「 後味の悪い話 」 一覧
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廃棄処分
これは旧友のチンピラに聞いた話なんだが、そいつとある組の若い衆とで、良く若い女を街でさらっては交尾をしていたんだそうだ。
まあナンパ仲間と云った所だな。
ある日も、チンピラは何時もの様に若い奴に誘われて、街中に繰り出そうとしていたそうだ。
だが、どうも急に体調が悪くなり、今日の所は止めといて、一人自宅で寝込んでいたそうだ。
で、若い衆の方は単身街に繰り出したと。
それで、上手く上玉の女子を引っ掛ける事に成功したそうだ。
嫌がる娘を押さえつけ、まあ打つ物を打って、ぐったりした娘と無理矢理性交して楽しんでいたそうだが、明け方、その女子の容態が急変し、あっさり死んでしまったらしい。
死因は、暴力と薬物の過剰摂取といったところだろう。
娘は、そう云う物をやるのは初めてだったらしい。
警察沙汰になるのだけは避けようと、早朝からそいつは自分の組に、その娘の死体を持って行き、若頭に泣きついた。
しかし、その娘の顔を見た若頭が凍り付く。
どうやらその娘、ある名のある組長の関係者で、その筋の人々が手を出すのはヤバい。
さらに輪をかけて、ご法度の粉にまで手を付けていて、娘にも投与してしまっている。
体中に青々と暴力の後も残っている。
これはまずいという事で、組員数名で取り急ぎ、その娘を奥多摩の山中に埋めに向かった。
しかし、その道中はそれだけの目的ではなかった。
察しの通り、若頭は失態を晒した若い衆も一緒に埋めようと考えていたわけだ。
娘を埋める穴を苦労して掘った後、疲れた様子の若い衆の四肢をガムテープで縛り、生きたまま娘の隣に放り込んだ。
激しく暴れるが、構わず土を順調に振りかけていき、生き埋めに。
組に帰り、この事を組長に伝えた。
しかし、その組愛用の廃棄所は、新しく道路が通るとかで、工事が来月にも始まる予定で、既に使ってはいけない所だったらしい。
大急ぎで山に取って返し、場所を移さなければならない。
組員数名で現場に着いて、まだ柔らかい先程の土を掘り返すと、少しずつ男女の抱き合っているような死体が姿を現す。
すでに男も息絶えている様子だった。
しかし、何かおかしい。
先程は女の死体を放り込んだ後、その上から男を生きたまま放り込んだ。
ところが掘り返すと、横に抱き合っているような形になっている。
何よりも奇妙なのは、死んでいたはずの女の両手が男の首に絡み付いていて、赤黒い指の跡が男の首に浮き出ていたそうだ。
どうやっても、女の両手が男の首から外れず、結局その場で焼き捨てたそうだ。
男の死因はどちらだったのだろうか。
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リョウメンスクナ
俺、建築関係の仕事やってんだけれども、先日、岩手県のとある古いお寺を解体することになったんだわ。
今は利用者もないお寺ね。
んで、お寺ぶっ壊してると、同僚が俺を呼ぶのね。
「ちょっと来て」と。
俺が行くと、同僚の足元に、黒ずんだ長い木箱が置いてたんだわ。
俺:「何これ?」
同僚:「いや、何かなと思って・・・本堂の奥の密閉された部屋に置いてあったんだけど、ちょっと管理してる業者さんに電話してみるわ」
木箱の大きさは2mくらいかなぁ。
相当古い物みたいで、多分、木が腐ってたんじゃないかな。
表に白い紙が貼り付けられて、何か書いてあるんだわ。
相当、昔の字と言う事は分ったけど、凡字の様な物も見えたけど、もう紙もボロボロで何書いてるかほとんどわからない。
かろうじて読み取れたのは、
「大正??年??七月??ノ呪法ヲモッテ、両面スクナヲ???二封ズ」
的な事が書いてあったんだ。
木箱には釘が打ち付けられてて、開ける訳にもいかず、業者さんも
「明日、昔の住職に聞いてみる」
