「 月別アーカイブ:2013年10月 」 一覧
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突然の失踪
バイト先の店長から聞いた話。
その店長の兄が、10年ぐらい前に経験した話らしい。
その兄は、当時とある中小企業に勤めてたんだけど、まだ2月の寒いある日、同期の女の子が無断欠勤した。
休むとの連絡も無いんで、上司がその子の自宅(アパートで一人暮らし)に電話をしても出ないし、携帯にかけても出ない。
次の日も欠勤したんで、普段まじめな彼女が2日続けての無断欠勤とはおかしい、という事で彼女の実家に電話した。
電話に出たのはその子の母親だったが、娘からは何の連絡も無いと。
とりあえずご両親が、その子のアパートに行って見るという事になった。
その子のアパートは実家から電車で1時間ほどなので、後でまた会社に連絡くれるとのこと。
で、その日の夕方、会社にその子の父親(以後Aさん)から電話があったんだが、大家さんに鍵を開けて貰い部屋に入った所、娘は居ないとの事。
部屋も別に荒らされている様子も無いし、書置き等も無いし、ご両親もかなり困惑している様子で、警察に届けるべきかどうか迷っているらしい。
電話の対応をした会社の上司も、誘拐等の犯罪に巻き込まれたんじゃないかと不安になったが、とりあえずご両親に会社に来て頂いて、そこで話し合って対応を決めようという事に。
暫くしてご両親が来社し、社長交えて話し合った結果、やはり警察に通報した方が良いと言う事になり、警察に電話した。
そして警察が来るまでの間、彼女の机やロッカーを調べて何か手がかりが無いか探そうという事になり、まずは机を調べたところ、引出しから一枚の写真が出てきた。
写真には、人で賑わうスーパーの前で半袖のTシャツとジーンズ姿でこちらを向き、ピースサインで微笑んでる彼女が写っていた。
いつ撮られた写真かもわからないし、今回の事に関係あると思えないんだけど、Aさんは何故か知らないけど違和感を覚えたみたいで、しきりに写真を見つめ考えこんでいたらしい。
そうこうしている内に警察がやってきたんで事情を説明し、社員への軽い事情聴取の後(店長の兄はその子の同期で、結構仲も良かった為に疑われたのか、聴取が長くて凹んだらしいw)
ご両親と社長が署に同行し、捜索願いを出すことになった。
先程の写真も、警察に事情を説明したところ、何かの手がかりになるかも知れないと言うことで預かってもらった。
で、小さな会社がちょっとした騒ぎになりつつも何とか業務をこなし、それから2日経った日、Aさんから会社に電話があった。
娘らしき人物が警察に保護されたようなので、今から病院に行くと。
病院は彼女の実家から電車で3つほど先の駅の近くにあって、とりあえず社からは上司と店長の兄がその病院に向かう事になった。
病院に到着した上司と店長の兄が、病院の待合室に居た母親から話を聞いたところ、保護された人は娘で、目立った外傷も無く、やや衰弱しているだけで意識はハッキリとしているとの事。
母親もホッとしたのか、涙ぐみながら
「本当にご迷惑おかけしてすいません」
と平謝りだったらしい。
今ちょうど警察の人が娘に事情を聞いている最中で、面会はまだ出来ないとの事なので、上司と店長の兄も無事で良かったとホッとして社に戻った。
その数日後、Aさんがお礼とお詫びをかねて来社し、今までの経緯を報告してくれた。
それによると、彼女は保護されるまでの記憶が全く無いらしい。
仕事の後、帰宅して食事を取り、入浴後睡眠したところまでは憶えているが、それからの記憶が全く無く、気が付いたら見知らぬ住宅街の歩道を歩いていて急に恐ろしくなり、道端で座り込んで泣いている所を近所の人が通報して保護されたとの事。
精密検査の結果も、暴行された痕跡は勿論、目立った外傷も無く、脳にも異常は見られないが、とりあえずあと2~3日は大事をとって入院するらしい。
