怖っ!怖っ?怖い話

いろんな怖い話を集めています。

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路地

路地

中学生だったときの話。

夜の8時ぐらいに塾からの帰り道を歩いてたんだけど、なんか様子がおかしい。

見知った住宅街なんだけど、見覚えのない路地があるんだよ。

知らない家と家の隙間で、幅は1mぐらい。

昨日までは、ただのブロック塀で壁になってたはず。

まあ近所だし、迷うこともないだろと思った俺は、好奇心にかられてその狭い路地に入ってみたんだよ。

で、10歩ぐらい進んでから気づいたんだけど、やっぱり何かがおかしい。

夏のゴミ捨て場のような異臭が漂ってくる。

それで、前の方からは

「・・・・・ァ・・・・・・ケ・・・・・・」

と、人の声のようなものが微かに聞こえてきた。

明かりもなくて真っ暗だし、しだいに怖くなってきたんだけど、まだ好奇心が勝っててそのままゆっくり歩き続けた。

それからまた20歩ほど進んだあたりで、俺はあることに気づいた。

というのも、それだけ歩いたら家を挟んで向こう側の道に出るはずなんだよな。

でも左右のブロック塀は途切れることなく続いている。

前方に目を凝らしてみても、出口のようなものは見えない。

さすがにこれは何かヤバイと思って、引き返そうと思って後ろに振り返った。

そしたら、5歩ぐらい離れたところに人影があったんだよ。

2mぐらいのでかい男。

薄汚いコートを着てて、頭にはフードを被ってるから鼻より上が見えない。

手にはナタみたいなのを持ってる。

そいつが棒立ちで俺を見てた。

俺はあまりの恐怖に動けず、唖然としたまま突っ立ってた。

さっきから漂ってた悪臭もそいつが発生源みたいで、鼻が歪みそうだった。

で、ふと見るとそいつ口動かしてんのね。

ボソボソと何か喋ってる。

「・・・・・ァ・・・・・・ケ・・・・・・」

内容が聞き取れないので、耳を凝らしてみると、

「・・アァァ・マ・・クケェアエ・・・・・・」

「マ・・ァア・・アファフヘケラエェヘ・・」

意味不明の言葉を喋ってた。

それも、外国語って感じじゃなくて、ランダムに並べたカタカナを読み上げてる様な感じ。

もう余りにも怖くて、俺は泣き叫びながら全力で走って逃げた。

そしたらそいつ俺を追ってくんの。

右手のナタを頭上に掲げながら走ってくる。

「アァアェ!ケヘフラフェアウェ!クヘフェアァエア!」

ボソボソ声はいつの間にか金切り声に変わってた。

追いつかれたら殺される!って思いながら、涙と鼻水と涎で顔ぐちゃぐちゃにしながら無我夢中で走ったよ。

何とか追いつかれずに、100mは走ったかな。

前の方に路地の出口らしき隙間が見えた。

路地が100mも続いてるとか今思うとありえないんだけど、そんなことは気にせず、とにかく俺は出口に向かって走った。

必死の思いで出口に辿りつくと、そこは知ってる道だった。

たしかに、路地の入口から100~150mぐらい先の住宅街。

位置のつじつまだけは合ってる。

振り返ってみると、路地の先は真っ暗。

そいつもいなくなっていた。

呆然としながらも、周囲を警戒しながら家に帰った。

家に着いた俺は汗だくで、顔もぐちゃぐちゃだった。

母親が何事かと問いただしてきたので、起こったことをありのままに話したよ。

まあ当然信じてもらえなかったし、この辺りに2mの大男なんて住んでないとか言ってた。

それ以来、そのでかい男は見かけてない。

その路地があった道は絶対に通らないようにしている。

ちなみに、この体験がトラウマになって、俺は身長の高い男がものすごく苦手になった。

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おにいさん

おにいさん 

生まれは都市圏だけど、まだ緑が多かったころなので遊び場には事欠かなかった。
家の近くに大きな空き地があって、毎年盆踊りをそこでやっていたのを覚えてる。
その空き地が潰されて大きな工場が出来たときに、自分の遊び場所がなくなってすごく悲しい思いをした。
そんな頃の話。

小学校の頃はやんちゃだった。
いつも悪戯ばかりして怒られている様な。
そんな俺と同じようにやんちゃなNとY。
3人で遊んでいれば何でも出来そうな気がしたもんだよ。

