付き合いが深くなるにつれ、こっちまで憎悪の世界に引き込まれた。
元々、我が家の血筋が悪いからか身の回りで凶事が続発した。
最後には、土地を売却して北海道に移住した。
○○省はどうしたかというと、人形でつつがなく代役を立てた。
ほどなく親父は死んだ。
東京に行った人と同じ死因だった。
親父は腺がんで亡くなったけど、病名は本人に告知しなかった。
親父は頑固に依頼を断り続けた割に、いざ本土を離れたら何か使命感のようなものが沸いてきたのか、しきりに霊的な事や○室の事を気にするようになっちゃった。
で、病院で病名を告げられた時には末期に近かったんだけど、死因が同じになっちゃうと、殉死みたいで俺達家族には耐え切れんものがあった。
だから本人には言わなかったけど、全部判ってるような雰囲気でいたたまれなかったよ。
やっぱり、ゴタゴタの最後に人形に魂を分けるような事をしたから、寿命が縮んだのかなって思う事もある。
親父はホルモン焼きながら占い売ったりもしてたけど、全体的に無気力な人だった。
魂分けの儀の時に、省が衣装を持ってきたんだけど、親父が無言で二階にあがってっちゃったのね。
もうその時は、省の人も含めて当事者全員が疲弊しきってたから、親父おとなしく着てくれ~って焦ったんだけど、押入れからボッロボロの衣装を出してきたんだよ。
これは驚いたね。
省が持ってきたのは、玉とか紐とかはガラス・ナイロンなんだよ。
だけどこっちのは正真正銘のホンチャンだからさ。
そんで、省の人って当初から“貧乏人に仕事やるよ”っていう態度だったのが、その時に空気がサっと変わったもん。
あそこが当家のピークだと、今でも酒の席では話題になるよ。
ウチは人に羨ましがられるような家じゃないし、家柄についての誇りは一切ない。
京都の土地は、後になって例の団体が買い取ったと判った。
今はパチンコ屋になってる。