「 謎 」 一覧
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廃ホテル
箱根~三島間にあった廃ホテル。
当時は売却物件で看板も出ていたけど、中が凄かった。
場所は以前から知ってたので自宅からチョイノリ時間で行けた。
さて敷地内に入った瞬間、完全に空気が違うのを体感したなぁ。
何ていうか病院病室なんかの澱んだ空気って言うか・・・。
既に廃墟になっていて、建物は下のガレージから階段で二階の部屋に上がるタイプ。
誰かが複数で監視してるような視線を感じた。
中庭に一台、軽自動車があるのが敷地に入ると同時に目に付いた。
近付くと窓ガラスは粉砕されて車内も物が散乱。
しかし、自分がぶったまげたのは後部荷台の七輪だった。
炭の燃えカスが残っていたので誰かが火を付けていたのだと思う。
もうそれだけで、チキン状態の自分は脱兎の如くバイクで退散した。
その後、別人が現地レポを書いてくれて詳細が判明。
車内には子どもの写真何枚かと借金の督促状等があったらしい。
実際に画像もUPされたから間違いない。
行ったのは七輪を必要としない時期だったかなぁ。
そこで売主の不動産屋に軽自動車の件を訊いてみたが以下の返答。
・軽自動車は誰かが勝手に乗り付けて放置していった。
・自殺等の事故物件ではない。
・売却に当たっては更地にして引き渡す。軽自動車は伊豆ナンバーが付いてたのは自分も確認してる。
でもねぇ・・・水も食料もない所で何で七輪を車内で使うかなぁ。
家族の写真や督促状なんかもあったんじゃ、???って疑うよなぁ普通。
知人の警官に訊いたら、自殺してたら証拠物件として警察が回収するはず、だから本当に事件性はなかったみたいだけど腑に落ちない。
もう過去の話で悪かったけど、ふっと思い出したので書いた。
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猫を助けたのは誰?
震災での被害はほとんどなかったものの、津波で水をかぶった地域。
地震発生後、町内で一番高い所にある神社に避難していく途中、見慣れない女の子が、前から町内をうろついていた猫を数匹抱えて走るのを複数の人が目撃している。
小学校低学年くらいの女の子で、黒か紺のジャージの上下着用。
ほとんどの目撃者は走って追い越されたそうだ。
当時は不思議に思わなかったが、死に物狂いで走る壮年の男性などを、腕いっぱいに動物を抱えた小学校低学年の女の子が追い抜けるものだろうか?
しかも、うちの町内は南と西が海に面しており、北は山で、東は車で30分ほど行くと隣町というどんづまりの田舎町なもので、基本的に『知らない子供』がいることがまずない。
町内で直接の死人は出なかったが、海に近い通りなどは軒並み半壊。
しかし、浜の近くに住んでいた野良猫の多くは無事だった模様。
あの女の子は神社の神様かな?
それともその手前に祭ってあるお地蔵さんかな?