と言ってたんで、その日は木箱を近くのプレハブに置いておく事にしたんだわ。
んで翌日。
解体作業現場に着く前に、業者から電話かかってきて、
業者:「あの木箱ですけどねぇ、元住職が、絶対に開けるな!!って凄い剣幕なんですよ・・・なんでも自分が引き取るって言ってるので、よろしくお願いします」
俺は念の為、現場に着く前に現場監督に木箱の事、電話しておこうと思い、
俺:「あの~、昨日の木箱の事ですけど」
監督「あぁ、あれ!お宅で雇ってる中国人(留学生)のバイト作業員2人いるでしょ?そいつが勝手に開けよったんですわ!!とにかく早く来てください」
嫌な予感がし、現場へと急いだ。
プレハブの周りに、5~6人の人だかり。
例のバイト、中国人2人が放心状態でプレハブの前に座っている。
監督:「こいつがね、昨日の夜中、仲間と一緒に面白半分で開けよったらしいんですよ。で、問題は中身なんですけどね・・・ちょっと見てもらえます?」
単刀直入に言うと、両手をボクサーの様に構えた人間のミイラらしき物が入っていた。
ただ異様だったのは・・・頭が2つ。
シャム双生児?みたいな奇形児いるじゃない。
多分、ああいう奇形の人か、作り物なんじゃないかと思ったんだが・・・
監督:「これ見てね、ショック受けたんか何か知りませんけどね、この2人何にも喋らないんですよ」
中国人2人は、俺らがいくら問いかけても、放心状態でボーっとしていた(日本語はかなり話せるのに)。
あ、言い忘れたけど、そのミイラは「頭が両側に2つくっついてて、腕が左右2本ずつ、足は通常通り2本」という異様な形態だったのね。
俺も、ネットや2ちゃんとかで色んな奇形の写真見た事あったんで、そりゃビックリしたけど、「あぁ、奇形か作りもんだろうな」と思ったわけね。
んで、例の中国人2人は一応、病院に車で送る事になって、警察への連絡はどうしようか、って話をしてた時に、元住職(80歳超えてる)が息子さんが運転する車で来た。
開口一番、
住職:「空けたんか!!空けたんかこの馬鹿たれが!!しまい、空けたらしまいじゃ・・・」
俺らは、あまりの剣幕にポカーンとしてたんだけど、住職が今度は息子に怒鳴り始めた。
岩手訛りがキツかったんで、標準語で書くけど、
住職:「お前、リョウメンスクナ様をあの時、京都の~寺(聞き取れなかった)に絶対送る言うたじゃろが!!送らんかったんかこのボンクラが!!馬鹿たれが!!」
ホント、80過ぎの爺さんとは思えないくらいの怒声だった。
住職:「空けたんは誰?病院?その人らはもうダメだと思うけど、一応アンタらは祓ってあげるから」
俺らも正直怖かったんで、されるがままに何やらお経みたいの聴かされて、経典みたいなので、かなり強く背中とか肩とか叩かれた。
結構長くて30分くらいやってたかな。
住職は木箱を車に積み込み、別れ際にこう言った。
「可哀想だけど、あんたら長生きでけんよ」
その後、中国人2人の内、1人が医者も首をかしげる心筋梗塞で病室で死亡。
もう1人は精神病院に移送、解体作業員も3名、謎の高熱で寝込み、俺も釘を足で踏み抜いて5針縫った。
まったく詳しい事は分らないが俺が思うに、あれはやはり人間の奇形で、差別にあって恨みを残して死んでいった人なんじゃないかと思う。
だって物凄い形相してたからね・・・その寺の地域も、昔部落の集落があった事も何か関係あるのかな。
無いかもしれないけど、長生きはしたいです。
俺だってオカ板覗くらいだから、こういう事には興味しんしんなので、真相が知りたく何度も住職に連絡取ったんだけど、完全無視でした。
しかし、一緒に来てた息子さん(50過ぎで不動産経営)の連絡先分ったんで、この人は割と明るくて派手めの人なんで、もしかしたら何か聞けるかも?と思い、今日の晩(夜遅くだけど)飲みに行くアポとれました。
リョウメンスクナの話、「宗像教授伝奇考」という漫画に出てきた覚えがある。
