「 月別アーカイブ:2013年02月 」 一覧
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お祓いのバイト
えーと、自己紹介から始めると、30代前半の未来に絶望している派遣社員です。
東京にずっと住んでます。
独身で、両親は死んで大分経ちます。。
妹と弟がいますが、もう既に離れて暮らしてます。
奇妙なのか分からないですが、僕の知り合いにお祓いの仕事をしている人がいる。
知り合いというか、最寄り駅の近くの立ち飲みで出会ったおばさん。
それが今から数えて7年前ぐらいかなと思う。
引越したての頃で、仕事帰りに一緒に飲む友達がいなくて、気軽に入れそうな立ち飲み屋で飲むようになったのがきっかけ。
で、そのおばさん、俺を見るなり、
「ギャーッ」
って叫び始めた。
実を言うと、結構慣れっこで、よく知らない人から叫ばれます。
叫ぶならいいんだけど、
「あの人、怖いんです。捕まえてください。」
って通報されたこともあった。
なんで、『またかよ…』みたいな気持ちで無視してた。
けど、そのおばさんは今までの人と違って話しかけてきた。
「どこからきた?」
「仕事はなにしてる?」
「両親はなにしている?」
なんて、まるで尋問のように矢継ぎ早に質問された。
まぁ、こんなおばさんの友達も良いかと思って質問に答えていた。
それからしばらくして、そのおばさんが、
「今度、あたしの店に来い!」
って言いながら、お店のカード?みたいなものを渡された。
まぁ、興味ないし、凄い上から目線で話されてムカツイていたから、直ぐ様、そのカードは捨てた。
ところが後日。
その立ち飲み屋でまた会ってしまい、その時は無理やり店に連れてかれた。
というのも、おばさん以外に痩せたおじさんと若い女がいて、ちょっと逃げれなかった。
ちなみにおばさんは『トキコさん』、若い女は『ケイちゃん』、おじさんは『ヤスオさん』て言う。
『絶対、宗教の勧誘だよなぁ…』そう思いながら、その3人の後ろに付いていった。
店に行くまで誰も喋らないもんだから、ケイちゃんに話しかけてみたら、
「ヒィぃいー。」
とか言って、会話ができなかった。
それからヤスオさんに、
「ごめんな、君が怖いんだ。」
なんて言われたから、なんか凄い悲しかったの覚えている。
で、店に着いた訳だが、だたの占いの館だった。
宗教の勧誘じゃなさそうだなと思い、占いでもしてくれんのかなと期待していた。
で、店に着くなりトキコさんが、
「あんた、私たちと仕事しないか?」
って言われた。
「はぁ?」
と言いながら聞いていたら、なんでもその3人はお祓いを仕事にしているらしく、僕に、ついてきて欲しいと言われた。
その当時は一応、ある会社の社員だったので、
「仕事あるんで、無理ですよ。」
と断った。
でも、そのおばさんは引き下がらず、
「土日のバイトだと思ってやってくれないか?」
と頼まれた。
まぁ幽霊とか神様とかまるで信じないので、まぁいいかなぐらいでOKした。
早速、次の週末にお呼びがかかり、○○区のある一軒家に連れてかれた。
家からそう遠くは無いので、自転車で待ち合わせ場所に行ったら、
「徒歩で来い、アホ」
と怒られた。
渋々、近くに自転車を止めて、その一軒家に入っていった。
入った途端、トキコさんと連れのケイちゃん(おじさんは都合が悪くて来なかった。)が、
「あぁ、いますね、いますね。」
とか言い始めて、しかめっ面になった。
ただ、僕には何がいるかも分からなかった。
普通の一軒家だと思った。
居間には中年夫婦がいて、僕らにお茶やらお菓子を出してくれた。
笑ってたけど、かなり引き攣ってたの覚えている。
しばらくすると、トキコさんが、
「早速、始めましょう。その部屋に案内してください。」
と言って立ち上がった。
何が始まるのか、よく分からないまま、二階に案内された。
階段上がると左右に二部屋あって、その右側の部屋の扉の前で止まった。
扉にはアルファベットで『TAKAO』って書いてあった。
「ここです。」
そう中年夫婦に言われた。
トキコさんとケイちゃんは、背負っていたリュックサックの中から塩を出して、ペットボトルの水を振りかけ、両手にまぶした。
何が始まるんだろう?とか思いながら、俺も両手に塩まぶした方が良いのか聞いてみると、
「お前には必要ない。ただ言われた通りにしろ。」
と言われた。
中年夫婦には何があっても、絶対に取り乱すなと注意をしたトキコさんは、扉を開け中に入った。
僕も後ろに続こうとした時、中から黒い影がトキコさんに覆いかぶさってきた。