まぁでも、とにかく無事で良かったと社長含め一同で話をしていたが、Aさんが
「でもちょっとおかしな事があるんですよ」
と切り出した。
娘らしき人が保護されたと警察から連絡があったので、病院に急いで車で向かったんだけど、その途中で思わず
「あっ!」
と声を上げてしまったと。
あの写真に写っていたスーパーが通り沿いに見えた。
立ち寄って確認したかったが娘の安否が気にかかるし、とりあえずその場は病院に急いで、夜に妻を娘の病室に置いて一人で確認しに行った。
スーパーの前の路肩に車を止め、降りて確認すると時間も遅く閉店してるし夜で景色は違うけど、あの写真のスーパーに間違いない。
住所を確認し、急いで病院に戻り警察に電話して担当の刑事さんに調べて欲しいと訴えたけど、今回の事については、室内で争ったり拉致された形跡も無く、異性との交友トラブルも無い等、事件性が薄い上に、あの写真も今回の件との関連性は薄いので難しいとの事。
警察の対応にやや憮然とはしたけど、やはりあの写真には気になることがあったので、娘にそれとなく聞いてもそんな写真は知らないし、何の事かわからないという。
んで、翌日そのスーパーをもう一度尋ねてみたが、そこで見た光景に背筋が凍ったらしい。
写真では小さく写っていてわからなかったけど、スーパーの入り口にのぼりが立っていて、そこには『2月○日~△日まで、OPEN記念セール中!』みたいな事が書かれてあった。
○日といえば、彼女が行方不明になった日。
店内に入り店員に話を聞くと、そのスーパーは間違いなく4日前に開店したばかりだと言う。
そんな馬鹿な話がと思いつつ、その時点でAさんが写真に覚えた違和感がわかってハッとしたんだって。
あの写真、彼女は半袖だけど、写ってる周りの人は皆ジャケットなりセーターなりの防寒服着てたと。
んで、止めが、あの写真・・・一体誰が写して、いつあの子の机に入れたのか・・・と。
その場の一同、唖然を通り越して絶句。
スーパーを訪れた翌日、警察署に立ち寄って事情を話したけど殆ど相手にされず、例の写真も返却してもらった。
んで入院中の娘にその写真を見せても、やはりと言うかこんな写真は知らないし、こんなスーパー行った事も無い。
それに、こんな服はあたし持ってないと。
もう一家揃ってかなり気味が悪くなったので、写真は燃やして捨てたそうな。
ちなみに、彼女はその後元気になり無事に退院したけど、小さい会社でこういう騒ぎになったので、流石に居づらくなり辞め、父親の家業を手伝っているとの事。
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空き家の女
小学校低学年の頃。
両親の用事で、俺は知り合いのおばちゃんちに一晩預けられた。
そこの家は柴犬飼ってて、俺は一日目の暇つぶしにそいつを連れて散歩に出かけた。
土地感のないところをやたらめったら歩き回ったんで、迷子になってしまった。
シャイボーイだった俺は、他人に話し掛けることもできないし、連れてる犬は役に立たないしで、ウロウロしてるうちに夕暮れ近くになってしまった。
しかも、ある場所を通りかかったとき、急に犬が足を踏ん張って動かなくなってしまい、俺はそいつ抱えて歩き出したんだけど、異様にクソ重たい犬だったような気がする。
そうやって立ち往生してた場所の右手に、2軒つながりのような形の空家があった。
当時、昆虫集めに凝ってた俺は、いい虫(カマキリとか)でもいないかと、犬をひきずってそこんちの草ぼーぼーの庭に入り込んだ。
んで、しばらく草をかき分けてるうちにいいかげん暗くなってきて、こりゃやばいと顔を上げた。
空家のほとんどの窓は雨戸閉まってたんだけど、俺と玄関をはさんで向こう側の窓の雨戸だけが少しだけ開いてて、そこから女の人が顔を突き出してるのが見えた。
顔つきとか覚えてないけど、確か女で、両目閉じたまま顔を左右に振ってたと思う。
とにかくキショイ動きだった。
俺は「ギョエェェェーー!!」と、思ったわりに声も出ないまま腰ぬかしたけど、一目散に空家から飛び出した。