スクナ族という、恐らく大昔に日本へ来た外国人ではないかと思われる人が、太古の日本へ文化を伝えた。
それが出雲圏の文化形成となり、因幡の白ウサギの伝説もオオクニヌシノミコトの国造りの話もこれをモチーフとした話だろう、と。
そして大和朝廷による出雲の侵略が起こり、追われたスクナ族がたどり着いたのが今の飛騨地方だった。
日本書紀によれば、飛騨にスクナという怪物がおり、人々を殺したから兵を送って退治した、という話が書かれている、と。
つまり、スクナというのは大和朝廷以前の時代に日本へ文化を伝えた外来人のことで、恐らくは古代インドの製鉄を仕事とする(そして日本へ製鉄を伝えたであろう)人々のことではないかと書かれていた。
そして、出雲のある場所で見つけた洞窟の奥にあったものが、「リョウメンスクナ」(両面宿儺)の像だった、とあった。
スクナ族は、日本へ羅魔船(カガミノフネ)で来た、と書かれ、鏡のように黒光する船であったとのこと。
羅魔は「ラマ」で、黒檀系の木の名である、と書かれていたけど、黒ずんだ長い木箱とあったので、これももしかするとラマなのかも・・・?
とすると、リョウメンスクナ様も、逃げ延びて岩手地方に来たスクナ族の末裔なのかもしれないな。
・・・と、オカ板的にはあわない内容かも、と思いつつ書いてみたが。
直前になって何か「やはり直接会って話すのは・・・」とか言われたんで、元住職の息子さんに「じゃあ電話でなら・・・」「話せるとこまでですけど」と言う条件の元、話が聞けました。
時間にして30分くらい、結構話してもらったんですけどね。
なかなか話し好きなオジサンでした。
要点を主にかいつまんで書きます。
息子:「ごめんねぇ。オヤジに念押されちゃって。本当は電話もヤバイんだけど」
俺:「いえ、こっちこそ無理言いまして。アレって結局何なんですか??」
息子:「アレは大正時代に、見世物小屋に出されてた奇形の人間です」
俺:「じゃあ、当時あの結合した状態で生きていたんですか?シャム双生児みたいな?」
息子:「そうです。生まれて数年は、岩手のとある部落で暮らしてたみたいだけど、生活に窮した親が人買いに売っちゃったらしくて。それで見世物小屋に流れたみたいですね」
俺:「そうですか・・・でもなぜあんなミイラの様な状態に??」
息子:「正確に言えば、即身仏ですけどね」
俺:「即身仏って事は、自ら進んでああなったんですか!?」
息子:「・・・君、この事誰かに話すでしょ?」
俺:「正直に言えば・・・話したいです」
息子:「良いよ君。正直で(笑)まぁ私も全て話すつもりはないけどね・・・アレはね、無理やりああされたんだよ。当時、今で言うとんでもないカルト教団がいてね。教団の名前は勘弁してよ。今もひっそり活動してると思うんで・・・」
俺:「聞けば、誰でもああ、あの教団って分りますか?」
息子:「知らない知らない(笑)極秘中の極秘、本当の邪教だからね」
俺:「そうですか・・・」
息子:「この教祖がとんでもない野郎でね。外法(げほう)しか使わないんだよ」
俺:「外法ですか?」
息子:「そう、分りやすく言えば(やってはいけない事)だよね。ちょっと前に真言立川流が、邪教だ、外法だ、って叩かれたけど、あんな生易しいもんじゃない」
俺:「・・・具体的にどんな?」
息子:「当時の資料も何も残ってないし偽名だし、元々表舞台に出てきたヤツでもないし、今教団が存続してるとしても、今現在の教祖とはまったく繋がりないだろうし、名前言うけどさ・・・物部天獄(もののべてんごく)。これが教祖の名前ね」
俺:「物部天獄。偽名ですよね?」
息子:「そうそう、偽名。んで、この天獄が例の見世物小屋に行った時、奇形数名を大枚はたいて買ったわけよ。例のシャム双生児?って言うの?それも含めて」
俺:「・・・それで?」
息子:「君、コドクって知ってる?虫に毒って書いて、虫は虫3つ合わせた特殊な漢字だけど」
