「 職場での怖い話 」 一覧
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引っ掻く手
出張だった時に泊まった郊外のビジネスホテルでの話。
飯は外で済ませてホテルにチェックイン。
深夜の1時を回ったくらいでホテルは静まりかえっていた。
6階の一番奥の部屋。
狭いけど小綺麗なユニットバスで体を流し、疲れていたのでテレビを見るでもなくすぐに寝ようと思い、2時には消灯。
「はぁ、今日は疲れたなぁ。」
と、独り言をつぶやいて目を閉じる。
うとうとしてきた時に、ふと『ザー ザー ザー』っと何かを引っ掻くような音が聞こえてきた。
やたらとハッキリと聞こえる。
真っ暗な部屋。
見える光と言えばドアの下の、廊下の電気のわずかな光。
ドアの下の光に目をやると 人間の手のようなものが床のじゅうたんを爪を立てて引っ掻いている。
『ザー ザー ザー』っと。
しかも、その手はドアの外ではなく、明らかにドアの内側で動いている。
今自分に見えるのは、手の影とドアの下のわずかな光。
電気のスイッチはドアの横にある。
何があるか確かめたいが、怖くて動けない。
我慢できなくなり、とうとう
「誰だ!」
と、叫んだ。
すると手は引っ掻くのをやめ、手も消えた。
幽霊…?と思ったが、取り合えず電気をつけて状況を確かめたかった。
ドアまで走って電気をつける。
振り替えって部屋を見渡す。
窓がいつの間にか開いていて、そこから真っ黒な床まである長髪を引きずりながら何かが飛び降りていった。
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お祓いのバイト
えーと、自己紹介から始めると、30代前半の未来に絶望している派遣社員です。
東京にずっと住んでます。
独身で、両親は死んで大分経ちます。。
妹と弟がいますが、もう既に離れて暮らしてます。
奇妙なのか分からないですが、僕の知り合いにお祓いの仕事をしている人がいる。
知り合いというか、最寄り駅の近くの立ち飲みで出会ったおばさん。
それが今から数えて7年前ぐらいかなと思う。
引越したての頃で、仕事帰りに一緒に飲む友達がいなくて、気軽に入れそうな立ち飲み屋で飲むようになったのがきっかけ。
で、そのおばさん、俺を見るなり、
「ギャーッ」
って叫び始めた。
実を言うと、結構慣れっこで、よく知らない人から叫ばれます。
叫ぶならいいんだけど、
「あの人、怖いんです。捕まえてください。」
って通報されたこともあった。
なんで、『またかよ…』みたいな気持ちで無視してた。
けど、そのおばさんは今までの人と違って話しかけてきた。
「どこからきた?」
「仕事はなにしてる?」
「両親はなにしている?」
なんて、まるで尋問のように矢継ぎ早に質問された。
まぁ、こんなおばさんの友達も良いかと思って質問に答えていた。
それからしばらくして、そのおばさんが、
「今度、あたしの店に来い!」
って言いながら、お店のカード?みたいなものを渡された。
まぁ、興味ないし、凄い上から目線で話されてムカツイていたから、直ぐ様、そのカードは捨てた。
ところが後日。
その立ち飲み屋でまた会ってしまい、その時は無理やり店に連れてかれた。
というのも、おばさん以外に痩せたおじさんと若い女がいて、ちょっと逃げれなかった。
ちなみにおばさんは『トキコさん』、若い女は『ケイちゃん』、おじさんは『ヤスオさん』て言う。
『絶対、宗教の勧誘だよなぁ…』そう思いながら、その3人の後ろに付いていった。
店に行くまで誰も喋らないもんだから、ケイちゃんに話しかけてみたら、
「ヒィぃいー。」
とか言って、会話ができなかった。
それからヤスオさんに、
「ごめんな、君が怖いんだ。」
なんて言われたから、なんか凄い悲しかったの覚えている。
で、店に着いた訳だが、だたの占いの館だった。
宗教の勧誘じゃなさそうだなと思い、占いでもしてくれんのかなと期待していた。
