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崩れたトンネル
うちの爺さん(イギリス人)が若い頃こんな夢を見た。
近くの山のなかを歩いていたら、カーンカーンという音とともに、
「トンネルの中で、なすすべもなく叫ぶ哀れなものどもに捧ぐ」
という声がして、複数の人がドッと笑ったところで目が覚めた。
不吉な夢だと思って震えていたら、親が部屋にやってきて、
「トンネルが崩れた。救助に行くからお前も来い」
といわれて、助けに行ったんだけれども、誰も助けられなかったらしい。
崩れたトンネルは最近出来たばかりで、近くの町に行くのには便利なんだけれども、地元の年寄りの話では、かつて残虐非情な盗賊の一味を捕まえてリンチにかけたところだったので、よくない噂がささやかれた場所であったらしい。
あと、トンネル作りに奔走した村の若い役人が、ショックで夜になると叫ぶようになって、村のみんなが暗い気分になってしまった。
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山の子供
今から15年程前、私が小5のとき祖父と従妹の三人で、山に山菜取りに付いて行ったときの話です。
山で従妹と遊んでいると、10歳位の男の子が1人でいたので、この子も家族と一緒に山菜取りに来たんだろうと思い、仲良くなって、その子と従妹と三人で一緒に遊んでました。
ケンイチという名前の子でした。
夕方頃、下の方で祖父が
「そろそろ帰るぞ」
というので、その子に
「じゃぁバイバイ」
と言うと、その子は木の枝に掛けてあった祖父のラジオ(熊避け用)を手に取ると、バリバリと食べ始めました。
ラジオは粉々になってました。
その子の口は犬の様に付き出していて、目は真赤に変化してました。
そしてブツブツと何か言ってました。
「ゲルマニウムが・・・」
というのが聴き取れました。
怖くなり、従妹を連れて下の方に居る祖父のもとに一心不乱に逃げました。
その子はラジオをバリバリ食いながらこっちを見てました。
祖父もタダ事ではないと判断し、急いで私達を連れ車に戻り逃げました。
数日後、その話を聞いた猟友会の方々がその山に入りましたが、ラジオのダイヤルだけ見つかり、他は何も怪しい物はみつからなかったそうです。
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古典SFにはまっていた頃のお話
その頃俺は、昔のSF小説にはまってた。
ノリが良くて勧善懲悪なところが、何かスカッとして面白くて、復刻版の文庫を買ってきては読んでいた。
ある晩、本を読みながら眠ってしまった俺は、ふと気配を感じて目を覚ました。
部屋の隅に人が居た。
30過ぎくらいの女で、夏なのにセーターと長くて分厚いスカート。
壁にもたれて座り、本を読んでいる。
ものすごく驚いたが、寝ぼけているせいか不思議と怖くなかった。
おばさんだが、よく見ると前に見た『アメリ』って映画の主人公に似ていて結構見られる。
何となくぼーっと見ていると、女がこっちを向いて笑った。
「こういうの好きなら○○に聞いてごらん。まだあるから」
そう言って、持ってた本をこちらに見せた。
寝る前に読んでた『スペースオペラ』だった。
そこで目が覚めた。
朝になってた。
変な夢だなーと思ったが、部屋の隅を見てびっくりした。
俺のSF本が数冊重ねて置いてあった。
そして、一番上に寝る直前まで読んでた本がきちんと置いてあった。
マジかよ、としばらく頭を抱えたが、ふと気になった。
女が言っていた○○って誰だ?
