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女の存在を知らせること
女の存在を知らせること
※※注意※※
この話を読む前に次のことをしてくれるとうれしいです。1、左足のすねを触ってください。
2、触ったまま目を閉じて「篠原」という名前を頭のなかで呼んでください。
3、同様のことを左の薬指と小指にも行ってください。
以上のことを行った方から下にお進みください。
なお、かなりの長文ですが区切らず、話を進めていこうと思います。今から8年と10ヶ月前のことです。当時、高校3年生だった僕は富山の立山というところに住んでいました。桜もほとんどが散り、とても暖かい一日でした。
受験シーズンに入ろうとしていましたが、僕はただダラダラと過ごしていました。
高校を卒業した後、実家の弁当屋の手伝いをすることに決めていたからです。周りもそんな奴らばっかりでした。僕の学校はレベルが低く、ガラの悪いのが当たり前みたいな感じでした。僕自身も髪の色は茶色でした。友達のIとHとは中学からの親友でした。
カツアゲみたいなことはしなかったけれどバイクに乗ったり(当時、無免許でした。)、タバコ吸ったりはしていました。「明日、遊びにいかん?」といってきたのはHからでした。ちょっと遠くにいかんけ、と。富山には、遊べるほどの場所がほとんどありませんでした。あってもパチンコくらいです。「どこに行くが?」と聞くと、Hは「村。」と一言いいました。
「なん、実はそこで肝試しやろっかな・・・って思って。いや、女子とかも誘うし!」と付け加え、行こう、と言ってきました。
正直、楽しくなさそうだなと思っていましたが。女子もくるなら・・・ということでそれに応じました。Iはかなり乗り気でした。「俺、写るんですもって来る!」みたいなことを言ってたような気がします。
「じゃあ俺、女子誘うわ。」といってHが右足の義足を引きずりながら。女子のところに歩いていきました。Hの右足はひざから下がありません。本人は「バイクで事故った。」と言ってました。
結局、集まったのはIとHと僕、女子が3人の計6人。電車を乗り継ぎ、2時間くらいかかりました。「マジで合コンみたい。」「やっば楽しくなってきたんやけど。」といっていました。
Hがいうには普通の村だけどそこで幽霊がでるらしいのです。
といっても怖さは全然ありませんでした。ただのお楽しみ会のようでした。
村ではほとんどが田んぼですが、ポツリポツリと明かりがついてました。まさに「田舎」という感じです。いく当ても無くただ歩いていました。遠くから人が話している声も聞こえてきました。なんかおかしいな、と思い始めたのはそれから5分くらい経ってからでした。
女子が「なんか気持ち悪い。」とか「歩きたくない。」といい始めました。なんの冗談だよ、マジでうぜえな、と思っていた僕ですが、だんだんと目眩がしてきました。キーーーンと耳鳴りもしてきています。このときはまだ余裕がありました。Iは「幽霊来るって。まじカメラもって来てよかったし。」と笑っていたと思います。
ふいに、自分達が歩いているとこがアスファルトから、砂利道に変わったことに気がつきました。あれ?と思い周囲を見渡します。女子の一人が「どうしたん?」と声をかけてきました。
村の雰囲気がおかしかったのです。
邪気とかそういう意味ではなく、なんとなく古くなっていました。昭和の村というか、タイムスリップしたみたいでした。
女子もなんか古いよね、といい始め。Iもカメラを撮り始めました。
目をやると酒屋だと思われるところに「キリンビール」とかいてあるポスターも貼ってありました。その横にはビール瓶とそれを入れる籠が置いてあります。
家からはテレビの音が聞こえてきます。昔の音というか、独特の音楽が流れてきました。
ここまでくるとさすがに不気味になってきて誰からともなく「引き返そう。」というようになってきました。ところがHは「もう少しだけ進もう。頼むから、もう少しだけ。」といってどんどん進んでいきます。
このころから僕はHに疑問をもつようになりました。これまでHは一言もしゃべってないし、適当に歩き回っているはずなのに「もう少しだけ進もう。」と僕たちに言ったりしたり。あきらかにHは「目的をもって」行動していまいした。ただそれは、今だから考えられることであのときは「なんか怖いな、H。」ぐらいにしか思っていませんでした。
Hは右足を引きずって黙々と進んでいきました。
民家からは「東京ブギウギ」が流れてきていました。Hの動きがある家の前でピタッと止まりました。「H、帰る気なったん?」と女子が聞いてきました。くるっとHが僕たちを見回しました。Hが僕たちを見る目には哀れみが混ざっていました。Iが「なに?ここが幽霊でるとこ?」と勝手に入って行きます。女子も入っていきました。それに続いて僕とHも門をくぐりました。
表札には「篠原」と立て掛けられていました。その家は他の家と違って電気はついていませんでした。
庭から物音がすることに気付いたのは女子の一人でした。勝手に入ってたら怒られるな、と思って出ようとすると、Hが「あっちに行こう。」と言い出しました。「ふざけんなや。」IがHに向かっていいましたが。女子やHはすでに物音のする方向に向かっていて、Iも僕もしぶしぶそこに歩を進めました。
そういえば、人に会うのこれがはじめてかも・・・と思っていましたが、真夜中だしこんなものだろうかと思い、気にしませんでした。庭を少し歩くと人がいました。「第1村人発見じゃね?」とIが僕にいってきます。あれは幽霊じゃねえだろ、と考えながらHに尋ねました。
Hの顔が異常でした。鼻息はフーフーと荒く、汗が傍目からでも分かるほど流れていました。足が震え始め、次第には歯を鳴らすようになりました。
Hの目線に合わせて頭をスライドさせてもそこには後ろ向きにかがんでいる人がいるだけ。かがんでいる人は古い花柄のワンピースを着ていて、肩にかからないほどのパーマをかけていました。この人も昭和みたいだな。というのが第1印象でした。
その女の人は右手を振りかざし、そのまま目の前の地面に手刀よろしく右手を振り落としていました。そして、女の人の向こうにはマンホール4,5個分くらいの穴がぽっかりと開いていました。正直、明かりもついてなかったので、女の人がなにしているのかわかりませんでした。穴にもなにがあるのかさっぱりです。黙々と作業している女の人を後ろから眺めている6人の男女。
隣の家からは、「りんごかわい~や~かわいやり~ん~ご~」とかなんとかと歌っている女の歌手の声。
なんだこれは、と一人で苦笑していると突然女の人の周りが明るくなりました。その後にパシャっというカメラのシャッター音。「ああ、まちがってIがカメラを押しちゃったんだな。」と理解する前に僕の頭のなかは目の前の光景に引き付けられました。
女の人の右手には大振のナタがあり、光りでなぜか赤茶色に反射しました。それよりも息を呑んだのは穴の中の光景でした。
