「 月別アーカイブ:2013年10月 」 一覧
-
-
ベランダの人
ベランダに干してあった私の下着を盗んだヤツが捕まった。
おまわりさんの話では、その下着泥は高校生で
「ベランダに立っていた髪の長い女の人に憧れていたので、つい盗んでしまった」
と、話したとのこと。
しかし、うちに住んでいるのはショートヘアの私と夫だけ。
高校生が見間違えたのだろうと思っていたが、後日きたセールスマンがチャイムに応えてドアを開けた私を見て
「あれ、いまベランダにいた髪の長い人が奥さんかと思った」
と言ったのでほんのり怖くなったよ。
おまけに上の階に引っ越してきた人と道端で話してたら、その人の子供がうちのベランダを指差して
「お姉さん、泣いてるよ?」
と言った。
見てみたが誰もいなかった。
いったいなにがいるんだ、うちのベランダ!
-
-
心中現場
焼き鳥屋のオヤジから聞いた話。
オレは居合わせた事はないんだけど、近くに警察の寮が有るらしく、若い警察官が結構連れ立って飲みに来るそうで、そんな客の警察官が
話してくれたそうだ。自殺とかの第一報が入ると、真っ先に制服の警官が駆けつけるらしいのだが、その警官が見たのは男女の首吊り心中の現場だった。
覚悟の上での首吊りだったらしく、二人とも後ろに両手を廻して縛ってあって、並んで首をくくったらしいのだ。
で、グロイ話だけど首吊り死体って時間が経つと首が伸びてしまって、両足がつくまでずっと伸びたままになるらしい。
その男女の死体もそういう状況になっていた。
処刑とかの場合は、高所から落とすので首の骨が折れて即死状態になるそうなんだけど、単に首を吊っただけだとやはり長く苦しむのだそうだ。
で、両足が畳まれて、まるで座っている様な状態になるまで首が伸び切った壮絶な死体だったのだが、奇妙な事に気が付いたんだって。
覚悟の上とは言え、苦しさのあまり縛ってあった手を本能的に解こうと何かに捕まろうとしたらしく、紐の所は血まみれだった。
これは頷ける。
奇妙なのは、男の伸び切った首に噛み付かれた様な歯型が2箇所有った事。
鑑識が来て調べていった後、こう聞かされたそうだ。
男女は同時に首を吊った。
で、女のロープが少し緩んで男の胸の辺りまで沈んだ。
その頃は二人とも(少なくとも女は)苦しんでいても未だ死んではおらず、本能的に体を持ち上げようと両手を動かすが、紐は解けない。
そして女は口を使って相手の男に噛付き、必死で体を持ち上げようとした。
「こういう事もあるんだねぇ。だけどね」
と警官はオヤジに言ったそうだ。
「目の前の男の首に必死で噛付いて助かろうとした。それだけでも想像を絶する事だよね。だが男の首には噛み痕が二箇所有った。という事は、目の前で恋人の首が伸びていくまで女は生きていた。愛する男の首が伸びていくのを見ながら最後は何を思って噛み付いていたんだろうねぇ」
-
-
元民家の倉庫
もう10年以上前、大学時代のこと。
実家の近所にある小さい運送会社で荷分けやトラック助手のバイトをしていた。
現場を仕切っていたのは、社長の息子で2つ年上の若旦那。
んで、バイト仲間に同じく大学生のAくんがいた。
Aくんは自他共に認めるアホキャラだったが、明るくて元気で同僚としてはすごくイイ奴だった。
会社は町外れの国道沿いにあったけど、隣町の商店街の近くにも倉庫があった。
倉庫といっても普通の二階建ての民家。
一階が広い土間になってて、何年か前までそこで商売をしていたらしいが、借金とかで店を畳んで住人はいなくなり、その運送会社が借金の片?として手に入れたんだって。
ただ、すぐに使う当てもなかったので、とりあえず空き家のままになっていた。
んであるとき、若旦那が嬉しそうに俺に写真を見せてきた。
「見てみ?あの倉庫で写真撮ったらコレよ!」
見ると薄暗い民家の中を撮った写真なんだが、どの写真にも白っぽい丸い光みたいなのとか、白い煙みたいなのがバンバン写っていた。
「うわっこれ心霊写真ですか?」
「凄いやろー。あの家は出るんだよ」
人がバーンと写ってるわけじゃないので、俺は(レンズのゴミだったりして)と半信半疑だったけど、しばらくして若旦那がその家に荷物を入れて倉庫として使うことにした。
若旦那と俺とAくんが移動する荷物をトラックに積んでいると、普段あまり現場に来ない社長が俺たちを呼んで言った。
「中崎(タカサキ?だったかもしれん)の家に行くんやろ。二階には上がんなよ」
何のこっちゃと思ったけど、倉庫として使うのは一階の土間だけと聞いていたし、若旦那も、あーはいはいと聞き流していたから気にしなかった。
そして三人でトラックに乗ってバカ話をしながらその家に到着。
