「 怖いけどちょっといい話 」 一覧
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話しかけてくれた人
夏の修学旅行に行った時に、俺は転校したて+人見知りが激しくて友達いなかったので、一人寂しく外に抜け出して花火をしてた。
そしたら地元の子か知らないけど、ぼーっと一人で花火をしてる俺の横にいつの間にか座っていて、こう言った。
「こんなところ(海岸の崖から海に向かって花火してた)で花火なんて珍しいですね」と。
人見知りの激しかった俺はずっと無視してたんだけど、その子はずっと俺に話しかけててくれて、次第に俺も慣れてきたのか、こっちからも話しかけようとした。
しかし、そのときにはもうその子はいなくなってた。
でも、見知らぬ人とも会話しようとしてたので、今なら慣れない人との会話が出来そうな気がしたので、すぐにホテルに帰った。
そしたら、いつもモジモジしながら話してた俺が、結構すらすらと会話できるようになって、その修学旅行のうちに、クラスの殆どのヤツと友達になれた。
その子のことをずっと無視してて悪かったけど、おかげで友達が出来るようになった。
今度バイクの免許でもとって、その旅行で行ったところにもう一度足を運んでみようと思う。
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古典SFにはまっていた頃のお話
その頃俺は、昔のSF小説にはまってた。
ノリが良くて勧善懲悪なところが、何かスカッとして面白くて、復刻版の文庫を買ってきては読んでいた。
ある晩、本を読みながら眠ってしまった俺は、ふと気配を感じて目を覚ました。
部屋の隅に人が居た。
30過ぎくらいの女で、夏なのにセーターと長くて分厚いスカート。
壁にもたれて座り、本を読んでいる。
ものすごく驚いたが、寝ぼけているせいか不思議と怖くなかった。
おばさんだが、よく見ると前に見た『アメリ』って映画の主人公に似ていて結構見られる。
何となくぼーっと見ていると、女がこっちを向いて笑った。
「こういうの好きなら○○に聞いてごらん。まだあるから」
そう言って、持ってた本をこちらに見せた。
寝る前に読んでた『スペースオペラ』だった。
そこで目が覚めた。
朝になってた。
変な夢だなーと思ったが、部屋の隅を見てびっくりした。
俺のSF本が数冊重ねて置いてあった。
そして、一番上に寝る直前まで読んでた本がきちんと置いてあった。
マジかよ、としばらく頭を抱えたが、ふと気になった。
女が言っていた○○って誰だ?
俺の周りで○○って名前は父親だけだ。
他に思い当たる相手もいないし、早速仕事から帰ってきたら聞いてみた。
一応夕べの文庫本と、姉から『アメリ』のDVDも借りておいた。
最初、父は『お前大丈夫か?』という顔をしていたが、本とDVDを見た途端に態度が変わった。
「姉ちゃんか・・・そういやもうじき盆だったな。よし、今度の休み墓参りに行くぞ。お前も来いよ」
その姉ちゃんというのは、正確には父の従姉だったそうだ。
父より10歳近く年上で、良く面倒を見てもらったらしい。
何か変わった人で、本と香水と古い香水ビンが大好きで、35で死ぬまで独身だったそうだ。
だけどすごく優しくて、父も周りの人にも好かれていたそうだ。
母とも仲が良かったらしく、そういえば何か話を聞いた覚えもある。
母が宝物にして飾ってあるビンのコレクションが、その人の形見だったとか。
絶版品で貴重品とか言ってて、昔姉が勝手に触って怒られていた。
「何で俺のとこに出てきたんだろう?」
と聞くと父は、
「嬉しかったんだろ。姉ちゃんこういう話好きだったからな」
それから休みになって父の実家に行くと、父の言葉通りに物置からどっさり本が出てきた。
その中に昔のハヤ○ワSF文庫の初版も山ほど混ざってた。
俺の読んでた本もそこにあった。
時々、この人が生きててくれたら、今頃どんな本を読んでたのかと考える。
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めぐりあい
私と旦那は、つきあい始めたその日に結婚を決めたスピード婚。
なので、お互いの家の事もあまり知らなかったんだけれど、結婚して数年し、旦那の本家の墓参りに行って驚いた。
なんと、うちの母方の祖先の寺とご近所だった。