夏休みのある日、自転車で川を遡って行って水のきれいなところで川遊びをしようってことになったんだ。
朝から自分たちでおにぎり作って、水筒に麦茶詰めて、リュックを担いで、一生懸命自転車を漕いでさ。
そういったちょっとした冒険旅行みたいなことは誰でもするだろ?
俺たちもそう。

それで朝早くから3人集合して川を遡ったんだ。
もちろん川原を遡っていくのは無理だから川に沿った道を延々と。
時には迷いながら2時間ぐらい遡った山のふもとで、ちょっと休憩しようってなったんだ。

もちろんそこは知らない町でさ、電柱には五木町って書いてあった。
面白いのは同じ色の青い屋根、同じ大きさの家がいっぱい並んでたのをよく覚えてる。
おかしいな?とも思ったんだが、それでも3人いれば楽しくって気にならなかったな。

自転車を川沿いの道の端に寄せて止めてから俺たちは川原に降りた。
天気は少し曇ってたけど蒸し暑いうえに自転車漕いでたせいもあって汗でベタベタ。
一刻も早く川の中で体を冷やしたいって思って川の方へ向かったんだけど、そこにはその町の住民らしき人が20人くらい、大人も子供も集まってなんかやってるんだ。
一言も話しをせずに黙々と作業をしてる感じ。
大人も子供も。
老若男女を問わず。
土を掘ってるように見えて、何となく異様な光景に思わず俺たちの足は止まってしまった。

そして示し合わせたかのように一斉にこっちに向けられる数十の瞳。
今でもハッキリ覚えてる。
その瞳にはこう、なんて言ったらいいのかな?生気的な物が無くって虚ろな感じだった。

そう思ったか思ってないかのところで、その集団の中から小さな女の子の声で「…のおにいさんが来たね」って聞こえた。
その瞬間、ホントに瞬く間に今まで生気が無かったのにすごく優しい顔になって話しかけてきたんだ。

「どっから来たんだ?」とか「3人だけで来たのか?そりゃすごい!」とか。
オレとNはそのギャップが怖くなってあまりしゃべる事が出来なかったんだけど、人見知りをしないYはいつの間にか溶け込んで笑いながら話しをしてる。

周りの住人もニコニコしてるし俺たちに疲れただろ?とか言いながら、紙コップに入れたお茶とかお菓子とか出してくれる。
最初は警戒していた俺もNも段々慣れて来てお茶やお菓子をもらっていろんな話をした。
今日はこの町でお祭りがあるからよかったら参加していきなさいとか言われて喜んでたっけな。

その後、町の子供たちと川遊びをして遊んだ。
魚を捕まえたり水風船もって追いかけっこしたり。
この町のみんな人懐っこくてトイレに行くにも必ず誰かがついてくる。
だから一人ぼっちになる事が無くて楽しく遊べたんだ。

夕方になったのでそろそろ帰らないといけないと3人で相談してたら住人のおじさんが、今日はお祭りがあるから遊んでいきなさい。自転車と君たちは車で送ってあげるからと言われて3人でどうしよう?と悩んだ挙句その提案を受ける事にした。

遊びの途中で帰るなんてその頃考えられなかったし、いつも遅くなって親に怒られていて、慣れていたってのもある。
それを伝えると目をまん丸にして「そうかそうか」って喜んでくれた上に、「他のみんな(この町の子供)は法被に着替えてるから君たちも着替えるといい」と赤い法被を3つ手渡された。

Tシャツの上から法被を羽織るとおじさんは「よく似合ってるよ。やっぱ主役はこうでなきゃ」って褒めてくれたんだ。
その後おじさんに連れられて、町の人でごった返した祭りの会場に連れて行ってもらったんだ。

会場は所狭しと出店が並んでいて、普通であれば真ん中には櫓が組まれているはずなのにそれは無く、ひな壇みたいなものがあってその上で太鼓と笛が小気味良い音を奏でてる。
そのひな壇の近くにお神輿が大小二つあって大きいほうは15人くらいで持つ奴で、小さいほうはその気になれば一人でも担げるようなミニ神輿だった。