俺:「壺に毒虫何匹か入れて、最後に生き残った虫を使う呪法のアレですか?(昔マンガに載ってたw)」
息子:「そうそう!何で知ってるの君??凄いね」
俺:「ええ、まぁちょっと・・・それで?」
息子:「あぁ、それでね。天獄はそのコドクを人間でやったんだよ」
俺:「人間を密室に入れて??ウソでしょう」
息子:「(少し機嫌が悪くなる)私もオヤジから聞いた話で、100%全部信じてるわけじゃないから・・・もう止める?」
俺:「すみません!・・・続けてください」
息子:「分った。んで、それを例の奇形たち数人でやったわけさ。教団本部か何処か知らないけど、地下の密室に押し込んで。それで例のシャム双生児が生き残ったわけ」
俺:「閉じ込めた期間はどのくらいですか?」
息子:「詳しい事は分らないけど、仲間の肉を食べ、自分の糞尿を食べてさえ生き延びねばならない期間、と言ったら大体想像つくよね」
俺:「あんまり想像したくないですけどね・・・」
息子:「んで、どうも最初からそのシャム双生児が生き残る様に、天獄は細工したらしいんだ。他の奇形に刃物か何かで致命傷を負わせ、行き絶え絶えの状態で放り込んだわけ。奇形と言ってもアシュラ像みたいな外見だからね。その神々しさ(禍々しさ?)に天獄は惹かれたんじゃないかな」
俺:「なるほど・・・」
息子:「で、生き残ったのは良いけど、天獄にとっちゃ道具に過ぎないわけだから、すぐさま別の部屋に1人で閉じ込められて、餓死だよね。そして防腐処理を施され、即身仏に。この前オヤジの言ってたリョウメンスクナの完成、ってわけ」
俺:「リョウメンスクナって何ですか?」
詳しい説明は無かったが、神話の時代に近いほどの大昔に、リョウメンスクナと言う、2つの顔、4本の手をもつ怪物がいた、と言う伝説にちなんで、例のシャム双生児をそう呼ぶ事にしたと、言っていた。
俺:「そうですか・・・」
息子:「そのリョウメンスクナをね、天獄は教団の本尊にしたわけよ。呪仏(じゅぶつ)としてね。他人を呪い殺せる、下手したらもっと大勢の人を呪い殺せるかも知れない、とんでもない呪仏を作った、と少なくとも天獄は信じてたわけ」
俺:「その呪いの対象は?」
息子:「・・・国家だとオヤジは言ってた」
俺:「日本そのものですか?頭イカレてるじゃないですか、その天獄って」
息子:「イカレたんだろうねぇ。でもね、呪いの効力はそれだけじゃないんだ。リョウメンスクナの腹の中に、ある物を入れてね・・・」
俺:「何です?」
息子:「古代人の骨だよ。大和朝廷とかに滅ぼされた(まつろわぬ民)、いわゆる朝廷からみた反逆者だね。逆賊。その古代人の骨の粉末を腹に入れて・・・」
俺:「そんなものどこで手に入れて・・・!?」
息子:「君もTVや新聞とかで見たことあるだろう?古代の遺跡や墓が発掘された時、発掘作業する人たちがいるじゃない。当時はその辺の警備とか甘かったらしいからね・・・そういう所から主に盗ってきたらしいよ」
俺:「にわかには信じがたい話ですよね・・・」
息子:「だろう?私もそう思ったよ。でもね、大正時代に主に起こった災害ね、これだけあるんだよ」
1914(大正3)年:桜島の大噴火(負傷者 9600人)
1914(大正3)年:秋田の大地震(死者 94人)
1914(大正3)年:方城炭鉱の爆発(死者 687人)
1916(大正5)年:函館の大火事
1917(大正6)年:東日本の大水害(死者 1300人)
1917(大正6)年:桐野炭鉱の爆発(死者 361人)
1922(大正11)年:親不知のナダレで列車事故(死者 130人)
そして、1923年(大正12年)9月1日、関東大震災、死者・行方不明14万2千8百名
俺:「それが何か?」
息子:「全てリョウメンスクナが移動した地域だそうだ」
俺:「そんな!教団支部ってそんな各地にあったんですか?と言うか、偶然でしょう(流石に笑った)」