TAKAOという中学生ぐらいの少年だったが、異様に眼がギラギラして歯をむき出しにして、
「ガジャガジャ、ガジャー!」
みたいな事、叫んでた。
トキコさんの首に噛み付こうとしていたので、流石に僕もこりゃイカンと思い、少年を引き剥がそうと彼に近寄った。
TAKAOくんは僕の顔を見るなり震え始め、ベッドの隅っこに逃げて身を丸めた。
「体のどこでもいいから、引っ叩け!」
トキコさんにそう怒鳴られた。
なので、悪いなぁとは思いながら、丸まってる背中を引っ叩いた。
そんなに強く叩いた覚えは無かったが、
「うぎゃー!」
とか言って、TAKAOくんは泡吹いて倒れた。
倒れているTAKAOくんを介抱しようと両親が近寄る。
『そんな強く叩いてないよな』とか思いながら横目で、トキコさんを見ていると、
「これでお祓いは終りました、もう大丈夫。」
そう言った。
たしかそう言ったと思う。
それから、TAKAO君をベッドに寝かして、中年夫婦にお礼を言われながら帰った。
なんでもTAKAO君が大人しく寝たのは、半年振りだったそうだ。
ちなみにTAKAOくんの部屋は物凄い事になっていた。
物は多分危ないから片付けたのだと思うけど、壁という壁に切り傷や穴があった。
帰り道、あまりに意味がわからなかったので、トキコさんに、
「意味がわかりません。」
と素直に言って、色々聞いてみた。
可哀想に、一緒に来ていたケイちゃんは帰り道の途中でゲロを吐いていた。
「あんたは相当なモノをもってるね。」
トキコさんにそう言われた。
初めはちんちんの事かと思ったが、そうではないらしい。
どうやら、言い方は宗教やお祓いの流派によって変わるらしいが、『守護霊』や『気』なんて言われてるものらしい。
そんなに凄いのかと思って、
「そんなに良いんですか?」
と尋ね返すと、
「いや、逆だ。最悪なんだよ、あんたの持ってるもの。」
そう言われた。
最悪じゃダメじゃないか、と思ってたので、
「最悪って、それじゃ駄目じゃないですか。」
と言うと、
「普通はな。だけどお前は普通じゃない。なんでそれで生きてられるのかおかしい。」
トキコさんに言わせると、俺のもってる『モノ』ってのが、相当ひどいらしい。
実はケイちゃんがゲロを吐いたのも、俺がTAKAO君を叩いたときに祟られたらしい。
まぁ色々聞きたかったのだが、あまりにケイちゃんが気分が悪くなってしまったので、トキコさんとケイちゃんは先にタクシーで帰った。
僕は止めておいた自転車で帰った。
トキコさんのお店でなんと10万円ももらえた。
本当はいくらもらってんだろう?そう思ったけど、中学生の背中引っ叩いて10万円ならいいや、と思って喜んでた。
実を言うと、それから少しして僕は留学した。
その当時の仕事よりも、やりたい事があったのが理由だ。
まぁ結局3年前に戻ってきたものの、仕事がなくキャリアも無く、派遣をやりながら生活している。
3年前に帰国した後に、トキコさんに会った時に言われたのが、
「あんたのそれ、かなり逞しくなってるよ。」
そう言われニヤっと笑われた。
なんでも僕の『モノ』は異国の地でセイリョク(精力、生力?どちらかわかりません。)を養ったらしく、以前よりパワーアップしているらしい。
一応、真面目に勉強してただけなんですけどね。
それから3年、お祓いのバイトをしている。
ただ、トキコさんやケイちゃん、ヤスオさんは、いわゆる霊感的なものがあるらしく、色々見えるらしい。
ところが僕は本当に何も見えない。
なので、今でも引っ叩いたり、話しかけたりするだけである。
残念なのは、今でもケイちゃんは仕事が終わるとゲロを吐く。
僕のせいなので、いつも申し訳ない気持ちで一杯になる。
で、明日も実は一個仕事が入り、終わったら風俗行こうと考えてます。
あ、ちなみにドMです。
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2回目の今日
俺がK津園で経験した話。
K津好きなら誰でも知ってる高給店。
俺なんかだと、本当に偶にしか行けないような店なんだが、そこに新人が入ってネットで結構評判良かったから行ってみた。
評判通り可愛い娘で、とても礼儀正しい。
した後に、煙草を吸おうと自分のセカンドバックに手を伸ばすと、
「煙草持ってないんでしょ?ハイライトなら買い置きがあるよ」
と姫が。
そんなはずは無い。
朝、新品を開けて、まだ5~6本しか吸ってないはず。
でも、いくら探しても見つからない。
それより、何で俺がハイライトを吸ってることを知ってるんだ?
