「 職場での怖い話 」 一覧
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掘り起こされたもの
昔、宅地整理や道路拡張のために 墓地でさえ平気に掘り起こしていた時期があった。
俺の親父は左官だったが、バブルの時代はどんな仕事もやっていたらしく、墓を掘り起こして更地に変えていたそうだ。
ある日、いつものように墓石を撤去して地面を重機で均していたときだった。
掘り出した土から黒い紐のような物が出てきたらしい。
それは人間の髪の毛。
しかし、そんなことは日常茶飯事だった為に、その時は誰も驚きはしなかったそうだ。
ただ、その髪が付いているはずの頭が問題だった。
頭蓋骨ではなく、生首。
もちろん墓場だからといって、生首がそのまま残っているわけがない。
そのまま警察沙汰となったが、首以外の部分はそこでは発見できなかったそうだ。
身元は近所の寺の住職の娘で、墓を暴くことに反対していたらしい。
その事件は意外なところで終結を迎えた。
死んだ娘の彼氏の証言だ。
「あの日は喧嘩をしてしまい、ついエキサイトして彼女を墓の中に入れてしまった」
この事件は事故として処理されたそうだ。
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土中の顔
警察標識なんぞ立ててる現場の監督。
容赦なく町中でも地面掘り返さにゃならんので、時々とんでもないモンに行き当たる。
撤去されてないけど、ガスたっぷり残ったガス管とか。
自動車とか。
異様に執念深く丹念に破壊された腕時計の山とか。
骨とか。
一番びびったのは『顔』。
ほとんど岩盤と化した土盤掘り進んでた土方が、
「……カントクー」
と言ったので、ひょいとそっちを見たら土中に顔。
電動掘削機使ってて傷一つつかないってことは、
「マネキンだろ、人形」
と、言いくるめようとしたら(我ながら謎な言いくるめだったわ) 目が開いた。
全力で埋め戻して、上には、
「土中に岩盤層があったので掘削不可でしたっっ」
と報告して位置ずらした。
ワケ分からんが微妙に怖い。
人柱か何かか?
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玄関のドアから
数年前の話。
上京して一人暮らしを始めた2年目のこと。
当時はワンルームの社員寮(会社が借り上げたマンション)に住んでて、夜勤週の休みの日だったから、夜中に電気付けずにローゼンメイデン観てたのよ。
夜中2時くらいだったと思うけど、ふとドアの方を見ると、そこから見たこと無い男の顔が半分のぞいてた。
目があって3秒くらいフリーズしてたら、バタンッ!と思いっきりドア閉められた。
いやいやwってな感じで、引きつった笑い顔でのぞき穴からドアの外を見たら、黒いジャケットを着た男が、うなだれてるような感じで立ってる。
すると、突然こっちを振り向いてニタニタと笑い、猛ダッシュでどっかに走っていた。
同じマンションで見たこと無い奴だったけど、誰だったのか…
東京って怖いところだ…って初めて思った瞬間でした。
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古本屋
俺は、二年くらい前から小さい古本屋でバイトをしてる。
まさに『古本屋』のイメージ通りの店。
床や柱は黒っぽい木造で、ちょっと暗くて古めかしい感じなんだが、俺が来る前に入口を改装したらしく、そこだけ不自然に自動ドアになってる。
客が来ると、ピンポーンってセンサーで音がなるタイプ。
こないだの土曜日。
店長と奥さんが地域の集まりかなんかで出かけてて、店には俺一人だった。
まぁそれが暇なんだ。
いつも暇なんだけど、たまに通りすがりの人が、外のワゴン売りの安い文庫をパラパラしてるのが見えるくらい。
店長達がいたらサボれないけど、一人だから堂々とカウンターで本読んでた。
18時半くらいかな?
さすがにちょっと掃除でもしようと思って本を閉じた時に『チリーン』って音が響いた。
風鈴みたいな。
何故かその時、俺はそれが自動ドアのセンサー音だと思って
「いらっしゃいませー」
って入口の方を見た。
自動ドアが開いた。
でも人の姿はなくて、あれ?って思った時、ふいに左側から影が現れた。
反射的に振り向いた。
目の前に麻みたいなガサガサした着物があった。
え、ってそのまま見上げると、のっぺりした黒い一つ目のものがいた。
目というか、のっぺらぼうに絵で丸を描いた感じ。
ロンドンオリンピックの変なキャラクター、あれに似てた。
あれの首をひっぱって伸ばして肌を全部かさぶたにしたような、よく分かんないものが暗い緑の着物を着て立ってた。
腕は無さそうだった。
蛍光灯の灯りが逆光になって、俺にそいつの影がかかってた。
俺はもう完全に固まってて『ひぃ』みたいな声を漏らすだけ。
金縛りだったのかもしれない。
よく思い出せないけど、とにかく動けなかった。
そいつは、その絵みたいな目の黒目をグリグリ回しながら頭を左右に揺らして、ザザザザザ…みたいな変な音を出してた。
声だったのか、あのガサガサの肌と着物がこすれてたのかは分からない。
少しずつ、そいつが顔を近づけてくる。
細くくびれてる首を、ぐにゃ~っと曲げて俺の目の前まで寄った時、またあのチリーンって音がした。
途端、そいつの頭が首からもげるようにべろんって落ちた。
千切れた首の上に下あごが、小さい歯がびっしり並んでた。
黒い穴みたいになった喉から、『おおおおおおおっ』て妙に甲高い震えた声を出しながら、ごぼぼぼ、と黒い血のようなものを吹き出した。
まばたきの間か、ほんの一瞬でそいつは跡形もなく消えてた。
全身の鳥肌と変な汗が気持ち悪くて、できるだけカウンターから離れて、入口の所で外を通る人を眺めて気持ちを落ち着かせてた。
その後、すぐ店長達が帰ってきたけど、こんな話をするわけにもいかず黙って店じまいを始めた。
俺が自動ドアのセンサーを止めてシャッター閉めて帰るんだけど、そのセンサーの下にかさぶたのようなものが落ちてるのを見た時は本当に気持ち悪かった。
もう出ませんように…
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線路
東京駅と高尾駅の間を往復する中央線は利用者が多く、とても混雑する路線であり、しょっちゅういわゆる『人身事故』で止まります。
私は、その運転をこの半年しているものですが、同僚の間で様々に噂をされている幽霊を見たことは1ヶ月前まではありませんでした。
しかし1ヶ月ほど前から、立川まで後少しの、とある駅の下りホーム手前に毎晩いるんです。
赤黒い色のワンピースを着ていて、長めの髪に少しウェーブがかかったような感じの若い女性で、最初はいつも線路脇からうつむいて線路を眺めていました。
最初に見たときは急ブレーキをかけましたが、すぐにすっと消えてしまいました。
ものすごく驚いて、何故かしびれた指先を眺めながら、しばらく呆然としていましたがすぐに我に返り、遅延に対するいくつかの処置をしながら駅へ電車を入れました。
その後も、夜間にその駅に侵入するときには必ずその人がおり、電車が近づくと消えてしまうというのを繰り返していました。
ただ、一昨日の夜は近づいても消えず、彼女は線路に向かって歩いてきたのです。
どうすることもできず、私はそのままその幽霊を轢きました。
そして昨晩彼女は、線路上から初めてこちらを見上げました。
電車の下に消えていきながら、かすかに笑ったように見えたその顔は、目の辺りがぼうっと暗くなっていて、そこには何も見えませんでした。
今日の休みが終われば、明日はまた勤務します。
私は明後日の朝を迎えることができるのか、よく分かりません。
乗客の皆さんを巻き込むような事故だけは起こさないようにと思っています。