怖っ!怖っ?怖い話

いろんな怖い話を集めています。

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「 月別アーカイブ:2013年04月 」 一覧

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廃虚の神社

これは五年程前からの話です。

当時、私は浮浪者でした。

東京の中央公園で縄張り争いに敗れて危うく殺されかけ、追放されたあと各地を転々とし、最後に近畿地方の、とある山中の神社の廃墟に住まうようになりました。

ふもとに下りては、何でも屋と称して里の人の手伝いをし、手間賃を頂いて食いつなぐ身の上でした。

その生活の中で一番恐ろしかったのは、人間です。

「何でも屋です。何が御用はございませんか」

と言っただけで、いきなり猟銃を向けられた事も御座います。

「一度弾を込めたまま、人間に向けてみたかったんだ。ほらよ」

と、口止め料まがいの大金(恐怖に慄いた代金は一万円でした)を渡されましたね。

付近を走る暴走族に、

「お前に人権はねえ」

と追い回され、棒切れで叩かれた挙句、足が折れたこともございます。

その時は、よく手伝いに行くかわりに野菜を分けて頂いてた農家の方が様子を見に来てくださり、あやうく歩けずに餓死するところを救われ、病院にかかる代金までもって頂きました。

その農家の方からは、さまざまな恩を受けました。

「手に職はあったほうがいい。うちじゃ雇ってやれないから、せめて作物を育ててみて」

そのように仰り、色々な苗や種を分けて頂きました。

荒れた境内の砂利を少しよけて、硬い土を耕し、近くの川からへたくそな水路をひいて引き入れ、ちょっとした農園を造るに至りました。

ある時、何度かに分けて訪れた茶髪の廃墟探検の人たちに、この農園は大量の除草剤を撒かれて全滅させられました。

私はこういう団体が来る度、暴走族の一件を思い出して隠れるようにしていたのですが、このときほど角材でも持って殺してやりたいと思った事は御座いません。

そこでの生活は、どなたかから恩を受け、それをどなたかに奪われることの繰り返しでした。

こうした生活をしていると、不思議と心が澄んできます。

所詮人間は悪徳の持ち主ばかりだ、と悟るのです。

そして、徳の高く優しい人たちにあこがれるようになります。

そういう風になってくると、別に幽霊を見ても必要以上に恐くはなくなります。

実はこの神社、社務所にほんとに幽霊が出たんです。

髪がぼさぼさで、白着物に朱袴の女性でした。

生活し始めの頃に気づき、以来おびえて社務所には近づかず、物置小屋で暮らしておりました。

しかし、悟ってしまった頃から頻繁に社務所に出入りするようになり、大工の親方とも知り合い、古くなった工具を分けてもらった四年前、仕事を覚えてみるついでに社務所の修理を始めました。