と地元で語られている。
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おかしなバイト
15年程前の話な。
オレはその頃、名古屋の大学に通ってて、一人暮らしをしてたわけだ。
親には無理言って一人暮らしさせてもらってる手前、そんな仕送りも要求できないんで割のいいバイトを探すことにしたんだ。
大学入っていろんなバイトを転々としたんだけど、これといっていい条件のバイトに恵まれず、一人暮らし諦めようかとか思ってたところに友人から『とあるバイト』を紹介されたんだ。
それは、新聞の求人情報欄の1コマに掲載されていた地味なバイト。
気をつけて読まないと絶対わからないレベル。
条件は明記されてなかったが、日給弐萬円也の一文が俺の心を突き動かした。
即決だった。
雇い主の家に電話をして詳細をたずねると、とりあえず一度会いたいと言われ、先方のお宅へ伺うことに。
先方からは
「場所が入り組んでてわかりにくいだろうから、当日は迎えをよこす」
と言われたので、当日オレは指定された駅で待機。
雇い主の家族?らしき人が乗ってきた車で雇い主宅まで向かったんだが、土地勘さっぱりな俺は途中から場所がすっかりわからなくなって、心配になって運転手に
「今から向かう先って、俺一人でも行ける場所ですかね?免許まだなんですよ」
と尋ねたところ
「ああ、何度も続けてもらうかどうかは娘が決めることだから」
とだけ回答が。
そのあとは特に会話も交わさず揺られること50分、市街地を離れ緑がやや多くなってきた住宅街の一角、やや大きめの一軒家の前で停車した。
雇い主は、その家の奥さんらしい人だったようで、話を聞くと仕事の内容は至って単純かつ難解なものだった。
その家には一人娘がいるんだが、幼い頃何らかの理由で寝たきりになってしまったらしい。
意識は有るような無いような状態で、こちらの話すことには、若干反応を見せるものの、言葉や態度で返すことは無いと言うことだった。
俺の仕事と言うのは、その娘が退屈しないように話しかけるだけの仕事。
返事も期待しなくていい、反応も見なくていい、ただ面白いと思うことを話し続けろという奇妙な仕事だったわけだ。
部屋に通されると、そこはあまり広くない和室で、部屋の真ん中に布団が敷かれて、そこに中学生くらいの女の子が寝ている状況だった。
なんか奇妙すぎて居心地悪かったけど仕事だしな、ということで早速女の子に挨拶することに。
「こんにちは、きょう話し相手のバイトできました○○と言います」
まぁ、返事は無いわけだ。
そこは前情報どおりなので気にせずに、とにかく色々話かけることにした。
そして2時間くらい独り言を続けているうちに、オレは妙なことに気がついた。
この子の母親らしき人から娘は一人、と伺っていたのに、なぜか学習机が二つ。
そこにかかるランドセルも二つ。
話がネタ切れになりつつあったこともあり、気になったオレはそれをネタに話しかけてみた。
「もしかして姉妹とか兄弟とかいるの?オレは一人っ子なのでうらやましいな」
その瞬間、女の子のおなかの辺り、掛け布団の中で何かがはねるように動いた。
いままで人形相手にしてる気分だったオレは、いきなりの反応に驚いてしまい、そのまま女の子の顔を凝視してしまった。
しかし女の子は無表情、天井を見つめるだけ。
ただ、掛け布団のおなかの辺りで何かがもぞもぞと動いているのは見てとれた。
掛け布団の中が気になって、ちょっと覗いてみたくて、誰もいない不思議な雰囲気がさらにその気持ちを加速させて、掛け布団をそっとはがそうと思ったけれど、その土壇場でやはり痴漢騒ぎでも起こされたらマズイと思いとどまった。
その後も蠢く布団が気になりつつも独り言を続けて、いつのまにかバイト契約時間も終わり間近に。
「それじゃ、今日はもう帰りますね。また機会があればお話しに来ます」
と返事も期待せずに声を掛けたんだ。
実際もう帰りたかったし二度と来る気もなかった。
立ち上がろうとした途端、
「なかを みなかった おまえは もういらん」
それまで表情一つ変えなかった女の子が、こちらを見つめながらそう言い放った。
そのときの女の子の目が不気味で、もうそこにいたくないという気持ちが強くてバイト代を速攻でもらって帰ることに。
奥さんらしき人からバイト代の入った封筒を受け取るときに
「すいませんね、あの娘があまり気に入らなかったみたいで、継続は無しで」
と言われたんだが、俺もすっかり続ける気はうせていたので、そのまま帰ることに。
駅まで送ると言われたんだが、ソレすらも嫌な気がしてタクシーを呼んでもらい、逃げるように家に帰った。
その後、その家がバイトを募集している記事を見たことはなかったし、そこに近づこうと思ったことも無い。
ただ唯一心残りだったのは、あの女の子の布団の下に何があったのか、ソレをもし見ていたらどうなっていたのか・・・
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山の神
こないだ、裏のおじいちゃんと山に登って、山芋堀りをしていた。
私がスコップで地面を掘り返していると、透明なぶよぶよした物が現れました。
おじいちゃんに言うと、
「いかん、山の神様だ。もう今日は帰るぞ」
と言って、それを急いで埋めて山を下りました。
後で、おじいちゃんにアレの正体を聞いたら、
「あれに長いこと触ると、たたりに遭う」
と言ったきり、口をつぐんでしまいました。
いったいなんだったんだろう。
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おっさんの妖精?