なんだあれはと思っていると法被を来た子供たちが、どこからともなくわらわらと俺たちの周りによってきた。
総勢で20人くらいいたのかな?
高学年の子も低学年の子もいてみんなニコニコしてるんだけどみんな法被の色は紺色だった。
「俺達と法被の色が違うね?」というと高学年ポイ子に「おにいさんだからだよ!」と言われた。
俺より高学年ポイけど違うのかなって思ったんだけど、まぁいいやって思って、子供みんなで遊んでた。

出店に行くとお金はいらんからって何でもくれる気前のよさ。
俺たちも他の子供もわたあめ食べたり、射的したりで存分に遊ばしてもらった。

大人はというと遠巻きに子供たちを眺めながら酒を飲んでいる。

しばらく遊んで、頃合いとみたのかさっきのおじさんが中央のひな壇の上で大きな声でしゃべり始めた。
一斉に止む笛の音や太鼓の音。
「それではおにいさん祭りを開催します!!」という声と共に歓喜の声。
大人も子供も。

俺たちも訳も判らずはしゃいでる。

子供たちは全員がそのおじさんに連れられてさっきの神輿があったところに。
町の子供たちはあらかじめ場所が決められていたかのように大きな神輿の回りに順序良く整列した。
この神輿はスゴくキラキラしていて装飾がすごい。
もちろん子供が持てる大きさなので、テレビなんかで大人が担ぐ神輿に比べればたいしたことはないが、一見して豪華だということは子供ながらにも判った。

俺たち三人はどうすればいいのか判らないのでマゴマゴしているとさっきのおじさんがやってきて「ほら、君たち三人はこの小さい方を担いでね」と大きい神輿のすぐ近くにある小さい神輿を指差した。
近寄って見てみると、こまごまとした装飾に屋根の上には、炎のような飾りがついていて昔はきれいだったのだろうが、今はだいぶ汚れている。
泥汚れ?らしきものもあり”おじさん”を振り返ると「この前の祭りで落としちゃって少し汚れてるけど、大丈夫だよ」と笑顔で言われ「なぁんだ」と安心したのを覚えてる。

配置は俺が進行方向で言えば前で担ぐ事になり、Yが左でNが右だった。

すると”おじさん”がまた大きな声で「それでは神輿を担いでくださ~い」と大きな声で指示を出すと大きな神輿はエイッという掛け声と共に子供たちの肩に担がれた。
それを見た俺たちも掛け声を入れつつ小さな神輿を担ぐ。
いや、担ごうとした。
その瞬間、見た目と違う重さにビックリして神輿を落としそうになった。

あわてて駆け寄る”おじさん”が支えてくれて落とさずに済んだが
尋常でない重さだ。
”おじさん”の方をチラッとみると「ホラホラ頑張って。周りを5周くらいするだけだからね」とやさしく言われたので頑張ってみる事にした。

両肩が神輿の重さで軋むが歩けないほどじゃない。
ソロソロとゆっくりではあるが3人で時計回りに歩き出した。
それと同時に笛と太鼓の楽しそうな音色が始まる。
いつの間にか大人たちが近寄ってきていて「ほらほら、頑張って~!」とか応援してくれる。

最初は重さのあまりおっかなびっくりだったが少し慣れてきたのか歩く速度より少し遅いくらいのスピードになっていた。
このときで半周くらいだったかな。

もう少しで1周というところで突然後ろから「ドン」っと押される感じがあった。
よたよたと千鳥足になったが何とかこらえることができた。

何があったのかと後ろを振り返ると真後ろに大きな神輿を担いだ子供たちがニヤニヤしながら立っていた。
どうも大きな神輿が俺たちの神輿に追突したみたいだった。

一番先頭の子供が「ごめんね~」と謝ってきたので「大丈夫」とだけ返してまた歩き始めた。

ようやく1周。
これをあと4週か、と思い少し息を入れたところでまたもや「ドン」ときた。
同じようによろめく俺達と神輿。
後ろを向くとやっぱり大きな神輿の子供たちがニヤニヤしている。
一番先頭の子供が「ごめんね~」とまた謝ってきた。
あまり口をきく余裕がないほど重いので軽く頷きまた歩き始める。
いつの間にか大人たちは近すぎるほど傍によってきており、手を伸ばせば触れられるほどの距離だ。

