怖っ!怖っ?怖い話

いろんな怖い話を集めています。

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「 謎 」 一覧

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俺の嫁は俗に言う『みえる人』で、俺は『0感』。

嫁がまだ恋人の頃、見える人である事を俺に明かし、その後しばらくの間『あそこに女の人が居る』だの『今、足だけが階段を昇っていった』だの言い出し、俺が本気で遺憾の意を表明した時から、一切それ系の実況をしなくなった。

山菜採りが好きな俺と嫁は、いつもの如く山道を車で通行していた。

しがない自営業の俺等は、昨今の不況の折に開き直って、平日の昼間に日がな半日程度、山菜採りに精を出していた。

比較的心地よい疲れに伴い、今日の夕飯は何かな、天婦羅はもう暫く要らないなとか思いながらボケっと運転していた夕刻。

自分の車の前を走る、シルバーの軽。

暑い日だったので、前を走る軽の助手席の窓から手が生えて見える。

運転者は老齢であろう。

決して生き急いでないのが見て取れる様に40k巡航である。

ここまではよくある光景で、次のストレートで追い越しかけるかと思っていた。

その矢先、嫌な事に気付いて、しまったと思った。

その軽の助手席の窓から『手』が生えて見える。

『腕』じゃなく『手』。

指まではっきりと認識できる。

巨大な手が、前を走る軽の窓枠をがっちりと掴んでいる。

嫁はともかく、今までそんなものが見えた事のない俺は総毛だった。

すぐさま嫁に視線を移すと、以前はこういう不可思議な現象に対してもヘラヘラ笑いながら俺に実況していた嫁が、目を見開いて硬直している。

常時見えている人間にとっても只事では無い事例であろう事が、0感の俺にも容易に推測できた。

そして、その『手』はこちらの熱視線に気付く風でもなく、新たな行動をし始めたのだ。

その『手』は、掴んでいた窓枠を離し、にゅーっと虚空に伸び始めた。

その手首には、タイの踊り子の様な金色の腕輪が付いている。

肘が車外に出ても伸び続け、肩の手前位まで車外に出した。

とんでもないでかさ。

そして、やにわに自分が乗っている軽の天井を叩き始めたのだ。

「ぼん、ぼん、ばん、ばーん、ばん、ばーん」

という音が、すぐ後ろを走る俺等にも聞こえてくる。

そのときの俺はというと、目の前で起こっている映像に脳の認識がついていかず、ただそのままぼーっと軽を追従していた。

「停めて!!!」

嫁の悲鳴交じりの声が、俺に急ブレーキをかけさせた。

前輪が悲鳴を上げ、前のめりのGを受けながら俺の車は急停止した。

今まで眼前にあった、自分の車の天井を叩き続ける巨大な手を生やした軽はゆっくりと遠ざかって行き、その先のカーブから見えなくなった。

夕暮れに立ち尽くす俺の車。

嫁は頭を抱え、小刻みに震えている様にも見える。

俺も小便がちびりそうだったが、努めてなるべく明るく嫁にまくしたてた。

「なんだよ?お前いっつも笑って解説してたじゃん。あんなのいつも見てたんだろ?今回、俺も見えたけど、すげえなあれは。」

暫くの静寂の後、嫁が口を開いた。

「・・・・・あんなの、初めてだよ。・・・・アンタは、気付かなかったろうけど。」

「なにがよ?」

「あの腕。邪悪な感じがしない。かなり上位の存在だよ。」

「・・・じゃあ良い霊とか、神様じゃね?運転手が悪い奴で、なんかそんなんじゃないの?」

「そんな訳無い、絶対におかしい。あんな上位の存在が、あんな行動するわけがない。やっている事は悪霊そのもの。だけどあの腕は光に包まれてた。分からない。自分の無知が怖い。・・・怖い。頭がおかしくなりそう・・・」

嫁の話を聞いていると、俺も頭がおかしくなりそうだったので、わざわざUターンしてその現場から離れ、実家には帰らずに居酒屋に直行、二人で浴びるほど酒を呑んで近くのビジホで一泊した。