一瞬の光りでも僕の目はそれを認識しました。バラバラの手が、足が、指が、胸が、破れた服が、大きい額縁めがねが、頭皮が、髪の毛が見えました。それもいくつも。真っ赤な斑点が無数にとびちり、真っ赤な臓器のようなものも見えた気がします。女の足元には先ほど切ったであろう体が千切れかけで転がっていました。
全身の毛穴が開くような感覚がありました。手が足が震えてきました。唐突にHが門に向かって走りだしました。右足がないとは感じさせないほどはやく、ずり、ずりと。後ろにいたHがいきなり走り出し、僕は顔を後ろに向けました。目線がHに向いていく中、僕の視界は端に女の姿を捉えました。ゆらりと女は立ちあがって体は小刻みに揺れています。ぎゃああああ。
女子の一人が叫んだのが合図になりました。
女は回転切りをするように体を半回転させました。右手にナタをもって、関係の無い左手も思い切りふり上半身だけをまず回し、次に下半身を動かす歪な動き方で。ナタは叫んだ女子のこめかみを捕らえました。女の動きに合わせて女子の体も動きます。シュトっという子気味よい音と同時に女子の叫びもぷつりと切れました。
ナタと一体となった女子は不自然な格好でその場に突っ伏しました。このときには僕やIや女子は走り出していました。
4人の精一杯の合唱も息ピッタリに重なり合いました。「えぐっ。」と呻き声をだして女子の一人が体は走っているのに頭だけは女に引き寄せられていました。見ると長い髪の毛をわし掴みにされ引っ張られていました。僕は顔を前に戻し、走り続けました。女の子を見殺しにしました。あのときは恐怖が頭のなかを占めていてそれどころではなかったのです。
「やめっ、ああああいいいい!!!」女子が叫び、泣き出しました。叫び声をあげている途中もシュトン、シュトンとナタを振り落とす音が聞こえてきました。僕とIと女子一人の三人は一気に砂利道を駆けていきました。
先頭を走っていた女子が方向を変え、明かりのついている家の戸を叩き「助けてくださいぃ!!」とドンドンと引き戸を叩き始めました。引き戸を開けようとすると、スーーっと戸が開き、力を入れていたため、女子は多少よろけています。それでも玄関に転がっていくようにして入っていきました。僕もその家に入りました。「助けったすっ。」と掠れながらも必死に声を出しました。Iは一瞬足を止め、躊躇っていましたが、別の方向へと走っていきました。なかの風景も異常でした。オレンジ色の豆電球が上からぶら下がっているだけ。ちゃぶ台には味噌汁や焼き魚、おひたしが並んでいました。テレビはサザエさんの家にあるような大きなテレビで、ふすまや座布団もありました。
でも人がいません。そこから人だけが消えたよでした。僕はそんなこと気にもせず、「誰かっ。誰か。」と声を出し続けました。涙声で鼻水をズルズルとすっていました。僕と女子は顔を見合わせます。「誰もいない・・・。」一体どうなっているのかわかりませんでした。ガラガラガラガラ・・・
心臓が飛び出るのではないかと思いました。
誰かが戸を開けて入ってきました。Iだろうか?それともこの家の人だろうか?と思っていましたが、女子は顔を強張らせてこっちをみています。あの女だ。
反射的に押入れに手をやりました。押入れの中は新聞紙が敷いてあるだけでした。僕は女子そっちのけでなかに入ります。それに続いて女子も。すっと閉め、息を殺しました。
その直後ぎしぎし・・・と足音が聞こえてきました。脂汗が吹き出てきます。しばらくぎしぎしと音が鳴り。辺りを探していました。よく聞くと「ほほほほほほほっほほほほほほほほほほほほほほほほほ・・・。」と笑っているような声が聞こえました。女の人の金きり声のようでした。ドクドクと心臓が高鳴ります。ふいに、物音がしなくなりました。女の声も聞こえません。無音になりました。僕は女子の顔をみようと顔を上げました。「そこかぁ。」
シュッと戸が開き、向こうから腕が伸びてきました。手は血で赤く染まっていました。その手は女子の首を掴み居間へと引きずり出しました。「いやああああああああああぁぁああ。」と叫ぶ声が聞こえます。
僕は咄嗟に押入れから飛び出しました。彼女を助けるためではありません。今なら逃げ出せる、と思ったからです。
中腰のまま僕は飛び出ました。女は僕に気付き、「あはっ。」と笑い声を出しました。そこで女の顔を僕はのぞいてしまいました。顔色は薄い灰色で返り血や電球のオレンジ色で変な抽象画をみているようでした。唇は不自然な程潤っていて、異常なほど口端を吊り上げていました。目は明らかに焦点があっておらず、半分白目のようでした。口からは「ほほほほほ・・・」と空気の漏れるかのような音をだしています。
女は左手で女子の首を抱え、右手のナタを僕に向かって振り下ろしてきました。シュト
目の前に芋虫のようなものがくるくると飛んできました。なんだあれは、と目をこらすとそれは指でした。状況が判断できず、それでも逃げようと左手を床についたとき、いつもある左手の小指と薬指がなく、代わりに飛び散った血がありました。
「びゃぁああうううう・・・。」情けない声を出して僕は畳を転げ回りました。全身の毛が逆立ち、耐え難い苦痛が僕を襲いました。心臓が早鐘をうっています。それでも僕は左手を押さえながら、必死に玄関に向かいました。
「いやっいやだぁああ!ああああああ!」と必死に叫ぶ声と食器をひっくり返す音を背後に聞きながら僕は玄関を出ました。誰でもいいから助けてください。自分の血が服につき、涙と汗で顔がグシャグシャになっていました。
来た道を必死に思い出し走りました。あああああと叫び声を上げていました。砂利を踏む音がアスファルトに変わっていったのは走り出してしばらくしてからのことでした。ここから後は記憶が飛んでいて、次に思い出せるのは病院で目をさましたところからです。
あのとき、通りかかった人が血だらけにいなりながら泣き喚いている僕を見つけ、近くの労災病院に運んでくれたらしいです。両親は警察に被害届を出しておらず、(普段でも家に帰ってこないことは日常茶飯事でした。)両親が病院に駆けつけたのは僕が目を覚まして両親の名前と住所を言ってからのことでした。
次第に落ち着いてきた僕は起こったことを医師や両親に話しました。肝試しをしにここに来たこと。歩いていたら、景色が変わっていったこと。ナタを持った女が襲い掛かってきたこと、女子3人が見ているかぎりもう死んでしまったこと。僕がこのことを喋ったことで始めて事件としてみてもらえるようになりました。
しかし、5人のうち、女子3人の遺体は発見されず、行方不明者扱いになってしまいました。Iの行方もいまだに分かりません。おそらく女に見つかってしまったのではないかと思います。しかし、Hだけは、自宅にもどり、今回の事件のことを話さないでいたとのことです。目を覚ましてから2日後、Hが僕の病室を訪れました。
「○野(僕の名前)お前に話しておきたいことがあるんやけど・・・。」Hは第一声にこう切り出した後、「とりあえず、助かってよかった。」といいました。