正面のシャッターを開ける。
あまり空気の入れ替えもしないみたいで、中はかび臭かった。
シャッターを開けると4畳半ぐらいの土間があり、その奥は茶の間と台所。
その奥に風呂と便所(らしい)。
向かって左側に、二階へ上がる細い木の階段があった。
奥行きのある家だったから、二階に二間ぐらいあるんだろうなーとか考えていた。
土間を片付けて荷物を積み込み終わると、若旦那がニヤニヤしながら言った。
「・・・なあ、二階行ってみようや」
俺はその日、バイトが終わったら友人と呑む約束があったので早く帰りたかったが、Aくんは
「行っちゃいますかぁ?」
と、ノリノリ。
俺もイヤとはいえず付き合うことになった。
靴を脱いで、若旦那、俺、Aくんの順で階段を上がっていく。
やたらにきしむ木の階段を上がると薄暗い廊下になっていて、右側に部屋が三つ。
入り口はフスマだった。
一番手前の部屋から開けていった。
一番手前(土間の真上)は三畳ぐらいの物置。
真ん中と一番奥の部屋は6畳間で、焼けた畳があるだけでカラッポだった。
白状すれば俺も『社長がああ言ってたし、何かあるかも』とちょっとだけスリルを楽しんでいたが、ぶっちゃけ何も起きなかった。
Aくんは
「何もないすねー」
とか言いながら携帯で写真撮りまくってた。
「まーこんなもんだ。帰るべ」
と若旦那を先頭に俺、Aくんの順番で階段を降りた。
トントントンと俺は土間まで降りて、Aくんを振り返った。
俺に続いて階段の一番下まで降りてきたAくんの様子がおかしい。
いつもニヤニヤしてるような顔なのに、こわばった真顔で、なんでか歯だけゾロっと剥き出して、じっと立っている。
そして、ビデオの逆再生みたいに、今降りてきた階段をこっちを向いたままで後ろ向きに登りはじめた。
俺も若旦那も冗談か?と思ったが、Aくんはそのまま階段をトン、トン、トン、トンと後ろ向きに登っていく。
進行方向を確認したりもせず、顔はずーっとこっちを向いたまま。
真顔で歯を剥きだした顔のまんまだ。
Aくんは後ろ向きのまま階段を上がり切ると、後ろ向きのまま廊下の奥に後ずさって行って見えなくなった。
なんか只事ではないと感じて、俺と若旦那は階段を駆け上がった。
Aくんは廊下の、一番奥の部屋の襖の前で正座していた。
上半身がふらーりふらーり揺れていて、顔は泣き笑いというか、ホロ酔いで気持ちよくなった人みたいに目をつぶってへらへら笑っていた。
「おいA!」
と、何度呼びかけても反応なし。
そして、Aくんの前のフスマがゆっくり開いた。
Aくんが正座したままフスマの方へ少しずつ動き始めた。
Aくんの体はそのまま部屋の中に入っていって、フスマがまたゆっくり閉まった。
血相を変えた若旦那が俺を押しのけて廊下を走り、フスマをバーンと開けた。
俺も追いかけた。
Aくんはからっぽの部屋の真ん中で、身体を伸ばした気をつけの状態でうつ伏せに横たわっていた。
二人でAくんを引きずり起こした。
そのとき、Aくんがずっと何かを呟いているのに気づいた。
俺にはこう聞こえた。
「さしあげますから。さしあげますから。さしあげますから。さしあげますから。さしあげますから」
そのままAくんを外に引きずっていったが、いくら呼びかけても正気に戻らない。
若旦那が携帯で救急車を呼んだ。
尻つぼみで申し訳ないけど、その後のことは断片的にしか知らない。
その後、若旦那は社長にムチャクチャに怒られてた。
事務所の衝立の向こうで話の内容はよく聞こえなかったけど、他の社員さんがポロッと漏らしたのは、借金で店を畳む時にあの家で人死にがあったらしい。
もちろん社長は知っていて、何かの手続き(お祓い?)を済ませて『きれいになったら取り壊すつもりだった』とか何とか。
それ以上の詳しいことは、若旦那の口からも聞かせてもらえなかった。
Aくんは精神的な発作だろうということで入院した。
何度か見舞いに行くうちにお母さんから話を聞いた。
Aくんは夜になると毎晩ベッドから出て、床でうつ伏せに横になっているとのことだった。
あのときAくんが写真を撮っていた携帯の画像を見せてもらえないかとお願いしてみたが、
「もうお寺さんに預けてありますので」
とのことで、写っていたものは見せてはもらえなかった。
しばらくして俺は大学が忙しくなってバイトを辞め、やがてAくんの見舞いにも行かなくなってしまった。
最後に行った時はもうAくんはガリガリに痩せていたが、それでも毎晩床にうつ伏せに寝ていたそうだ。
軽はずみにあんなことをするんじゃなかった。
俺にもなにか起きるかも…とビビっていた時期もあったが、結局、俺の身の上には何も起きなかった。
