今から12年くらい前。
バイトしていた会社の社員さんが、
「一緒に飲みに行こうよ」
と飲み屋さんに連れていってくれたんです。
深夜まで飲んだので、その人が
「今夜はうちに泊まっていけよ」
と言ってくれて、その人のアパートまで歩いて行ったのです。
6畳3畳くらいの1DKで、部屋にベッドがあり、その社員さんがベッドに、僕はすぐ脇の畳に布団をひいてもらって寝ることになりました。
だいぶ酒を飲んでいたので僕はすぐに熟睡し、翌朝、窓からの日差しと鳥の声で目を覚ましました。
すぐ脇のベッドで寝ている社員さんに、
「お早うございます」
と言うと、
「ゆうべ、寝られた?」
と心配げな顔で聞くのです。
「ええ、ぐっすり」
と答えると、
「本当に?本当に寝られた?」
と真顔で訊いてくる。
どうしたのかと思ったら、
「ゆうべ一晩中、きみの回りを歩き回ってたやつがいたけど、気づかなかった?」
と言うのです。
その社員さんによると、その部屋は前から出るらしく、彼が仕事から帰って電気を消して寝ようとすると「パサッ」と服を脱ぐような音がしたり、何かいるような気配がしたり、さんざんあったそうなのです。
その日はいつもと違う人間(僕)が来たので、幽霊さんが気になって(?)僕の周りを歩いていたようなんです。
社員さんは可哀想に一睡もできなかったとのこと。
僕のすぐ身近で起きていながら、まったく自覚がないと言う(笑)、そんな話です。