あの手は一体何だったのか、俺は未だに全く理解できない。

ただ、あんな体験はこれっきりにしたいもんだと、心底思った。

【 自宅で稼ぐ 】

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祭祀

近所に、家族ぐるみで懇意にしてもらってる神職の一家がある。

その一家は、ある神社の神職一家の分家にあたり、本家とは別の神社を代々受け継いでいる。

ウチも住んでいる辺りでは、かなりの歴史がある旧家の分家で、そこの神職一家が非常に気さくで人当たりの良い人達ばかりということもあって、その神職一家と非常に仲良くさせてもらってる。

最近、そこの次男Aさん(と言っても30半ばのオサーン)に聞いた話。

なお、よくわかんなかった言葉とかは後でググったりして補足してる。

最近、新車を買って、そこの神社で交通安全祈願をしてもらった時のこと。

その後に社務所で事務仕事してたAさんに声をかけて世間話をしていた。

俺「Aさんって、今は事務方メインの仕事されてますけど、昔は祭事とかお祓いとかされてたんでしょ?もの凄い悪霊を祓ったことがあるみたいな感じの怖い話とかってないですか?」

A「確かにお祓いもしてたけど、まず何かに憑かれてる人が来ること自体がないからね。」

俺「どういうことです?」

A「普通は、今日の君みたいに悪いことが起きませんようにってことで厄除けに来るんだよ。何かに憑かれてるようだから祓って欲しいと言って来る人自体がすごく稀だし、しかもそう言ってる人も大体が思い込みの場合が多いからね。知ってる限りではそういう人が来たことは一度も無いよ。本家には極稀に来るらしいけど。」

俺「思い込みですか・・・じゃあ、怖い話ってそうそうあるわけじゃないんですね。」

A「お祓いじゃないけど、ホントに怖い体験をしたのは1回だけだね。」

俺「え? あるんですか。どんな幽霊だったんです?」

A「いやいや、所謂幽霊なんぞだったら大して怖くないよ。天神様や大魔縁とも呼ばれた崇徳天皇。首塚で有名な将門公みたいに神格化までされてるような例外はあるけど。」

俺「それじゃあ、一体何が相手だったんですか?」

A「ここではちょっとあれだから、場所を変えようか。」

そう言って、Aさんは神社の境内から少し外れた山際のベンチまで俺を連れてきた。

A「これは社務所でペラペラ話すのにはちょっと抵抗がある話でね。」

そう言ってAさんは、その時の事を話してくれた。

10年以上前の、Aさんが20代でまだ神職の資格を取ったばかりの頃の話。

その頃のAさんは今みたいに穏やかでなく、本家の人達をあまりよく思っていなかったらしい。

俺の住んでる辺りは田舎だから、本家と分家の間に封建時代の主従のような絶対的な力関係があるのかと思いきやそうではなく、本家と分家の当主同士が気軽に飲みに行くなんていう、普通に仲の良い親戚関係だそうだ。

(旧家にありがちな政治権力とも距離を置いている一族なので、金や権力についての揉め事が無いのも一因だろうとはAさんの談)

本家の持つ特権は、あくまでも本家が祀る神社の祭祀に限られているとの事。

じゃあなんでその頃のAさんは、本家の人達をよく思っていなかったのか?

分家と言うだけで、根拠の無い劣等感があり、若さゆえに反発せずにはいられなかったこともあるが、Aさん達分家の人達と、その本家の人達の間にある差が原因にあったという。

Aさん達分家も本家も、長い歴史を持つ神職の一族。

(本家に至っては、記録にある部分だけでも1300年以上続いてる家系。某国風土記の平安期写本にも本家に関連する記載があるらしい)

で、余所から嫁または婿に来た人以外は全員、昔からの巫覡の体質を受け継いでおり、成り行きこの世のものならざるものが視えるそうだ。

そこで分家と本家の差の話が出てくるんだが、本家の人達は本家が祀る神社の神様からの加護を受けており、当主と次期当主に至っては、特に強力に護られているらしく、身の回りに霊とか、その他のよくないモノが全く近づけないため、まったく目にしなくなる程だそうだ。

