怖っ!怖っ?怖い話

いろんな怖い話を集めています。

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「 山 」 一覧

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山道のベンツ

友達と山にドライブに行ったとき。

深夜で、しかも霧がかかってたので、後続車も無いしチンタラ走ってたんだ。

俺達は、頂上付近の展望台を目指していた。

すると、かなりのスピードで俺達に接近してくる後続車。

後ろにいた友人が、

「ベンツや!スモーク張ってるし、やばそう!!」

と。

運転手だった俺は、停車するにもこの勢いじゃ追突される・・・!と思い、アクセルを踏んだ。

まだまだベッタリとケツに張り付いてくるベンツ。

霧などお構い無しに、勘だけを頼りに車を走らせていると、ようやく展望台が見えてきた。

俺は展望台の駐車スペースに、スっと車を入れた。

「これで前に行かせられる・・・」

と、ホッとしていられたのもつかの間。

ベンツも同じように停車した。

しかも、出入り口付近に停車しているので、逃げる事も出来ない。

俺達は恐怖の余り、車内で黙る他なかった・・。

そして、ベンツからいかにもな風貌の男が二人降りてきて、俺達に近づいてきた。

コンコン。

と、窓を叩く細身でメガネの男。

パリっとしたスーツを着て、清潔感もあるが、やはり独特のオーラは消せていない。

俺は窓を10センチほど開けた。

「こんな時間に何をしとるんや?」

と聞かれ、

「ここで夜景を見ようと思って・・」

と俺が答えると、もう一人の体格の良いヤクザ風の男が、

「男ばっかりで夜景かいな?寂しいのぅ!」

と笑った。

「煽ってすまんかったな。兄ちゃんらもええ車乗っとるから、こっちのモンか思ってのぅ。勘違いや」

俺達は一気に安心した。

どうやらこれ以上、怖い思いはしなくてすみそうだな・・と思った。

その後、自販機でジュースを奢ってもらい、タバコを吸いながらしばらく談笑した。

100%ヤクザだとは思うが、普通のオジサンみたいな感じもした。

「ほな、ワシら用事があるから行くわ」

と、細身の男。

俺達は礼を言って、二人が車に乗り込むのを見送った。

細身の男が前、体格のいい方が後部のドアを開けて、それぞれ車に乗り込んだ。

男達のベンツはエンジンをかけたまま暫く動かなかったので、その間、俺達も固まっていた。

3分後くらいにブオーン!と勢い良く、登りの方へ消えていった。

展望台より上に行くと、ほとんど整備されていない獣道があるだけなのにな?

と、少し疑問に思ったが、

みんな安心して、

「マジ怖かったー!」

「洒落ならんわ!」

とか、安堵の表情で言っていた。

でもその中で友人のAだけ、まだ暗い表情をしている。

「どうしたん?大丈夫か?」

と、Aに尋ねた。

Aが、

「俺、見てもうた気がする・・・・」

「ゴツイ方が後ろのドア開けた時に、手ぬぐいみたいなんで口塞がれてる人が見えた・・・」

俺達は考えたくはなかったが『山+893=埋める』という嫌なセオリーを頭に浮かべた。

「はよ言えや!!」

と、他の友人が恐怖に満ちた表情で叫んだ。

俺達は、車に乗り込んで一目散に下山した。

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貸し別荘

数年前の話を。

この話は一応口止めされている内容の為、具体的な場所などは書けません。

具体的な部分は殆ど省くかボカしているので、それでもいいという方だけお読みください。

高校3年の夏休みの事。

俺と友人5人は、受験勉強でかなり疲れが溜まっていた事や、高校最後の夏休みということもあって、どこかへ旅行に行こうと計画を立てた。

ただし、もう夏休みに突入していたため、観光地はどこもキャンセル待ちの様な状態で、宿泊地を探すのにかなり苦労した。

そして、やっとの事で近畿地方の高原?のような観光地のペンションにまだ空きがあるという情報をネットでみつけ、まあ騒いでも苦情が無いならどこでもいいかと即決でそこに決めた。

旅行当日、早朝に出発し、昼前に現地に到着したのだが、そこで少し問題が起きてしまった。

どうやら旅行代理店とペンションの管理組合?との間で伝達ミスがあったらしく、俺達は今日から2泊3日で予約していたにも関わらず、ペンションの方には宿泊予定が今日から3日後と伝わっていて、今は満室で1つも空いていないと言い出した。

