「 月別アーカイブ:2013年04月 」 一覧
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      キノコ取り去年の秋の話なんだけど、田舎に住んでるから、近所の山にキノコとりに行ったんだ。 山の入り口に車を止めて、だいたい徒歩で3時間くらいのコースなんだけど、ナラタケとかブナハリタケとかがけっこう採れる場所でさ。 で、歩き出して1時間位したとき、40歳くらいのオバチャン三人組とすれ違ったんだ。 話し方からして、どこか関西方面の人達らしかった。 で、すれ違うとき、オバチャン達がぶら下げてた袋の中がチラッと見えたんだけど… 入ってたのが、多分ネズミシメジとツキヨタケ。 しかも大量に。 知らない人の為に一応説明すると、両方とも毒キノコね。 ツキヨタケの方は死人が出るくらい強力。 俺は『おいおい、ヤベーだろうが、バカだな、コイツら』って内心思いながら、オバチャン達を小走りで追いかけて、 「そのキノコどうするんですか?」 って聞いた。 突然声をかけられて、かなり怪訝な顔してたけど、オバチャンAが、 「どうするって、もってかえるよ」って。 案の定だったんで、俺が毒キノコだってこと説明すると、オバチャンBが、 「あー、やっぱり! さっきのオッサンの言うてたとおりやわ… うちらは騙せへんで。あんた、このキノコほしいんやろ?」 って言い出して… そのままオバチャンの話を聞いていると、どうやらオバチャン達は、今日、山で会った年配の男性に『美味しくて珍しいキノコ』って教わって、ネズミシメジとツキヨタケを採ったらしく、しかも、その時に、 「珍しいキノコだから、『毒キノコだ』って言って騙そうとする人がいるから」って聞かされたらしいんだね。 何だよ、それ? そのジジイ何考えてんだよ? キノコは間違いなく毒キノコで、しかも少し知ってりゃ、見間違うことなんてあり得ないキノコなのに…。 取り敢えず、オバチャン達を説得しようとしたんだけど、完全に疑われちゃって無理だった。 最後には、 「図鑑見てください」 とは言ったんだけど… あんときは、山にもキチガイはいるんだなーって思った。 
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      流し雛2008年の8月の終わり頃。 一週間ほど夏休みが取れたので、兵庫県の実家に帰省しました。 ある日、叔父(父の弟)に頼まれた簡単な仕事の手伝いを終え、二人車で帰路につきました。 時刻は夕方で、全開にした窓からの風は、まだまだ熱気を孕んだものでしたが、しかしそれは夏の終わりを感じさせるもので、なんだか切ない気持ちになったのを覚えています。 実家付近の川原にさしかかると、ふと叔父が 「寄ってみるか?」 と言いました。 実家から車で10分くらいの川原でしたが、最後に来たのは小学生の頃です。 汗と埃を洗い落としたかったのと、懐かしさとで二つ返事で賛成しました。 その川は水量も少なく、またかつて名水百選にも選ばれた川の傍流にあたるため、その透明度は言うに及ばず、つかの間休憩するにはうってつけの川原でした。 小学生の頃、自由研究で川の水位を測るための目印とした岩も残っていて、ずいぶんと感慨深いものを覚えました。 さて、水で顔を洗い、石切りなどしていると叔父が言いました。 「誰か来るぞ」と。 叔父の言う方を見やると、確かに対面の岸に手を振る人影が見えます。 人影までそう遠くはないのですが、靄(もや)のような霧がかかり、影のようにしか見えません。 しかし手を振る人影は、どうやら小舟に乗ってこちらへやって来ているのが分かりました。 人影は二人連れらしく、その内のひとりがこちらに手を振っています。 叔父が、その人たちに気付いたときからこちらに手を振っているため、知り合いか、もしくは何か用があるのかな、と思いました。 誰だろう?と叔父と僕は顔を見合わせました。 叔父も見当がついていないようでしたが、怪訝な顔つきのまま手を振って応えていました。 そろそろ靄を抜けるか、という境まで来て、まだ手を振っているのを見て改めて誰なのか考えつつ、僕はしゃがみ込んで待っていました。 そしていよいよ完全にその姿を目視出来る距離まで来て、その二人の、あまりにあまりな正体に僕と叔父は戦慄しました。 さっきまで手を振って、小舟に乗ってこちらへやって来ていた人影は、『二体の人形』だったのです。 