『出て行けっ!たたり殺すぞ』って具合に睨まれましたよ。

何度かちびりました。

でもね、修理をして雑巾がけをしてとしていくうちに、だんだん付き合い方を覚えました。

まず、必要以上にうるさくしない。

次に神さんじゃなくて、その人に挨拶をしてから入り、出るときも挨拶して出る。

社務所が綺麗になる頃には、幽霊のお嬢さん、出てきても穏やかな表情をするようになりました。

たまに、さらさら音が聞こえたような聞こえてないような時は、決まって髪を櫛擦ってる。

そして二年前。

前に私の足を折った暴走族が、また境内へとあがってきましてね。

私、逃げ切れずに捕まって袋叩きにされました。

頭も殴られて、ぐわんぐわんいってましてね。

足なんか痙攣してて、立ち上がって逃げようにもすぐ転ぶ。

深夜の話なんで、昼間よりもっと助けも望めず。

こりゃあ巫女さんのお仲間になるなと思いました。

若者達はへらへらと笑っているし、私がもう命の限界に近いなんて理解もしてないようでした。

すると驚いた事に、境内をかけあがってくる足音がするじゃないですか。

暴走族たちも、私を殺そうとする手を休めてそちらを見ました。

すると、ふもとの危ない猟銃持ちのおじさんがやってきて、いきなり銃を暴走族達に向けるじゃありませんか。

しかも発砲したんですよ。

わざと外したようですがね。

暴走族が慌てて逃げ出したのをみて、私、意識失いました。

病院で目を覚ました後、見舞いにやってきたおじさん。

聞けば、巫女の幽霊に夢の中で脅かされ、飛び起きたら目の前に血走った目をした巫女の幽霊がいた、なんて肝の縮まる思いをしたそうで。

幽霊撃つためにとった銃も、銃床で殴りつけても、そりゃ素通りだったそうですよ。

あまりの恐さに逃げ出したら、追っかけられて神社まで追い立てられたと。

だから私ね、

「実は、あの廃墟にゃ巫女の幽霊が出るんだよ」

って切り出して、社務所の修理と、巫女の幽霊が恐くなくなったとこまで話してやったんです。

そしたらおじさん、

「そりゃあんた、幽霊と内縁の夫婦になってるよ」

と真顔で。

退院して真っ先にお礼しましたよ。

以来、ちょっと生活苦しくても巫女さんの為に一膳のご飯用意してね。

嫁の飯も用意できないんじゃ男廃りますし。

多分あれはただの夢ですが、巫女さんと何度も一晩中貪りあった。

祝言もあげましたよ。

神主もいない神社ですが、まあ神前結婚の気分でね。

そして一年前。

この神社の廃墟を含む山の所有者って方がやってらっしゃいましてね。

元々は、この神社の神主の一族だって話してらっしゃいました。

この神社、別に霊験あらたかでもないし、歴史的に由緒あるわけでもなし、終戦後の神道の混乱期に神主不在となって以来、荒れ放題だったとか。

ところが、みすぼらしいのは同じでも、神社がすっかり生気溢れてることに感激したって泣き出しましてね。

私に神社のある山と、ふもとの農地ををくださったんです。

どうせ二束三文の土地なら、活用してくれる人に持っててほしいってね。

農地は、よくしてくれた農家の方に安く貸し出し、私は今東京に出稼ぎにでてます。

なかなか家には戻れんので嫁が夢に出てくることが多いですが、いつかこっちもくたばって、その後ずっと一緒にいれるんだから我慢してもらわないと。

今は金を貯めて、私らが死後暮らすあの神社をもっとちゃんと修繕し、もう一度ちゃんと神社として神主を迎えられる状態にしないといけない。

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さえがみさん

俺は、子どもの頃は超がつくド田舎に住んでいた。

山々に囲まれた閑静な農村地帯だった。

その村では一年のうちで、ある月の満月の日の前後一週間は、絶対に山に入ってはいけないという決まりがあった。

村の子どもたちは、その期間は山の神様が降りてこられる日だからと聞かされていた。

その期間は、山の入り口の所にある道祖神様(俺らは「さえがみさん」って呼んでた)の祠の前で山から村に入る道に注連縄を張って道祖神様を御祭りしていた。

このお祭りの間は、子どもだけでなく大人たちも決して山に踏み入ることは許されなかった。

村の子どもたちは物心ついたときから厳しく戒められているのと、山に入っても楽しい時期でもなかったこともあって、わざわざ叱られるのを覚悟で山に分け入るやつはいなかった。

とはいえ、腕白盛りの子どもたちのことだから、それでも数年に一人か二人は無謀にも山に入ろうとする馬鹿が現れるのが常だった。

隠れて山に入ったのが見つかったやつは、厳しく叱られて頭を丸坊主にされて学校を休まされた上で隣村にある神社で泊り込みで一週間修行させられるというお仕置きが待っていた。