で、店に着くなりトキコさんが、
「あんた、私たちと仕事しないか?」
って言われた。
「はぁ?」
と言いながら聞いていたら、なんでもその3人はお祓いを仕事にしているらしく、僕に、ついてきて欲しいと言われた。
その当時は一応、ある会社の社員だったので、
「仕事あるんで、無理ですよ。」
と断った。
でも、そのおばさんは引き下がらず、
「土日のバイトだと思ってやってくれないか?」
と頼まれた。
まぁ幽霊とか神様とかまるで信じないので、まぁいいかなぐらいでOKした。
早速、次の週末にお呼びがかかり、○○区のある一軒家に連れてかれた。
家からそう遠くは無いので、自転車で待ち合わせ場所に行ったら、
「徒歩で来い、アホ」
と怒られた。
渋々、近くに自転車を止めて、その一軒家に入っていった。
入った途端、トキコさんと連れのケイちゃん(おじさんは都合が悪くて来なかった。)が、
「あぁ、いますね、いますね。」
とか言い始めて、しかめっ面になった。
ただ、僕には何がいるかも分からなかった。
普通の一軒家だと思った。
居間には中年夫婦がいて、僕らにお茶やらお菓子を出してくれた。
笑ってたけど、かなり引き攣ってたの覚えている。
しばらくすると、トキコさんが、
「早速、始めましょう。その部屋に案内してください。」
と言って立ち上がった。
何が始まるのか、よく分からないまま、二階に案内された。
階段上がると左右に二部屋あって、その右側の部屋の扉の前で止まった。
扉にはアルファベットで『TAKAO』って書いてあった。
「ここです。」
そう中年夫婦に言われた。
トキコさんとケイちゃんは、背負っていたリュックサックの中から塩を出して、ペットボトルの水を振りかけ、両手にまぶした。
何が始まるんだろう?とか思いながら、俺も両手に塩まぶした方が良いのか聞いてみると、
「お前には必要ない。ただ言われた通りにしろ。」
と言われた。
中年夫婦には何があっても、絶対に取り乱すなと注意をしたトキコさんは、扉を開け中に入った。
僕も後ろに続こうとした時、中から黒い影がトキコさんに覆いかぶさってきた。
TAKAOという中学生ぐらいの少年だったが、異様に眼がギラギラして歯をむき出しにして、
「ガジャガジャ、ガジャー!」
みたいな事、叫んでた。
トキコさんの首に噛み付こうとしていたので、流石に僕もこりゃイカンと思い、少年を引き剥がそうと彼に近寄った。
TAKAOくんは僕の顔を見るなり震え始め、ベッドの隅っこに逃げて身を丸めた。
「体のどこでもいいから、引っ叩け!」
トキコさんにそう怒鳴られた。
なので、悪いなぁとは思いながら、丸まってる背中を引っ叩いた。
そんなに強く叩いた覚えは無かったが、
「うぎゃー!」
とか言って、TAKAOくんは泡吹いて倒れた。
倒れているTAKAOくんを介抱しようと両親が近寄る。
『そんな強く叩いてないよな』とか思いながら横目で、トキコさんを見ていると、
「これでお祓いは終りました、もう大丈夫。」
そう言った。
たしかそう言ったと思う。
それから、TAKAO君をベッドに寝かして、中年夫婦にお礼を言われながら帰った。
なんでもTAKAO君が大人しく寝たのは、半年振りだったそうだ。
ちなみにTAKAOくんの部屋は物凄い事になっていた。
物は多分危ないから片付けたのだと思うけど、壁という壁に切り傷や穴があった。
帰り道、あまりに意味がわからなかったので、トキコさんに、
「意味がわかりません。」
と素直に言って、色々聞いてみた。
可哀想に、一緒に来ていたケイちゃんは帰り道の途中でゲロを吐いていた。
「あんたは相当なモノをもってるね。」
トキコさんにそう言われた。
初めはちんちんの事かと思ったが、そうではないらしい。
どうやら、言い方は宗教やお祓いの流派によって変わるらしいが、『守護霊』や『気』なんて言われてるものらしい。
そんなに凄いのかと思って、
「そんなに良いんですか?」
と尋ね返すと、
「いや、逆だ。最悪なんだよ、あんたの持ってるもの。」
そう言われた。