それ故、子供の頃からそういうものを時々に目にしており、苦労して対処を身につけたAさんからすれば、生まれた家が本家と言うだけで無条件に守られていることに納得がいかなかったらしい。

本家の本家たる所以は、本家が祀る神様との関係にある。

本家はある神社(X神社とする)を管理しており、分家も神社(Y神社とする)を管理する立場にあるが、X神社とY神社とは別にもう一つ神社(Z神社とする)が存在する。

Z神社は過去に一度失われ、大正期に再建されたという歴史があり、そのZ神社こそが本家が代々祀ってきた神社で、その祭祀を取り仕切る事こそが本家の役割。

そんな時、本家の当主と次代当主だけで代々行ってきた当主継承に関わる祭祀を、10歳になる長女が失敗するという事件が起こった。

(本家は血統を存続させることに重きを置いているので、昔から男女の区別なく長子が家を継いでおり、女性神職が許されなかった時代は、婿を取ってX神社の建前上の神職として据え、本家が代々祀るZ神社の祭祀は女性当主が行っていたらしい。)

長い本家の歴史上、次代当主候補が神様にそっぽを向かれたことはほとんど起こったことはなく、急遽、本家と分家の神職を一同に集めて追加で祭祀が行われることになったそうだ。

その時Aさんはチャンスだと思った。

長女が失敗すれば、次は長男の順となるが、次代当主確定の祭祀は、当主の子息が10歳になった時に行われるので、長男が10歳となる来年までは次期当主候補は不在となる。

この隙に、自分を神様に認めさせることがが出来るのではないかと厨二病全開なことを考えた。

Z神社で祭祀を行う際に読み上げられる祝詞には、本家と分家に伝わるZ神社の主祭神のみに奉上するための独自の定型化された長い祝詞がある。

祝詞の内容自体は分家の人間も知らされてはいるが、本家の当主と次期当主以外は、当主が許可した時以外、その祝詞を読み上げることは禁じられている。

ここに、本家が特別に神様に守られている秘密があるのではないかと考えたAさんは、それを追加の祭祀の際に、読み上げて神様の気を惹こうと考えた。

しかし当時のAさんは冷静さを失っており、『祝詞自体は知っておく必要があるが、当主の許可なしに読み上げてはならない』という習わしの意味することを良く考えていなかった。

そして追加祭祀の当日、一般的な祝詞の奉上が終わり、例の祝詞を当主が読み上げ始めたのにあわせて、こっそりと小さな声で祝詞を読み上げ始めた。

それから暫くした頃、突然視界が一瞬グニャリと歪んで、意識が遠のくのを感じ、薄暗い拝殿の鏡の上に幻のように黒い直径1M程の球体上のものが浮かんでいるのが見えた。

その球体には、人口衛星の周回軌道のように幾重もの注連縄が巻かれている。

物凄い怖気を全身に感じながらも、

「ほう、これが本家の祀ってる神様の御姿か」

などとAさんが思っていると、球体の注連縄の隙間から黒い液体のようなものが漏れ出し、それが影のように延びてきて、取りすがろうと当主に近づき始めた。

その影は当主から一定の距離のところでまで近づいたところで、まるでそこに見えない壁があるかのように全く近づけないようになった。

その時Aさんは気付いてしまった。

あれが何故当主に近づくことが出来ないのか?