Hのどの言葉がカンに触ったのかはよく分かりませんが、一気に頭に血が上りました。「おんまえ!なにがよかったじゃボケが!てめえがさそわんけりゃこんなことにならんかじゃこのだぼが!」他にも汚い言葉をHにぶつけたような気がします。Hは黙って聞いていて僕が1通り言い終えると「実は。」と言い出しました。ここからはHがいったことを簡単にまとめたことを書いていきます。
実はHはあの場所に行くのは2回目だということ。
高校に入る前に地元の先輩に誘われて、社交辞令的な感じでいき、同じように景色が変わり始めたこと。
「篠原」という家に連れて行かれ、同じようにナタを持った女に襲われたこと。
そして先輩の1人が止めようとして腹を切られてしまったこと。
残りの先輩たちと命からがら逃げたこと。
そしてこの肝試しを考えた先輩がこういってきたこと。「あの女からは絶対に生き延びられない。女は自分を知っている奴らの四肢を少しずつあの世界から奪いに来る。そしていつかは手足の無くなった俺の首を落としに来るだろう。」
「ただ、あの女から殺される時間を少しだけ延ばす方法がある。それはあの女の存在を知らない奴にあの女のことを記憶させること。」
「女は自分のことを知っている奴らを無差別に殺して回っている。裏を返せば、あの女の存在を1人でも多くの人間に記憶させれば、自分が四肢をもがれる可能性が少なくなる。」
「俺は前にも同じ目に会ってあの女の存在を知らされてしまった。俺は少しでも死ぬ可能性を低くするため、お前らにあの女を記憶させた。お前らも少しでも生きたかったら、あの女の存在を他の誰かに知らせてくれ。」
そしてその4ヶ月後、Hはバイク事故という形で右足をもがれたこと。
事故にあったときその女が視界の端にみえたこと。
そしてあの女が自分の右足を掴んで笑っていたこと。
そのことに恐怖を覚えたHは仲間である俺たちにもあの女の存在を知らせようと思ったこと。僕はただ唖然としていました。Hは「すまん。」と短くいうと席を立ち静かに去っていきました。外では鶯がないていました。
この話は上でも話したとおり、9年近く前の話です。あのときから僕は今までのことは忘れようと考え、生活してきました。退院してからなんとか学校にはいこうとしたのですが、休みがちになり、結局、中退という形をとりました。
そのあと、通信制の学校に入り直し、弁当屋を手伝いながら、勉強していました。1年前僕は階段から落ち、打ち所が悪かったのか左足を骨折しました。
そして階段から落ちるさなか、階段の上から異常な程に唇をつりあがらせたあの女がいました。入院を余儀なくされた僕は左足にギプスをつけ、通信制の高校の勉強をしていました。
入院してから左足が熱を持ち始めて痛みを持ち始めたため、医師に頼んでギプスを外して診てもらうと僕の左足はすねから下が腐っていました。切断を余儀なくされました。あの女に左足を持っていかれた。そう思いました。そして、Hと同じ考えを持つようになりました。誰かにあの女の存在を教えてやろうと。ここで一番上の「お願い」について話していきたいと思います。
左足と左薬指、中指は僕があの女に「持っていかれた」部位です。やってくださった方はこれで僕がどこを切断したかを確認していただけたと思います。
次に、僕はこの話をできるだけ「細かく」「詳しく」書きました。それは少しでも読者の方々にあのときの描写を想像してもらおうと思ったからです。
つまり、皆さんにもぼくの「あの女についての記憶」を共有してもらい、僕が次に四肢を失う確率を少しでも下げようということです。本当に申し訳ありません。
身の保身のためだけに今回書かせていただきました。しかし、これを書いていて安心している僕もいます。せめてもということで皆さんのところにあの女がくることが無いように祈っています。
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青いクレヨン
青いクレヨン
ある夫婦が郊外にある中古の家を買った。
郊外だが駅までは近いし近所にはスーパーなども多いし日当たりも良好。それに値段が格安といっていいほどの絶好の物件だった。
友人たちに引っ越しを手伝ってもらい、飲み会をしたあとに遅いのでその日は友人を含めて一緒に新居で寝ることにした。
しかし、夜中バタバタバタ……子供が廊下を走るような音を聞いて何人かが起きた。気のせいだと思ってまた寝ると、今度は子供の話し声が聞こえて目が覚めてしまう。そのために朝まで熟睡できたものは誰もいなかった。
誰もが夜に体験したことを不思議がった。
そして思った。この家には何かある―と。
全員で廊下を調べていると、青いクレヨンが落ちていた。もちろん夫婦のものでも友人たちのものでもない。
そして、とてもおかしなことに気がついた。 この家の間取りが奇妙なのだ。
クレヨンを拾ったあたりの廊下は突き当たりになっているが、家のつくりを考えるとそこにはもう一部屋分のスペースがあるはずなのだ。
壁を叩くと中に空洞がある音がする。壁紙をはがすと扉が現れた。おそるおそるその扉を開ける。
もしかしたらとんでもないものがあるのではないか……
しかし、部屋の中には何もなかった。
ただ部屋の壁すべてに青いクレヨンでびっしりとこう書かれていた。おとうさんおかあさんがごめんなさいここからだしてください おとうさんおかあさんがごめんなさいここからだしてください ここからだしてここからだしてここからだしてここからだして ここからだしてここからだしてここからだしてここからだして ここからだしてここからだしてここからだしてここからだして ここからだしてここからだして……
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裏S区
裏S区
九州のある地域の話。
仮だがS区という地域の、山を越えた地域の裏S区って呼ばれてる地域の話。
現在では、裏とは言わずに『新S区』って呼ばれてるが、じいちゃん、ばあちゃんは今でも裏S区と呼んでる。
まぁ、裏と言うのは良くない意味を含んでる。
この場合の裏は、部落の位置する場所を暗に表してる。
高校時代は部落差別の講義も頻繁にあるような地域。
そこでの話。
(あくまで体験談&自分の主観の為部落差別、同和への差別の話ではありません)
今から何年か前に、男の子(仮にA)が一人行方不明になった。
(結局自殺してたのが見つかったけど)
俺はS区出身者。
彼は裏S区出身者だけど、S区の地域にある高校に通ってた。
まぁ、彼は友人だった。
あくまで「だった」だ。
1年の頃は仲良かった。
彼が一人の生徒をいじめるまでは。
いじめられたのは俺。
周りはだれも止めない。
止めてくれないし、見てもない。
傍観者ですらなかった。
必死にやめてと懇願しても殴る、蹴る。
俺は急に始まったから、最初はただの喧嘩と思い殴りあったが、彼の体格と俺のでは全く強さが違う。
でも次の日も急に殴ってきた。
意味も無く。
理由を聞くも答えない。