息子:「俺も馬鹿な話だと思うよ。で、大正時代の最悪最大の災害、関東大震災の日ね。この日、地震が起こる直前に天獄が死んでる」
俺:「死んだ?」
息子:「自殺、と聞いたけどね。純粋な日本人ではなかった、と言う噂もあるらしいが・・・」
俺:「どうやって死んだんですか?」
息子:「日本刀で喉かっ斬ってね。リョウメンスクナの前で。それで血文字で遺書があって・・・」
俺:「なんて書いてあったんですか??」
日 本 滅 ブ ベ シ
俺:「・・・それが、関東大震災が起こる直前なんですよね?」
息子:「そうだね」
俺:「・・・偶然ですよね?」
息子:「・・・偶然だろうね」
俺:「その時、リョウメンスクナと天獄はどこに・・・??」
息子:「震源に近い相模湾沿岸の近辺だったそうだ」
俺:「・・・その後、どういう経由でリョウメンスクナは岩手のあのお寺に?」
息子:「そればっかりはオヤジは話してくれなかった」
俺:「あの時、住職さんに(なぜ京都のお寺に輸送しなかったんだ!)みたいな事を言われてましたが、あれは??」
息子:「あっ、聞いてたの・・・もう30年前くらいだけどね、私もオヤジの後継いで坊主になる予定だったんだよ。その時に俺の怠慢というか手違いでね・・・その後、あの寺もずっと放置されてたし・・・話せる事はこれくらいだね」
俺:「そうですか・・・今リョウメンスクナはどこに??」
息子:「それは知らない。と言うか、ここ数日オヤジと連絡がつかないんだ・・・アレを持って帰って以来、妙な車に後つけられたりしたらしくてね」
俺:「そうですか・・・でも全部は話さないと言われたんですけど、なぜここまで詳しく教えてくれたんですか?」
息子:「オヤジがあの時言ったろう?可哀想だけど、君たち長生きできないよ、ってね」
俺:「・・・」
息子:「じゃあこの辺で。もう電話しないでね」
俺:「・・・ありがとうございました」
以上が電話で話した、かいつまんだ内容です・・・はっきり言って全ては信じてません。
何か気分悪くなったので今日は落ちますね。連投・長文スマソ。
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間違い電話
自分は数年前に、アパートに電話回線を引く事にしました。
電話回線ってどうやって引くのか、と同僚に聞いたところ、家電量販店で安く契約できると聞き、近場の量販店で契約をしました。
一週間ほどで量販店から電話番号を教えてもらい、使用可能に。
使えるようになったはいいのだけど、なんだか間違い電話がやたらと掛かってきます。
後で知ったのですが、電話番号ってのは使い回しになっている物らしい。
自分は電話帳にも載せていなかったので、前の使用者と、どうやら間違えて掛けてきてるようでした。
間違えて掛けてきた人が、呼び出す名前はいつも一緒。
仮にAさんとします。
このAさん宛ての電話が、毎日のように掛かってきます。
相手するのも面倒になってきたので、常時留守録状態にしてほったらかしてました。
そんな日が2~3ヶ月ほど続き、会社から帰って、いつものようにメッセの確認をしていたところ、
『こちら○○ファイナンスですが。Aさんお早めにご連絡をお願いします』
おやおや、Aさんはお金でも借りてたのかね~?とか、余り気にもしませんでしたが、翌日も、
『○○ファイナンスです。昨日ご連絡を頂けませんでしたので、急ぎ連絡を願います』
その翌日でした。
野太い男の声が録音されています。
『おい!A!!連絡よこせ!いい加減にしろよ、明日までに連絡をよこさなければ・・・』
ここで切れました。
それから数日して、仕事から帰ると留守録が入っています。
友人かと思い、再生すると聞こえてきたのは、
『・・ブクブク・・プク・・オカケニナッタ・・・ブクブク・・・プク・・・ダシテ・・・ツカワ・・・』
ん?何か泡のような音。
音量が大きくなったり小さくなったり。
えらく遠い所で、何かメッセージが流れている気がするけど?
