「 月別アーカイブ:2014年01月 」 一覧
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助手席
8月に入って急なコンテ変更が続き、あおりを食ったN子さんが深夜までの作業になってしまった。
彼女は主力作監だったので、どうしてもこういった事は多い。
ここは当然、進行が車で送るべきなのだが、彼女は頑として進行車には乗らない。
いつものように、
「二駅ですから自転車で帰れます」
といって帰途についた。
が、ものの10分も経たないうちに青い顔で戻ってきて、
「車お願いします」
と、ぽつりといった。
N子さんはアイドル声優との対談でも、カメラマンが彼女ばかり撮るといった美女っぷりで、すわ痴漢か?と、いいとこ見せたい野郎共が色めきだつ。
が、彼女は何も答えず、急いで欲しい、とだけ告げて外へ。
「お前行ってこい」
と社長に言われ、喜び勇んでキーをひっつかみ彼女のあとへ続く。
ちなみに私の隣に座りたがる女性は少ない。
もちろん彼女も後部座席にさっさと乗り込む。
広い交差点へ出てすぐ、あろうことか、街灯の下にランドセルを背負った少女を見つけてしまった。
–夏休みの午前2時に。
もしかして、これか?と思ってルームミラーに彼女を確かめると、
「あそこで止めて下さい」と仰る。
真顔で。
絶対に嫌、絶対に嫌なのだが、真顔の彼女には社長だって逆らえない。
前だけ見つめて、車を止める。
と、何を思ったかN子さん、なんと、後ろから手を伸ばして助手席のドアを開放してしまう。
やめてぇ、と叫ぶまもなく扉は全開。
ランドセル少女の顔が、視野の隅でとんでもない大きさになったような気がした。
至近に人の気配が寄り添って来る、良い匂いがしてふと、横を見てしまう。
いつのまにか外を廻ってN子さんが助手席に来ていた。
「もういいですよ、出して下さい」
大急ぎで車を出す。
「待ち合わせ、ずっとずれてたみたいなんです」
そういって彼女は笑った。
「誰とですか?」
「いつも助手席にいた男の子」
そういって彼女はまた嬉しそうに笑った。
はい?
・・・ずっと?
この車の助手席に?
誰か?居たですか?
そう質問しようと思ったが止めておいた。
ええ、知らなくて結構です、街灯の下が大きく抉れていた理由も聞きたくないです。
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炭鉱の町の歴史
炭鉱閉山。
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流れ者の炭鉱夫の仕事がなくなり人口大減少の危機。
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国からの交付金額を維持するため、人口の減少に対処すべく議員らの指示で元炭鉱夫への生活保護の無差別支給。
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元々金遣いが荒い元炭鉱夫らが、生活保護だけじゃ足りないとゴネ出す。
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事故で手足の指を落としたことにして障害者手当の追加支給。
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結局はバレたが、流れ者の炭鉱夫の中には被差別部落出身者や在日韓国人や在日朝鮮人が多く事件は闇に葬られた。このような経緯が教訓となって、現在でも元炭鉱の町やその周辺の自治体では生活保護の申請に対する調査が厳しくなっている。
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峠の公園
今から14年程前。
夜な夜なバイクで峠に走りに行ってたんよ。
場所は大阪と奈良の境にあるH道路ってとこ。
そこで知り合った人に起こった話なんだけど、知り合いって言っても『ああ、あのCBRに乗ってる人か』ってぐらいの知り合いで、あんまり話したこともなければ、名前も知らない。
当時は、そんな知り合いがいっぱいいたよ。
で、ある日、そのCBRの人の事で変な噂を聞いたんよ。
そう言や最近見かけないなーって思ってた所だったから、妙にその噂が気になって、色んな人に聞いたんだけど、聞く相手によって話が微妙に違うの。
いいかげんなもんだなーって思った。
だいたいこんな内容だったと思う。
