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黒い影
営業で住宅地を回る事が多いんだが、昼休みは適当な店に入って食事を取る。
その日は大きめな交差点の見える喫茶店でのんびりしていた。
ふっと交差点を見ると、黒い影が交差点を歩いていた。
それに対になる人はいない。
人影だけなんだけど、形は非常口の人影にそっくり。
何だろ……と見守っていたら、人影はくるっと方向を変えて猛スピードで居なくなった。
霊……にしちゃ変だなぁと思って暫くすると、消防車が大量に人影の向かった方に走って行った。
それから四回、人影に遭遇する度に消防車や救急車が人影と同じ方角へ向かった。
ある時、電車に乗っていたが、窓の外を人影が並走していたのを同僚が気づいて教えてくれた。
あ、と思った次の瞬間、人影は電車を追い抜いて行った。
驚いたのはその後だった。
線路の側で燃え始めている家が見えた。
その家の屋根の上で、人影が踊っていた。
黒かった姿は、炎を纏っているようで燃えているような、喜んでるような感じ。
ずっと火事を追い掛けてたのか……と怖くなった。
それから、三回人影を見かけるけど、また火事。
普通の火事もあるけど放火魔もいる地域で、こいつが原因じゃないといいなと本気で思ってる。
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裏の世界
これは裏の稼業の世界であった話。
某組の親父が病気で早死にしたんで跡目を誰にするか?って話になった。
普通、若頭が跡目に決まりなんだけど、その組は少し事情が違ったんだよ。
映画やドラマの世界では極道女がしゃしゃり出てきたりするけど、現実の世界では殆どありえない話。
しかし、この組の跡目争いでは死んだ親父の姐さんが本当に出張ってきた。
この姐さん、先代の娘で親父の妻になった人だから我が強いって言うか根っからの極道と言うか、とにかく男に負けないぐらいの女。
で、この姐さんが、跡目は若頭に譲らない、親父と自分の実子に譲るって言いだしたから問題勃発。
何故なら、実子はまだ小学六年生の小僧だったからだ。
姐さんは実子が大学を卒業するまで、組を自分があずかるとまで言いだす始末。
舎弟衆や若衆は、この組にしたら血筋豊な姫みたいな人だから、強い発言も出来ない状態。
でも、跡目は当然、自分と思ってた若頭は黙っていられないよな。
もともと、姐さんは若頭とは折り合いが悪かったらしい。
姐さんからしたら、キレ者かなんか知らないけど、自身過剰で生意気な奴。
若頭からしたら、自分よりも年下の女の癖に組の事に一々口を出す腹立たしい女って感じだったみたいだ。
姐さんは歳こそ35歳だけど、見た目も若く綺麗な女だったから、27、28ぐらいに見えた。
出るところは出てるから余計にね。
で、その黙ってられない若頭は当然動きだした。
組で扱ってる仕事に細工して死んだ親父に莫大な借金を背負わせた。
最初の内は姐さんも若い衆で何とかしなさいとか、若頭がはめたとか言っていたが、若頭の細工で裏の世界の金では無く、カタギの世界で作られた借金だけに誰も味方は出来なかった。
と言うよりも、しなかったが正解か。
この稼業のやっかいなところは、まっとうな金の借りは自己責任。
子分に助けてもらうなんて、正直いい笑い者。
結局、姐さんはキレ者の若頭に完敗。
自分ではどうにもならないし、子供も抱え、自分も働いた事もない。
莫大な借金で組にも迷惑をかけてしまった。
こうして全ては若頭の狙い通り事が運んだんだよ。
若頭が、組を壊滅の危機に陥れた責任を姐さんに取るように迫った。
形式上とは言え、組を預かると自分で言って杯も返させないで親分代理に付いたのは姐さん自身なのだから。