それからどうやっておばちゃんちまでたどり着いたのか忘れたけど、おばちゃんに半泣きで空家の女のこと言ったら、おばちゃん怒り出して、なんでか分からんけど、すぐさま頭をバリカンで丸坊主にされた。
その後、知らないおっちゃん連れてきて、呪文みたいなの聴かされた。
それに、出かけてたはずの両親も急遽呼び出されたり、結構大事になった。
以来、おばちゃんちには一度も行ってないけど、犬は結局帰ってこなかったと思う。
すんません、おばちゃん。
つか、これ最近思い出したことなんだけど、あれは一体なんだったんだろう。
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小窓から見えるもの
前に住んでたマンションの話なんだけど、俺は2階の角部屋に住んでた。
そこは3DKのマンションで、学生の俺には広すぎる状態ではあった。
でも、都内ではないから家賃は80000円。
バイトもしてたし、仕送りもあるし、5万くらいで1ルームに住むより全然いいわってことで、そのマンションに住んでたんだけど、住んでから気付いた。(しかも3ヵ月後くらいにwwwww)
道路挟んではす向かいがセレモニーホールだって事に。
その時はマジで「うわぁ・・・。」って思った。
しかも、リビングに小さな小さな出窓がついてて、そこからセレモニーホールが丸見え。
だから夜通し明かりがついてる時なんかは、あぁ、今ここに死体あるのか・・・とか、何かちょっと怖い想像もしてしまったりしてた。
まぁ一応カーテンつけてるし、別に害はないしってことで、逆に、その小さな出窓を開けて外を眺めながらタバコを吸うってのが俺の日課みたいになってたんだよね。
そんなある夜。
いつもの様に部屋の電気を落として、出窓開けてタバコ吸ってたんだ。
そしたら、ふと視界の隅で何かが動いてるのを捉えた。
何の気なしにそっちを見ると、セレモニーホールの屋上を誰かが歩いてる。
ちょうどその時、セレモニーホールは色の塗り替えをやってたから建物の横に足場もあったし、作業員かな?と思ったんだよね。
その時は不思議と怖いとかはまったく思わなかった。
でも、夜中も3時近いのに塗り替えやらないよな・・・と思って、メガネを取ってきてもう一度よく見てみた。
その瞬間、めちゃめちゃ怖くなった。
屋上を歩いてると思ったのはまず間違いで、どう考えても屋上のフェンスを乗り越えてフェンスの外を歩いてるんだ。
そこにどれ程のスペースがあるか知らないけど、普通の精神のヤツだったらそんなとこ歩くわけない。
次に、それはワンピースというか、白衣というか・・・何か青白っぽいスカートの様な服を着た女だった。
俺はマジでその瞬間、こいつ精神病患者で自殺する気だ!!って本気で思った。
その女は、両手を上に上げたり、横に広げたりしながらその屋上のスペースを右へ左へ行ったり来たりしてた。
横にスペースなんてないんだろうから、この時点でおかしかったんだろうけど全然気付かなかった。
俺は通報しなきゃ…って考えはまったく浮かばずに、何故かその光景に見入っちゃったんだよね。
ボケーっと。。。
そして、タバコの2本目を付けて、もう一度そっちを見た時に女が止まってて、明らかにこっちを見てるのに気付いた。
げぇっ!バレた最悪…って思うと同時くらいに女が両手を前へならえの感じで、俺の方にゆっくり下から上へ上げるように突き出して地面と平行に上がりきるくらいのところで、前のめりに倒れて行った。
マジで声も出なかった。
超ゆっくり女が倒れていくのが見えてた。
…と思ったのもつかの間。
女がこっちに向かって両手を伸ばしたまま、大きな口を開けてぶわ~って飛んで来た。
この時の俺のとっさの行動は今思っても奇跡。
すごい速さで出窓ガラスを閉めて、カーテンを引いた。
んで、後からカーテンの上からカギをかけた。
その行動が終わって、2秒後くらいだったと思う。
