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めぐりあい
私と旦那は、つきあい始めたその日に結婚を決めたスピード婚。
なので、お互いの家の事もあまり知らなかったんだけれど、結婚して数年し、旦那の本家の墓参りに行って驚いた。
なんと、うちの母方の祖先の寺とご近所だった。
お互い東京出身で、墓は東北にあったからなおびっくり。
「偶然ですね~」
って話してたら住職さんが、
「○○さん(旦那方)のご先祖が戦に負けて追われて来たのを助けて、一族再興に貢献したのが××さん(私方)のご先祖なんですよ!」
って驚きながら話してくれて、寺に残っている記録を見せてくれた。
そうしたら、
・旦那の先祖が追われてきた日=私の誕生日。
・一族を再興させて城を開いた日=旦那の誕生日。
なんていう共通点も見つかったりして、親戚一同ビックリしどおしだった。
前世とか因縁とかあまり信じない方だったけれど、こういうことってあるんだな~と思った。
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ヒッチハイク
俺の友人が実際経験した話。
彼は温泉好きで、よく山奥の温泉街に車で行ってるんだけど、ある日ひとりの男性をヒッチハイクした。
男性は、この温泉街で友人三人と待ち合わせしていたが、すれ違いをしたらしい。
ここから先にある秘湯に行く予定だったと言う。
三人は先に行っているかもしれないから、そこまで乗せてくれということだった。
携帯の電波も届かないというので、仕方なく男性を乗せて山奥へ向かった。
しばらく山道を走ると、助手席の男性が
「旧道が見えるでしょう?そこへ入ってもらえます?」
と言う。
言われるがまま旧道へ入ると、目の前にえらい不気味なトンネルが見えたんだそうだ。
トンネルの前で降ろしてくれと言うので、彼は男性をそこで降ろした。
よく見ると、トンネルの中には無人の白いセダンが一台。
男性はセダンの横に立って、じーっと中の様子を見た後、こちらへ歩いてきたんだそうだ。
「いやー、おいてけぼりくらったみたいです。悪いけどまた乗せて戻ってくれませんかね?」
男性がそう言うので、不思議に思いながらも、また男性を乗せて戻ったんだそうだ。
温泉街で男性を降ろした後、彼自身は温泉を満喫して自分の家に帰った。
その後、彼はニュース番組で練炭自殺の報道を見た。
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廃墟の撮影
俺がフリーの調査業をやってた頃で、まだそれだけじゃなかなか食えない頃に経験した、いくつかのお話の1つです。
そのときに受けた仕事は、とある出版社の心霊関係の特集の調査で、俗に言う心霊スポットを調査して、それらは事実なのか調べる仕事でした。
そのときの調査で行った場所は、関東のとある山の中の廃墟になったホテル。
まず心霊スポットだと言うとよくあるのが、だれだれがそこで殺されたや、自殺したという話で、そのスポットもご多分にもれず、とある若い女の人が彼氏に殺されて、その廃墟の壁に埋められていて、その女が霊となって出る、というものでした。
さっそく、殺人が実際にあったのかを調査しようと、まずその地域の図書館で、事件がおきたとされる年代の新聞などをチェックしたり、地元警察やそのスポットの地主、地元の人に聞き込みなどを行ったのですが、そのような事件がおきた痕跡や記録はありませんでした。
そして最後に、現調と調査報告に使う写真の撮影のため、一緒に組んで仕事をしているもう一人の仲間の女性と、夜中に現場に撮影をしにいったときのこと。
さすがに人気のない山中ということもあり、かなり不気味。
建物の中はかなりカビ臭い。
撮影は昼間でもいいのですが、やはり夜の写真がいいというのが依頼の内容に入っていたために、夜中に現場へ向かいました。
とりあえず、建物の外観や内部をカメラで撮影し、あらかた内部の調査も終わったので引き上げようと思い、建物内部にいるはずの彼女に大きな声で、
「そろそろ引き上げようか」
と声をかけた。
すると彼女が、
「あ、まってください。こっちの部屋にきてくれませんか」
と言うのでそちらに向かうと、なんの変哲もない部屋がそこにあった。
さっき通ったときはなかった気がする、と思いながらも部屋に入ると、なんだか魚が腐ったような匂いが、カビ臭い匂いと入り混じって悪臭がすごかった。
そして、俺を呼んだはずの彼女はいなかったが、特に気にもせず(移動したのかなくらいに思ってた)部屋を見ると、壁が一箇所だけ塗り替えたように色が違う。
あぁ、これが噂の元になっているんだな(壁に死体が埋め込まれたという噂)と思い、撮影をしていると、急に持っていた懐中電灯やカメラなどが全て電源がきれてしまって、使用不可になったんです。
暗闇の中で参ったな…と思ってると、部屋に入ってくる足音が聞こえます。
「あのさ。明かりが消えちゃってつかないんだよ。きりがいいから引き上げよう」
と言うと彼女が、
「もう少しだけここに残ろう・・・。ね?」
と引き止めます。
俺が帰ろうと言っても、
「もっと撮影したほうが・・」
とか、
「壁を掘り返しましょう」
とか、やたらと引き止めるんです。
「それならば明日にしよう」
と帰ろうとすると、
「待ちなさい!」
と、俺の手を握ってきたんです。
その手の感触は今でも忘れません。
ぶじゅっ・・・と音がしたと思うと、俺の手をものすごく柔らかくて、筋ばっているのにドロドロしたような、表現しがたいものが握ったんです。
「うわっ!」
と手を離すと彼女が一言。
「もうちょっとだけここに残ろう・・・。ね?もうちょっとだから・・・」
その瞬間に、俺は彼女じゃないと恐怖を感じ、その場から一目散に逃げました。
月明かりだけだったので、あちこち体をぶつけて痛みも感じたけど、それどころじゃなかった。
そして建物の外に出ると、車の前で彼女が待っていました。
彼女の話だと、撮影しはじめてすぐに懐中電灯などが使用不可になったために、ここで待っていたとのこと。
じゃさっきのは?