俺達は、ここまで来てそれはないだろうと文句をいうと、最初はふもとの町にあるホテルなどを紹介されたが、俺達は、ただ観光に来たわけでは無く、夜中に騒いでも苦情が来ないような場所が条件だったため、かなり食い下がった。

するとペンションの人が、

「じゃあ、ちょっと待っていて欲しい」

と、携帯でどこかへ電話をし始めた。

電話の内容は良く解らなかったが、かなりモメていたようで、そのまま15分ほど電話していたが、どうやら話が纏まったようで、

「近場に貸し別荘があるので、そこでどうだろうか?料金はこちらの不手際なのでペンションの代金の3割引で良い」

と言って来た。

俺達は、まぁそれならと納得したが、そこから少し雲行きが怪しくなった。

どうも、その貸し別荘は長い事使われていなかったらしく、準備や掃除に少し時間がかかるらしい。

その間、俺達には交通費と水族館の割引券を渡すので、そこで時間を潰して夕方にまた来て欲しいとの事だった。

その水族館はペンションのある場所からかなり離れていた。

というか県外の某大都市にある水族館で、俺達が見終わって戻ってくる頃には午後6時近くになっていた。

俺達は、

「こんなに準備に時間かかるって、どれだけ放置されていたんだよ」

「廃墟とかじゃねーよな?」

「なんか怪しいんだけど」

などと不安を口にしながら管理事務所に向かった。

ペンションに戻ってくると、先程とは違うおじさんが待っており、準備が出来たので案内すると、歩いて15分ほど離れた森の中にある別荘へ案内された。

そこは完全に森の中で周囲には何も無く、余程大声で騒いでも、まず苦情が来ないような場所だった。

そのおじさんが言うには、暫らく使われていなかったので手間取ったが、電気も水道もガスもちゃんと通っているし、携帯は通じないが管理小屋への直通の電話もある。

何の問題も無いとしきりに説明をし始めた。

俺達は、何かおじさんに必死さが感じられてかなり不安になってきたが、今更どうしようもないので別荘の中に入った。

別荘は外観もそうだったが、洋風のかなり古い造りで、築30年か40年くらい経っていそうな建物で、インテリアもそれに見合ってかなり古臭い。

ただし、使われていなかったという割りにかなり小奇麗だった。

今から思うと、小奇麗と言うより『人が使った痕跡が殆ど無い』といった方が良い感じだったが。

一通り別荘内の説明を聞き、建物も2階建てで広いし、まんざらでもないなと荷物を降ろし、夕飯のバーベキューの準備をしようとしていると、おじさんが去り際におかしな事を言い出した。

ここは夜中に熊が出る可能性があるので、深夜の外出は控えて欲しいと言う。

俺達は何故か、かなり念入りに深夜の外出をしない事を約束させられた。

ペンションの密集地から15分しか離れていないこんな場所に??と皆疑問に思ったが、まぁ恐らくガキが夜中に出歩いて問題をおこしたり、事故に合うと面倒なので怖がらせるような事を言って脅かしているのだろうと納得した。