薄っすらと笑ってたからもう兎に角怖かった。
ある日、いきなりAが学校に来なくなった。
俺はかなりうれしかった。
でも、もうその状況では誰も俺に話かける奴はいなかった。
初めての孤独を味わった。
多数の中に居るのに絶対的な孤独だった。
それからAが3週間学校を休んだある日、先生が俺を呼び出した。
ここからは会話。
先生「お前Aと仲良かっただろ?」
俺「いえ・・。」
先生「う~ん・・・。お前Aをいじめてないか?」
俺「はい??え?俺が??それともAが俺を???」
先生「いや、お前が。大丈夫誰にも言わんから言ってみろ。問題にもせんから」
俺「いや、俺がですか???」
このときは本当に意味が分からなかった。
先生の中では俺がいじめてることになってるし。
で、俺は本当のことを言うことにした。
俺「本当は言いたくなかったけど、俺がいじめられてました・・。皆の前で殴る蹴るの暴力を受けてましたし・・・。」
先生「本当か??お前が??他の生徒も見てたか??」
俺「見てましたよ。っていうか何で先生は俺がいじめてるって思ったんですか?誰かが言ったんですか?」
先生「いや・・・。いや、何でも無い。」
先生の態度がこの時点で明らかにおかしい。
何故か動揺してる感じ。
それから数分二人とも無言。
その数分後にいきなり先生が言い出した。
先生「Aがな、休んどるやろが?なしてか分からんけど、登校拒否みたいな感じでな家に電話しても親が出て、おらんって言うてきるんよ。」
俺「・・・。」
先生「そんでな、昨日やっとAと連絡とれて、色々聞いたんよ。そしたらAが言ったのが、お前が怖いって言うんよ。」
俺「はい??俺が???」
先生「う~ん・・・。そうなんよ。お前が怖いって言って聞かんのよ。」
俺「いやいや、俺が?逆ですけどね。俺はAが怖いし」
先生「ほうか、いや、分かった。もっかい聞くけどお前はいじめてないな?」
俺「はい。」
って言うやりとりの後、解放されて自宅に帰った。
実際のイジメって、多人数を1人でイジメルものだと思ってた。
中学生の時にイジメを見たことあったから、そのときのイメージをイジメだと思ったし、よく聞くイジメも大体が多人数が1人にお金をたかる、トイレで裸にする、こういうことをすることだと思ってた。
まさか、たった一人の人間がたった1人の人間をイジメるのに先生まで巻き込み、俺一人だけをのけ者にしようとしてるとは思わなかった。
生まれて初めて人に殺意を抱いた。
ぶん殴るとかじゃなく、ぶっ殺したいって本気で思った。
その次の日から俺は学校を休んだ。
行く気にはなれんし、行っても一人だしと思って。
ただ、この登校拒否中にありえないものを見てしまい、俺はちょっと頭がおかしくなりかけた。
起こったのは飛び降り自殺。
俺の住んでたマンションから人が飛び降りた。
たまたまエレベーターホールでエレベーター待ちだった俺の耳に『ギぃーーーーー』って言う奇怪な声と、その数秒後に『どーーーーん!』っていう音。
そのどーんっと言う音は、自転車置き場の屋根に落ちたらしいのだが、それを覗き見たときは本当に吐き気と涙がボロボロ出た。
これはただの恐怖心からなんだが、でもイジメにあっていた俺にはとてつもなく大きな傷だった。
これは本当にトラウマになっていて、今でもエレベーターに乗れなくなった。
会社とかにある建物の中にある奴はまだ何とか乗れるが、マンションにあるような外の風景が見えるものには全く乗れなくなった。
なぜなら、このときに絶対ありえないものを見たから。
自転車置き場を見下ろしてた俺が、前を向きなおした瞬間に螺旋階段が見えた。
そこに下に落ちてる人間と全く同じ服で髪型(これは微妙で下にあるモノとは異なってたようにも見える)のニンゲンが立ってた。
これは多分、見てはダメだったんだと思う。
螺旋階段を下に向かってゆっくり降りていってたんだ。
すごくゆっくり下を向いたまま歩いてた。
下にあるものと瓜二つのニンゲンが。
ここでエレベーターが来たときの合図の『ピン』って音が鳴ったんでビク!ってなり後ろを振り向いた。
そこにも居た、と思う。
多分いたんだろう、でも良く覚えてない。
今考えれば居たのか?と思うけど、そのときは居たって思ってた。
『ピン』の音に振り返った瞬間にどーんって再度聞こえたんだ。
でも、今度の音はエレベーターの中から。
どーん、どーーん、どーーーん、どーーーーん、って。
俺はもう、発狂状態になってそれから倒れたみたい。
直ぐに病院に連れて行かれた。
見たもの、聞いたものを全て忘れるように医者から言われて薬も処方されてそれから、1週間は「うぅぅ」ってうめき声を上げてるしかなかった。
1週間過ぎぐらいには大分良くなっていたのだけど、本当は親や医者をだましてた。
よくなってなんか無かった。
寧ろ、そのときからその「どーん」って音はずっと着いて廻ってた。
その後、学校に行こうと思い出した頃にAの存在を思い出した。
俺がそもそもこんな事になったのもAのせいだ。
あいつがあんなイジメをしなければこんな目にもあわなかった。
アイツは俺をこんな目にあわせる様な奴だから居なくなればいい。
そうだ、この『どーん』って言う音に頼もうって本気で思ってた。
俺は本当におかしくなってたんだと思う。
本気でこの『音』の主にお願いしてた。
次の日に学校に行った俺は、昼休みの時に早退したいと先生に言った。
先生も、俺がどういう状況かを知っていたからすぐにOKを出してくれた。
Aはその日も休みだった。
その帰りがけに、先日部落差別を無くそうという話を学校でしていた(講義で)、おじさんに出会った。
そのおじさんはAのおじさんにあたり、何度か会って話したこともあった。
だけど、そのおじさんが俺を見た後からの様子や態度が明らかにおかしい。
最初見かけた時は普通に挨拶をしたのに、その後俺を二度見のような感じで見ていきなり
「あ~・・・。」
とか言いだした。
俺は『こいつもAに何か言われてんのか?』って感じで被害妄想を爆発させて、怪訝な態度のこのおじさんを無視して横切ろうとしてた。
そのとき、急にそのおじさんがブツブツブツブツお経のようなものを唱え始めた。
俺はぎょっ?!っとして、そのおじさんを見返した。
いきなり会って「あ~」などとわけのわからない態度をとり、それだけならまだしも俺にお経を唱えたのだ。
生まれて初めて自分から人をぶん殴った。
言い訳がましいけど、精神的におかしかったから殴る事の善悪は全くなかった。
ただ、苛々だけに身を任した感じ。
いきなりでびっくりしたのか、そのおじさんもうずくまって「うぅ。。」って言ってたが無視して蹴りを入れてた。
Aの親戚ってだけでも苛々してたのもあり、
「こら、お前らの家族は異常者のあつまりか?人を貶めるように生きてるのか??お前、差別をどうのこうの言ってたが自分がする分にはかまわんのか?あ~??何とか言えや。こら!お前らは差別されるべき場所の生まれやけ、頭がおかしいんか?」
って感じでずっと蹴り続けてた。
でも、ここで再度予想外のことが起きた。