今のところはね。
バイトしていた運送会社はまだあるが、こないだ帰省した時に前を通りかかったら、あの倉庫はなくなって駐車場になっていた。
-
-
詮索するな
うちの会社の周りの山について書きます。@四国
うちの会社は、市街地から2~3km入った山中にありますが、普通に敷地内で、猿が追いかけっこをしたり、親子鹿が横切って行ったりする、秘境みたいな所です。
市街地から近いせいか、老夫婦とか、カップルとか散策がてら軽装備で山に入っていきます。
しかしこの山には、林業従事者や地元の人達は絶対にその先は1~2人では入って行かないポイントがあるのですが、散策に来てる人達は知りませんから、平気で入っていきます。
そして、1・2年に一回は遭難者がでます。
うちの会社はそこに施設を構えて5年くらいたちますが、2・3年前の遭難者が何回か見つかったりしました。
普通、注意書きとか、立て看板とか設置するだろと思っていましたが、ここ周辺には一切ないのです。
うちの会社の入り口のすぐ前に、山へ入る道の一つがあるので、昨年の地区会で注意看板を出そうと提案した時も許可がもらえませんでした。
そして、帰り道で地区長さんに言われました。
「余計な事はしないで欲しい。これ以上山の事を詮索するな」と。
去年は、老夫婦の遭難者が見つかりました。
2年前の不明者で、地方版に小さく出ました。
(かなり珍しい。普通はでません)
そして夏、今年もボチボチ川遊びや、トレッキングに来られる人達が見られるようになりました。
皆さん無事にお帰りになって下さいね。
-
-
呪い
私は仕事がら転勤が多く、各地を転々としていました。
時にはアパート、時には貸家。
私が山口の萩というところに転勤になったときの話です。
安く家を貸してもらえるというので、しばらくの間、家を借りることになりました。
ただ問題だったのが、かなりの山奥で、大きい家なのですが、かなり古いものだということでした。
住み始めてから1ヶ月がたとうとするある日。
私の娘が庭で妙な箱を見つけてきました。
家の中も庭も、家に住み始めてから最初の連休のときにくまなく見て回ったはずでしたが、庭に箱などありませんでした。
そう思ったのは、何よりその箱が特徴がある箱で、見て判りそうな目立つ物だったからです。
私には霊感はほとんどないのですが、その箱は異常に不吉な感じがしました。
この時、私の選択が正しければ、恐怖を体験しなかったと思います。
私はこの不吉な箱を燃やしてしまったのです。
ただ一般人的な考えからは、必要無いものは燃やすか捨てるか、そういう選択しかなかったのです。
その当時は・・・
数日して悲惨なことが起こりました。
私の友人の一人が車で事故を起こしました。
車は炎上。
友人が病院に運ばれたときは全身火傷で、すでに息がなかったということでした。
その数日後。
またも私の友人が、家で焚き火をしている際に火が服に移り、右腕と右顔半分を火傷する大怪我を負いました。
病院に入院した友人に会い、事情を聞きました。
友人の話では『事故が起きる数日前、体が焼かれる夢を見た』とのことでした。
私は迷信など信じない性格でしたが、このとき『ひょっとしたら・・・』と思いました。
それから家に帰り、すぐ庭を調べました。
ごみを焼却するごみ穴を調べました。
あの箱は焼け残っていました。
箱を調べようと手を伸ばしたとき、ものすごい寒気が体を襲ったのを覚えています。
箱の中からは人形が出てきました。
全部で3体。
そのうち一体は丸焦げ、一体は半分が焼けた状態でした。
一体はまったく焼けていません。
人形はごく普通の日本人形で、着物を着た女の人形です。
焦げかけた人形を手に取ったとき、焦げた人形の和服がぼろぼろと落ちました。
その人形の裏を見たとき、恐怖のあまり腰を抜かしてしまいました。
そこには友人の名前が書いてあるのです。
クロ焦げの人形の方は名前が見えませんでしたが、大体判りました。
焼けなかった人形に、私の名前が書いてあったからです。
何もかもが不思議でした。
誰がなぜこんな事を。
私と友人もこれといって共通点はありません。
他にも友人はいるのですから。
誰かに恨まれる覚えはありません。
なぜこの家にそんなものがあるのか・・・
家に私を恨んでいた誰かが住んでいたのか・・・
私の知っている人間には山口に住む人はいません。
何もかもが不思議でした。
私はそれからすぐにその家を出ました。
あの人形は寺に預けました。
お寺の人の言葉が今でも心に残っています。
「供養しようと思った。でも供養できるものではない。この人形についた怨念は、人間のものではない」