一日目はそんな感じで過ぎ、晩飯を食った後で夜中の森の中を適当に散策し、花火をしたりゲームをしたりと遊んで深夜2時頃に寝た。

その日は特におかしな事は無かったのだが、次の日、友達の1人が変な事を言っていた。

そいつは夜中に小便がしたくなり、トイレに行くと、外から太鼓の音が聞こえてきたらしい。

俺達は何かの聞き間違いだろうと言ってそのまま流し、本人も気のせいだろうと納得したが、その日の夜に事件が起きた。

その日、晩飯の焼肉を食い、腹もいっぱいになったし、する事が無かった俺達は、昼間見つけた林道へ肝試しに行く事にした。

肝試し中は何事も無く、俺達はつまんねーなと別荘に戻ると、入り口に20代後半くらい?の男が立っていて、ドアノブを握っている。

時間は夜10時頃。

こんな時間に管理人の人が来るとも思えず、『空き巣か?』と俺達が近付いていったのだが、その男はドアノブを握ったまま、こちらを振り向こうともしない。

足音も声も聞こえるのだから、泥棒や不審者の類なら逃げそうな物だが、そいつは10mくらいまで近付いても微動だにしない。

何か気持ち悪かったが、メンバーでリーダー格の友達と俺が、

「おっさん何してんだよ」

と、言いながら近付いていき、男の目の前まで来たのだが、それでも動く気配が無い。

埒があかないので友達が、

「聞こえてないのかよ!」

と、そいつの腕を引っ張った。

その瞬間、俺と友達は、

「うわあああああああああ」

と、大声を上げて後ろへ飛びのいた。

何故飛びのいたかというと、そいつの腕を友達がつかんで引っ張った時、その腕の手首から10cmくらいの場所が、まるでゴムのようにグニャッと関節ではない所から曲がったためだった。

何事かと他の友達が近付いてきたのだが、その時になって男はこちらへ振り向いた。

見た目は普通なのだが、目はどこを見ているのか良く解らない風で焦点が定まっておらず、口をだらんと開けて涎をたらし、その時になって気付いたのだが服装もかなりボロボロで、どう見ても普通の人には見えない。

俺達が呆然と男を見ていると、男は俺達がまるで見えていないかのように、そのままフラフラと森の中へ去って行ってしまった。

俺達はあまりの出来事に動揺し、暫らくその場から動けなかった。

しかし、そのままそこにいるわけにもいかず、俺達はふと我に帰り、大急ぎで別荘内に入りドアの鍵を閉めると、全員で室内の全てのドアの鍵をチェックし、それが終るとリビングに集まった。

そして皆、

「なんだよあれ…」

「幽霊か?」

「でも触れたぞ」

「あの腕の曲がり方ありえないだろ…」

などとパニックになって興奮気味に話していると、今度は外から、

…ドン …ドン …ドン

と微かに太鼓の音?が聞こえて来た。

その音はゆっくりとだがこちらへ近付いてきているようで、俺達はみな押し黙り、聞き耳を立てて音のする方に集中していた。

音が庭辺りにまで近付いた頃、不安が最高潮に達した俺は我慢できなくなり、リビングのカーテンを開けて外を見た。

すると…

暗がりで良く見えないが、何か大きな球状のものが転がりながらこちらへ近付いてくるのが見えた。

太鼓のような音はその球状の物体からしているらしく、…ドンと音がすると転がり、また…ドンと音がすると止まる。

それを繰り返しながら、大通りから別荘へ向かう道をゆっくりとこちらへ向かってきている。

大きさは5~6mくらいあったと思う。

他の友達も、窓を見たまま動かない俺が気になったらしく、全員窓の側へやってきて『それ』を見ていた。

暫らく皆黙ってその様子を見ていたのだが、暗がりで良く解らないので正体がつかめず、誰も一言も話さず、ずっと『それ』を凝視していた。

するとかなり近付いた頃、『それ』は玄関近くまでやってきたため、玄関に付いている防犯用のライトが点灯した。

その瞬間俺は、

「なんだよあれ!洒落になんねーよ!」

と、慌ててカーテンを閉めた。

カーテンを閉める前、一瞬ライトに照らされた『それ』は、なんと表現したら良いのか…

『無数の人の塊』とでも言うような物体だった。

老若男女様々な人が、さっきの男と同じように口を開け涎をたらし、どこも見ていないような焦点の合っていない目の状態で、関節などとは関係なく体と体が絡みつき、何十人もの人が一つの『塊』となって転がっていたのだった。

俺以外も全員、その『人の塊』を見たため、あまりの恐怖に何も言えず、俺達はリビングの端の方に一塊になり、ガタガタと震えながら、

「どうなってんだよ…」

「なんだよこれ…」

などと不安を口にしていた。

暫らくすると、太鼓の音のようなドンという音が聞こえなくなった。

『それ』が、いなくなったのかどうか分からない俺達は、そのままリビングの端でじっとしていると今度は玄関の方から、

ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!

と、激しくドアを叩く音が聞こえてきた。

俺は恐怖と不安でパニック状態で耳を塞ぎ、他の奴も皆耳を塞ぎ、必死で今の事態に耐えていたのだが、暫らくすると今度は建物中のあちこちから、

ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!