「さっきノワール(喫茶店:仮名)でコーヒー飲んだとき、忘れて来たんでしょ。はい、どうぞ」
そう言って新品のハイライトを開け、火をつけて俺に渡した。
「ねえ、何でそんなことがわかるの?ひょっとして、さっきノワールにいたの?」
「ううん(笑)貴方がコーヒー飲んでた頃は、出勤途中でタクシーの中だったよ。」
「え?え?え?」
「うふふ」
少し気味が悪いなと思ったけど、姫が余りにもあどけなく可愛いので、取り敢えず俺も笑って、
「へえ、凄いなぁ」
などと言って、その場ではそれ以上追求しなかった。
それからしばらくして、
「もうすぐ○○さんに、いいことがあるよ」
と姫が。
程なくして俺の携帯にメールが、
「やりましたね、3000円付きましたよ。俺も○○さんに乗ったんで一気に取り返しました」
中京競馬場に行ってた同僚からだった。
メインレースだけ頼んで買ってもらった馬券が当たったのだ。
「ねっ(笑)」
背筋が一気に寒くなった。
「ね、ねえ、な、なんで?」
「内緒っ」
「ちょっと~、マジ怖いんだけど」
「どーしよっかな、私の話聞いても引かないでね、お客さん良い人だから教えてあげるわ。実は私、2回目の今日なの」
「はぁ???」
「私、死んだの」
「そして生き返ったの」
「私、今日の夜、帰り道で車に跳ねられて死ぬの」
おいおい、この娘は何を言ってるんだ?・・・
薬とかなのか?
「そうしたらね、凄く広いお花畑にいるの。でもお花は白黒なの。私はどうしたらいいのかわからずウロウロしていると、一箇所凄く明るくなってる場所があって、そっちに近づこうとしたの。」
「でも、何だかそこに行っちゃいけないような気がして、やっぱり引き返したの。」
「でも、その明るい場所は、どんどん大きくなって私を飲み込もうとしてね。私、走って逃げて、頑張って走って、そうしたらなんか落とし穴みたいのに落ちたの」
『お客さん、よく眠ってましたね、付きましたよ』
「わたし、マンションからいつもタクシーでお店に来るのね。朝弱いから寝ちゃうこと多いんだけど、運転手さんに起こされて、あれ?夢だったのかな?でも凄いリアルだったなと思ったんだけど、お店始まっちゃうから、急いで控え室に行って準備したの。」
「それで最初のお客さんで貴方が入ってきたのよ。私にとっての昨日と同じ貴方が。」
全身鳥肌が立ち、震えている俺の手を姫は握ってくれた。
「でも、私、今回が初めてじゃないの。子供の頃、まだ保育園に入る前なんだけど、同じような経験があるの。」
そこまで姫が話した所で、タイマーが鳴った。
「あ、時間だね、シャワーは石鹸無しの方がいいんだよね。奥さん臭いに敏感だから(笑)」
もう何が何だかわからなくなって、俺も笑うしか無い。
顔は思いっきり引き攣ってたが。
最後に、
「また来てね」
と言い、Dキスした姫の舌は、何だか冷たい感じがした。
「え、でも今日の帰りに・・・車に・・・」
「今日は、ココの近くのホテルに泊まることにするから、きっと大丈夫だよ」
それからしばらくの間、毎日ネットで彼女のシフトをチェックした。
時々、予約する振りをして、電話で在籍の確認もした。
「お客さん。あの娘人気あるんで、すぐ予約埋まってしまうんですよ」
元気に働いてるようで安心した。
俺が行ってから3週間程で、理由はわからないが彼女は退店した。
もう何年も前の話。
何だか誰にも話しちゃいけない気がしたから、ずっと俺の心の中にしまっておいた話。
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地下の仕事
昔、配水管の点検するアルバイトしてた。
地下に潜って、管に異常は無いか調べる仕事。
ちょっとした冒険みたいで、毎度ワクワクしながら働いてた。
まだ始めたての頃、管に潜ると人がいることがあるから気を付けろって先輩に言われた。
人を見つけたらまず声をかけて、何も言わず逃げていく奴は絶対に追うなと。
何度か潜って分かったけど、場所によっては人が住めるような管があって、住み着いてる浮浪者に遭遇することもあった。
浮浪者は、まぁ安全なのだけど、その頃はまだ左翼の過激派なんかがぼちぼち活動してた頃で、過激派が居住してたらしき跡も見つけたことがある。
今思うに結構危険な仕事だった。
10メートルも潜ると完全に真っ暗で、正直言って心霊的にもかなり怖い。