おじさん「ははははははははは」
俺「!?なんか気持ち悪い。いきなり笑い始めやがって!」
おじさん「あははははは。お前か、お前やったんか。はははは」
俺「??まじ意味分からん、なんがおかしいんか?」
(未だ蹴り続けてたけど、この時は大分蹴りは弱くなってる。)
おじさん「ははは、やっと会えたわ。はははそりゃAも****やなー。ははは」
(何を言ってるのか意味不明。)
俺「は???お前ら家族で俺をイジメようてしよったんか?」
(この辺りで怖くなって蹴らなくなってた)
おじさん「おい、お前がどうしようが勝手やけど、○○(俺の名前)が痛がるぞ。アニキは許しても俺は見逃さんぞ」
俺「は???マジでお前んとこはキチ○イの集団なんか?おい?」
おじさん「○○君、ちょっと黙っとき。おじさんが良いって言うまで黙っとき」
俺「いや、意味わから・」
「どーーーーーん」
いきなり耳元で音が鳴った。
俺はビクってして振り返ったら、目の前にのっぺりとした細面の顔が血だらけのままピクピクしながら笑ってた。
俺はまた、発狂した。
この顔の見え方がかなり異常で、通常ニンゲンの顔を見る場合に半分だけ見えるって言うのはありえない。
でもこの目の前の顔は、例えていうとテレビ画面の中にある顔がカメラのせいで半分だけ途切れてて半分は見えてる状態。
その瞬間に、Aのおじさんに力いっぱい殴られて意識を失った。
起きた時に、俺は家の自分の部屋ではなくてリビングの隣の両親の寝室で寝かされてた。
時間を見たら20時。
リビングからの明かりが漏れてて、両親が誰かと話をしてた。
俺が起き上がり、寝室のドアを開けてその人物を見たときにすぐに飛び掛った。
AのおじさんとAの叔母にあたる人がそこに座って両親と話てたから、それを見た瞬間にもう飛び掛ってた。
直ぐに親父に抑えられてたけど、俺は吼えてたと思う。
Aのおじさんは
「ごめん、本当に悪かったね」
を繰り返してたけど、どうしても許せなくて親父の腕の中でもがいてた。
母親がイキナリ俺の頬をひっぱたいて
「あんたも話しを聞きなさい!」
とか言い出してたけど、俺はもう親にまで裏切られた感じがして、家を飛び出そうとして親父の手から抜け出し、自分の部屋に向かい上着とサイフをとった。
が、上着を羽織ろうとした瞬間に、上着の腕の中に自分以外の手があった感触がして再度叫んだ。
両親とAのおじ、叔母が直ぐに来て、Aの叔母がブツブツ言いながらお経みたいなものを唱え始めだして、おじが俺の服を掴んで踏み始めた。
親父は青ざめてそれを見てて、母親は一緒に手を合掌して俺を見てた。
この時は、マジで自分が狂人になったのかと思った。
数分後、俺も落ち着いてきて、両親とAのおじ、おばと共にリビングへ向かった。
それまでの短い時間、Aのおじさんはずっと俺に謝ってた。
それからのリビングでの話は今でも忘れられないし、そこで再度起こったことも忘れられない。
以下会話。Aのおじさん=Bさん、Aのおばさん=Cさんとする。
Bさん「本当に、殴ってしまってごめんな。」
俺「いや、いいです。こちらも苛々してましたのですみません。」
親父「ん?お前なんかしたんか?」
俺「いや、俺がBさんを殴ってしまった。」
Bさん「あ、いや、それは俺が○君を見て、いきなりお経とか唱えたから嫌な気がしたんやろ?○君のせいじゃないわ。俺がいきなりすぎたんがいけんかったやから」
親父「申し訳ございません、それは聞いてなかったので」
俺「え?なんの話をしよん?俺がBさんを殴ってBさんがいきなり」
ここまで言って気絶前の事を思い出した。
俺「あれ??俺気絶する前にナニカ見たわ・・・」
Bさん「うん、そやろな。俺は○君みて直ぐに気づいてなぁ。何かおるって、それでお経を唱えたんよ」
母「大丈夫なんですか?何かって何ですか?」
Cさん「えっとね、私らが住んどる地域がなんで裏S区って言われるか知っとる?」
親父「えっと、失礼かもしれませんが、差別的な意味ですよね?」
Bさん「それはそっちだけの認識やな、じいさん、ばあさんによう言われたやろ?裏Sには近寄るなて」
親父「言われましたね。でもそれは部落差別的なもんやと思ってましたけど、違うんですか?」
Bさん「いや、そうや。そうなんやけど、差別があるけ言うても、今も言い続けよるんは裏Sの歴史がちと異常なんや。」
親父「いや、私も妻も生まれはS区やからその辺は分かってますけど、部落とか集落系での差別ってどっこも同じようなものでしょ?だから、異常っていうのはわかります。」
Bさん「はは。そうやろ?そういう風にとらわれてしまってるんやな。裏S区は部落やからって事でも他国のモンの集まりでもなく昔からこの地域に住んでたモンの集まりなんや。」
親父「はい。ただ、違いが私にはちょっと・・。」
母「あれですか?あの鬼門がどうのとかって言う話ですか?」
Bさん「ん?鬼門の話か。まぁ、そんな感じなんやろうけど、裏Sにうちと同じ苗字が多いやろ?」
母「はい。多いですね、A君とことBさんの家は親戚やから当たり前やけど、それにしても多いですね。S区には全然いないのに裏S出身者では結構みかけますしね」
Bさん「あの辺は昔から霊の通り道って言われとんな。ナメ○○○(なんて言ったかは不明)とかそんなの聞いたことないですか?」
親父「いや、名前はしらないですけど、聞いたことはあります」
Bさん「まぁ、その地域はそういう地域でして、うちらの家系はほとんどが霊感があるっていわれてたんですね。それが原因で発狂する奴もおれば、いきなり何するかわからんって感じで、いつの間にかそういう集落、部落になっていき差別されるようになったんですわ。」
母「でも、それやと裏S区はかなり広いからおかしくないですか?Bさんとこの家系だけで裏S区自体がそういう風にわかれますかね?」
Bさん「うん、わかれるんやろうな。最初は3、4の家のもんが発狂し始めてて、でも、それが村中で始まってってなってって最終的に4、50件も起きれば、その周辺全体がおかしいって思われるやろうし、昭和の時代にそんなアホみたいな話を信心深く聞く人間が少なくなってきてるしな」
親父「それでも、それで部落になるんかなぁ。」
Cさん「まぁ、うちらの家系ではそう教わっとるんです。だから生まれてきた子らには霊が見えるってことを前提に接しとる。見えん子もおるやろうけど、霊は居るって教えとるんですよ」
俺「いや、それと俺が体験しとるのとBさんの話と何が関係するんですか?」
Bさん「○君。最近Aの様子がおかしくなかった?いきなり学校休んでるのは置いといて、それ以外になんかおかしいことなかった?」
俺「最近っていうか、わからん。急に殴りかかってきたりしてたけど。」
Bさん「急にか、なんも言わんかったか?」
俺「いや、急に。意味わからんし。あ!そういうことか。Aが急に異常になったってこと?霊が見え初めて発狂し始めたんっすか?」
Bさん「いや、Aはまともや。でも何をすればいいかわからんかったよ」
俺「は?まともじゃないっすよ。あいついきなり殴り始めたし、しかも笑いながら。皆怖がって俺を助けようともせんかったし」