と、窓と言わず壁と言わず、あちこちを大勢の人が滅茶苦茶に叩く音が聞こえてきた。

耐えられなくなった友達が、

「電話しよう、管理事務所直通の電話あっただろ、あれで助けを呼ぼう」

と言った。

俺達はハッとその事に気付き、急いで玄関側にある電話に急いだ。

俺が電話を取り『直通』と書かれたボタンを押すと、2、3コールの後、別荘まで案内してくれたおじさんが電話に出た。

おじさんに必死で事情を話すと、おじさんが独り言のように、

「…まさか、まだ出るなんて…」

と呟いた後、

「説明は後回しで、リビングに神棚があるね?そこにお札とセロテープが入っているから、そのお札をドアに貼って待っていなさい」

と言った。

俺達は意味が解らなかったが他に解決策も無く、とにかくリビングへ戻り、神棚を探す事にした。

神棚は部屋の端の方の天井近くにあった。

椅子を使って中を覗き込むと、確かにお札とセロテープが入っている。

俺達は急いでそれを出すと、玄関とリビングの入り口のドアと窓にお札を貼った。

窓にお札を貼る時、なるべく外を見ないようにしていたのが、一瞬だけ外を見てしまった。

すると、青白い腕が数本、窓をガンガン叩くのが見え、更に腕の向こうに、どう考えても腕の位置とは不自然な形で人の顔が見えた。

その顔は、やはり他と同じように焦点が合っていない目でだらんと口を開けていた。

俺は外で『それ』がどんな状態になっているのか、恐ろしくて考える事も出来なかった。

何時間くらい経ってからだろうか、外が明るくなり始めた頃、壁やドアや窓を叩く音は聞こえなくなった。

それでもまだ『それ』がいるかもしれないと思うと動けず、そのままじっとしていると、遠くから車がこっちへ向かってくる音がし始めた。

車が庭に止まると、数人の足音が聞こえてきて、ドアのチャイムを押す音と、

「おーい、大丈夫か?」

と、声が聞こえてきた。

俺達は、

「助かった…」

と、大急ぎで外に出ると、最初にここの手配をした人と案内した人、その他に3人のおじさんが来ていた。

手配をした人と案内をしてくれた人がすまなそうに、

「本当にすまない、もう大丈夫だと思っていた。事情を説明するからとにかく荷物をまとめてきてくれ、ゴミとかはそのままでいいから」

と言い、俺達はその通りにして別荘を出た。

車に乗せられ、俺達は神社へ案内された。

一緒に来ていた3人の人は、その神社の関係者らしい。

俺達はホッとして緊張感が解けたのと、助かったと言う気持ちもあったが、それ以上に怒りが湧いてきて、

「何であんな場所へ泊めたんだよ!」

と怒った。

すると神社の神主さんらしき人が、こんな話をし始めた。

あそこは昭和40年代までただの森だったのだが、観光地開発をするということで40年代の終わり頃に人の手が入った。

それで順調に開発が進んでいたのだが、あの別荘を建てた昭和50年代前半頃からおかしな事が起こり始めたとか。

別荘が原因なのか、開発そのものが原因なのかは今でも解らないらしいが、とにかくあの太鼓の音や人の塊がその頃から出没し始め、最初の別荘の持ち主と、その次の持ち主はあそこに宿泊中に失踪してしまったらしい。

それで売りに出され、今の管理組合が所有する貸し別荘となったのだが、それからも何度もあの人の塊は現れ、被害者は出なかったが、目撃者から散々苦情を言われたので、神主さんが10年ほど前に御払いをしたとか。

それ以後、貸し出されてはいなかったが、掃除や整備に来た人達は、誰も『それ』を見かけていなかったため、もう大丈夫だろうということで俺達に貸したらしい。

その結果が昨晩の事件。

俺達は完全に巻き込まれた被害者なので、散々文句を言うと、管理人の人がここまでの交通費と食費はこちらが持つ事、別荘のレンタル費用もいらないし、次に旅行をする時は大幅に割引するように代理店に口利きもする、だから本当に申し訳ないけど、この事は黙っていて欲しいと頭を下げてお願いしてきた。