『CBRの人とその友達とでどっかに遊びに行ったら、野犬に出くわして、バイクで逃げたCBRの人は助かって、走って逃げた友達のほうは野犬に襲われて死んだ』
ってな感じで、人によっては、『両方走って逃げたけど、池の方へ逃げた友達が野犬に追いつかれて殺された』って話したりしてた。
話の元になったのは新聞の記事で、俺は残念ながらその新聞を見てないからわからないんだけど、誰かが死んだのは間違いなかったみたい。
この辺の話なら、当時H道路に居た人なら聞いた事があると思う。
新聞を読んだ人らが話してたのは、ただの野犬の話だったんだけど、俺があちこちで聞いて回ってたもんだから、しばらくすると『CBRの人の彼女から聞いた』って言って、とんでもない話をする人が出てきた。
その話には野犬なんか出てこない。
かわりに洒落にならないモノが出てくるんよ。
その話でもたいがい怖かったんだけど、実はそれから数年後に偶然CBRの人と会って、もっと確かな話を本人から聞いた。
これからは、その時聞いた話。
CBRの人とその彼女、CBRの人の友達(ややこしいから以降TZRの人)とその彼女、計4人で夜景を見に行こうとして、二台のバイクにそれぞれ彼女を後ろに乗せて、生駒山をウロウロしてたんだって。
だけど、なかなかいい場所が無くて、いいかげんウロウロするのに飽きて、たまたま見つけた夜景なんか殆ど見えない公園で休憩してから帰ろうってなったらしい。
4人とも初めての公園で、公園の名前は知らないって言ってた。
小さい公園で、入ってすぐの所左手にトイレがあって右手奥に池がある。
そんなとこ。
深夜だし、なんか気味が悪いなとは思ったし、女どもは「怖い怖い」って言ってたけど、なんせ疲れてたから休みたくてベンチを求めて池の横を通って公園の奥へ歩いて行くと、いきなり池の方から
「ドボン!」
って音。
池の方を見ると、おっきい波紋ができてる。
かなり大きな石を投げ込んだような音だったって言ってた。
その池は周囲をぐるっとフェンスで囲まれてて、そのフェンスを越えるぐらいの高さまで、さっきの音を出せるぐらい大きな石を投げ上げるのは、かなりの力持ちじゃないと無理。
って言うより、力持ちどころか自分ら以外に誰も居ないのに、そんな音がしたのでほんとにビビったって。
TZRの人の彼女が怖がってしくしく泣きだしたし、CBRの人も休憩する気が失せるぐらいビビったので、もう公園から出ようって事になって入り口に戻る為、池の横を通ろうとした瞬間、また
「ドボン!!」
さっきより池に近かったから、深夜で真っ暗だったけど見えたって。
「最悪な事に、ソレをハッキリ見てもーた」って言ってた。
すぐ近く音がした場所に広がる波紋の真ん中、音がしてからちょっと遅れて、ぽこっと何かが顔を鼻から上だけ出したんだって。
じっとこっちを見てたってさ。
「人間の幼稚園児みたいな顔だけど、目がおかしなとこにあった」
目が合ったんだって、その波紋の真ん中の顔と。
そっからはよく覚えて無いらしいんだけど、
「うわーーーー!!」
って誰かが叫んで、いや、俺が叫んだのかも知れないって言ってた。
あるいはみんなが叫んだか。
走ってバイクの所まで戻って、彼女が来るのを待ってたのを覚えてるって。
すごく長く感じたって言ってたけど、時間にしてたぶん10秒も無いぐらい。
TZRの人はすでに彼女も後ろに乗ってて、エンジンをかけようとしてたから、よけいあせったのかも。
とにかく、気が狂いそうな程怖かったから、彼女が泣きながらノロノロ走ってくるのに我慢できないぐらい腹がたった覚えがあるんだって。
その時、確かに聞こえてたから。
池の方から
「ケケケケケケケケケケケケ」
って子供のような笑い声。
後で彼女も聞こえてたって言ってたらしいよ。その笑い声。
しかもその時、ノロノロとしか走れなかったのは、腰が抜けてたかららしい・・・。
人間て、腰が抜けてても走れるもんなんかな。
とにかく、彼女がようやくたどり着いてバイクの後ろに乗った時には、すでにCBRのエンジンがかかってて、いつでも出れるようになってたんだけど、どういうわけかTZRの方のエンジンがまだかかってない。
知ってる人もいるだろうけど、CBR(250R)ってのは、セルっていうボタンでエンジンがかかる。
だけどTZRってのは2ストで、キックっていうレバーを踏み込んでエンジンをかける。
TZRの人は狂ったように何度も何度もキックを踏んでるんだけど、まるでかからない。
CBRの人は、自分の彼女を待つだけでも怖くて怖くて仕方がなかったのに、今度はTZRのエンジンがかかるまで待たなきゃならない。
だけど、公園の入り口近く、池じゃなくてすぐ近くから
「ケケケケケケケケケケ!!」