やっぱり・・・
その場からすぐに立ち去ろうと車に乗ったときに、彼女が
「ひっ!」
と声をあげ、
「あ・・あれ」
と、震える指で車のミラーを指差した。
俺はもう恐怖のためミラーを見たくはなかった。
そのまま車を急発進させて町へ。
そして、全ての経緯をまとめて依頼主に報告。
事務所に戻って撮影したものを見たときには、普通の写真と映像でした。
何も写ってはいなかった。
一緒に行った彼女が見たものを聞くことはありませんでした。
思い出したくないんです・・・ただそう言ってました。
けどきっと、あの映像と写真には何かあったんだと思う。
最初は報告を受けて
「おもしろいじゃないか。使えるよ」
と乗り気だった依頼主が、急にそれらの使用を取りやめ、写真と映像を処分したからです。
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点検
ある日曜、部屋にいたらチャイムが鳴った。
いつもなら居留守だけど、たまたま出ると、
「マンションからの依頼で給湯器の点検にきました」
マンション側そんな告知してないけど・・・いつも告知するのに、と思いつつ、のんきな昼下がりだし、うち道路に面した一階だし、作業服着た二人の男を入れた。
普通に給湯器を調べてるような作業して普通に帰って行き、他の部屋も回っている模様。
でも告知がないから開けない部屋もあった。
そして、その一時間後くらい。
ベランダに干してた洗濯物取り込んでると車が止まり、別の男性二人が近づいてきた。
男1「ここらへんで作業服きた男捜してるんですけど、見かけませんでした?」
自分「給湯器の点検屋さんならきましたけど・・・(聞かれるままに人相等の説明)」
男1「○○!すぐ××県警に連絡して!!!!」
○○と呼ばれた男はバタバタと車に走っていく。
男1も自分にお礼を言って走って行った。
それから何もなく過ごしたけど、あの給湯器屋さんはなんだったんだろう・・・
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やさしげな兵隊さん
子どもの頃、いつも知らない人が私を見ていた。
その人はヘルメットをかぶっていて、えりあしに布がひらひらしてて、緑色の作業服のような格好で、足には包帯が巻かれていた。
小学生になってわかったが、まさに兵隊の格好だった。
その兵隊さんは、私が1人で遊んでいる時だけでなく、校庭で遊んでいる時や母と買い物でスーパーに行った時など、いつでも現れた。
少し離れたところで立って、私を見つめている。
自分以外には見えていないし、いつの間にか消えている。
私も、少しは怖がってもよさそうなものだったが、何せ物心ついた時からそばにいるし、何よりその人から恐怖心を感じるようなことは全くなかった。
きりっとしてて優しげで、古き良き日本人の顔って感じだった。
やがて中学生になった。
ある日、いつもと違うことが起きた。
テストを控えた寒い日、夜遅くに私は台所でミロを作っていた。
ふと人の気配がしたので横を見ると、兵隊さんがいた。
けれど、その日は手を伸ばせば触れるくらいそばにいた。
ぼけた私が思ったことは、意外と背低いんだな、くらいだった。
―それは何でしょうか?
体の中に声が響いたような感じだった。
兵隊さんを見ると、まじまじとミロの入った鍋を見ている。
ミロって言ってもわかんないよね・・・と思った私は、
「半分こしよう」
と言ってミロを半分にわけて、カップを兵隊さんに渡した。
―失礼します。
そう声が響いて、両手にカップを持って、ふうふうしながら兵隊さんはゆっくり飲んでいた。
その時の兵隊さんの顔は、柔らかくてすごく嬉しそうだった。
飲み終わって、また声が響いた。
―こんなにうまいものがあるんですね。
少なくて悪いかなと思った私は、
「おかわりする?」
と聞いたが、兵隊さんはカップを私に手渡して、敬礼してふっと消えてしまった。
別の日に1人で家にいる時、クッキーを作っていた。
焼きあがり、冷まそうとお皿に並べていたら人の気配がしたので窓を見ると、庭先に兵隊さんがいた。
私はおいでよと手招きをしたが、兵隊さんはにこっとして首を横に振った。
あれ?と思っていたら、兵隊さんは敬礼して、ふわっと消えた。
ヘルメットから出てる布が、ふわりとしたことを覚えてる。
それきり、兵隊さんは私の前には現れなくなった。
今でも兵隊さんのことを思い出す。
美味しいものを食べた時や、料理が美味しく出来た時、兵隊さん、どこかで美味しいもの味わえているかなあと。