俺の周りで○○って名前は父親だけだ。
他に思い当たる相手もいないし、早速仕事から帰ってきたら聞いてみた。
一応夕べの文庫本と、姉から『アメリ』のDVDも借りておいた。
最初、父は『お前大丈夫か?』という顔をしていたが、本とDVDを見た途端に態度が変わった。
「姉ちゃんか・・・そういやもうじき盆だったな。よし、今度の休み墓参りに行くぞ。お前も来いよ」
その姉ちゃんというのは、正確には父の従姉だったそうだ。
父より10歳近く年上で、良く面倒を見てもらったらしい。
何か変わった人で、本と香水と古い香水ビンが大好きで、35で死ぬまで独身だったそうだ。
だけどすごく優しくて、父も周りの人にも好かれていたそうだ。
母とも仲が良かったらしく、そういえば何か話を聞いた覚えもある。
母が宝物にして飾ってあるビンのコレクションが、その人の形見だったとか。
絶版品で貴重品とか言ってて、昔姉が勝手に触って怒られていた。
「何で俺のとこに出てきたんだろう?」
と聞くと父は、
「嬉しかったんだろ。姉ちゃんこういう話好きだったからな」
それから休みになって父の実家に行くと、父の言葉通りに物置からどっさり本が出てきた。
その中に昔のハヤ○ワSF文庫の初版も山ほど混ざってた。
俺の読んでた本もそこにあった。
時々、この人が生きててくれたら、今頃どんな本を読んでたのかと考える。
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何かと縁がある
祖父がどこぞの恐い組の方だったらしい。
組長が殺されて解散したらしいけど、どうも私はそっち系のお方と縁がある。
祖父の家系は、飛び飛びで裏の人に縁があるとかないとか。
彼氏は教職。
真面目人、私も元ヲタで、むしろそっちの人とかなり縁遠い人なのだが、高校生になって脱ヲタしたら、そっち系の男の人から
「そういう臭いがする」
と声を掛けられたりするようになった。(容姿は黒髪、化粧はナチュラルだったのに)
上京してバイトをはじめると、バイト先の店長が実はそっち系の人だったり、(バイト先はお水系ではない)
帰り道、友達の元彼氏に(いわゆる少年グループみたいな感じのDQN)、
「お前が俺の彼女と仲良くするからふられたんだ」
と、わけのわかんない因縁付けされ泣いてたとき、たまたま通りすがったそっち系の偉い方に助けてもらえたり。
(あとからパトロンになると言われたけど断った)
居酒屋で飲んでたとき、変なキャバ店員の兄さんに絡まれたときにも、たまたま隣に座ってたそっち系のお方が助けてくれたり。(あとから店内で喧嘩が始まってしまい逃げたが)
友人には、「真面目そうに見えるのにね」とよく言われる・・・
来年からは就職だけど、そこの社長さんもなんだかそんな雰囲気だった。
普通のパソ関係の仕事だけど、なんだか・・・怖いです。
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時空のおっさん
20年近く前の話になります。
当時、私は小学4年生でした。
近所にすり鉢状の滑り台がある公園があり、それはとても変っているので小学生には大人気で、学校終わってすぐ行かないと取り合いや順番待ち、横暴なジャイアン的上級生の圧政など、面倒なことが増えます。
なので、その日も学校が終わったら、親友のT君とその公園で会う約束をして、走って帰りました。
家に帰るとランドセルを放り投げ、自転車に乗り猛烈に漕ぎました。
最初は何も考えてなかったのですが、何か変だと思い停まったのです。
すると、さっき渡ったはずの信号が、遠くの方にみえました。
というより、今自分が停まってる所はさっき通った所なんです。
どこから同じ道だったのかわかりません。
ただ、その公園へは毎日のように行ってたので、道を間違えるはずもなく、景色も覚えています。
なのに、『はい、今からさっき通ったとこ』という瞬間がわかりませんでした。
いつのまにか同じ道だったのです。
そして、おかしいのが全く人気がないのです。
何の変哲もない住宅街ですが、いつもなら立ち話する主婦、道路で遊ぶ子供、大きい道に抜ける車、なにかしら人の動きがある道です。
それが全くない。
家の中は見えませんが、家自体に人の気配がないのは、子供ながらに感じました。
騒音も全くありませんでした。
とにかく、数百メートル先の信号まで行くことにしました。
でも、漕いでも漕いでも何故か近づけないのです。
はっきりとは見えませんが、信号がだいぶ先に固定されていて、信号のちょっと手前の風景だけが流れている感覚。
どんだけ漕いでも着かないので、遂に疲れ果て、漕ぐのを止めました。
そしてだんだん心細くなって、泣き出したのです。
わんわん泣いていると先の角から、年の頃は40ぐらいのおっちゃんが歩いてきたのです。
今思うと、携帯電話で話しながら歩いてきました。
(当時は携帯電話はなく、トランシーバーだと思った)
そして泣いてる私を見つけると、
「いた、いたわ」
と言い近づいてきて、
「よしよし、怖かったな、お家に帰ろうな」
と言い、頭をなでられた瞬間、いつの間にか騒音もいつも通り。
なんかよくわからん内に、何もかも元に戻ってました。