それを見た村の子供たちは、お仕置きを恐れて期間中は山に入らないが、世代交代した頃にまた馬鹿が現れる。

お仕置きを見て自重。

忘れた頃にまた。。。ということが繰り返されていた。

ここまでの話だと、田舎によくあるわけのわからない風習で終わってしまうのだけど、俺が小学6年のときにその事件は起こった。

起こったといっても俺自身が『何か』を見たというわけではないし、『それ』自体も単なる村の風習と精神錯乱で、オカルトとは関係ないと言われればそれまでかもしれない。

ただ、村の禁を破って山に入った俺の従兄弟の妹が精神に異常をきたしてしまい、その兄も責任を感じてかその後おかしくなってしまったという事実だけが残っている。

その年は、従兄弟の親父さんがお盆に休みを取れないということで、お盆の帰省の代わりに季節外れのその時期に一家四人(両親と兄と妹)で里帰りしてきた。

普段だったら誰も訪れないような時期のことである。

そして、それが全ての間違いの元だった。

村の子どもたちは、その時期に山に踏み入ってはいけないと厳しく教えられていたが、従兄弟たちは普段はこの時期には村には帰ってきていないのでそのことは知らなかった。

祖父と祖母が従兄弟たちにそのことを教えたが、都会育ちの従兄弟たちにとってはイマイチ理解できていなかったのかもしれない。

あるいは、古風な村の風習だということで迷信だと馬鹿にしていたのかもしれない。

今となっては知るすべもないことではあるが。

従兄弟たちが普段帰省してくる夏休み中であれば、俺たちも学校が休みなので一日中つきっきりで遊びまわれるが、あいにくとその時期は平日で、俺たち村の子どもたちは学校に行かなくてはいけなかった。

学校が終われば俺たちは従兄弟たちと一緒に遊ぶわけだが、少なくとも午前中は従兄弟たちは彼ら兄妹だけで遊ぶことになる。

俺たちが学校に行っている間は、祖父母が山に入らないように見てたりするわけだが、さすがに常につきっきりというわけにはいかない。

それでもまぁ、3日目くらいまでは従兄弟たちはおとなしく祖父母の言いつけを守っていた。

少なくともそう思わせていたわけだ。

問題が起こったのは従兄弟たちが村にやってきて4日目のことだった。

さえがみさん(道祖神様)の御祭りも丁度中日でその日が満月の日だった。

俺たちが学校に行っている午前中に、祖父母に隠れて従兄弟の兄(Sとする)が妹(Y子)を連れ出してこっそり山に入ってしまったらしい。

Sは祖母に

「妹と川で遊んでくる」

と言って出かけたそうだが、俺たちが昼頃に家に帰って(土曜日だった)川にSを探しに行ったら姿が見えなかった。

最初はもしかして事故かと思ったけど、川に行くときにいつも自転車を止めさせてもらうことになっている友人Dのおばちゃんに聞いたら

「朝から来てない」

とのことで、俺は友人たちと一緒にSたちを探すことにした。

そうしたら、友人のTが山の入り口の近くの木陰にSの乗っていた自転車(祖父の家のやつ)が隠すように老いてあるのを見つけた。

あいつら、隠れて山に入ったのかと思って追いかけようとしたけど、厳しく山には入るなと言われていたこともあって、その前に祖父に知らせることにした。

家に帰って祖父に知らせたところ、祖父は

「それは本当か!」

と普段は温和な祖父らしくない形相で聞いてきた。

それを聞いた祖母は血の気の引いた顔をしていた。

叔父(Sの父親で俺の親父の弟)も心なしか顔色が悪かった。

叔母(Sの母親)は何が起こっているのか理解できていない様子だった。

祖父は俺から話を聞いてすぐにどこかに電話していた。

その後はもう大変だった。

村の青年団がさえがみさん(道祖神様)の社のある山の入り口に集合して、長老たちが集まって何事か話し合っている。

いくら村の決まりごととはいえ、子どもが山に入ったくらいでこれはないやろと思ったのを覚えている。

その後のことだけど、青年団が山の入り口に集まってしばらくした頃に、Sが何かに追いかけられるかのような必死の形相で山道を駆け下りてきた。

それを見た祖父が、さえがみさん(道祖神様)の所に供えてあった日本酒と粗塩の袋を引っ掴んで酒と塩を口に含んでから、自分の頭から酒と塩をぶっ掛けて、それからSのところに駆け寄ってSにも同じように頭から酒と塩をかけていた。

その後でSにも酒と塩を口に含ませていた。

酒と塩を口に入れられたSは、その場でゲェゲェと吐いていた。

Sが吐き出すもの全部吐き出してから祖父がSを連れて戻ってきた。

祖父とSが注連縄を潜るときに、長老連中が祖父とSに大量の酒と塩をぶちまけるようにぶっかけていた。

その後、Sは青年団の団長に連れられてどこかへ連れて行かれた。

(後で聞いたところによると隣村の神社だったらしい)