当主には邪なものは近づけない・・・

つまり、あれは神様などではない。

そのことに気付いた時、我が身に感じていた怖気が急に強くなった気がした。

全身の毛が逆立つかのような悪寒が体を駆け抜ける。

「見つかった!」

Aさんが確信したと同時に、影のようなモノがゆるゆるとこちらに向かって動き始めた。

それはゆっくりとだが、確実にこちらに近づいて来る。

しばらくして、その影が膝先にまでに到達した瞬間、目の前が真っ暗になった。

それと同時に両目、両耳、鼻に激痛が走った。

赤熱するまで熱した鉄の棒を両目、両耳、鼻の穴に突き刺したらかくやというほどの痛みだった。

多分あまりの激痛に絶叫していた。

その激痛のさなか、他の感覚など消し飛んでいるはずが、触覚などないはずの脳を直接手でまさぐられるかのような感覚があり、それと呼応するかのように、引付けでも起こしたように体が痙攣しているのを感じたという。

激痛に苛まれ、徐々に薄らぐ意識の中で、声が聞こえた。

「イッポン・・・ツナガッタ」

次にAさんが気付いた時には、夜は明けており、右腕にギプスをされ病院のベッドにいた。

医者からは、石段から足を踏み外して転んで右腕を骨折し、その拍子に頭も打ったらしいので一応CTを撮ったが、問題ないようなので退院しても大丈夫だと言われたので、Aさんは仕事が終る時間を見計らって、本家の当主の下に顛末を聞きにいった。

その時に聞いた話を、かいつまんで書くと以下のようなものだった。

・第三者から見たとき自分の身に何が起こっていたのか?

Aが突然絶叫して、正座した姿勢のまま痙攣を始め、暫くして右腕を上げたかと思ったら、右腕だけを無茶苦茶に振り回し始めた。

その後、右腕の動きがピタリと止んだと思ったら、関節の可動する反対方向に腕が捻じ曲がって嫌な音を立ててへし折れ、また全身痙攣を始めた。

その間、当主は祝詞を読みあげ続けており、祝詞を読み終わると同時にAの痙攣は止まった。

その後、Aさんの父に抱えられるように病院に運ばれた。

・黒い球体のようなものは何だったのか?

本家が代々封じ続けているもの。

正体はわからないが、それは非常に力を持っており、その力の一端に触れた者は、治癒不可能な心身喪失状態に陥る。

それは祟り神などと違って対象は無差別で、ただそこに存在するというだけで人を狂わせる。

影響範囲は広範で、少なくともZ神社がある町を中心にその周囲の町にも及ぶ。

・いつからそれを封じているのか?

少なくとも1500年以上前から封じている。

元々、人の住めない呪われた土地とされていたが、良質の鉱山があることがわかり、時の朝廷は土地開発を進めようとしたが例の被害が多発した。

そこで中央から力を持った一柱の神と巫覡の一族を遣わし、それを封じることにした。

(そんな土地さっさと放棄して別の鉱山を探せば良いのにと思うかもしれないが、その当時製銅、製鉄というものは、国力を左右するほど重要で、しかもその土地はとある理由で好立地だったため、放棄するにはあまりに惜しかったからだと聞いている)

封を担った巫覡の一族はその土地に腰を落ち着け、代々その封を司るようになった。

時は流れてZ神社は戦乱で消失し、その後長きに渡って本家が封じるための儀式だけは行っていたが、長らく神社が無かったことの影響か、大正期に被害が出るようになった。

そこZ神社を再建して封を強化して今に至っている。

・それは完全に封印は出来るか?

わからないが、儀式をした際に黒い球状のものに巻かれた注連縄が増えることがある。

その注連縄が完全に球を覆い隠した時に、封印は完全なものになるかも知れない。

・ここ以外にもそういう土地はあるのか?

極少数だろうが存在すると思われる。

次代が國學院に通ってた頃、自分と似たように強力に加護を受けていると思しき生徒がいたそうだ。

多分、その生徒の一族も何か厄介なものを封じるために、そのような加護を受けているのではないか?

・何故自分は心身喪失状態にならずに済んだのか?