最悪じゃダメじゃないか、と思ってたので、
「最悪って、それじゃ駄目じゃないですか。」
と言うと、
「普通はな。だけどお前は普通じゃない。なんでそれで生きてられるのかおかしい。」
トキコさんに言わせると、俺のもってる『モノ』ってのが、相当ひどいらしい。
実はケイちゃんがゲロを吐いたのも、俺がTAKAO君を叩いたときに祟られたらしい。
まぁ色々聞きたかったのだが、あまりにケイちゃんが気分が悪くなってしまったので、トキコさんとケイちゃんは先にタクシーで帰った。
僕は止めておいた自転車で帰った。
トキコさんのお店でなんと10万円ももらえた。
本当はいくらもらってんだろう?そう思ったけど、中学生の背中引っ叩いて10万円ならいいや、と思って喜んでた。
実を言うと、それから少しして僕は留学した。
その当時の仕事よりも、やりたい事があったのが理由だ。
まぁ結局3年前に戻ってきたものの、仕事がなくキャリアも無く、派遣をやりながら生活している。
3年前に帰国した後に、トキコさんに会った時に言われたのが、
「あんたのそれ、かなり逞しくなってるよ。」
そう言われニヤっと笑われた。
なんでも僕の『モノ』は異国の地でセイリョク(精力、生力?どちらかわかりません。)を養ったらしく、以前よりパワーアップしているらしい。
一応、真面目に勉強してただけなんですけどね。
それから3年、お祓いのバイトをしている。
ただ、トキコさんやケイちゃん、ヤスオさんは、いわゆる霊感的なものがあるらしく、色々見えるらしい。
ところが僕は本当に何も見えない。
なので、今でも引っ叩いたり、話しかけたりするだけである。
残念なのは、今でもケイちゃんは仕事が終わるとゲロを吐く。
僕のせいなので、いつも申し訳ない気持ちで一杯になる。
で、明日も実は一個仕事が入り、終わったら風俗行こうと考えてます。
あ、ちなみにドMです。
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地下の仕事
昔、配水管の点検するアルバイトしてた。
地下に潜って、管に異常は無いか調べる仕事。
ちょっとした冒険みたいで、毎度ワクワクしながら働いてた。
まだ始めたての頃、管に潜ると人がいることがあるから気を付けろって先輩に言われた。
人を見つけたらまず声をかけて、何も言わず逃げていく奴は絶対に追うなと。
何度か潜って分かったけど、場所によっては人が住めるような管があって、住み着いてる浮浪者に遭遇することもあった。
浮浪者は、まぁ安全なのだけど、その頃はまだ左翼の過激派なんかがぼちぼち活動してた頃で、過激派が居住してたらしき跡も見つけたことがある。
今思うに結構危険な仕事だった。
10メートルも潜ると完全に真っ暗で、正直言って心霊的にもかなり怖い。
一度、奥の壁全面にみっちりお経みたいな文字が書かれていたことがあって戦慄した。
そんなこんなで楽しく働いてたある日。
川にある、あの横穴から中に入ってく仕事がきた。
このタイプの管は最深部まで行くと、配水管の合流点にたどり着くことがある。
色々なとこから水がぶわって流れてて、中には巨大な滝もあって絶景の一言につきる。
それを見るのが楽しみで意気揚々と中に入って行った。
20メートルくらい進んだところで奥に人影らしきものを発見。
「そこで何してる」
と、さっそく声をかけたけど返事が無い。
そこは増水したら水が流れるし、まず人が入り込むような場所じゃない。
ゴミでも詰まって見間違えてるのか、それとも何か悪さしようとしてるんじゃないかとか、とにかく確かめることにした。
近づいてみると、やはり人間っぽくて微妙に動いてるから、
「おい、危ないから出ろ」
と、声かけながらさらに接近。
すると向こうも奥の方に逃げていく。
なんか金属で壁を叩くような妙な音させながら。
ちょっと仕事に慣れっこになってた俺は、捕まえてやろうと追いかけた。
けど、気づいたら合流点の手間まできてて、危うく落ちる所だった。