みんな口々に「頑張れ」とか「もう少し」とか応援している。

その応援を支えに歩こうと数歩行った所で、今までにはないくらい激しい「ドン」がきた。

思わず神輿から手を離してしまい、地面に手を突く。
神輿が落ちると思い上を見上げると傍まで寄った大人たちが落ちないように支えててくれたようで神輿は宙に浮かんでいる。
別の大人の手が俺を起こし神輿のところに立たせると、神輿を支えていてくれた手が無くなり神輿が両肩に食い込む。
後ろを見る余裕もないが耳には「遅いからさぁ、ぶつかっちゃうんだよねぇ」という声が聞こえてくる。

一瞬ムカついたが今は早くこの神輿を下ろしたい一心だったのでまた歩き始めようとしたその瞬間を狙って「ドン」とやられた。
同じようにつんのめり、両手が地面に付きそうになったところで大人の手に支えられる。

神輿も宙に浮いている。
また起こされて神輿を担ぐ。

またすぐに「ドン」
また転びそうになると大人の手が支え…
また神輿を担ぐ…

明らかに異常だ。
周りの声も「頑張れ」とかいう応援じゃなく「早く立て」とか「早く歩け」などの怒声に変わってきている。
半分泣きそうになりながら神輿を担ぐ3人。

周りの大人の中には竹を縱に裂いた竹刀のようなものでケツのあたりを叩いてくる人までいる。
もう嫌だと思って逃げようとしても周りの大人によって引き摺られて戻される。

おかしい。
何かおかしい。
そう思い、ふと近くにいた大人の顔を見てびっくりした。
すでに笑顔ではなかった。
まるで敵を見るかのような目で俺たち3人を睨みつけていた。
周りの他の大人たちも同じだった。
皆が皆すごい形相で睨んでいる。

子供心にこれはまずいと思い、何とか逃げ出そうと考えるが、それを見越したように後ろから「ドン」とやられてまた転んでしまった。
荒々しい手に立たされ、無理矢理神輿を担がされる。

そのわずかな間で周りを見渡すと俺たち3人の神輿の周りに大人が群がっている。
進行方向の右手にいつもひな壇があるので大人は少なめだ。
大人のほとんどは左手と正面に集まっている。
真後ろには大きな神輿が迫っている。

神輿を担がされる前にYとNの顔を見た。
眼が合った。
軽く頷くと神輿を担がされて大人たちの手が無くなった瞬間に右側に神輿をわざと倒した。

よろけて倒れたと思った大人が手を出して神輿を支えようとする。
俺たち三人はその隙を見てひな壇の方に駆け出した。

後ろからは大人の声で「捕まえろ」という叫び声が上がっていたが、その頃には一心不乱に笛や太鼓の音を鳴らす大人の脇をすり抜けていた。
闇雲に走って川沿いの道まで来るとそのままの勢いで下流に向かって走り出した。
どのくらい走ったか判らないが、息が切れるまで走り続けて、もう走れないところまで走ったところで後ろを振り返ると、懐中電灯の光らしきものが10個以上見える。
その光景に寒気を感じて3人で無理矢理走り出した。

少し走るともう息は続かない。
もう走れないと思ったときに目の前に自分たちの自転車が見えた。
3人で何も言わずに飛び乗り、ひたすらペダルを漕ぎ続けた。
怖くてもう後ろを振り向く余裕もない。
必死だった。

自分の知ってる道に出てもしゃべる余裕が無くって、ひたすらペダルを漕ぎ続け、一番近い俺の家に3人とも転がり込んだ。
玄関から入るなり安心して泣き出す3人。
怒りまくっていた母親も父親も呆気に取られていたと思う。
そりゃそうだ、やっと帰ってきたと思ったら赤い法被着て、傷だらけで泣き喚く息子を見たらビックリするに決まってる。

一泣きしてようやく事情聴取。
もちろん他の二人の親も呼ばれた。
今日起きたことを包み隠さず話した。

川を遡った事、山のふもとの町で親切にしてもらったけど、重い神輿を担がされたこと。
年上におにいさんと呼ばれたり、町人の態度がおかしくなり、すごい目で睨まれた事・・・

親たちはみんな頭の中が「?」だったに違いない。
でもその中でNのお父さんが聞いてきた。
「その町の家の屋根の色全部青じゃなかったか?」
俺たちはみな「そうそう」と頷いた。