妹のY子だけど、何故か祖父も含めて山に入って探そうとはしなかった。

不思議に思って父に聞いたら

「今日は日が悪い」

と言って首を横に振るだけだった。

叔母が半狂乱になって

「娘を探して!」

と叫んでいたが、悲しそうな諦めの混じったような表情の叔父がそれを宥めていたのが印象に残っている。

結局、Y子はそれから4日後に山の中腹にある山の神様の祠で保護された。

後で聞いた話では、そのときにはもうY子は精神に異常をきたしていたそうだ。

発見された後でY子は何故か病院ではなく、兄と同じく隣村の神社に送られたらしい。

このとき村の長老たちの間で一悶着あったらしいと、かなり後になって父から聞いた。

後日談だけど、Y子は今でも隣村の神社にいるらしい。

表向きは住み込みで巫女をしているということになっているけど、実際は精神の異常が治らずに座敷牢みたいな所で監禁に近い生活を送っているそうだ。

このことは一族内でもタブーとされていて、これ以上詳しいことは聞き出せないんだ。

監禁の件は、親父を酒に酔わせてやっと聞き出せたくらいだし。

Sの方だが、彼は一時期は強いショックを受けていて錯乱気味だったけど、その後は心身ともに異常はなく普通に生活を送っていたそうだ。

あの事件以降は、叔父一家は帰省しなくなったので俺が直接Sに会うことはそれ以降なかったわけだが、その後Sは妹をおかしくしてしまったのは自分の責任だと思い詰めて精神に異常をきたしたらしい。

おかしくなったSは、18歳のときに妹が見つかったという山の神様の祠の前で自殺したと聞いた。

そのときには俺は進学で村を出ていたので、その話を聞いたのは成人して成人式で村に帰省したときだった。

以上、体験した俺も何が何だかわからない話です。

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慰霊の森2

うちの父ちゃんは筋金入りのバカだったので、大学のサークルも『オカルト研究会』とかいうのに入って、毎シーズン心霊スポットに凸ばっかりしていた。

2年の夏休み、その年はちょっと遠出をして、岩手の『慰霊の森』に行こうという話になった。

メンバーは父ちゃん、同期、先輩×2で、4人を乗せた灰色のバンは、夜の1時頃に目的地に到着した。

車を停めて、一行は懐中電灯片手に慰霊碑へ。

途中、足場が悪くて何度か転んだが、それ以外は特に何事もなく、線香をあげて下山。

「何も起こらなかったな」

と談笑しながら、4人は乗ってきたバンのもとへ。

乗り込んでエンジンを掛けたところで、父ちゃんはションベンがしたくなったという。

ひとりの先輩と共に、立ちションをしに降りた。

ややしてションベンを済ませ、車の方に向き直ると車の上に何かいた。

そいつは車の上に仰向けに寝そべり、手や足をめちゃくちゃに振り回して、激しいブレイクダンスを踊っているように見えた。

ただ、体中にやたらと多い関節が、ありえない方向に曲がりまくっていた。

しばらく呆然としてその光景を眺めていた父ちゃんだが、そいつが勢いのあまり車から落ちたところで、はっと我にかえった。

いつの間にか、ションベンが終わった先輩が横に居た。

父ちゃんが興奮気味に、

「ヤバイっすね!見ました!?今の!すげえ踊り!」

と横を向くと、先輩は

「ちげえよ、ありゃ千切れかけの手足振り回してただけだ」

と言って泣きそうな顔。

車の下では、まだ何かがバタバタともがいているようだったが、父ちゃんたちはそれを見ないようにして車に乗った。

因みに、あの事故で、手足がちぎれそうになりながらも、僅かの間生きながらえたような犠牲者はいない。

きっとあそこには、事故犠牲者以外の何かが居る。

【 でじほん! 】

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慰霊の森1

オカルト大好きな小沢県民だったら誰もが知ってる、あの森があるよな。

東北でも最強クラスの心霊スポット!飛行機墜落事故で有名な○石のあの森だ。

俺なんか、もうすぐ三十路だっつうのに、あそこの話をするだけで鳥肌がたっちまう。

当時担任だったオカルト好きの小学校の先生が、こんなことを言ってたっけ。

「遊び半分であそこだけはいっちゃいけないよ。仮にもし君達が、大人になって誰かと行くことになったなら、階段の数でも数えてみるといい。誰一人同じ数じゃなくなるだろうね」って。