一度、奥の壁全面にみっちりお経みたいな文字が書かれていたことがあって戦慄した。
そんなこんなで楽しく働いてたある日。
川にある、あの横穴から中に入ってく仕事がきた。
このタイプの管は最深部まで行くと、配水管の合流点にたどり着くことがある。
色々なとこから水がぶわって流れてて、中には巨大な滝もあって絶景の一言につきる。
それを見るのが楽しみで意気揚々と中に入って行った。
20メートルくらい進んだところで奥に人影らしきものを発見。
「そこで何してる」
と、さっそく声をかけたけど返事が無い。
そこは増水したら水が流れるし、まず人が入り込むような場所じゃない。
ゴミでも詰まって見間違えてるのか、それとも何か悪さしようとしてるんじゃないかとか、とにかく確かめることにした。
近づいてみると、やはり人間っぽくて微妙に動いてるから、
「おい、危ないから出ろ」
と、声かけながらさらに接近。
すると向こうも奥の方に逃げていく。
なんか金属で壁を叩くような妙な音させながら。
ちょっと仕事に慣れっこになってた俺は、捕まえてやろうと追いかけた。
けど、気づいたら合流点の手間まできてて、危うく落ちる所だった。
その上、人はどこにもいなくて滝の音とキンッキンッって音だけがコダマしてた。
慌てて逃げだして、入り口で見張りしてた先輩にそのこと話したら、だから追うなって言ったろと叱られた。
他にも何人か見た人がいるらしくて、業界じゃ有名な話だったらしい。
俺は、それで潜るのが怖くなって辞めてしまった。
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ここはどこなんだろう
風邪ひいてて寒気がするので、大久保にある病院に行くため西武新宿線のつり革につかまってた。
で、あたまがぐわんぐわんと痛くて、目を閉じて眉間にしわ寄せて耐えてた。
そこで記憶が途絶えて、気がついたら夕方で、あたりは見知らぬ景色。
買ったことない服着てて、髪染めたこともなかったのに茶髪になってた。
パニクって近くのラーメン屋に入って、ここどこと聞いた。
大阪市の福島駅の近くで、時間が一年近く経ってた。
ケータイの種類が変わってた。
アドレス帳には、「ま」とか「ひ」とか、一文字の名前で電話番号が10程度あったけど、知り合いや実家の電話番号がない。
俺はなぜだか知らないがその知らない電話番号が恐ろしくて、川に捨てた。
警察から実家に連絡した。
向こうもパニクってた。
俺に捜索願が出てた。
とにかく帰って、今もまだ月一で精神病院に通ってる。
仕事は元の会社には帰れないみたいだったので、今は派遣やってる。
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トンネルの女の子
ちょっと書かせてもらう。
怖かったんだ。
ほんとに怖かったんだ。
20数年生きてて、心霊現象なんてついぞお目にかかったことがなくてさ。
怖い話は好きだけど、そんなの実際にはありえないって否定派だった。
今は、肯定する気もないけど否定もできない。
もうわかんね。
親戚んち行く時に通る山道にトンネルがあるんだ。
いつもは車で行くし、その日も車で行った。
でさ、そのトンネル、いろんな噂があるんだよ。
色んなつってもまぁ、首なしライダーとかパタパタさんとか都市伝説系。
口裂け女が流行ったのと同時期に、誰かが流したウワサなんだろうね。
そんなくだらない噂でも、やっぱり聞いた後で丑三つ時に通るのは怖いけど。
それでも、その日は夜じゃなかったから、怖い思いもせず平気でトンネルを通過しようとしたんだ。
そしたらさ、トンネルの入り口に猫がいるの。
普通のノラ猫。
あのさ、猫、大好きなの俺。
写メ取らなきゃ!って端っこに車停車させて降りた。
やめときゃよかった……。
携帯カメラを猫に向けて写メろうとするんだけど、近づくと逃げてく。
当然トンネルの中へ。
ダーッって走ってじゃなく、トットットって。
そんで、こっち振り向いてまた停止。
まぁ、微妙な距離の取り方も猫ならよくあることだ。
その様が可愛いから、カメラ向けながら俺もまた追うわけよ。
タッタッタって。
トットット。
タッタッタ。
トトトトト。
タタタタタ。
タッタッタ。あれ…?足音、ひとつ多くないか…?