Nのお父さんは
「やっぱりか」といって説明を始めた。

Nのお父さんによると、その地域は昔から差別の強いというよりは仲間意識が強い地域で、みんなが同じ家に住み、同じように暮らしていくという社会主義みたいな考えがある地域らしいんだ。
そんな村の昔話で、鬼の一家が出た話ってのがあるらしい。

近くの山には鬼の一家が住んでいて、それが時々ふもとに下りてきては悪さをして逃げていく。
一番悪いのは父親であろう大鬼で、人を犯し、殺し、食み、これを至上の楽しみとしていた。
あとは4匹の小さな鬼で子供のようだったが父親と同じように悪さをしていたという。
そんな事を繰り返していたらしい。
その町(そのときは村か)も結構な被害が出て、襲われて命を落とすものや、攫われていく事があったらしい。
仲間意識の強い村の中でのこと。
どうにかしようと村の中で思案しあった結果・・・

鬼一家をもてなす事に決めたらしい。
鬼が来たら村人みんなでニコニコしながらお出迎えをして、考えられる全てのもてなしをしたらしい。

そんなことしたら鬼が一家で居つくかもしれないって考えるだろ?
最初は警戒していた鬼も段々慣れていき、結局一家で居ついてしまった。

それでもみんなニコニコ。

ある日いつものようにもてなしていると、大鬼は酔っ払って眠たそうにしている。
それを察したある村民が大きな戸板を持ってきて「この上に横になってください。私どもが寝床まで運びましょう」と言った。

その申し出に大鬼も気を良くし、戸板の上に横になって運んでもらう事にした。
そしてそのまま大きな寝息を立てて眠ってしまった。

ふと、鬼は眼を覚ましたが体が動かない。
見ると体が鎖でグルグル巻きにされ、腕を動かすことすらままならない。

騙されたと気づき子鬼を呼ぶが返事が無い。

大鬼の体は戸板に乗せられていたが、少しずつ動いている。
山を登っているようだった。

動かない体を無理して戸板の下を覗き込むと、大鬼の体を持ち上げているのは4匹の子鬼だった。
その4匹全てが大怪我を負っている。

大鬼の寝ている間に村民にやられたのであろう、片手をなくしている子鬼もいれば足がもげ掛かっている子鬼もいた。
4匹に共通しているのは4匹とも両目を潰されていると言う事だった。

その子鬼が大鬼の乗った戸板を担いでいるのである。
子鬼を村民の1人が

「鬼さんこちら、手の鳴る方へ」

と手を叩いて導いてる。
周りには人、人、人。

その全ての人の手にはそれぞれ鍬や鋤、竹で作った鎗などがあり、一番近くにいる村民は、たまに子鬼を後ろから手に持った得物で叩いて喜んでいる。
それが山を登っていく。

子鬼が倒れそうになると村民が得物で叩き、起こし、また担がせて歩かせる。

そのうち一匹の子鬼が歩けなくなった。
足がもげ掛かっていた子鬼だ。
村民は容赦なく得物で打ち据え、殺してしまった。

その死体を戸板の上にいる大鬼に乗せると大鬼は大きな声で吼えたという。
それでも村民は気にしない様子で山を登らせる。

少し進んだところでまた子鬼が一匹殺された。

子鬼2匹では戸板を担ぐ事が出来なかったので村民の若い奴が手伝ってやった。
数時間かけて山頂に上ったところで残りの子鬼2匹が殺された。

それを見た大鬼は怒り狂った声を上げたが村民は黙々と薪を拾っている。
大鬼の上に死んだ子鬼の死体を重ね、その上に薪を山のように積み上げて火をつけた。

大鬼は死ぬまで吼え続け、完全に息絶えるまで数時間かかったという。
その間村民は宴を開いていたとか。

そんな事があり、鬼退治をした村として後世の村人に伝えるため、毎年その時期になるとお祭りをする事にしたらしい。

鬼役が4人ほど(ほとんどは子供)で重い神輿を担ぎ、それを村民全員でからかいながら練り歩くというもので、昔は「鬼祭り」と呼ばれていたらしい。

しかし、村内で鬼役をするのを嫌がる村民が増えたため、たまたまその時期に来た旅人とかに無理矢理させることにしたらしい。
鬼退治のときと同じように、最初はもてなしておいて、祭りがあるといって参加させ、無理矢理神輿を担がせる・・・

近年は「鬼祭り」を「鬼さん祭り」と改めてはいるが余所者が行くと必ず神輿を担がされてひどい目に合うので、知ってる人はこの時期は誰も近づかないようにしてるという。

それを聞いて俺たちは身震いした。
あの時言ってた「おにいさん」は「お兄さん」じゃなくって「鬼さん」・・・?