分家とは言え一族の血を引いていることによるものか、それとも100年以上ぶりに触れた人間ということで、人について何かを探ろうとして壊れないように細心の注意を払って扱ってくれただけなのかわからない。

運が良かったとしか言えない。

Aさんは、一通り話し終えてから、

「とまぁこんな眉唾な話だから信じる必要はないけど、ただそれのせいで知っての通り私の右腕は今も動かないままなんだ。」

「骨折自体はとうの昔に完治して未だにリハビリを続けてるが、全く動く気配がない。思うにアレが『イッポン・・・ツナガッタ』って言ったのは、腕一本繋がったって言う意味だったんだろうと思う。だからこの右腕を動かすことができるのはアレだけで、もし、仮に封が弱まることがあれば私の意志とは無関係に動きだすんじゃないかと思ってる。」

「本家の人たちが封を強化してるから、私が生きてる間には間違ってもそんなことは起きないと思うけどね。」

と笑いながら話していた。

この話を聞いて、自分には完全に眉唾とも思えない心当たりがあったりする。

例の本家の人間なんだが、一族皆、人格者ばかりだからというのもあるんだろうが、地元では物凄く信頼されており、何があっても失礼をしてはいけないと婆さんから良く聞かされていた。

小学校の時、それぞれ別の友人グループだったんで接点はなかったが、本家の長男(Bとする)と同級生だった。

6年生の時、余所から転校してきたヤツ(Cとする)がいたんだが、そいつがことあるごとにBに突っかかるようになったらしい。

Bは性格が良くて周りからの人気があったから(顔がイケメンの部類だったのもあるかも知れないが)それが気に食わなかったのかも知れない。

ある時、Cの家に雷が落ちて全焼し、両親は無事だったが、Cが亡くなったと全校集会で校長から聞かされた。

後で知ったんだが、その前日、CはBを痛めつけようとして階段から突き落としたらしいんだな。

武道の心得もあってか、幸いBは軽い捻挫程度で済んだらしい。

そのCが住んでいた借家の場所はウチからチャリで3分程度の近所なんだが、そこの地主の爺さんが雷の話を聞いてビビったらしく、駐車場とかにもせず、今も更地のままなんだ。