その上、人はどこにもいなくて滝の音とキンッキンッって音だけがコダマしてた。
慌てて逃げだして、入り口で見張りしてた先輩にそのこと話したら、だから追うなって言ったろと叱られた。
他にも何人か見た人がいるらしくて、業界じゃ有名な話だったらしい。
俺は、それで潜るのが怖くなって辞めてしまった。
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長い首
今でもわけがわからない。
4年前、前の職場で働いていたときの話。
季節は冬に入った頃、かなり寒くなってきた頃だった。
その時、少し難しい案件の見積依頼を受けていて、担当者である自分一人だけが夜まで事務所に残っていた。
見積書の提出期限が次の日の朝だったからだ。
深夜1時を廻った頃、ふと見たら窓ガラスに誰かが張り付いていた。
事務所はビルの8Fフロア。
窓ガラスはそいつの周辺だけ、真っ白に曇っていた。
両手を押し付けて、赤い服を着ているように見えた。
曇ったガラス越しでぼやけているので、詳しくはわからない。
押し付けた両手と同じ高さに顔があって、輪郭が白くぼやけていた。
張り付いている奴は荒い呼吸をしているらしく、口のある辺りだけ、窓の曇りがやたら濃くなったり、薄くなったり。
何がなんだかわからないまま、呆然とそれを見ていたら、そのまま後ろに倒れるかのように、べり、と剥がれて居なくなった。
疲れて夢でも見てるんだろうか?と、漠然と思ったけど(もしかして今のは、いわゆる幽霊というやつでは?)と考え出したところで、やっと恐怖を感じるようになった。
今のはなんだったのだろうと思って、あの窓ガラスに近づいていった。
曇った部分に触ろうとした時、向いの鏡張りのビルが目に入った。
俺のいるフロアの真上の窓に、さかさまに張り付いている人間らしき姿が見えた。
首を伸ばして、上から俺を覗きこんでいるような格好だった。
俺は弾かれたように事務所を逃げ出したんだ。
深夜で電車も無かったから、始発までコンビニに逃げ込んで、ひたすら立ち読みして始発に乗って家へ帰って、テレビを点けてソファで震えていた。
これ以降は後日談も何もない。
誰にも話さなかったし、別に何も起こらなかったから。
ただ、本当に不思議な経験だった。
あの髪の無い、つるっとした白い後頭部と、長い首が忘れられない。
でも最悪、顔を見なくてよかったとも思う。
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山林のマンホール
学生時代のバイトの話。
といっても、バイト先から帰宅するまでの間の事だけど。
普段は大通りから山林を迂回するルートで帰るんだけど、あんまりバイトが遅くなると山林所有者の私道?ぽい道使って帰るの。
道の途中に変なマンホールがあって、めっちゃ錆てて何の図柄も無いオープナー刺す穴だけある平らなマンホール。
『この下には旧日本軍の忘れられたシェルターが』とか妄想して帰ってた。
ある晩、そこを通ると蓋が開いてて、穴付近に血溜まりの跡のような赤茶けたテカテカの染みでうっすら生臭い臭いと、焚き火?のような煤の臭いがどっからか漂ってくるのね。
たぶん穴から。
よせばいいのに、自転車のライト(乾電池式の車輪回さなくていいタイプ)で恐る恐る中を覗こうとすると、遠い感じがするけど反響でエコーがかった、うっすら演説?してるような声が聞こえてて…
「おい!」
っていきなり声かけられて、ビクっとして振り返るとおまわりさん。
私道に勝手に入った事で怒られるんじゃないかびびったけど、追い払うように、
「こんな時間に危ないから」
って帰された。
帰りつつ何度か振り返ったけど、懐中電灯でこっち照らしてずっと監視するかのように穴の前に突っ立ってた。
ある日、またその道通ったんだけど、マンホールがあった箇所にアスファルトが盛られて無くなってた。
そういや、なんで『おまわりさん』って思ったのかな?
懐中電灯で顔照らされて、逆光でほとんど相手見えなかったんだけど