そう考えていたら、Nのお父さんがぽつりと「ものの本によると山に住んでいたのは「鬼の一家」じゃなく「山賊の一家」らしいんだよな」って。
じゃぁ、殺されたのは5匹の鬼じゃなくて5人の・・・

それからしばらくは外出できず、家の中で少しの物音にも震えてた。

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後ろの正面だーあれ

後ろの正面だーあれ

某大学病院に勤めている研修一年目の小児科医のSさんの体験談。

その日、症例報告の準備などで深夜まで居残っていた僕は、いつものように当直室に泊まろうと思いました。

病院の当直室には簡易ベッドが何台か設置されていて、当番以外の者が泊まる余裕はあるはずでした。
しかし、その日は当番医師のほかにも、重体の受け持ち患者を抱えている先輩医師たちが泊まり込んでいて、ベッドは満員という状態でした。
空いてる病室のベッドで眠ろうにも、その日はすべて入院患者で埋まっていました。

最終的に、僕は気が進まないながらも、小児病棟内の『ベビールーム』で眠る事にしたのです。
『ベビールーム』というのは小児病棟ならではの設備で、長期入院の子供達のための遊戯室です。
転んでも怪我をしないように床はジュウタン張りになっており、子供用の滑り台やさまざまなオモチャなどが備えつてあります。
子供のお昼寝用の毛布や布団もあるので、仮眠をとるにはうってつけの場所でした。
それなのに、なぜ、僕が最後までこの部屋で寝ることを避けようとしたのか。
それには、ある理由がありました。
以前、この部屋で仮眠をとった医師たちが、何かいやな目に遭い、それ以来、夜間にここで眠ろうとする者はいない、という噂が、この部屋にはあったのです。

具体的に何があったのか、この話を教えてくれた先輩は言葉を濁して教えてくれませんでしたが、
「とにかく、あの部屋には泊まるなよ」
と僕は先輩に聞かされていました。
けれども、その日、疲れ果てていた僕は、何が起こったとしても堅い冷たい床に寝るよりはマシだと思いました。

ベビールームのジュウタンの上に毛布をかぶって横になった僕は、すぐに眠りに落ちました。

どれくらいの時間が過ぎたでしょうか。
僕は微かな物音に、眠りを破られました。
まだ半分夢の中のような気持ちで、目を閉じたまま聞いていると、その物音は何かのメロディでした。
誰かが細い声で歌っています。
そっと目だけであたりをうかがうと、暗い部屋の中で、子供たちが歌をうたいながら手をつないで輪を作り、僕の周りをまわっていました。
まだ半分寝ぼけていた僕は、事態がうまく飲み込めず、ぼんやりと子供たちを見ていました。
幼稚園ぐらいから小学校ぐらいまでの子供たちのようでした。
みんな楽しそうに、僕のほうを見ながら歌をうたっています。
やがて、ひとりの子供が僕に声をかけてきました。

「お兄ちゃん、一緒に遊ぼう。お兄ちゃんが鬼だよ」

小児科医になったぐらいですから、僕はもともと子供が嫌いではありません。
いわれるままに、子供たちの輪の真ん中にしゃがんで、両手で目をふさぎました。
子供たちの歌が始まります。

・・・・・・かーごめかごめ、かーごのなーかのとりは、いついつでやる・・・・・・・。

しかし、子供たちの歌を聞いているうちに、眠気が覚めてだいぶ意識がはっきりしてきた僕は、ジワジワと、得体の知れない恐怖を感じはじめました。

真夜中過ぎのことで、入院している子供たちは、それぞれの病室で眠っているはずでした。
それなのになぜ、こんなにたくさんの子供が電気もついていない部屋で・・・・・・・?