このBの話を思い出した時、心底寒気がした。

雷は偶然だと思いたいが・・・

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お祓いのバイト

えーと、自己紹介から始めると、30代前半の未来に絶望している派遣社員です。

東京にずっと住んでます。

独身で、両親は死んで大分経ちます。。

妹と弟がいますが、もう既に離れて暮らしてます。

奇妙なのか分からないですが、僕の知り合いにお祓いの仕事をしている人がいる。

知り合いというか、最寄り駅の近くの立ち飲みで出会ったおばさん。

それが今から数えて7年前ぐらいかなと思う。

引越したての頃で、仕事帰りに一緒に飲む友達がいなくて、気軽に入れそうな立ち飲み屋で飲むようになったのがきっかけ。

で、そのおばさん、俺を見るなり、

「ギャーッ」

って叫び始めた。

実を言うと、結構慣れっこで、よく知らない人から叫ばれます。

叫ぶならいいんだけど、

「あの人、怖いんです。捕まえてください。」

って通報されたこともあった。

なんで、『またかよ…』みたいな気持ちで無視してた。

けど、そのおばさんは今までの人と違って話しかけてきた。

「どこからきた?」

「仕事はなにしてる?」

「両親はなにしている?」

なんて、まるで尋問のように矢継ぎ早に質問された。

まぁ、こんなおばさんの友達も良いかと思って質問に答えていた。

それからしばらくして、そのおばさんが、

「今度、あたしの店に来い!」

って言いながら、お店のカード?みたいなものを渡された。

まぁ、興味ないし、凄い上から目線で話されてムカツイていたから、直ぐ様、そのカードは捨てた。

ところが後日。

その立ち飲み屋でまた会ってしまい、その時は無理やり店に連れてかれた。

というのも、おばさん以外に痩せたおじさんと若い女がいて、ちょっと逃げれなかった。

ちなみにおばさんは『トキコさん』、若い女は『ケイちゃん』、おじさんは『ヤスオさん』て言う。

『絶対、宗教の勧誘だよなぁ…』そう思いながら、その3人の後ろに付いていった。

店に行くまで誰も喋らないもんだから、ケイちゃんに話しかけてみたら、

「ヒィぃいー。」

とか言って、会話ができなかった。

それからヤスオさんに、

「ごめんな、君が怖いんだ。」

なんて言われたから、なんか凄い悲しかったの覚えている。

で、店に着いた訳だが、だたの占いの館だった。

宗教の勧誘じゃなさそうだなと思い、占いでもしてくれんのかなと期待していた。

で、店に着くなりトキコさんが、

「あんた、私たちと仕事しないか?」

って言われた。

「はぁ?」

と言いながら聞いていたら、なんでもその3人はお祓いを仕事にしているらしく、僕に、ついてきて欲しいと言われた。

その当時は一応、ある会社の社員だったので、

「仕事あるんで、無理ですよ。」

と断った。

でも、そのおばさんは引き下がらず、

「土日のバイトだと思ってやってくれないか?」

と頼まれた。

まぁ幽霊とか神様とかまるで信じないので、まぁいいかなぐらいでOKした。

早速、次の週末にお呼びがかかり、○○区のある一軒家に連れてかれた。

家からそう遠くは無いので、自転車で待ち合わせ場所に行ったら、

「徒歩で来い、アホ」

と怒られた。

渋々、近くに自転車を止めて、その一軒家に入っていった。

入った途端、トキコさんと連れのケイちゃん(おじさんは都合が悪くて来なかった。)が、

「あぁ、いますね、いますね。」

とか言い始めて、しかめっ面になった。

ただ、僕には何がいるかも分からなかった。

普通の一軒家だと思った。

居間には中年夫婦がいて、僕らにお茶やらお菓子を出してくれた。

笑ってたけど、かなり引き攣ってたの覚えている。

しばらくすると、トキコさんが、

「早速、始めましょう。その部屋に案内してください。」

と言って立ち上がった。

何が始まるのか、よく分からないまま、二階に案内された。

階段上がると左右に二部屋あって、その右側の部屋の扉の前で止まった。

扉にはアルファベットで『TAKAO』って書いてあった。

「ここです。」

そう中年夫婦に言われた。

トキコさんとケイちゃんは、背負っていたリュックサックの中から塩を出して、ペットボトルの水を振りかけ、両手にまぶした。

何が始まるんだろう?とか思いながら、俺も両手に塩まぶした方が良いのか聞いてみると、

「お前には必要ない。ただ言われた通りにしろ。」

と言われた。

中年夫婦には何があっても、絶対に取り乱すなと注意をしたトキコさんは、扉を開け中に入った。

僕も後ろに続こうとした時、中から黒い影がトキコさんに覆いかぶさってきた。