おかけになった電話は現在使われておりません?かな、とか思いましたが、自分に掛かってきた電話に、そんなのが録音されているはずは無い。
ま、何かの間違い電話でしょっと、気にせずに放置。
翌日も同じ留守録。
その翌日もまた同じ・・・そのまた翌日も・・・
何度か聞いているうちに、どうにも水の中でしゃべっているような、そんな声に聞こえてきてしまいました。
『ブクブク・・オカゲデナッタ・・ブクブク・・・ココ・・ダシテ・・モウツカワ・・・』
なんだか気味が悪いったら。
翌日もまた留守録が入っています。
2件でした。
『Aさん、連絡がなくなって二週間です。会社の人も心配しています。早く連絡を願います』
Aさんの友人のようです。
連絡が無い?二週間前から?二週間前と言うと、丁度あの野太い男の声の留守録があった翌日です。
その後に、また例の留守録が入ってました。
なんだか気味が悪いを通り越して、嫌な想像をしてしまいます。
気にしないようにと眠りました。
翌日は仕事は休み。
普段は出かけるのですが、気になるので電話に出てやろうと、今日は部屋にいる事にしました。
いつも掛かってくる時間は15時過ぎでした。
そして15時過ぎ、呼び出し音がします。
当然、電話を取りました。
「もしもし、どちら様でしょうか?」
『ブク・・オマエオカゲブクブク・・・ココ・・ダシテ・・・モウツカワナイ・・・』
「誰なんです!毎日毎日!!いたずらはやめてください!」
ツーツーツー・・・
オマエノオカゲって言われた気がする・・・
また呼び出し音が鳴りました。
気持ち悪くて取る事が出来ずにいると、留守電に変わりました。
『Aさん、昨日も連絡を頂けませんでした。会社では、失踪として警察に届ける事になりました。』
慌てて電話を取りました。
「もしもし。うちはAさんの家ではありませんよ」
『あ、間違えました。すいません、番号は*******ですか?』
「そうですよ、良くAさん宛ての電話がかかってきて困ってるんです」
『失礼しました。会社に登録されている番号が同じですので、皆にも連絡しておきます。では』
間違い電話の正体は掴めたようです。
でも、例の水の中からの声のような電話は?