若頭はまず、姐さんに代紋を自分に渡す事を承知させた。
基本的に姐さんは誰からも杯を受けてないただの組長妻だが、代理として立った以上破門扱いとされた。
これで姐と子の縁を完全に切れさせたわけだ。
それから、借金は若頭が負担する代わりに、若頭の愛人になる事で罪を償うようせまった。
嫌なら将来を待たずに実子に責任を取らせる、とまで言った。
裏の世界では世間の常識が通用しない事を解っていた姐さんは、泣く泣く若頭の条件をのんだ。
前代未聞だが、業界から後ろ指刺される事もない方法で若頭と姐さんは愛人契約を結んだ。
姐さんは三代目となった若頭の家に子供と共に住み込む事になり、その妻(以後、若妻)のお手伝いにまで身分を落とされた。
若妻も三代目と同じく、お互い内心敵視しあっていたから、若妻の喜びも相当だったようだ。
最初の内は姐さんと呼んでいたのに、コイツ、オマエ呼ばわり。
姐さんも元部下の妻、しかも年下の嫌いだった女の言いなりだから、相当の屈辱だっただろうね。
まぁ、この程度の事は後の事を考えれば屈辱でもなんでもなかっただろうけど。
ある日、旅館の宴会場で現三代目体制が祝いの為に勢揃いした。
その席には姐さんや三代目体制の妻たちも。
若妻の命令で、姐さんは全員に酌をして回るように命令された。
ひとり全裸となって組員全員と妻たちに詫びをいれながら回れと。
拒否できない姐さんは涙を浮かべながら酌をして回る。
酔いも手伝ってか、高貴な人物の惨めな姿には全員笑みすら浮かべた。
三代目が恐ろしい提案をした。
全員で姐さんを輪わして結束を固めようと。
女に関しては親も子も無い、穴兄弟になろうじゃないかって言いだした。
そして三代目が姐さんの中に出すともう歯止めがきかない。
周りの妻たちもあきれ気味の態度を取るものの、内心、嫌いだった女の惨めな姿には心底喜んでいた。
一晩で二十数人に輪わさせても、女の恨みは消えないのか、若妻が姐さんをソープランドで働かせる事を提案する。
姐さんは元子分達に輪わされて肉体も精神もボロボロなのに、更に地獄に落とされた気分だろう。
ソープランドで働かされる事に抵抗しても息子の事を出されると従うしかない、可哀相な姐さん。
若妻に借金を組に少しづつでも返していけと言われ納得した。
若妻は一人客をとったら千円の小遣いをやる、と笑いながら小馬鹿にする。
しかも、客にコンドームを付けさせるな、姐さんにもピルを飲むな、と若妻は言う。
何処の誰とも判らない子供を孕み産め、と。
姐さんの力では何世代も返すのにかかる莫大な借金だから、子を産んで借金を分担しろ、と。
姐さんの子なら父親が誰だろうと、可愛い子が産まれるよ、と若妻は高笑いした。
その後の姐さんっていうと…まぁ、悲惨なもんだよ。
ソープで朝から晩まで働かされてるのに、仕事の後に組の若い衆達に輪わされるし、それも頻繁に。
若い衆達にしたら高嶺の花だった姐さんとやれるなんて夢のような事だからな、無理もない話だが。
それでも姐さんにしたら、それすらもマシだって思う事もあるんだよ。
それは、実子である小学生息子の扱い。
姐さんによく似て可愛い顔してるんだが、この業界、因果なもので、そっちの気がある奴も多い。
学校には通わせてもらっていたが、組の若い衆の餌食にもなっていたんだ。
休みの日には、裏のその手の店で客までとらされたりな。
姐さんもそれだけは我慢が出来なくて、三代目の女房に抗議したんだが…
三代目の女房は全く聞き入れない。
逆に海外に売り飛ばしたら高く売れる、と脅される始末。
姐さんからしたら、そんな目にあうぐらいなら、今は息子に我慢してもらって自分が頑張るしかないって感じで泣き寝入りだよ。
しかし、二代目の女房で誰からも羨ましがられた美貌の姐さんが、ソープ嬢にまで身を落とすなんて誰が想像したよ?