って思ったのと、携帯の液晶に不審なものが映ったのは同時だった。
映ったっても目の前の光景じゃなく、トンネル内暗いからさ。
液晶に反射して俺の背後が映り込んだわけ。
居たんだよ。
女の子っぽいのが。
心拍数跳ね上がったけど気付かないふりして、
「にゃんこたんにゃんこたん待てよーwにゃんにゃんにゃん」
とか言いながら猫を追った。
女の子っぽいものも、ずっと猫と俺を追ってきてた、と思う。
あのとき程、トンネルがこんなに長いなんて思ったことはないなぁ。
そんで、たどりついた出口。
良かった、何事も無かった。
さて、車はトンネルの向こう側なわけだがどうしよう。
もうトンネルなんか通りたくない。
こっからは歩けない距離でもないし、ひとまず歩いて親戚んち行こう。
そんで奴の車で一緒に俺の車取りに来よう、なんてもうすっかり安心してた。
なんでトンネルを出ただけで安心しちゃったんだろ。
歩きだした俺は、十数メートル先を見てまた心拍数上がった。
いたよ……。
道の端っこ。
行動範囲トンネルだけじゃないのかよ……。
今度は姿形も視認できる。
多少ボヤけてたけど小学校高学年くらいの女の子だった。
躊躇したけど、行くも地獄戻るも地獄なら、行くしかなかろ?
腹決めて歩き出した。
まぁ、ひらけた道路よりトンネルで遭遇した方が怖いから、なるべく心臓にやさしい方選んだだけなんだけど。
っつうか、あの時は怖すぎるから考えないようにしてたけど、どう見ても俺を追ってきてるよね。
反対車線側を歩きつつも、少しずつ距離が縮まってって、とうとうそれを横切るぞって時。
好奇心に負けてチラ見しちゃったんだ。
そしたら女の子さ、頭怪我してた。
顔半分とコメカミ付近。
少なくとも見た目だけは酷い傷ではなかったから、なんとか心臓は持った。
交通事故かな、かわいそうだな。
なんて思ってさ。
その子がすごく可哀そうで、泣きたくなって……
俺はバカだった。
にわかに父性なんか出しちゃって、その子に近づいてったんだ。
そんで、その子の前でしゃがんで可哀そうにって泣いた。
聖人気取ってた。
ほんとバカだった。
その子、なんかよくわかんない形相になって、俺の顔に自分の顔近付けて、
「う゛ぉぁあ゛あぁあーーー」
そんとき、直感的に気付いた。
あ、ダメだ。
理屈通じない。
やばい、って。
感情とか読み取れないんだ。
っつうか、無いんだ多分。
最初から、近付いちゃいけないもんだったんだ。
後はもう振り向かずに親戚んちまで必死に走って逃げた。
もうトンネルには怖くて二度と近づきたくないから、帰りは遠回りで別の道を送ってもらった。
車は父ちゃんに取りに行ってもらった。
けど、今でもトンネルの側に放置してた車に乗るのが少し怖い。