俺達は何か言いくるめられた気もするが、警察にこんな話をしてもどうせ信じてもらえないだろうからと、渋々その話を飲むことにした。

上に書いたように、そういう事情なので詳しい地名などは書けません。

ちなみに、去年割引してくれるというので旅行代理店に電話した時に聞いたのだが、あの別荘は取り壊され、今は更地になっているらしい。

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富士五湖有料道

A(坊さん)の話。

ただの恐い話だけど。

一緒に静岡の友人宅に遊びに行き、帰りは夜中になった。

戻るのは東名使うのだけど、なんとなく富士五湖使って帰ろうと言う話になった。

沼津(だっけ?)で一度下りて富士五湖有料道に入った。

この道ほんと真っ暗でやな感じです(‘A`)

霧も出てた。

トンネル抜けて長い下りになった時、Aが助手席から後ろを見ながらこう言った。

A「変なの来るから広い所あったら寄せて先譲れ」

ちょっと先に避難帯みたいなのがあったので、そこに一時停止して後ろの何かを待つ・・・

・・・来ました。

見ちゃいました。

まんま自衛隊の幌付きのトラックです。

運転席は見えませんが、幌の部分がボロボロで後ろの積み荷が丸見え。

スーツ姿の人、赤ん坊抱えた女、もう明らかに平成の人じゃない格好の人も居た。

霧の中をライトも点けずに走り過ぎて行った。

俺もAも絶句。

何あれ・・・状態。

ラジオもノイズ入りまくり。

A「車出せ。すぐに」

俺「え、追い掛けるのかよ?」

A「違う、ヤバいのが居る」

何の事かわからず、パニくったがアレ以上にヤバいのが居るのだと悟り、すぐ本線に戻り出発。

料金所まで来たが例のトラックは見えなくてホッとしたw

談合坂で夜食を食べながらAから聞いた話。

あのトラックは何だかわからないが、まあ理解を超える物だろうなw

それより、俺達の車が止まったすぐ後ろに青白い顔した女が立ってたんだ。

右のドアから後ろの席に入り込もうとしてたので車を出せと言った。

おいおいおいおい・・・マジかよ・・・。

なんとか飯食って車に戻り、後ろのドア見て固まったわ。

車は霧で濡れてたんだけど、窓にくっきり手形が付いてた。

Aに手をあわせて貰って安全運転で帰りましたw

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北海道のとある峠

五年くらい前、仕事で北海道のとある峠をよく通ることがあった。

その峠は雨が降ると霧がかかるというか、地元ではガスがかかると言うんだけど、その日も雨がシトシト降り、峠自体がモヤっていた。

いつもは峠を下り、海側にしばらく走っていると、霧は無くなるんだけど、その日はずっと霧がかかった状態だった。

視界が悪いし、なんだか嫌だなあと思って運転していると、霧の中にボヤーっと光が見えた。

そういえば、ここにはポツンと公衆電話BOXがあったはずと思いながら走っていると、突然その部分だけ霧がなくなり、公衆電話BOXがきれいに見えた。

すると、中に髪の長い女の人が見えたような気がした。

しかし、もう午前一時を回っているし、街からは相当離れているし、ここら辺にはダムしかないはず。

こんな人里離れた公衆電話BOXに、人なんか居るわけないと言い聞かせ、気にしないようにしようと思っていると、突然携帯が鳴った。

道路は霧でモヤっているので路肩に止めるのは危険だと思い、休憩用のパーキングのとこまで走り、車を停め携帯を確認すると、着信履歴は『公衆』となっていた。

しばらく考えてみたが、こんな時間に公衆電話から掛けてくるヤツはいないだろう。

間違い電話だと思い、車を発進させようとすると、また携帯電話が鳴った。

今度も同じく『公衆』と表示されている。

さっきの公衆電話BOXを思い出し怖くなり、携帯を持つ手が震え、脂汗が背中を伝った。

電話はずっと鳴り続けいている…

気持ち悪いので携帯の電源を切り、車を発進させようと前を見ると、髪の長い女が立っていた。

「うっ!」

俺は息を飲むと体が固まってしまった。

すると、その女はスーっと運転席の横に移動してきた。

一分くらいそのまま横にいて、俺は目だけ右に動かし、その女の動きを見つめた。

メチャメチャ怖いにもかかわらず、目線がその女から離せなくなっている。

すると突然、車の中で、

「私の事…見えてたんでしょ?」

と女の声が聞こえた。

全身鳥肌が立つのがわかった。

そして車の横にさっきの女が居ないことに気がついた。

どこにいったんだ!