子供たちの歌はつづいています。

・・・・・・夜明けの晩に、鶴と亀が滑った、後ろの正面だーあれ・・・・・・。

最後のフレーズとともに、子供たちの動く気配が止まりました。

「・・・・・・・当ててよ、お兄ちゃん。当ててよ。後ろの正面だーあれ・・・・・・」

背後から、妙に近くでささやきかけてるような、細い声が聞こえました。
同時に、小さな手がペタリと首筋に触れ、何か小さなものが僕の背中に寄りかかってきたのです。
その感触は嫌に冷たく、湿っていました。

「・・・・・・当ててよぉ・・・・・・、お兄ちゃん、当ててよぉ・・・・・・・・」

細い声は、さらに近く、耳元でささやくように聞こえてきます。
ますます僕は怖くなり、じっと身体を固くしてしゃがみこんでいました。
全身にじっとりと冷や汗をかき、声を出す事もできないありさまでした。
そのときです。

「誰かいるんですか?」

声と同時に、パッとあたりが明るくなったのがまぶたを閉じていてもわかりました。
その瞬間、金縛りのようになっていた身体が動き、僕は悲鳴をあげながら立ち上がりました。

「あら、先生、ここで寝てらしたんですか。ここの噂、知らなかったんですか?」

顔見知りの看護婦が、驚いた様子もなく、気の毒そうに僕にそういいました。

あとで聞いたところでは、その部屋で仮眠をとったことのある先生はかならず、あの子供たちの歌声を聞いたのだそうです。
あのとき、看護婦が巡回にまわってこず、後ろにいた子供を『当てて』いたら、いったい僕はどうなっていたでしょう・・・・・・?

それを思うと、いまだに背筋に寒気が走ります。

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何かが聞こえた

何かが聞こえた 

俺がまだ幼稚園の年中の頃の話だ。

ある夜に、俺を真ん中に親父と弟とで寝ていた。
ふと夜中に目が覚めた。小さい頃から俺は音に敏感だったから、何かが聞こえたんだと思う。
いつも豆電球をつけて寝ていたからまわりがよく見えたが、何もいなかった。
それでも何故か電球の辺りが気になって眠れない。

暫くすると、そこからラジオのような音が聞こえてきた。
最初は「?」と思ったが、上の階に中学生のお姉さんがいたので、
その人がラジオを聞いているんだと思って、また眠る事にした。
耳をすまさなければ聞こえない程のとても小さな音だったが、やはり音に敏感だった俺は眠れない。

すると今度は、ラジオに代わりピアノ演奏が聞こえてきた。先程よりも音が大きく聞こえた。
お姉さんの家にピアノがあるのも知っていたので、やはりお姉さんだと思った。
とうとう我慢出来なくなった俺は、隣の親父を起こして「ピアノの音がうるさいよ」と言ったが、
親父は耳をすましたあと、「気にしすぎだ、何も聞こえない」と、全く相手にしてくれなかった。

仕方なくまた寝ようとしたが、音は普通に聞こえるくらいの音量になってきていた。
堪らずもう一度親父を起こしたが、親父は全く取り合ってくれなかった。
弟を見ると、弟も全く聞こえてないらしく、ぐっすりと眠っていた。

何でみんな気にならないんだろうと、少し違和感を覚えた頃、ようやく音がやんだ。
安心して目をつぶると、今度は洋楽っぽい音楽が流れてくる。
「……明日は…♪」
男の声で何かを歌っていたが、音が小さくてよく聞こえない。
もう気にするのをやめようと横になっていると、
段々と音が大きくなり、何と歌っているのかが分かってしまった。
「…お前は明日死ね~♪お前は明日必ず…」
ここで初めて俺に歌っているのだと理解した俺は、怖くなって耳を塞いだが、
歌はどんどんハッキリと聞こえてきて、耳を塞ぎながら震えていた。

いつの間にか泣いていたらしく、父が俺の異変に気付いた。
その頃にはもう夜明けだった記憶がある。
親父は訳の分からない事をいう俺を連れて母の部屋に行った。
どうやら俺は熱があったらしい。
俺の記憶はそこまでだが、その後熱がどんどんあがり、
その日の夜には泡を吹いて意識を失って、救急車で運ばれたそうだ。