今はどうだかしらんが、一晩置いて行かれた女が白髪になった話とか、車が手形だらけなるとか、昔は特にヤバかったらしい。

エンジン掛かんなくなるとか、今でも普通にありそう。

中でも、俺が聞いた一番怖い話は、仲良し6人組で、悪乗りして広場みたいな所でキャンプをしようってことになったらしい。

だが、昼にテントを張る時、いきなり始まってたって話。

すでに一人多いんだってwww

気づいたけど、誰一人そのことにツっこまなかったって。

そんな状況になったら顔も上げれないよなw

大急ぎでテントを組み立て中に入ると、

「熱い・・・」

等、ささやきが聞こえてくるし、テントは手で触ったかのようにガサガサ揺れたらしい。

彼らはなんとか我慢して、明るくなったら逃げだしたそうだ。

書いてて気分悪くなるなぁ。

ホント、あそこにはしんでも行きたくないわ。

【 でじほん! 】

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木が生える人

俺の友達に変なやつがいる、そいつの話を。

そいつは女なんだが、なんと言えば良いのか、とにかく不思議な感じのするやつで、けっこうかわいいので最初俺は付き合いたいと思い色々しようとしたが、なぜか雰囲気的にできず、いつの間にか普通の友達みたいになっていた。

その子が、去年の11月に俺のアパートに遊びに来ていた時のこと。

最初はゲームとかやっていたが途中で飽きてしまい、何となくテレビをつけて見ていた。

特に面白いものがやってるわけでもなく、ぼーっと見ていると、そいつが独り言のようにボツリと

「あ…この人もだ」

と言い出した。

俺は殆どテレビを見ないので良く解らないが、どうも今映っている若手らしいお笑い芸人の事を言っているようで、俺は

「何が?」

と聞き返した。

すると彼女は、最初

「何でも無いからw」

と笑って誤魔化していたんだが、俺は暇だった事もあり話題が欲しくてしつこく聞いてみた。

すると渋々こんな話をし始めた。

「こんな事言うと変な人に思われるかも知れないけど、昔から特定の人に変なものが見えるときあるんだ。高校生の頃までは、ほんとに極稀な感じだったんだけど、最近その変なものが良く見える、今の人にもそれが見えた」

俺は意味が解らず

「それってよく言う霊感みたいなやつか?」

と聞くと、彼女は

「そうなのかな?幽霊とかは見た事無いんだけど…」

と言葉を濁した。

俺はその時は結構どうでもよくて、まあ話のタネになればと思い詳しく聞いてみると、彼女が見えるのは人型の何かとか黒いモヤとか、そういう『よくある』ものではなく、たまに人の背中から生えている木?のようなものが見えるときがあるらしい。

彼女はそこまで話すと、突然ハッとした顔をして

「信じなくて良いよw忘れてw」

と笑いながら言い、その話をもう終わりとばかりに友達呼んで夕飯でも食べに行こうと言い出した。

何か雰囲気的に『それ以上、その事を追求しないでくれ』と言っているようで、俺はまぁいいかとその話をするのを止めた。

携帯で何人かの友達を呼んでファミレスで飯を食い、まだ時間あるしカラオケでも行くか?とファミレスの外で話していると、その彼女が人込みの方を見て

「あ…」

と呟いた。

結構大きな声だったため、みんなその方向に注目していると、突然道を歩いていた高そうなスーツを着たサラリーマン風の人が、よろよろとし始め、そのまま道に倒れた。

周囲は大騒ぎとなり、救急車が呼ばれてその男の人はそのまま運ばれていった。

その一部始終を見終わった頃、女友達の一人がその子に

「また見えたんだ…気にしないでいいよ、○○(彼女の名前)のせいじゃないし」

と話しており、どうも詳しく事情を知っているようだったが、彼女はどことなく悲しそうな顔をしていて雰囲気的に事情を聞けるような感じでもなかったため、その日は適当にカラオケに行きそのまま解散になった。