俺は心臓がバクバクとなり、もうパニックになり、何も見たくないと目を瞑った。

今度は、

「見えてたんでしょ…」

と、いきなり耳元で吐息がかかる感覚がした。

俺の記憶はここまでしかない。

気がつくとパーキングで朝を迎えていた。

それ以来、昼でも夜でも迂回してその道は通らないようにしている。

みんなも深夜の走行中の着信には気を付けたほうがいいぞ。

特に公衆からの着信ならば。

お前らは気付かなかったけど、向こうからは見えていたかもしれないのだから…

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着物の少女

毎年夏、俺は両親に連れられて、祖母の家に遊びに行っていた。

俺の祖母の家のある町は、今でこそ都心に通う人のベッドタウンとしてそれなりに発展しているが、二十年ほど前は、隣の家との間隔が数十メートルあるのがざらで、田んぼと畑と雑木林ばかりが広がる、かなりの田舎だった。

同年代の子があまりいなくて、俺は祖母の家に行くと、いつも自然の中を一人で駆け回っていた。

それなりに楽しかったのだが、飽きることもままあった。

小学校に上がる前の夏のこと。

俺は相変わらず一人で遊んでいたが、やはり飽きてしまって、いつもは行かなかった山の方へ行ってみることにした。

祖母や親に、「山の方は危ないから言っちゃダメ」と言われていて、それまで行かなかったのだが、退屈には敵わなかった。

家から歩いて歩いて山の中に入ると、ちょっとひんやりしていて薄暗く、怖い感じがした。

それでもさらに歩いて行こうとすると、声をかけられた。

「一人で行っちゃだめだよ」

いつから居たのか、少し進んだ山道の脇に、僕と同じくらいの背丈で、髪を適当に伸ばした女の子が立っていた。

その子は着物姿で、幼心に変わった子だなと思った。

「なんで駄目なの?」

「危ないからだよ。山の中は一人で行っちゃ駄目だよ。帰らなきゃ」

「嫌だよ。せっかくここまで来たんだもん。戻ってもつまらないし」

俺は、その子が止めるのを無視して行こうとしたが、通りすぎようとした時に手をつかまれてしまった。

その子の手は妙に冷たかった。

「……なら、私が遊んであげるから。ね?山に行っちゃ駄目」

「えー……うん。わかった……」

元々一人遊びに飽きて山に入ろうと思っていたので、女の子が遊んでくれると言うなら無理に行く必要もなかった。

その日から、俺とその女の子は毎日遊んだ。

いつも、出会った山道の辺りで遊んでいたので、鬼ごっことか木登りとかが、ほとんどだった。

たまに女の子が、お手玉とか、まりとかを持って来て、俺に教え込んで遊んだ。

「Kちゃん、最近何して遊んでんだ?」

「山の近くで女の子と遊んでる」

「女の子?どこの子だ?」

「わかんない。着物着てるよ。かわいいよ」

「どこの子だろうなあ……名前はなんつうんだ?」

「……教えてくれない」

実際その子は、一度も名前を教えてくれなかった。

祖母も親も、その子がどこの子か、わからないようだった。

とりあえず、村のどっかの家の子だろうと言っていた。

その夏は女の子と何度も遊んだけど、お盆を過ぎて帰らなきゃならなくなった。

「僕、明日帰るんだ」

「そうなんだ……」

「あのさ、名前教えてよ。どこに住んでるの?また冬におばあちゃんちに来たら、遊びに行くから」

女の子は困ったような、何とも言えない顔をしてうつむいていたが、何度も頼むと口を開いてくれた。

「……名前は○○。でも約束して。絶対誰にも私の名前は言わないでね。……遊びたくなったら、ここに来て名前を呼んでくれればいいから」

「……わかった」

年末に祖母の家に来た時も、僕はやはり山に行った。名前を呼ぶと、本当に女の子は来てくれた。

冬でも着物姿で寒そうだったが、本人は気にしていないようだった。

「どこに住んでるの?」

「今度、僕のおばあちゃんちに遊びに来ない?」

などと聞いてみたが、相変わらず首を横に振るだけだった。