って聞こえた時に、迷わずTZRの人達を置いて逃げた。
池にいた何かが池を出てフェンスを越えて、自分達のすぐ近くまで来てるってわかったから。
この後何があったのかは、CBRの人は知らない。
もちろん、CBRの人から話を聞いた俺も知らない。
とにかく、CBRの人とその彼女はそのままCBRの人の家に行って、しばらく経ってからTZRの人とその彼女の家に電話したんだけど、電話に出た家の人に、『まだ帰ってません』って言われたって。
当時、携帯なんてみんな持ってなかったからね。
何度か電話して『まだ帰ってません』を何度か聞いて、さすがに心配になったから、家の人に事情を話して、またあの公園に行ってみたんだって。
彼女を置いて一人だけで。
TZRの人らを置いて逃げてからそんなに経ってないけど、公園に着く頃には辺りはすっかり明るくなってたって言ってた。
CBRの人がその時見たのは、公園の入り口で倒れたTZRと、その横で座り込んでずっと笑ってるTZRの人の彼女。
TZRの人はどこにも居ない。
すぐにパトカーと救急車を呼んだんだけど、結局TZRの人が見つかったのはその翌日で、公園の池の中から全身を犬に噛まれたようなボロボロの状態で死体で見つかった。
それで新聞には『野犬に襲われ死亡』って出たんだけどってCBRの人は言ってた。
「池はフェンスに囲まれてんだから、犬なんかじゃない」って。
そうそう、TZRの人の彼女はそのまま入院したんだけど、それっきりCBRの人と疎遠になっちゃって、池から出てきたのは何だったのか聞く機会が無くなったって言ってた。
もっとも機会があっても、なかなか聞けないけどね。
彼氏が死んだ時の話なんか。
やれやれ、やっぱだいぶ長くなったなーごめんね。
それまでこの手の体験談って、『見た』とか『聞いた』とかばっかだったから、ほんとに人が死んだってのがすごく衝撃だった。
その場にいた本人から聞いたから、怖いのかもしれないな。
この話を聞いてから、何度かその公園を探しに行こうと思ったんだけど、やっぱ怖い。
俺の支離滅裂文で読んでも怖さが伝わらないかもな。
そんな人はこの公園を探してみて欲しい。
大阪からだと、H道路の左手、K峠の手前あたりって言ってた。
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白い顔
俺は4歳になるまで、夜はバアちゃん家に預けられていた。
夜はバアちゃんと並んで寝るんだけど、その部屋に死んだジイちゃんの仏壇があったんだ。
で、夜中に目が覚めたりすると、たいてい金縛りになる。
その時、必ず仏壇の戸が少し開いてて、中から誰かがこっちを見てるんだ。
扉に手をかけて、白い顔を半分覗かせて。
最初はジイちゃんだと思っていた。
バアちゃんが仏壇に向かって
「じいさん…」
って呼び掛けるのを見てたから。
だけど、その顔、よく見ると子供みたいなんだ。
こっちを見ながら、うっすらと笑っている白い子供の顔。
そんなものを見ながら、俺は不思議とも思わずに4歳までその部屋で寝ていたんだ。
バアちゃんは俺が11歳の頃に死んだ。
よく覚えていないけれど、何かの病気だった。
半年ぐらい入院していて、見舞いに行くと割と元気に見えたのに、急に具合が悪くなったかと思うと2日くらいで死んでしまった。
それでも、自分の死期はうすうす感じ取っていたみたいで、死ぬ間際には
「やっと、じいさんのところへ逝けるねェ…」
みたいなことを言って、周囲を困惑させていた。
バアちゃんは具合が悪くなったと同時に昏睡状態に陥った。
親族は交代で病室に詰めていたんだけど、最後を看取ったのは俺の母親だった。
そのときの様子がちょっと変だったらしい。
母親は病室のベッドの横で本を読んでいたんだけど、何となく呼ばれたような気がして、バアちゃんの方を見たそうだ。
すると、昏睡していたはずのバアちゃんが目を開けていた。
瞬きもせず、じっと天井の方を見つめている。
母親が声を掛けようとした時、バアちゃんの口が動いた。
「お前、じいさんを何処へやった」
実の子である母親が今まで聞いた事もないような、低くドスの利いた声。
呆気にとられていた母親が我に帰ると、バアちゃんはもう目を閉じていて、それから半時間程であの世へ旅立ったそうだ。
バアちゃんは、あの白い顔をずっと見ていたのかも知れない。
今思えばそんな気がする。
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Skype
私が体験したと言うか、私の親と彼氏の親が体験したと言うか…霊より私が怖かった話。