次の週の事。

俺が大学のサークル棟の近くのベンチでマンガを読んでいると、例の彼女とあのとき彼女を慰めていた女友達が俺の所へやってきて、

「ちょっと話があるからいい?」

と聞いてきた。

特にすることも無かった俺は

「良いけど何?」

と聞き返すと、場所を替えたいという事で近場にある喫茶店に場所を移す事にした。

『何か深刻そうな顔してるなぁ…』と思っていると、その女友達がまず口を開いた。

俺は例の木の話を聞いたので、一応関係があるし、ちゃんと話を聞いて欲しいらしく、その話をし始めた。

女友達によると、彼女は子供の頃からその人に生える木が見えていたらしく、最初は親に相談したらしいが、親はまともに取り合ってくれず変な子供と思われるのも嫌で、ずっと自分だけの秘密にしてきたらしい。

そこから彼女が続けた。

しかし、その『木が生えている人』に、とある問題がある事にある日気付き、独りで抱え込むのに耐えられなくなったらしく、少しずつ友達などにその事を話すようになったとか。

本当は両親にも話したかったらしいが、小さい頃に信じてもらえなかった事が引っかかって話す事ができず、この話を知っているのは彼女の友達だけらしかった。

ちなみに、どうやら俺には話す気は最初一切無かったらしいが、偶然独り言を追求されてしまい、勢いで話してしまったため、今一緒にいる女友達と話し合って全て話す事にしたらしい。

ここまでは特に『俺にとっては』問題となる話は無かった。

ただし、その後に話した事が問題だった。

要点は四つ。

一つめ。

この木は少しずつ成長するらしく、普通の木と同じにだんだんと大きくなり枝分かれしていき、最終的には数メートルの大きさにまで成長するらしい。

彼女は長年この木が生えた人を見てきたが、小さな苗木のような状態から大きな木になるまでは人によって様々だが、何年かかかるらしい。

問題はそこからで、この木は成長して大きくなるだけでなく、成長しきった状態?にまでなると枯れるらしい。

ちなみに、数年で枯れた状態になる人もいれば、数年経ってもまだ1mくらいの人もいたりとかなり個人差があるようだ。

この『枯れた状態』になると、木の生えている人にとんでもない不幸が訪れるとか。

全て把握しているわけではないが、少なくとも彼女の把握している範囲では大病を患ったり大怪我をして後遺症が残ったり、人身事故を起して多額の賠償金を背負わされたり、何らかの理由で一家離散してしまったり、最悪の場合、事故死や病死や、場合によっては自殺してしまったりという事まであり、本当にろくな事になっていない。

二つめ。

彼女がショックだったのが、それまで見てきた木の生えた人は全員他人で、関わりがあっても殆ど他人同然の人だけだったらしいのだが、彼女のバイト先に来るお客さんで、結構親しく話しもする人につい最近その木が生えたらしく、彼女にとって自分に近しい人に木が生えたのがかなりショックだったとか。

ちなみに、彼女には木は見えるが触ったりする事はできず、一度生えてしまうと、もうどうすることもできないようで、その仲の良いお客さんの事はもう諦めるしかないらしい。

彼女は

「…話しても信じてくれないだろうし」

と泣きそうな顔になっていた。

三つ目。

これが俺にとってはかなり大問題だった。

なぜか理由は解らないが、この話を彼女が人に話すと、全員ではないが『同じように木が見える』ようになってしまう人がいるらしい。

ちなみに一緒にいる女友達は、聞いても見えるようにならなかったらしいが、彼女の中学時代の友達と、高校の頃の彼氏は『見えるように』なってしまったらしく、彼氏の方とはそれが原因で疎遠になり別れたとか。