TAKAOという中学生ぐらいの少年だったが、異様に眼がギラギラして歯をむき出しにして、

「ガジャガジャ、ガジャー!」

みたいな事、叫んでた。

トキコさんの首に噛み付こうとしていたので、流石に僕もこりゃイカンと思い、少年を引き剥がそうと彼に近寄った。

TAKAOくんは僕の顔を見るなり震え始め、ベッドの隅っこに逃げて身を丸めた。

「体のどこでもいいから、引っ叩け!」

トキコさんにそう怒鳴られた。

なので、悪いなぁとは思いながら、丸まってる背中を引っ叩いた。

そんなに強く叩いた覚えは無かったが、

「うぎゃー!」

とか言って、TAKAOくんは泡吹いて倒れた。

倒れているTAKAOくんを介抱しようと両親が近寄る。

『そんな強く叩いてないよな』とか思いながら横目で、トキコさんを見ていると、

「これでお祓いは終りました、もう大丈夫。」

そう言った。

たしかそう言ったと思う。

それから、TAKAO君をベッドに寝かして、中年夫婦にお礼を言われながら帰った。

なんでもTAKAO君が大人しく寝たのは、半年振りだったそうだ。

ちなみにTAKAOくんの部屋は物凄い事になっていた。

物は多分危ないから片付けたのだと思うけど、壁という壁に切り傷や穴があった。

帰り道、あまりに意味がわからなかったので、トキコさんに、

「意味がわかりません。」

と素直に言って、色々聞いてみた。

可哀想に、一緒に来ていたケイちゃんは帰り道の途中でゲロを吐いていた。

「あんたは相当なモノをもってるね。」

トキコさんにそう言われた。

初めはちんちんの事かと思ったが、そうではないらしい。

どうやら、言い方は宗教やお祓いの流派によって変わるらしいが、『守護霊』や『気』なんて言われてるものらしい。

そんなに凄いのかと思って、

「そんなに良いんですか?」

と尋ね返すと、

「いや、逆だ。最悪なんだよ、あんたの持ってるもの。」

そう言われた。

最悪じゃダメじゃないか、と思ってたので、

「最悪って、それじゃ駄目じゃないですか。」

と言うと、

「普通はな。だけどお前は普通じゃない。なんでそれで生きてられるのかおかしい。」

トキコさんに言わせると、俺のもってる『モノ』ってのが、相当ひどいらしい。

実はケイちゃんがゲロを吐いたのも、俺がTAKAO君を叩いたときに祟られたらしい。

まぁ色々聞きたかったのだが、あまりにケイちゃんが気分が悪くなってしまったので、トキコさんとケイちゃんは先にタクシーで帰った。

僕は止めておいた自転車で帰った。

トキコさんのお店でなんと10万円ももらえた。

本当はいくらもらってんだろう?そう思ったけど、中学生の背中引っ叩いて10万円ならいいや、と思って喜んでた。

実を言うと、それから少しして僕は留学した。

その当時の仕事よりも、やりたい事があったのが理由だ。

まぁ結局3年前に戻ってきたものの、仕事がなくキャリアも無く、派遣をやりながら生活している。

3年前に帰国した後に、トキコさんに会った時に言われたのが、

「あんたのそれ、かなり逞しくなってるよ。」

そう言われニヤっと笑われた。

なんでも僕の『モノ』は異国の地でセイリョク(精力、生力?どちらかわかりません。)を養ったらしく、以前よりパワーアップしているらしい。

一応、真面目に勉強してただけなんですけどね。

それから3年、お祓いのバイトをしている。

ただ、トキコさんやケイちゃん、ヤスオさんは、いわゆる霊感的なものがあるらしく、色々見えるらしい。

ところが僕は本当に何も見えない。

なので、今でも引っ叩いたり、話しかけたりするだけである。

残念なのは、今でもケイちゃんは仕事が終わるとゲロを吐く。

僕のせいなので、いつも申し訳ない気持ちで一杯になる。

で、明日も実は一個仕事が入り、終わったら風俗行こうと考えてます。

あ、ちなみにドMです。

【 極秘裏ワザ 】

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2回目の今日

俺がK津園で経験した話。

K津好きなら誰でも知ってる高給店。

俺なんかだと、本当に偶にしか行けないような店なんだが、そこに新人が入ってネットで結構評判良かったから行ってみた。

評判通り可愛い娘で、とても礼儀正しい。

した後に、煙草を吸おうと自分のセカンドバックに手を伸ばすと、

「煙草持ってないんでしょ?ハイライトなら買い置きがあるよ」

と姫が。

そんなはずは無い。

朝、新品を開けて、まだ5~6本しか吸ってないはず。

でも、いくら探しても見つからない。

それより、何で俺がハイライトを吸ってることを知ってるんだ?