この後から、しばらく例のメッセは録音されていませんでしたが、それでも数ヶ月に一回程度の割合で、例のメッセが録音されています。
あいにくと、こちらの正体は掴めていませんが、
借金(これも想像)・・・
男の声・・・
失踪・・・
日付の一致・・・
水の中のような声・・・
嫌な想像をせずにはいられません。
『オマエノオカゲ・・・』
怖いと思うから聞こえてしまうのでしょうが、気になっています。
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祖母と少年
もう30年近く前、俺が幼稚園に通ってた頃の話です。
昔はお寺さんが幼稚園を経営してるケースが多くて、俺が通ってた所もそうだった。
今にして思うと、園の横は納骨堂だったし、その隣は古い墓地だった。
夕方、幼稚園の遊具で遊んでいた。
外には俺一人だった。
室内には何人も人が居たんだと思う。
でもその時は、何故か俺一人だった。
ジャングルジムの上に人が座っていた。
男の子だった。
黒の半ズボンに、黒い金ボタンの上着を着ていた。
裸足だった。
坊主頭で、小学生くらいだったんだろうか。
すぐ自分より2つ3つ年上の子だと分かった。
その子はじっと俺の方を見ていた。
特に怖いとか、ビックリした記憶は残って無い。
ただ、何故か無性に寂しくなったのを覚えている。
その子は黙ってジャングルジムから下りると、納骨堂の横を通って墓地の方へ歩いて行った。
俺は、その子の後について行った。
墓地と言っても、園の隣で見慣れた景色だったし、日頃かくれんぼをして遊ぶ場所だったので、特に怖いとは思わなかった。
その子を目で追ってたつもりだったが、何故か今思い出そうとしても、その時の光景が思い出せない。
だが、その時見た苔の生えた小さな墓だけは、鮮明に脳裏に焼きついている。
古い墓地によくある巨木が夕日を遮っていたので、辺りは薄暗かった。
その薄暗さを意識した瞬間、すごく怖くなって走って園に戻った。
時間にして1~2分の出来事だったんだろうが、今思うとすごい長い時間だった様な気がしてならない。
しばらくして、祖母が迎えに来てくれた。
今思うと、祖母が迎えに来てくれたのは、その時が最初で最後だった。
何故か、その時の祖母の顔を見た瞬間の安堵感を覚えている。
そして祖母は、墓の方を物悲しい顔でしばらく見ていた後、
「○○ちゃん(俺)。何も心配せんでよか・・・ばあちゃんがちゃんとしてやっけんね」
と、俺の顔をまじまじと見ながら言った。
二人で手を繋いで家に帰った。
途中、駄菓子屋の前を通りかかった時、俺は無性に寄り道したかったが、
「今日はあかん!今日はあかん!早よ帰らんばあかん!」
と、祖母にたしなめられた。
祖母が死んだのは、その日の深夜だった。
何故か俺には、祖母の死が記憶としてハッキリ残っていない。
葬儀で親戚やら知人やらが家に大挙して、慌しかったのは覚えているが、祖母が死んだ悲しさが、全く記憶から消えている。
翌年、俺は小学生になった。
小学校も幼稚園と道を挟んで隣接していたが、俺はその後、一切近寄らなかった。
正確に言えば近寄れなかった。
意識すると頭の中に、苔にまみれたあの小さな墓が浮かぶからだ。
中学2年になった時、町内のボランティアで、再び幼稚園のあるその寺を訪れることになった。
墓地は整備され、古い無縁仏や墓石は撤去されて、以前の面影は残っていなかった。
幼稚園も新築され、当時とは全く景色が変わっていた。
寺の本堂が改築されるらしく、古い荷物やらゴミやらの掃除がボランティアの仕事だった。
住職が、寺に持ち込まれた物を整理している。
その中に遺影が何十枚もあった。
俺と友人は、それを外に運び出すよう言われた。
黄ばんだ新聞紙に包まれた遺影の中に、一枚だけ裸の遺影があった。
俺はその遺影を手に取って見た瞬間、全身の血が凍った。
あの時見た少年の遺影だった。
そして、その少年の背後から、その少年の首を、この世の物とは思えない形相で絞めている祖母の顔が写っていた。
俺は気を失い、目が覚めた時は病院だった。