息をつく間もなく、その窓が、ドンドンドン!!!!!!!って三回叩かれた。
しかも、音の大きさや激しさからするに両手で。
マジで半分くらい腰を抜かしながら、手探りでリモコンスイッチで電気つけて神経ピリピリさせながらしばらく震えてた。
絶対にあの女入ってくる!って思って。
でも、結局、10分経っても20分経っても何もなくて気分的に落ち着いてきたから、今のは何だった??って思いだしてもう一度見てみようかな…って事になった。
それで何もなければ、何か安心して眠れるって思ったんだよね。
でも、カーテンを開けちゃうのは怖かったら、代わりにカーテンの隙間を片側押さえつつ、ほんのちょっとだけ親指分くらい開いてみた。
そしたら、そこに窓に思い切りギューッってされて、白くなってる指の一部が見えた。
後はもう、そのまま一睡もしないで朝を迎えたよ。
次の朝は思い切ってその窓を開けたけど、別に窓に何か手形が残ってるとかはなかった。
でも、俺はその時以来、一年以上、夜にそのカーテンは開けなかったし、出掛ける時もそのカーテンとリビングのメインのカーテンだけは閉めて出掛ける様になった。
夜に帰った時にそいつが張り付いてたりしたら怖かったから。
結局、その後は家では一度もそういう事に出くわした事はなかったけど、あの時のあの女が何なのか、何の目的で窓にへばりついていたのかは永遠の謎だろうね。
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不動産の査定
つい先日の出来事なんだけど聞いてくれ。
先日、父が亡くなって家を一軒相続したんだが、立地は悪くないものの大分ガタが来てるし無駄に広すぎるんで、妻と相談した結果売り払うことにしたんだ。
幸い、遺品の整理をしてる最中にも、度々不動産屋の広告やら名刺が入ってたんで、そこに電話し、結局4社で委託及び買取の査定をして貰う事になった。
で、そのうちの3社目。
結構今風の感じの、垢抜けた30代前半位の青年が査定にやって来た。
ハキハキと喋るし、感じも悪くない。
しかも査定額が前2社に比べると、1千万近く高い。
俺も妻もほぼここに決めかけてて、その旨を告げると各室内の写真を撮らせて欲しいと言ってきたんで快諾し、俺が付き添って改めて各部屋を案内して廻った。
で、仏間の隣にある8畳程の小部屋の扉を開け、中に青年を入れた瞬間、扉に手を掛けたままの状態で突然の金縛り。
金縛り自体は何度も経験があったんだが、こんなに唐突に、しかも立ったまんまっていうのは初めてだったんで、一瞬何か重篤な病気でも出たんじゃ無いかと思ってパニクってると、すぐ耳元で女の声がした。
くぐもった感じで、大きさの割に凄く聞き取り辛いんだが、
「苦しい」
とか何とか言ってる様に聞こえる。
どうやら眼球だけはかろうじで動かせそうだったんだが、声のする方を見たらヤヴァいと判断し、視線を逸らして室内を見ると、こっちに背を向け、何やらメモに描き込んでいる青年の背中に、茶色っぽいソバージュの髪と、妙にゴテゴテした感じの黒っぽい服を着た女が張付いていた。
それだけでも十分怖かったんだが、その女は異様に首が長く(40cm位はあった)背中を向けてるのに顔だけはこっちを向いてて、目玉がカメレオンみたいにギョロギョロとせわしなく動き回ってた。
あまりに現実感が無くて、怖いというより呆然とそいつを見てたんだが、青年がこっちを向いた瞬間に見えなくなって、ほぼ同時に金縛りも解けた。
当然査定どころではなく、
「少し体調が優れないので…」
と苦しい言い訳をしてお引き取り願った。
その後、思うところがあって、その青年の務めている会社の事を調べてみると、出るわ出るわ悪評だらけ。
当然今朝一で、丁寧に断りの電話を入れた。
青年がこっちを振り向いた瞬間、はっきりと
「苦しめ」
って声が聞こえたんだ。
多分あの青年、もしくは会社ぐるみで色々やらかしてたんだと思う。
そう思いつつも、結局今の今まで一睡も出来なかったんで、これ投下したら眠剤飲んで寝る。