その歌は、童謡というか、エンヤが唄ってそうな、すごい綺麗な感じの歌で
男の人が2、3人でハモってたような…。
だから最初は、子守り歌みたいで眠ろうとした。

親は、俺が倒れるまでずっと「今日死ぬんだ」と言うのが不気味だった、と言ってた。
幼すぎて、その歌を純粋に信じてしまったのも悪かったのかも知れない。
最近その話の真相を親に言ったら、また違う話になったんだけど。

つい最近その時の話になって、俺はようやく当時の真相を語れた。
すると両親がかなり驚いて、顔が真っ青になっていた。
両親曰く、病院についてから医者が痙攣を抑える為(だけではないのだろうが)に薬を大量に投与したらしく、
両親はとても不審感を抱いたらしい。
もちろん、しばらく入院という事になってたんだけど、
親父が「息子を殺す気か!」と怒鳴り無理矢理家に連れて帰ったらしい。

「普段おとなしい親父が珍しいな」と母に話すと
「だってあんた、救急車待ってる時に、半目で『今日帰してね、明日なら間に合わないから』って言ったのよ。」と答えた。

母も意味は分からなかったけど、後でその事を言ってるんだって「直感した」らしい。
もちろん、俺は言葉どころか、その後半年程の出来事を覚えていない。
ただ、両親はやはり印象に残っているらしく、とても詳しく説明してくれた。

俺は次の日には目を覚ましたけど、薬のせいで一週間ほどボーッとしたまま、
だらしなく口を開けていて、首がずっと傾いていたらしい。
「あの時、首が曲がっているお前を見てゾッとした。
 医者はお前にまた薬を投与しようとしていたから、
 このままだと助かっても、植物人間になってしまうと思った。
 連れだして良かった」そうな。
大袈裟だったのかもしれないけど、俺は両親のお陰で助かったんだと思う。

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メリーさん

メリーさん 

あるマンションの13階に住む若い女性が部屋の整理をしていた。
押入れの奥を片付けていた彼女は、そこで古い人形を見つける。
それは彼女がまだ幼かったときに祖母から買ってもらった人形。
「メリーさん」と呼んで大事にしていた人形だ。

しかし、長い間その存在を忘れられていたメリーさんは埃にまみれ、見る影もないほどに薄汚れてしまっている。
この人形をどうしようか・・・しばらく悩んだ彼女は、結局この汚い人形を他のゴミと一緒に捨てることにした。

その翌日のこと。
彼女の家に電話がかかってきた。
相手の声に聞き覚えはないが、声からするとどうやら小さな女の子からのようだ。
「もしもし、私よ。メリーよ。何で私を捨てたの?必ずこの恨みを晴らすために、あなたのもとに帰るから!」
それだけを一方的に告げると電話は切れた。
彼女はゾッとしたが、誰かのいたずらだろうと考えて余り気にしないことにした。

ところが、そのわずか5分後。
またもや彼女の部屋に電話のベルが鳴り響く。
今度の電話もやはりあの“人形”を名乗る少女からであった。

「もしもし、今あなたのマンションの前まで来たわ。もうすぐ会えるわね」
それから5分たつと、また電話がかかってきた。
「もしもし、今あなたのマンションの2階よ。もうすぐ会えるわね」
それからも規則正しく5分おきに電話はかかってくる。
「もしもし、今あなたのマンションの3階よ」
「もしもし、今あなたのマンションの4階よ」

もう彼女は怖くて電話に出ることができなかったのだが。
“人形”はそれでもお構いなしに電話をかけ、留守番電話に一方的にメッセージを残していった。

「もしもし、今あなたのマンションの10階よ」
「もしもし、今あなたのマンションの11階よ」
「もしもし、今あなたのマンションの12階よ」
ついに人形は彼女が住む部屋の、すぐ下の階にまで迫ってきた。
彼女は逃げ出そうかと思った。
だが、もう遅すぎる。

再び電話のベルが鳴り、留守番電話にこんなメッセージが吹きこまれたのだ。
「もしもし、今あなたの家の前よ。居留守を使ったってダメよ。そこにいるのは、ちゃーんとわかっているんだから」
彼女は心臓が止まりそうなほど驚き、何もすることができずにただその場にうずくまり震えていた。
それから、また5分が過ぎる・・・
再び電話が鳴り、あの人形の忌まわしい声が彼女にこう告げた。

「どうして開けてくれなかったの?でも、もういいわ。わかる?わたしは今、あなたの後ろにいるのよ・・・」