リクルートスーツを見る季節になると、毎年思い出す話。
今から10年以上前、俺は就職活動してた。
正確な年は言えないんだけど、バブル崩壊後の冷水ぶっかけられた氷河期世代あたりだと思ってくれ。
俺は理系で一応研究職希望だったけど、求人自体がほとんどなくて、滑り止めに受けた営業や販売すら落ちまくりだった。
そんな中で、一つだけ最終面接まで進んだ会社があった。
ノルマなしの営業で、しかも待遇がめちゃくちゃいいところだった。
OBも
「お前が来たいなら採用出してもらう」
と協力的。
そのOBから最終面接の前日に、
「お前は合格確実、ていうか合格決定だから。一応面接だけ受けてもらってから入社承諾書に判子持って来い」
と連絡もらった。
最初は滑り止めって思ってたけど、他は全然受かんないし、こんなに熱心に誘われたらどんどん気持ち傾いて、本当に承諾書出されたら判子捺して入社しようかなと思ってた。
最終面接の日。
控え室で待機してると、40過ぎくらいのおっさんが入ってきた。
最初会社の人かな?と思ったら、受験者みたいな素振りで俺の隣に座った。
そしていきなり場を弁えずに、大声で俺に話しかけてきた。
面接は待機から見られてるなんて常識だから、びびって最初は諌めたり無視したりした。
でも、おっさんは何も気にしないで、
「この会社、きれいなのは見えてるところだけだぞ!」
「トイレとかすげー汚かった!この会社もうダメだな!」
「あと○○(会社の商品)もだめだ。もうここは先無いぞ!」
周りもチラチラ見るだけで助けてくれない。
俺がいや…あの…とか、ろく返事もできないでいると、
大声は外まで聞こえていたらしく、すげー怒った顔で会社の人が入ってきて、
「社長室まで聞こえてたぞ!ふざけるな!出て行け!」
と、2人で追い出された。
俺、しばらくポカーンとしちゃって、その後で当たり前だけど急速に怒りが湧いてきた。
おっさんに
「どうしてくれるんだよ」
って掴みかかったけど、おっさん平然としてんの。
うまく言えないんだけど、馬鹿にしてるとか基地害とかじゃなくて、普通に平然とした顔で
「大丈夫だよ~。君は大丈夫、大丈夫~」
と言って頷いてた。
俺も何か怒りがすっと引いて、よく考えたら別にそんな入りたい所じゃなかったなって冷静になった。
おっさんの胸元掴んでシワシワになってたんで、
「すんませんでした」
と謝ったら、おっさんはまた普通の顔で
「大丈夫だよ~」
と言って去っていった。
OBからは連絡なかったけど、本命じゃなかったのに流されそうになってしまったその会社の熱意?というか強引な口説き方が、遅まきながら怖くなったから俺からも連絡しなかった。
それから2ヶ月後。
ちょっとだけ条件を譲歩したら、元々の希望だった研究職の内定もらえた。
俺はおっさんに感謝した。
でも本当に驚いたのは、それから3年後だった。
昼休みに食堂で見たニュース。
俺とおっさんが追い出された会社が、謝罪会見やってた。
詳しくは書けんが、会社ぐるみで犯罪やって社長以下、幹部はほとんど逮捕。
平社員もノルマの名の元に犯罪行為させられてて、かなりの人が客から訴えられたそうだ。
一緒に飯食ってた同僚に、
「もしかしたら自分は、ここではなくこの会社に入るかもしれなかった。いや、おっさんが邪魔してくれなかったら、確実に入ったと思う」
と話したら、
「もしかしてそのおっさんって、幸福の妖精じゃねーの?」
と言われた。
小太りでダサくて、しかもハゲてるおっさんの妖精かwww
でも本当に感謝してる。
いつか会ったら礼を言いたいけど、あれ以来会ってない。