叔父と二人、女の子みたいに悲鳴をあげながらも、それから目を離さずにはいられませんでした。 まず手を振っていた方は水色の和装で、少年の人形(一般的な雛人形を一回り大きくして立たせたような感じ)のようです。 顔は元は真っ白だったのでしょうが、雨風に長い年月さらされたような汚れがあり、唇に剥がれかけた朱色の紅がひいてありました。 あと腰に白い刀を下げていました。 もう一体の方は少女の人形で、髪が長いのと着物が薄い赤色というの以外は少年の人形と同じで、一見で対になっているのが分かりました。 毬か道具箱か、何かを抱えていたような気がしますが定かではありません。 あと小舟と思っていたのは、長方形の平べったいお盆のようなものでした。 僕が震えながらもその姿から目を離せないでいると、叔父がこの不気味な人形たちの、更なる異常さに気付いて言いました。 「流れ逆やぞ、これ!」 川は僕たちから見て右上に流れています。 つまり人形たちは、『川の流れに逆らって』こちらへやって来たのです! それに気付いた僕たちはたまらず一目散に車に飛び乗り、川原を後にしました。 僕が恐る恐るサイドミラーで確認すると、二体の人形は本来流されるべき方向へ、流れに乗ってゆっくりと遠ざかっていきました。 車中、叔父とあの人形が手を振っていたのは思い違いではないという事を確認しあい、急いで家へと戻りました。 あれから不思議とあの人形たちは夢にも出てきませんが、あの一件以後、川には近づけなくなりました。 
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      当たり屋先に言う。 俺は怖かった。 ここは、地方都市で狭い路地が多い。 そして、行き止まりも。 タクシーが一台、その行き止まりまでお客を乗せてきた。 スペースに余裕が無いから、若干バックして広い所で方向転換をしないと帰れない場所だ。 タクシーが止まり、ドアが開いた瞬間、犬を散歩させていた中年男性が何かをタクシーにむかって投げた。 餌だ。 犬はリードを引きずったまま、その餌をめがけて走る。 狙いすましたように、後輪の影に餌はある。 もちろん、タクシーはバックし始める。 甲高い悲痛の叫びと、ぐしゃと言う鈍い音。 中年男性は、犬に駆け寄る訳でもなく、真っ先にタクシーの運転席向かって行った。 つまり、そういうことだ。 俺は一部始終を見てしまった。 そして関わりたくないから逃げた。 
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      花束昔、好きだった子の玄関に、花(ご近所のガーデニングが素晴らしい何某さん宅から失敬)を置いてた。 従兄の新聞配達の手伝いしてたから、まだ薄暗い早朝にな。 で、最近その彼女に会う機会があって 「こんなことしてたんだよな~、どう思ってた?w」 って話をしたんだが、彼女真っ青になって俺の胸倉掴んで揺さぶってきたわ。 「アレ、あなたがやらせてるの!?今すぐ止めさせて!!」 って絶叫。 なんとか落ち着かせて、詳しく話を聞いてみると、まだ続いてるらしい。 ま、最初は彼女宅も『お前に想いを寄せてる誰某の仕業かもな~』と笑い話だったんだが、俺がやってたのは精々2、3日に1回くらいだったんだが、いつからか毎日、雨の日も台風の日も阪神大震災の日もプレゼント包装された花束が置かれるようになった。 『やめてくれ』と張り紙しても効果なし。 監視カメラ置いても映らず、警察が見回りしても、いつの間にか突如として現われましたという風に置かれてるらしい。 もう家族全員ノイローゼになってるらしく、当然俺は激しく責め立てられた。 菓子折り持って土下座しに行ったよ。 で、泊まり込んで見させてもらうことにしたんだよ。 来たよ。 弟くんが、 「また置かれてた!」 って俺に花束突きつけてきた。 ん? 弟くんよ。 玄関のドア開けずに、どうやってソレ持ってきたの? ・・・あー怖ぇ。 実弟がストーカーとは。 目の前で一つの家庭が崩壊する様をマザマザと見せつけられた。 弟くんをボコボコに殴りつける親父さん。 意味不なことを叫ぶお袋さん。 泣いて崩れ落ちる彼女。 ヘラヘラ笑ってる弟くん(ただし、俺にだけは睨みつけて舌打ち) 結局、弟くんのそれが歪んだ愛情からなのか、嫌がらせなのか、不明なまま、この一家との繋がりは無くなった。 そして便りもなく引っ越してった。 