三年前のこと。
当時、私には付き合って三年になる彼氏がいた。
性格は正反対だったけど仲良かったし、尊敬できてこのままずっと一緒にいるんだろうな、と思ってたんだけど…
ささいなことで喧嘩したその日に彼氏が事故で亡くなってしまった。
面識があった彼氏の親からの電話で聞いた時は、よく理解できなくてぼーっとしてたんだけど、気づいたら両親に連れられて病院にいた。
顔はそんな傷がなかったのだけは、はっきり覚えてる。
ここから記憶がぶつ切りなので、ここからは親から聞いた話。
私はたまにぽろぽろ泣いたりしてたみたいなんだけど、病院で彼氏に対面した時号泣した以外は、終始ぐったりして大人しかったらしい。
静かすぎて逆に周りがハラハラしたと。
何日か経ってもそんな状態だったから、一旦休職させて親は私を実家に連れて帰った。
相変わらず話しかければ反応はするし、ご飯も少しだけど食べるんだけど明らかに私はぼーっとしてたらしい。
虚ろと言うか、世界が現実感なく見えてた。
家の親は早寝で眠りが深いので、あまり夜中別の部屋にいる私の様子は知らなかったんだけど、たまたま起きた時部屋の前を通ると大体パソコンいじってる気配がしてた。
まぁ何かする気になってるならよかった、と思ってた。
四十九日も目前って時に、家に彼氏のお母さんから電話が来た。
「○○ちゃん(私)最近どんな様子ですか?」
って、何か含んだ感じで聞かれたから
「相変わらずですが…○○に何か?」
って聞いたら言いづらそうに話してくれたらしい。
前日の夜、彼のお母さんが彼の遺品を片付けていた。
色々思い出して泣いていたら急にプップップッと電話を発信する様な音がする。
音の出所を探すと、彼の愛用していたノートパソコンから聞こえているようだった。
電源を入れた覚えもないので不思議に思いながら開くと、Skypeが立ち上がって勝手に通話を発信している。
発信相手は私。
すぐに相手が出なかったことを知らせるツーッツーッという音になったけど、何もいじってないのに不思議だな、と気になって私との通話やメッセージの履歴を開いたらしい。
そうしたら昨日までの着信履歴びっちり。
ぞっとして私の親に連絡したらしい。
パソコンに疎い私の親も説明されてびっくりした様でその日の夜、相変わらずパソコンに向かう私に話しかけて画面を覗いた。
夜中なのでパソコンの液晶の明かりの中ぼーっとマウスを動かしてる私。
画面は彼氏への発信中。
相手が出ないので発信が切れる度、無表情で再度発信を繰り返す。
切れる。
また発信する。
ぞっとして思わず居間へ引っ張って行き
「何してるの!」
と怒鳴ったらしい。
私は
「出ないから…」
とか言ってたらしいが、こんこんともう彼氏はいないこと、このままじゃお前も死んでしまう、と泣きながら諭されてようやく何かを理解した様に大泣きしだした。
親もあまりに私が抜け殻状態すぎて、彼氏のことにあまり触れないように腫れ物扱いだったから怒鳴られてようやく現実が認識できたのかも。
何時間も泣いて泣き止む頃にはなんとなく正気な感じになってた。
ここからは覚えてる。
たぶんあまりにも急で理解しようしようとして、できなくて彼氏に聞こうとしたんだと思う。
よくSkypeで話してたし、物知りな彼氏によく色んなことを聞いてたから。
霊的なのは電源が点いていなかったはずの彼のパソコンが勝手に点いて、私に発信したことだけw
ちなみに後で見たら私の方にも履歴は残ってた。
そんなことより真夜中にひたすら死んだ彼氏に発信をし続ける私の姿と、彼のパソコンの履歴のが完全に洒落にならない怖さだったと思う。
私の親と彼氏のご両親には怖い思いと心配かけて本当に申し訳なかった。
勝手な解釈なんだけど彼からの発信は、本当に後追いでもしかねない様子の私を見て、彼が四十九日が終わる前に親達に知らせてくれたんじゃないかな、と思ってる。
最後まで心配と手をかけさせっぱなしだった。
ただのパソコンの誤作動かも知れないんだけどね。
後日お墓参りに行って、彼氏に一緒にいてくれたことも含めてたくさんお礼言っといた。
余計なお世話だし当たり前のことなんだけど、家族でも恋人でも友人でも今一緒にいれる人を大切にしてださい。
私は喧嘩してひどいこと言っちゃって、謝れないままなのを今でも後悔してる。
つい先日が彼の命日で、ようやく穏やかに彼を思い出せるようになったので、何年もたくさん励ましてくれた友人に結婚を前提にした告白の返事をしよう思う。
中々、人に話せるような話じゃないので書き込んで気持ちの整理ができた。
長くてつまらなかったかも知れないけど、最後まで読んでくれてありがとう。