昔、ばあちゃんの家に預けられてた時、後ろの大きな山にイモケ様って神様を祭る祠があった。
ばあちゃんの家の周りには遊ぶ所も無く、行く所も無かったから、その祠の近くにある池でよくじいちゃんと釣りをしていた。
ある日、じいちゃんとばあちゃんが町に買い物に行くので、俺一人で留守番する事になったんだけど(軽トラなので)する事が無かったので一人釣りに行く事にした。
実は、その池に行くのにはいつも凄く遠回りをするが、2人共いなかったので抜け道をする事にした。
その抜け道は、丁度となりのトトロでメイが潜っていった様な所で、ひと一人抜けられる場所だ。
でも、じいちゃんもばあちゃんも絶対通ってはいけないと言ってた。
(理由は教えてくれなかった)
入り口を囲む様に石が並べてあったが、子供な俺はそんなのお構いなく入っていった。
今思うと完璧に人工的な並びだった。
そうして歩くこと20分、池に着いた。
1時間程、釣りをしていて何気なく遠くの方を見たらチラッと人影が見え、声が聞こえた。
「あきよへほ あきよへほ」
みたいな感じに。
普段、誰も来ない場所なので少し気になり、見に行くことにしたが誰もいなかった。
まぁ気のせいだと思い、釣りを始めようと思っていたら、じいちゃんの軽トラが走ってきた。
俺はじいちゃんが迎えに来てくれたと思い、釣り道具を片付けていたら、物凄い勢いでじいちゃんが車で近づいてきた。
問答無用で車に押し込められ、釣竿もお気に入りだった水筒も、その場に置きっぱなしになってしまった。
何か白い布を被され、絶対出てくるなと言われ、家に帰るまでじいちゃんはずっと何かを唱えていた。
家に着くと、俺を包んでいた白い布をじいちゃんが被り、新しい布をばあちゃんがかけてくれた。
ふと見ると、近所の人達が集まっていて、家は白い布で覆われていた。
あれほどの大きな布をどうやって調達したのか、今思うに、この時の為に用意してあったのだと思う。
そして、ばあちゃんにお風呂に入れられ、少し大きな部屋に連れて行かれた。
知らないお爺さんがいて、何処を通っていったのか、どのくらいの時間かかったのか色々聞かれた。
その後、イモケ様の事について聞いた。
イモケ様は池を守る神様だけど、幼くて一人では寂しいからと、昔は子供を生贄に捧げていたらしい。
その子供が抜け道を通り、イモケ様の所へ行っていたらしい。
しかし生贄とかの時代が終わり、寂しくなったイモケ様は里に下りてきて子供を連れて行くようになり、連れてきた子供が逃げないように足の筋を切り、ずっと自分の側にいさせていたらしい。
それで、イモケ様が外に出ないように石を並べて道を閉じたと言う話だった。
最初は冗談と思って聞いていたが、自分の足を見た瞬間凍りついた。
右足のスネの後ろが切れていて血が出ていたから。
でも痛くはなかった。
いきなりお爺さんが叫んで、白い布を被った人が俺を囲み、ばあちゃんが傷を小さい札?みたいな物で止血してくれた。
このままでは危ないと言う事で、急遽俺は家に帰されることに。
またしても布を被され、じいちゃんの車に乗せられた。
イモケ様は白い物が見えないらしく、布を被れと言う事だった。
(にも係わらず家の中で足を切ったのは、完全に家を覆いきれて無かったかららしい)
布を被る前に見たじいちゃんの軽トラは、黒い部分はわら半紙で隠され、荷台には大量のお菓子が載せられていた。
すごくかっこ悪かった。
そして何事も無く走る車。
俺は、もっと何か起きると思っていたので拍子抜けしてしまった。
ずっと布を被っていたので、つい窓を開けてしまったら外から、
「きよへ」
と声が聞こえたが、じいちゃんは普通に運転していたので気のせいだと思ったが、今度は耳元で
「きよへ」
の声がはっきりと聞こえた。
ここで意識が無くなった。
目が覚めるとばあちゃんの家だった。
ばあちゃんに話したら、全て夢だと言われた。
水筒も無くなってるし、釣り道具も無かった。
この話をしても誰も信じてくれないが、右足に本当に傷が残ってて何年経っても最近出来た傷のように見える。
本当の話なんだけど、何か知ってる人いないですかね?