「さっきノワール(喫茶店:仮名)でコーヒー飲んだとき、忘れて来たんでしょ。はい、どうぞ」

そう言って新品のハイライトを開け、火をつけて俺に渡した。

「ねえ、何でそんなことがわかるの?ひょっとして、さっきノワールにいたの?」

「ううん(笑)貴方がコーヒー飲んでた頃は、出勤途中でタクシーの中だったよ。」

「え?え?え?」

「うふふ」

少し気味が悪いなと思ったけど、姫が余りにもあどけなく可愛いので、取り敢えず俺も笑って、

「へえ、凄いなぁ」

などと言って、その場ではそれ以上追求しなかった。

それからしばらくして、

「もうすぐ○○さんに、いいことがあるよ」

と姫が。

程なくして俺の携帯にメールが、

「やりましたね、3000円付きましたよ。俺も○○さんに乗ったんで一気に取り返しました」

中京競馬場に行ってた同僚からだった。

メインレースだけ頼んで買ってもらった馬券が当たったのだ。

「ねっ(笑)」

背筋が一気に寒くなった。

「ね、ねえ、な、なんで?」

「内緒っ」

「ちょっと~、マジ怖いんだけど」

「どーしよっかな、私の話聞いても引かないでね、お客さん良い人だから教えてあげるわ。実は私、2回目の今日なの」

「はぁ???」

「私、死んだの」

「そして生き返ったの」

「私、今日の夜、帰り道で車に跳ねられて死ぬの」

おいおい、この娘は何を言ってるんだ?・・・

薬とかなのか?

「そうしたらね、凄く広いお花畑にいるの。でもお花は白黒なの。私はどうしたらいいのかわからずウロウロしていると、一箇所凄く明るくなってる場所があって、そっちに近づこうとしたの。」

「でも、何だかそこに行っちゃいけないような気がして、やっぱり引き返したの。」

「でも、その明るい場所は、どんどん大きくなって私を飲み込もうとしてね。私、走って逃げて、頑張って走って、そうしたらなんか落とし穴みたいのに落ちたの」

『お客さん、よく眠ってましたね、付きましたよ』

「わたし、マンションからいつもタクシーでお店に来るのね。朝弱いから寝ちゃうこと多いんだけど、運転手さんに起こされて、あれ?夢だったのかな?でも凄いリアルだったなと思ったんだけど、お店始まっちゃうから、急いで控え室に行って準備したの。」

「それで最初のお客さんで貴方が入ってきたのよ。私にとっての昨日と同じ貴方が。」

全身鳥肌が立ち、震えている俺の手を姫は握ってくれた。

「でも、私、今回が初めてじゃないの。子供の頃、まだ保育園に入る前なんだけど、同じような経験があるの。」

そこまで姫が話した所で、タイマーが鳴った。

「あ、時間だね、シャワーは石鹸無しの方がいいんだよね。奥さん臭いに敏感だから(笑)」

もう何が何だかわからなくなって、俺も笑うしか無い。

顔は思いっきり引き攣ってたが。

最後に、

「また来てね」

と言い、Dキスした姫の舌は、何だか冷たい感じがした。

「え、でも今日の帰りに・・・車に・・・」

「今日は、ココの近くのホテルに泊まることにするから、きっと大丈夫だよ」

それからしばらくの間、毎日ネットで彼女のシフトをチェックした。

時々、予約する振りをして、電話で在籍の確認もした。

「お客さん。あの娘人気あるんで、すぐ予約埋まってしまうんですよ」

元気に働いてるようで安心した。

俺が行ってから3週間程で、理由はわからないが彼女は退店した。

もう何年も前の話。

何だか誰にも話しちゃいけない気がしたから、ずっと俺の心の中にしまっておいた話。

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ここはどこなんだろう

風邪ひいてて寒気がするので、大久保にある病院に行くため西武新宿線のつり革につかまってた。

で、あたまがぐわんぐわんと痛くて、目を閉じて眉間にしわ寄せて耐えてた。

そこで記憶が途絶えて、気がついたら夕方で、あたりは見知らぬ景色。

買ったことない服着てて、髪染めたこともなかったのに茶髪になってた。

パニクって近くのラーメン屋に入って、ここどこと聞いた。

大阪市の福島駅の近くで、時間が一年近く経ってた。

ケータイの種類が変わってた。

アドレス帳には、「ま」とか「ひ」とか、一文字の名前で電話番号が10程度あったけど、知り合いや実家の電話番号がない。

俺はなぜだか知らないがその知らない電話番号が恐ろしくて、川に捨てた。

警察から実家に連絡した。

向こうもパニクってた。

俺に捜索願が出てた。

とにかく帰って、今もまだ月一で精神病院に通ってる。

仕事は元の会社には帰れないみたいだったので、今は派遣やってる。