父も母も、恐怖で顔が尋常ではなかった。
後に、写真は住職が供養して、焼却処分したと聞いた。
父が住職に聞いた話では、その少年は戦時中、土地の地主が養子に引き取った子で、かなり冷遇を受けた後、病死したらしかった。
祖母は若い頃、その地主の家で手伝いをしていたらしく、かなりその子を可愛がっていたそうです。
その少年は多分、俺を連れて行く為に現れたんだろうと、住職は言っていたそうです。
祖母はそれをさせまいとして、その結果があの写真だったのだろうと言っていました。
その後、すぐ引っ越したのですが、今でも思い出します。
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笑顔
その日、俺は駅のホームで電車を待っていた。
ホームに、ほとんど人はいなく、俺の5mくらい横にはカップルがいた。
俺もカップルも、ホームの黄色い線内側ギリギリに立っている感じ。
カップルは楽しそうに話をしていた。
見ると女の子が可愛い感じだったので、俺はうらやましいな~って気持ちだった。
通過列車が来たので、俺は自然と電車の方を向いた。
電車が来る方向にカップルが居たので、自然とカップルも視界に入っていた。
電車がカップルの前にさしかかろうとした時、女の子が彼氏を見ながら満面の笑みで電車に飛び込んだ。
ガンッって硬い物に何か当たる音がして、その後電車のものすごいブレーキ音がして電車が止まった。
止まったって言っても、完全に駅は通過した後に止まったんだが。
通過列車だったから、かなりスピード出てたし。
線路には女の子の残骸らしきものがあったけど、まじまじと見る気持ちにはならなかった。
彼氏はその場でへたりこんで放心してた。
俺は完全に???の状態で、なんで??さっきまで楽しそうにしてのに??、てか飛び込む瞬間も楽しそうだったし???訳がわからないで、たたずんでたら、駅員が数名走ってきた。
そのうちの一人が俺に話しかけてきた。
「すいません、事故、目撃されましたか?」と聞かれた。
俺は混乱していたのもあって、どもりながら、え・ええ・・と答えた。
すると駅員に「そうですか・・・あの、お急ぎの所大変申し訳ありませんが、これから警察の方が来ますので、事故の状況を説明していただけませんでしょうか?」と言われた。
後で聞いた話によると、電車での人身事故の場合、自殺・事故の他に殺人の可能性もある為、警察の現場検証を行い目撃者に状況を聞くことがあるそうだ。
見ると彼氏にも駅員が話しかけている。
彼氏は、まだへたりこんで放心したままだった。
俺は駅の事務所みたいなとこに連れていかれた。
警察が来るまで待って下さいと言われ、椅子に座らされた。
すぐに駅員二人に両脇を抱えられた、顔面蒼白の彼氏が事務所に入ってきた。
そのまま、事務所の奥の方に連れて行かれ、俺からは見えない位置に座らされてた。
しばらくすると、警察が来て「お手間掛けますが、状況を説明して下さい」と言われた。
俺は正直に見たままの事を話した。
女の子は自分から飛び込んだから、事故ではなく自殺なんだろう。
彼氏も誰も突き落したりしてないし殺人でもない。
でも、飛び込んだ時の女の子の満面の笑みは理解不能だった。
理解不能だったが、俺は女の子が笑顔のまま飛び込んだと説明した。
しかし警察は、特にひっかかった様子もない感じで、うんうん頷いてた。
奥から彼氏の呻き声が聞こえた。
俺は警察があまりに冷静だったので「自殺って皆だいたいこんな感じなんですか?」って聞いてみた。
警察は「皆ではないけどたまにありますよ。こういう事は」と言った。
警察が言うには、自殺する気配がないのに、いきなり飛び降りたりする人がいるらしい。
そういう人たちは明るくて、まるで散歩でも行くかのように、自殺してしまうから防ぎようがないらしい。
死ぬと決めたから、気持ち的に楽になってハイになるのだろうか・・。
それとも何かに引っ張られてしまうのだろうか・・。
俺が見た感じだと、あの電車に飛び込む神がかり的なタイミングは、何かに引っ張られたと言われた方が説得力があるような気がした。