そんな風に、祖母の家に行った時、俺はその女の子と何度も遊んで、それが楽しみで春も夏も冬も、祖母の家に長く居るようになった。

女の子と遊び始めて三年目、俺が小二の夏のことだった。

「多分、もう遊べなくなる……」

いつものように遊びに行くと、女の子が突然言い出した。

「何で?」

「ここに居なくなるから」

「えー、やだよ……」

引越しか何かで、居なくなるのかなと思った。

自分が嫌がったところで、どうにかなるものでもないと、さすがにわかっていたが、それでもごねずには居られなかった。

「どこに行っちゃうの?」

「わからないけど。でも明日からは来ないでね……もうさよなら」

本当にいきなりの別れだったので、俺はもう、わめきまくりで女の子の前なのに泣き出してしまった。

女の子は、俺をなだめるために色々言っていた。

俺はとにかく、また遊びたい、さよならは嫌だと言い続けた。

そのうち女の子もつうっと涙を流した。

「……ありがとう。私、嬉しいよ。でも、今日はもう帰ってね。もう暗いし、危ないからね」

「嫌だ。帰ったら、もう会えないんでしょ?」

「……そうだね……。あなたと一緒もいいのかもね」

「え?」

「大丈夫。多分また会えるよ……」

俺は諭されて家路についた。

途中、何度も振り向いた。

着物の女の子は、ずっとこちらを見ているようだった。

その日、祖母の家に帰ったらすぐに、疲れて床に入ってしまった。

そして俺は、その夜から五日間、高熱に苦しむことになった。

この五日間の事は、俺はほとんど覚えていない。

一時は四十度を越える熱が続き、本当に危なくなって、隣の町の病院に運ばれ入院したが、熱は全然下がらなかったらしい。

しかし五日目を過ぎると、あっさり平熱に戻っていたという。

その後、祖母の家に戻ると、驚いた事に俺が女の子と遊んでいた山の麓は、木が切られ山は削られ、宅地造成の工事が始まっていた。

俺は驚き焦り、祖母と両親に山にまで連れて行ってくれと頼んだが、病み上がりなので連れて行ってもらえなかった。

それ以来、俺は女の子と会う事は無かったが、たまに夢に見るようになった。

数年後聞いた話に、宅地造成の工事をやった時、麓の斜面から小さく古びた社が出てきたらしいというものがあった。

工事で削った土や石が降ったせいか、半壊していたという。

何を奉っていたのかも誰も知らなかったらしい。

その社があったのは、俺が女の子と遊んでいた山道を少し奥に入った所で、ひょっとして自分が遊んでいたのは……と思ってしまった。

実際、変な話がいくつかある。

俺の高校に、自称霊感少女がいたのだが、そいつに一度、

「あんた、凄いのつけてるね」

と、言われた事があった。

「凄いのってなんだよ?」

「……わかんない。けど、守護霊とかなのかな?わからないや。でも怪我とか病気とか、あまりしないでしょ?」

確かに、あの高熱以来、ほぼ完全に無病息災だった。

さらにこの前、親戚の小さな子(五才)と遊んでいたら、その子がカラーボールを使ってお手玉を始めた。

俺にもやってみろと言う風にねだるのでやってみると、その子は対抗するかのように、いくつもボールを使ってお手玉をした。

何度も楽しそうにお手玉をした。

あんまり見事だったので、後でその子の親に、

「いやー、凄いよ。教えたの?あんな何個も、俺だってできないよ」

と言うと、親はきょとんとして、

「教えてないけど……」

と答えた。

もう一度その子にやらせてみようとすると、何度試してみてもできなかった。

「昼間みたいにやってみて」

「?なにそれ?」

と言う感じで、昼の事を覚えてすらいなかった。

何と言うか、そのお手玉さばきは、思い返すとあの女の子に似ていた気がしてならない。

今もたまに夢に見るし、あの最後の言葉もあるし、ひょっとしてあの子は、本当に俺にくっついてるのかなと思ったりする。

ちなみに女の子の名前は、なぜか俺も思い出せなくなってしまっている。

不気味とかそういうのはなく、ただ懐かしい感じがするのみである。