Bさん「○君、殴られたときに怪我するようなこと受けてないやろ?いや、殴る事自体は悪いことやから庇ってるんじゃなくてな。うちの家系での霊を見つけたときの対応は笑う事なんよ。やけん、異常者に見られることもあるけど、普通は無視してるんやけどな。」
母「ってことは、○に霊がついてたって事ですか??」
Cさん「うん、今も憑いてる。それと○君ベランダに誰か見える?」
俺「はい??なんですか?ベランダですか?」
ここで俺は、気絶する前に見たモノとは別のモノを見て発狂しそうになった。
Cさん「大丈夫。絶対にココには入れんから。」
親父「え?なにがですか?」
親父には見えてないし、もちろん母にも見えてない。
Bさん「あ、いえ。それでね○君にはちょっと憑いてるんや。」
俺「あ、あれか。。。飛び降りの奴、見てしまったからか。。」
Bさん「いや、ちがうよ。あれは多分たまたま。本当に偶然。でもその偶然がベランダの奴で、それ以外に憑いちゃだめな奴が憑いとる。」
俺「 え?」
Bさん「うん、それが憑いちゃだめなんよ。厳密に言うと霊とかじゃなく、うちの家系では××××って言うんよ。それを言葉には出しちゃだめですよ。すぐ移るから」
(両親を見て)
母「××××」
(なんて言ったか忘れた・・・、バラ??なんとかだったけど不明。)
俺「!?」
母「これで私に憑いたけん、○は大丈夫でしょうか?」
Bさん「いや、そういうもんでもないけど、本当にそれは言わないでください」
母「息子が困るのは一番いやですから」
Bさん「多分、それをするともっと困ります」
俺「もう、やめていいよ。っていうかなんなん?俺が霊に呪われててAはそれみて俺をなぐってたん?でも、それはおかしいやろ。そんなんします?普通。っていうか、笑いながら殴ったらいいん?霊が追い払えるん?」
(ちょっと困惑しててまくしたてた)
Cさん「ごめんね、そういう風にしか教えてなかったからやったんやろうね」
Bさん「お払いするときにはな、絶対に笑いながら相手を追い出すんよ。こっちは余裕だ、お前ごときって感じで。んで憑かれてる者を叩くと憑いてるものが逃げ出すって感じなんよ。もちろんお経やったりお呪いやったりが必要なんやけど、あいつは見様見真似でやってしまったんやろうな」
俺「でも、あいつ蹴ったりもしたし」
Bさん「うん、それは行き過ぎやな。でも、Aが学校休んでる理由は○君が怖いって。まぁ、○君に憑いてる者が怖いってことなんやけどな。」
それから数分、そういう話をした後にCさんが御祓いする為の道具を駐車場に取りにいって、Bさんが俺を守る形で周りを見張ってた。
その後準備が整い、御祓いが始まったけど、今まで見たどの御祓い方法よりも異常だった。
神社のような御祓いでもなく、お寺のようにお経を唱えながら木魚を叩いてるわけでも無い。
ただただ笑いながらお経を読んでる感じ。
そのお経もお経という感じではなく、ブツブツブツブツを繰り返してて、小声でただ話してるような感じだった。
それから何度か手を叩かれたり、頭を払われたりした。
それが終了してBさんが、
「もう大丈夫」
と俺に言い、Cさんが
「もう見えないでしょ?」
って言うので、ベランダを恐る恐る見てみたが何も無かった。
次の日から俺は、普通通りに学校に行くようになった。
(ただし、エレベーターは一人で乗ることが出来ないため、いつも親と一緒に乗ってた・・・。)
ただし、この日Aに異常が起きたらしく、その日の夜に
「Aが居ないんだけど、○君の家に行ってないか」
という連絡がAの父親からあり、次の日からBさんやAの両親が捜索願いを出して探してたらしいが、家に家出をするといった感じの手紙が置いてあり、家出人の捜索のため警察が捜索をするということは無かったらしい。
Aの親が電話をしてきた理由は、その手紙に俺の名前が何個も書かれていたことが起因らしい。
俺は、霊が乗り移ってたからと言う理由があったからと言ってAを許してはなかったから、どうでもいいって思ってた。
Aが行方不明になって3日目の朝に、どーーーん!っていう音が聞こえて起きた。
俺はもうそんなことがないと思ってたから、本当に汗がびしょびしょになり、直ぐに親の部屋に逃げこんで少したって夢での出来事だったことに気付いた。
(というか、そういう風にした)
ただ、その日にAが飛び降り自殺をしており、時間帯も朝方であったと聞いて、その夜から怖くなってきて一人で寝ることが出来なくなった。
遺書が見つかっている事から自殺で間違いないようで、遺書の中に俺宛の部分があり
「ごめん、本当にわるかったね。多分俺らの家系は部落でちょっと頭がおかしい家系が多いんやと思う。自分の家系のせいにしたくないけど、お前を殴ったのは本当に悪かった。ごめん。」
って書かれてた。
それからその次の夜にお通夜があり、俺も両親とともに行ったのだが、俺はすごく嫌がってた。
ただ親が
「一応供養だけはしとかな変なことあったら嫌やろ?」
って言うので、仕方なく行くことになった。
お通夜もかなり変わっており、通常のお通夜と違い遺影など無く、その代わりに紙にAの名前が書いており、それを御棺の側面にびっしり貼り付けていて、近づくのも嫌になるような不気味さを漂わせてた。
Bさん曰く
「写真を置くと写真の顔が変形するんだよ、それを見るのが耐えれないほどの奇怪なモノだから、この地域ではこういうやり方でやるんだ。名前の書いた紙をびっしり貼ってるのはコイツはAだ。××××ではないんだ、っていう証なんだ」
との事。
(本当に意味不明、奇怪すぎる内容にひいた。)
そのとき、Aの父親が俺に話かけて来て
「迷惑かけてごめんね。」
と、Aが家出したときに書いた手紙と遺書を見せてきた。
遺書の部分は上記の通りだが、この時は本当は見たくなかった。
家出をした際に書かれた手紙には
「○(俺の名前)にあいつが憑いてたんだけど、ずっと俺を殺そうと見張ってる。おじさん(Bさんのこと)が○のあいつを御祓いしたからもう大丈夫って言ってたけど、あいつは俺に来たみたい。でも、おとうさんはあいつを御祓いできないだろうし、おかあさんの家に行ってきます。行く道であいつがついてきたら、他に行ってみるね。」
とあった。
Aの両親は別居中だった為、Aは母親方の実家に向かったらしかったが、そのまま行方不明になったらしい。
ただ、何故か警察は家出だと言って、行方不明というよりは家出人としてしか扱わなかったそうだ。
それは本当に見なかったほうが良かったって思った。
あいつとか書かれてるし、意味も不明なので、その日までの現実離れした出来事をかなり思い出されて怖さで震えてきた。
Aの自殺した時間が朝方だったことも怖さを増して、ココには居たくないって本気で思った。
俺がおかしかったんじゃなく、こいつらが異常だって思った。
お経も無く、変な平屋のような場所に棺桶が置かれており、びっしりとAの名前が書かれた札を貼っていて、その挙句親戚の何人かは笑っているのである。