本当に三代目夫婦は恐ろしい人達だよ。
まぁ、裏の世界ってのは一度落ちると表の世界と違って二度と浮き上がれない恐ろしい世界ってのは少しは解ってもらえたかな?
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銭湯の鏡
貧乏なアパート暮らしの女です。
風呂が無いので銭湯に行ってる。
いつもの店が休みだったから、ちょっと遠くの銭湯に行った。
浴室には数人のオバちゃんがいて、楽しそうに話し合ってた。
洗髪してると視線を感じる。
洗髪を終えてから顔を上げたら、自分の前の鏡に知らないお婆さんの横顔が映ってた。
横目で、こっちを見てた。(洗髪台の正面が鏡になってる。普通なら自分の正面顔が映るはず)
死ぬほどビックリした。
ビックリしすぎると悲鳴も出せないと初めて知った。
思わず後ろを振り向いたら、誰もいなかった。
というか浴室に誰もいなかった。
さっきまで喋りまくってたオバちゃんたちは、みんな更衣室に移動してた。
もう1度鏡を見たらちゃんと自分の顔が映ったけど、絶対に見間違えなんかじゃないよ。
体格もポーズも違うし、白髪だったし、目が合ったし。
あわてて私も浴室から出た。
洗えたのは頭だけで体は洗えなかったけど、それどころじゃない。
怖いよ。
あのお婆さん誰?
もう二度と、あの銭湯には行かない。
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分岐
マイナーなゲームなんだけど、
『BLOOD+双翼の輪舞曲』
これは主人公の小夜が、いろんな場面で選択を迫られ、答えによってストーリーが変わるゲームなんだけど、中古で買って始めてプレイした時、飛び降り事件の後、学校の屋上でアリアって女が
「私と友達になって。私を助けて。」
というようなセリフを言ったんだ。
アリアはいじめっ子設定だったから、NOを選択したら
「そう、そうよね。」
と、悲しそうなしぐさと会話で終わった。
その後クリアしたんだけど、あのときYESと選択してたらどうなってたんだろうと気になって、最初からやり直したんだ。
でもその場面が出ない。
どうやっても出ない。
もしかしたらセーブデータが残ってるからかと思って、セーブデータ消してもそのシチュエーションが出ない。
攻略サイト見てもそんな分岐ないし、すごい気になってる。
勘違いだったらごめん。
もし詳細知ってる人いたら教えてほしい。
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坊さんの夢
20年ほど前の話です。
私の祖父が救急車で運ばれました。
もはや老衰と呼ばれる状態で、入院したらそこで死を迎えるのは、家族全員がわかっていました。
祖父は救急車で運ばれ入院したその日の夜に、意識を取り戻しました。
祖父は私たちに、
「坊さんが10人並んでいて、それを一人ずつ撃ち殺していくんだが、一人しか殺せなかった」
と話しました。
どうやらそういう夢を見たようです。
その後、祖父は意識を取り戻したり、昏睡状態に陥ったりを繰り返しました。
私たち家族は交代で祖父を見に行っていました。
そして入院してから1週間が過ぎました。
私が祖父の様子を見ていた時のことです。
祖父が目を開け、口をもごもごさせ何か言っています。
私が耳を傾けると、
「坊さんが3人並んでいて、それを一人ずつ撃ち殺していくんだが、一人しか殺せなかった」
と、繰り返し言っていました。
そのときは坊さんの数が減っていることよりも、変な夢を見るなぁくらいに考えていました。
その二日後、医師から祖父の病状は峠を越えたという旨を伝えられました。
しかしその夜、祖父は亡くなりました。
祖父は恐らく、最後の坊さんを撃ち殺したのだと思います。
祖父が自分の死期を感じ取っていたのか、それとも、お迎えが来る予兆だったのかはわかりません。