俺はそこまで聞いて

「ちょwww何で俺に話すんだよwwww」

と笑いながら聞いたが、内心かなり焦っていた。

すると女友達が

「○○(俺の名前)がしつこく聞いたからいけないんでしょ、自業自得じゃん」

と食って掛かり、何かかなり理不尽な気がしたが、それ以上その事で追求は出来なかった。

今日話したのも、途中まで聞いてしまえば恐らく同じ事だろうという事で、なら、もしもの時に備えて心の準備をしてもらおうとやってきたらしい。

本来ならそんな話信じないのだが、実際にファミレス前での事件があったので俺は信じざるをえなかった。

要するに事故にあったと思って諦めろという事なのだろう…

四つ目。

これも結構大問題だった。

彼女が言うには、今月に入った辺りから、テレビを見ていると芸能人やニュースキャスターで『木が生え始めた人』がかなりいるらしく、それが最初の方で言った『最近良く見る』という事の意味らしい。

話を聞く限り時期がどうも皆殆ど一緒らしく、何か不気味な物を感じた。

もう一つ気になったのが、テレビに映った映像だからなのかどうかはわからないが、テレビの向こうに見える木は全て真っ黒い色をしているらしく、今までのような普通の木とは雰囲気が違うとか。

彼女と女友達が話した内容の要点は以上の通りだった。

ここまで聞いて、俺は2人にある疑問をぶつけてみたくなり、彼女にこう聞いた。

「話すと見えるようになるなら、そのバイト先のお客さんにはやっぱ話したほうが良いんじゃないか?見えるようになれば流石に信じるだろ」

と俺が聞くと。

まず女友達の方が

「見えるようになるかは運次第だし、それに“あなたにもうじき不幸が訪れます”なんて言えるわけ無いじゃん」

と返してきた。

更に彼女の方も

「話したところで何の解決にもならないし…」

と悲しそうに語った。

確かにその通りだと思った。

もし自分に木が生えていて、今と同じ事を伝えられてもどうしたら良いか解らない。

まず嘘だと思うだろうし、仮に見えるようになったとしたら、まるで自分の寿命のカウントダウンをされているようでとても冷静でなんていられなくなるだろう。

俺は、自分がバカな事を聞いてしまったと反省し、彼女に「ごめん」と謝った。

ちなみに、普段彼女が見る木の生えた人は、普通新宿駅や東京駅などの大勢の人がいる場所でも多くて2~3人程度らしいが、最近増えているニュースキャスターや芸能人の場合は、テレビを見ると必ず番組内に大抵1人はいるらしい。

かなり異常な数だ。

最近、何か大きな変化が起きた事は間違いないが、俺にも彼女にも女友達にもそれが何を意味するのかはさっぱり解らない。

そもそも彼女自信、何で木なのかとか何故そんなものが見えるのか、そもそも何故この話を彼女がすると同じように見えるようになるのかさっぱり把握していない。

俺は、こんな物を何年も見続けてきた彼女が可哀想になった。

そして、そんな境遇でも明るく振舞える彼女は凄いと思った。

彼女とは最近もよくつるんで遊びまわっているが、彼女が言うにはこの話を聞いて見えるようになる人は、1年以内に見えるようになるらしく、今年の11月までに見えないなら俺はもう安心らしい。

また、これはなぜか『彼女が直接話さないと見えるようにならない』ようで、俺がここに書き込んでも見えるようになることは無いらしいので、読んだ人は安心して欲しい。

ちなみに、彼女と一緒にいるときに一度だけ「あの人…」と教えられた事があった。

その直後、その人は車に轢かれて吹き飛び、足が関節とは逆方向に向いて折れ曲がり、そのままピクリとも動かなくなってしまった。

何か物凄い物を見てしまい、俺は相当なショックを受け『もし見えるようになってしまった時』の心構えが必要だと真剣に考えるようになった。

そして、その時にある事に気が付き、彼女に聞いてみた。

「枯れるとやばいのは解った。でも、なぜ“その瞬間”までが解るんだ?」と。

すると彼女はこう言った。

「その時が来ると、枯れた木が折れるから解る」と。

以上で俺の話は終わり。

彼女にもここに書く事は了解を貰っている。

それとテレビの向こうで木の生え始めた人は、ちょっと前まで少しずつ増えていたが、最近は増えていないらしい。

俺は彼女に

「もうテレビを見るのをやめたほうが良いんじゃないか?」

と言うと

「そうする」

と言っていた。

その後、彼女がテレビを見なくなったかどうかはわからない。