お互い東京出身で、墓は東北にあったからなおびっくり。
「偶然ですね~」
って話してたら住職さんが、
「○○さん(旦那方)のご先祖が戦に負けて追われて来たのを助けて、一族再興に貢献したのが××さん(私方)のご先祖なんですよ!」
って驚きながら話してくれて、寺に残っている記録を見せてくれた。
そうしたら、
・旦那の先祖が追われてきた日=私の誕生日。
・一族を再興させて城を開いた日=旦那の誕生日。
なんていう共通点も見つかったりして、親戚一同ビックリしどおしだった。
前世とか因縁とかあまり信じない方だったけれど、こういうことってあるんだな~と思った。
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やさしげな兵隊さん
子どもの頃、いつも知らない人が私を見ていた。
その人はヘルメットをかぶっていて、えりあしに布がひらひらしてて、緑色の作業服のような格好で、足には包帯が巻かれていた。
小学生になってわかったが、まさに兵隊の格好だった。
その兵隊さんは、私が1人で遊んでいる時だけでなく、校庭で遊んでいる時や母と買い物でスーパーに行った時など、いつでも現れた。
少し離れたところで立って、私を見つめている。
自分以外には見えていないし、いつの間にか消えている。
私も、少しは怖がってもよさそうなものだったが、何せ物心ついた時からそばにいるし、何よりその人から恐怖心を感じるようなことは全くなかった。
きりっとしてて優しげで、古き良き日本人の顔って感じだった。
やがて中学生になった。
ある日、いつもと違うことが起きた。
テストを控えた寒い日、夜遅くに私は台所でミロを作っていた。
ふと人の気配がしたので横を見ると、兵隊さんがいた。
けれど、その日は手を伸ばせば触れるくらいそばにいた。
ぼけた私が思ったことは、意外と背低いんだな、くらいだった。
―それは何でしょうか?
体の中に声が響いたような感じだった。
兵隊さんを見ると、まじまじとミロの入った鍋を見ている。
ミロって言ってもわかんないよね・・・と思った私は、
「半分こしよう」
と言ってミロを半分にわけて、カップを兵隊さんに渡した。
―失礼します。
そう声が響いて、両手にカップを持って、ふうふうしながら兵隊さんはゆっくり飲んでいた。
その時の兵隊さんの顔は、柔らかくてすごく嬉しそうだった。
飲み終わって、また声が響いた。
―こんなにうまいものがあるんですね。
少なくて悪いかなと思った私は、
「おかわりする?」
と聞いたが、兵隊さんはカップを私に手渡して、敬礼してふっと消えてしまった。
別の日に1人で家にいる時、クッキーを作っていた。
焼きあがり、冷まそうとお皿に並べていたら人の気配がしたので窓を見ると、庭先に兵隊さんがいた。
私はおいでよと手招きをしたが、兵隊さんはにこっとして首を横に振った。
あれ?と思っていたら、兵隊さんは敬礼して、ふわっと消えた。
ヘルメットから出てる布が、ふわりとしたことを覚えてる。
それきり、兵隊さんは私の前には現れなくなった。
今でも兵隊さんのことを思い出す。
美味しいものを食べた時や、料理が美味しく出来た時、兵隊さん、どこかで美味しいもの味わえているかなあと。
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帰ってくる
小さい頃住んでいた小さなで漁村で、海難事故があった。
転覆した船に乗っていた仲間を探すために、みんな漁を止めて沖へ探しに行ってた。
結局、見つからず夜。
奇跡の生還をに望みをかけて、小さな漁港の小さな堤防で、目印の火を朝まで焚くことになった。
堤防に集まっていた人たちも翌朝の捜索があるので、数人を残して家に帰りだして、俺も親父に手を引かれて帰ろうとした時・・・
遭難した人のばぁちゃんが
「…きた」
って。
みんな驚いて振り返ると、堤防の先端にピチャ、ピチャ…という水の音。
その音が焚き火にだんだん近づいてきたとき、ばぁちゃんが
「寒かったべ、火にあだれ」
って。
みんな凍りついた顔して黙ってた。
俺には何も見えなかったし、周りの大人にも何も見えてなかった。
でも、誰かが確かに居るのはみんな解ってた。
「明日、みっけでやっから、心配すねぐでいい」
ってばぁちゃんが言った時、なんとなく空気が変わり気配が無くなった。
翌朝、その人は岸寄りの所で、網にひっかかって見つかったらしい。