韓国だかどこかで、泣き子といって泣くだけの為に葬式に参加してるってやつがいるって気味の悪い話も聞いたことがあるけど、この集落に伝わる葬式も気味が悪いを通り越して異常でしかなかった。
うちの両親も、さすがにこの状況は怖かったらしく
「もう、帰るか」
と挨拶も早々に切り上げた。
それから数日後に、Bさんが両親に言ったのが、俺に憑いてたのはAのおばあさん(つまりBさんの母親)が××××になって(霊だろうけど、そうは言わなかったので)憑いてたとのこと。
もう、そんな話はどうでも良いから聞きたくも無かったけど、聞いといてとの事なので聞かされた。
飛び降り自殺をしたニンゲンも、裏S区出身者で××××に追いかけられてた事。
俺に取り憑いた理由はわからないが、以前Aの家に行った時に憑いたのかもとの事、等を聞かされた。
そこで俺も怖いと思ってたことを2つ聞いた。
1つ目は、Bさんに殴られる前に見た 顔。
2つ目は、飛び降りしたはずの人間が階段に居て、下の遺体の元に駆け寄ろうとしてたがアレは何なのか。
そうするとBさんは2つ目については
「死んだ人間は死んだことを分からない事が多い。だから下に自分が居たので取りに行こうとしたんじゃないかな」
との事。
ただ、そこで邪魔をされると呪いをかけようとするとの事。
ここで俺は邪魔をしてないと口を挟んだところ、
「お前、エレベーターを呼んだだろ?「ピン」って音が邪魔なんだよ。」
ってBさんの口調が、かなり強い言い方に変わった。
本当に飛び跳ねそうになった。
俺の両親もかなりびびってきてた。
Bさんはその口調のまま言った。
「お前なぁ、見ちゃだめだろ?俺はいいがお前はだめだろ?見んなよ。俺をみんなよ。なぁ?おい。聞いてるか?おい?」
って感じで。
さすがに親父が怒って
「何言ってんだ?怖がらせてどうする!」
と言うと、Bさんがビクンってなって、
「あ、ごめんなさい。もうしわけない、ちょっと来てたので聞いてみようと思ったんです、もうしわけない」
って言い出して口調を戻した。
「見てはダメだったと言っても、見たくて見たんじゃないから、もういいだろ?な。」
と自問自答を繰り返し、その後俺に向かって
「もう、絶対に大丈夫、本当に申し訳なかった。この亡くなった奴も××××に追いかけられてて、○君に乗り移ってたあいつに怒ってしまって、○君のとこにきたみたい」との事。
1つ目の質問については
「それが××××」との事
(この名前はもしかしたら日本語とかでは無いか、もしくは方言なのかなぁとこのときに思った。)
そしてAのおばあさんが××××になってしまった。
でも、Aの父親が自分の母を消すのは心許ないとの事で御祓いを避けてたとの事。
ただし、Aが亡くなってしまったため、流石にもう腹を決めたらしく御祓いを昨日済ませたとの事、等を聞いた。
そしてBさんが帰るとの事だったので玄関で見送りした。
Bさんが玄関を出た直後に、いきなりBさんの笑い声が聞こえた。
「あはははははは。ははははは」って。
俺はびくっ!ってなり膝から崩れた。
親父は
「やっぱりあそこの連中はおかしいわ」
と怖さからか、それとも本当に怒ってるのか怒鳴る感じでそういってた。
母は
「もう、あの人らに関わるのはやめようね」
と言い出して涙目になってた。
あんな話をしてて、笑いながら御祓いすると聞いてても、流石に家を出た瞬間にあんな笑い声を張り上げている奴を同じ人種とは思えない。
「あはははははははは」
と笑ってて、その声が聞こえなくなって初めて三人とも動けるようになり、リビングに戻った。
俺が
「あいつらはおかしいよ、絶対異常やって。っていうかあいつエレベーターで帰ったんやろうか?」
と言ったら、親父が
「あいつとか言うな、一応年上やろうが。はぁ。。。もう、関わらんようにしとけ」
と言って鍵を閉めに行った。
その直後に
「はやくかえれ!!」
っていう怒鳴り声が聞こえて心臓が止まりかけた。
母親も「ひぃ」ってなってた。
親父が鍵を閉める前に夕刊が郵便受けに入っており、それを中から取ろうとしたら上の部分に引っ掛ってしまっており、外から取ろうとしたらしい。
しかし、Bさんがまだエレベーターホールでニヤニヤしてたらしい。
親父はぶち切れてて
「警察よぶぞ!」
とか言い出しており(怖かったんだと思う)横の家の人とかも出てきて、Bさんは
「え、い、いや、今帰ろうとしてたとこです。え?なんですか?」
とか言ってたらしい。
言った瞬間に又、ケタケタと笑い始めてエレベーターに乗って帰ったらしい。
親父が「塩まけ。塩!」と言い出し、狂ったように塩をまいていたので隣人からしたら親父も異常にみえたかも。
その後、両親と一緒に有名な神社に行って御祓いを受けて、家を引っ越した。
S区からは移動してない為、同じ学校の地域だったが、俺は他の地区の学校に転入をしてもらい、それ以降は一切裏S区には近づいていない。
今は新S区と名前を変えてるが、地域性自体は変わってないようであり、従兄弟の通うS区の学校では、未だに同和教育があり、地域は言わないものの、差別的な事が現実にあると教えてるとの事。
しかしアクマで部落、集落への差別としか言わず、裏S区の事情、情報は皆無で、裏S区と呼ぶと教師が過敏に反応し新S区だ、と言い直したりとかもするそうである。
(これは九州特有の人権主義、日教組等によるものだと思うけど。)
Bさんに関しては一切関わりを絶っているため、今はどうなってるかは不明。
うちの両親は、この事件までは裏S区に関しての差別意識は皆無だったが、これ以降はかなり毛嫌いしており、その地域の人達との関係をかなり制限してる。
俺はそれ以降、霊的な出来事は皆無だけど、エレベーターだけは一人で乗れず、はずかしながら一人で寝ることも出来ないので妻にすごく馬鹿にされている状態。
終った直後の頃は、トイレに行くときも親を起こして(高校生なのに。。。)一々行ってた位に心身が恐怖で埋まってた。
俺に関しては、裏S区の出身と聞くと差別というよりも恐怖だけが全身を駆け巡り話も出来なくなる。
駄文、かなりの長文失礼しました。
一応体験談として置いておきます。
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予感
予感
彼女とデートの日、
待ち合わせ場所へ向かう途中、
携帯が鳴った。彼女からだった。
「今日は行けない」
と言う。
「もう会わない方がいい」
と言う。
理由を訊いたが答えない。
しつこく訊くと
「会うと良くないことが起きる」
と言う。
「私は生きてちゃいけないの」
と言う。
納得できなかった俺は
「会おうよ」
とごねた。
「死んじゃうかもしれないんだよ」
と彼女が言った。
「死んでもいいから会ってよ」
と俺は言った。
ここで引き下がって、
納得できないまま生きるのは耐えられないと思ったから。慌てた感じで彼女が
「そんなこと言っちゃだめだよ!」
と言った。
「本当に死んじゃうんだよ!」
って。
30分ほどやりとりの後、彼女が折れた。
来てくれることになった。
しばらくして、また携帯が鳴った。
「やっぱり行けない」
と言う。
「今、どこにいるの?」
「東京駅」「じゃあ、あとは乗りかえるだけじゃん」
「できないの」「ハァ? 何で?」
「悪い人が中に入って邪魔するの」理解できなかった。
俺に会いたくなくて、
そんなことを言ってるのかな、
とも思った。「じゃあ、そこにいて。俺がそっちに行くから」
「来ない方がいいよ」「そこにいて。すぐ行くから」
俺は改札を抜けて、登り電車に乗った。
東京駅に着いた俺は、彼女に電話をかけた。
「着いた。今どこ?」
と訊いた。
彼女は
「○○って喫茶店の前」
と駅構内の店名を言った。
「わかった。すぐ行く」
と答えて、俺は走った。
見なれた店の前に彼女がいた。
ほっとした。
なんか悲しそうに
「何で来ちゃったの?」
と言われた。
「会いたかったから」
と答えた。
彼女が笑った。
その店に入りコーヒーを飲みながら話した。
彼女は妙に周囲を気にしていた。
しばらくして、彼女の携帯が鳴った。
中学の友達からだった。
数年ぶりの連絡だという。
三人で一緒にゴハンでも食べようということになった。
有楽町で待ち合わせ、食事をした。
その友達曰く
「なんとなく久しぶりに会ってみたくなった」
とのことだった。
食事を終え、三人でぶらぶらした。
彼女はときどき周囲を気にしていた。
さほど遅くならない内に、別れて帰途についた。
別れ際、彼女が俺の手を握って
「気をつけてね」
と言った。
「よくないことがあるかもしれないから」
って。
俺は本気にしなかった。
六日後、彼女が死んだ。
事故だった。
もし、彼女が言っていたことが事実だったのなら、
俺が殺したようなものかな。俺が殺したのかな、と思った。
確かに、よくないことが起きた。
俺自身が死ぬよりも、よくないことだった。
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こっちにおいでよぉぉ…
こっちにおいでよぉぉ…
僕は子供の頃、東京の外れに住んでいました。
森林に覆われた丘陸地帯に囲まれた、都内とは名ばかりの外れた町でした。
遊戯施設などはほとんどないような場所でしたが、町外れに町営の小さなスケート場がありました。
夏場はプールとして利用されるところを、冬にはコンクリートの底に浅く水を張り、スケート場として開放していたのです。当時、小学生だった僕は、テレビで見たフィギュアスケートにすっかり夢中になっていて、その年の冬休みには、連日、夕方五時の閉場まで、その小さなスケート場に通いつめていました。
僕が奇妙な体験をしたあの日も、いつもと同じように、僕はスケート靴を抱えてリンクへ向いました。子供に特有のあの熱心さで練習を続け、気づいた時には五時を知らせる町役場のチャイムがあたりに鳴り響いていました。
山あいの町では平地よりもずっと早く日が沈みます。
冬のことでもあり、すでにあたりはすっかり夕闇の中に沈んで薄暗くなっていました。
足を止め、あたりを見まわすとリンクの上にいるのは僕一人でした。
まわりにある休憩用のベンチにも人影は全くありませんでした。
それに気づいた時、僕はなんとも言えないいやな気分に襲われたのです。そこはもともと利用者が少ない場所であったし、ましてや、ナイター設備もない野外で、陽も落ちて冷たい夜風が吹き始めるまでスケートに没頭するような物好きはほとんどいませんでした。
閉場のころに僕ひとりだけが残っているようなことは、決して珍しいことではなかったのです。
なのに、その時だけはひとりっきりで冷え冷えとした空気に晒されながら薄暗いリンクの氷の上に立ってることが、やけに不安なものに思えたのです。
昼間のうちは表面が溶けてシャーベット状になっていたリンクも再び凍りつきはじめています。
その鋭く光を反射する表面に、一瞬何か人影のようなものが映った気がして僕は慌てて振り向きました。
しかし、当然そこには誰もいません。どうにも心細くなり、いつもなら管理人が追い出しにくるまで粘るところを、途中で切り上げて、僕はいそいでリンクの出口を目指して滑っていこうとしました。
その時です。
どこかで小さな音がしました。それは、小さくひそめた人の囁き声のように聞こえました。
僕はゾッとして反射的に逃げ出しそうになりました。しかし音の原因が分からないままでいることは余計にいやな気がして、怖いのをこらえてリンクの中央へ振り向き、あたりを見渡しました。
それでもやはり、リンクの上には何も見当たらないのです。<なんだ。きっと町の物音が風に流されてここまで聞こえてきたんだ>
子供ながらに、僕は理屈の通る答えを自分で思いつき、それに励まされるように管理人が来るまでのあいだ、もう一周だけリンクをぐるっと滑ってみることにしました。
その途中、ちょうどリンクの中央あたりでなにかがクッと、エッジに引っかかったのです。
僕はエッジを立ててその場に止まったのと同時に、ふたたび声が聞こえてくるではありませんか。
今度ははっきりと人の声、しかも僕の名前を呼ぶ声でした。僕は一瞬にして恐怖のあまり凍りつきました。
そのあいだにも、声は僕の名前を何度も呼び続けています。
そして、どうやらその声は、すぐ近く、僕の足元のあたりから聞こえてくるようなのです。
僕は怖さで動きもままならない首を無理矢理ねじるようにして足元の氷の上へ視線を落としました。
そこには子供の姿がありました。僕の姿が氷の表面に映っていたのではありません。
まるでガラス窓を覗くように、見知らぬ子供が向こう側から氷の裏に両方の手のひらを押し付けて、じっと無表情にこちらを覗きこんでいるのです。身動きすらできずに凝視しつづける僕と目が合っても、その子供は少しも表情を変えませんでした。
頬のこけた青白い顔のなかで、目だけが黒々と大きく、異様な光を宿してこちらを見ていました。やがて子供は、その血の気が失せた紫色の口を開きました。
『・・・・・・こっちにおいでよぉぉ・・・・・・おいでよぉぉ・・・・ぉぉぉぉ・・・・・』
キイキイと金属をひっかくような何とも気味の悪い声が、氷の上に響きました。
そして子供は僕に向って手を伸ばしてきたのです。
信じられないことに氷の表面から白い指先が何かを探し求めるようにうごめきながら突き出されてきたのです。
やがてその指は、僕の足首をしっかりと握り締めました。
そして次には手首が、腕が、ジワジワと氷の中から現れてきたのです。僕が覚えているのはそこまでです。
母の話では、誰もいない夕暮れのスケートリンクの上で放心状態ですわりこんでいた僕を管理人が見つけてくれたのだそうです。
そのとき僕は全身冷え切って、目は開いているものの話しかけても反応しない状態で、すぐに運び込まれた病院の先生の話では凍死寸前だったのだそうです。そのあと僕は一週間ほど入院しました。
退院するほど回復したころには、足首をつかまれたあとの記憶をまったく失っていたのです。あのあと、僕自身の身に何が起こったのか。
それはいまだに謎のままです。