「 不思議体験 」 一覧
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銭湯の鏡
貧乏なアパート暮らしの女です。
風呂が無いので銭湯に行ってる。
いつもの店が休みだったから、ちょっと遠くの銭湯に行った。
浴室には数人のオバちゃんがいて、楽しそうに話し合ってた。
洗髪してると視線を感じる。
洗髪を終えてから顔を上げたら、自分の前の鏡に知らないお婆さんの横顔が映ってた。
横目で、こっちを見てた。(洗髪台の正面が鏡になってる。普通なら自分の正面顔が映るはず)
死ぬほどビックリした。
ビックリしすぎると悲鳴も出せないと初めて知った。
思わず後ろを振り向いたら、誰もいなかった。
というか浴室に誰もいなかった。
さっきまで喋りまくってたオバちゃんたちは、みんな更衣室に移動してた。
もう1度鏡を見たらちゃんと自分の顔が映ったけど、絶対に見間違えなんかじゃないよ。
体格もポーズも違うし、白髪だったし、目が合ったし。
あわてて私も浴室から出た。
洗えたのは頭だけで体は洗えなかったけど、それどころじゃない。
怖いよ。
あのお婆さん誰?
もう二度と、あの銭湯には行かない。
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子供の頃の思い出
大学の同期に女の子が一人いた。
同じサークルで、結構仲よくやってた。
俺の幼なじみの友人とも気があって、三人でいることが多かった。
それで、何の時だったか、幼なじみと二人で昔の思い出話になったことがあった。
色々話してるうちに、もう一人、仲の良かった誰かがいたことを思い出した。
でも名前も顔も思い出せなくて、それでもいっしょに遊んだ記憶はあった。
なんだっけ、だれだっけなーって話をしてたところにその女の子がきた。
何の話?なんて聞かれて幼なじみと昔話しててーって経緯を話したんだよ。
それで幼なじみが橋から川に飛び込んでさー、とか。
下り坂で自転車のブレーキ壊れて田圃に飛び込んでさー、とか。
その子も、にこにこしながら聞いてたんだけど、段々怪訝な顔してきてさ。
それで、そう言えばあの時も、もう一人いたよなーって言ったら
「それ多分わたしだ…」って。
びっくりして話を聞いたらその子で間違いなかった。
遊んだ思い出のエピソードも、駄菓子屋で一緒に食ったじゃがいもばっかのおでんの値段も間違いなかった。
間違いなかったんだけど、その子はずっと東北に住んでて、俺らはずっと中部に住んでた。
それぞれ大学で初めて地元を離れた。
俺らはどこで出会ってどこで遊んでたんだろうか。
よく分からないけど今も仲は良いです。
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お菓子が大好き
私は今年の春から進学し、北海道で一人暮らしをしてる。
家賃3万1千円築2年。
しかし部屋には小さな女の子が住みついていた。
背は7、8センチ。
住み始めてすぐ、テーブルのおやつが一口かじられていたり、チョコが一個食べられたりと続き、私は菓子類を一切買わなくなった。
ある朝方、窓枠に赤いスカートの女の子が座っていた。
おかしたべたい と聞こえた。
実家から来た○の月を冷蔵庫から出して、果物ナイフでチビチビに切りスプーンで出すと食べた。
これ好き、すごく好き。と聞こえた。
今は普通にお菓子を買い、萩の月が届いたら 窓枠に置くようになった。
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合宿所での事
学校所有の宿舎があって、1年の時はそこへ水泳合宿に行く。
入り口は勿論、守衛室があるし、裏にある海岸は学校のプライベートビーチになってて部外者は入れない。
で、俺のクラスが寝泊まりする部屋が、その海岸に出る扉(勝手口みたいな木の戸)と一番近くて中庭に面したところだった。
クラス40人が襖を外して一繋がりになった和室で蚊帳下げて寝ることになるんで、晩飯後はまあめっちゃ騒がしかった。
部屋にはテレビもなく22時に消灯したけど、携帯とか懐中電灯つけて雑談やらゲームやらしてて、0時過ぎたくらいかな?
突然意味もなくシーンとする瞬間ってみんな経験したことあると思うんだけど、それが来た。
で、それと同時に中庭側の障子の外に人集りの影が映った。
見回りの先生とかじゃなくて、明らかに隊列を組んでザッザッザッと海岸への扉に進んでいく影。
クラスメイトがざわつき始めて、これは俺だけが見てるものじゃないって分かった。
そしたら今度は、障子の外が下からオレンジ色に明るく照らされた。
同じくらいのタイミングで、「ウーーーーー」ってサイレンみたいな音もしてきた。
この頃には周りがみんな軽くパニックみたいになってて、でも誰一人として障子を開けようとはしなかった。
どれくらい時間が経ったのかは分からないけど、気付いたら人影も明かりも音もなくなってた。
夢から覚めたみたいにもう何も感じなかったし、他の奴らが騒いでなければ夢にしか思えなかっただろうなと。
騒ぎ声で見回りの先生が部屋に来て、一部が今あったことを報告。
先生たちによるドッキリか?とも疑った。
でも後から来た他の先生もさっぱり分からんって反応で、結局集団ヒステリーで片付けられた。
学校は古くて、敷地内では兵隊の幽霊がいるなんて話は生徒の中では有名だったから、思い込みでそんなものを見たんだろうか。
でもクラス全員っていうのは珍しいよなあ、と未だに同窓会では話題にのぼる。
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古い宿
昭和50年頃、アタシは旅役者で全国をドサ周りしてたの。
んで、某県に行った時のことさ。
いつも木賃宿(って分かる?)的な安宿に泊まるんだけど、この時の宿は気持ち悪かった。
戦災から焼け残ったボロボロの木造平屋で、廊下の両側に畳二畳の小部屋がズラーッと並んでる。
聞いたところでは、昭和34年の売春禁止法施行前まで売春宿(いわゆる赤線)として使われていたらしい。
ここで一人一部屋ずつ入れられて寝たんだけど……
廊下の片側の部屋に泊まった人間全員(マジ全員!)が金縛りに遭って、16,7の田舎臭い女の子が血まみれの大きな舌を首もとまで垂らしてる夢に一晩中うなされた。
しかも、その子はケーロケロと蛙みたいな声を出し続けてるんだって。
アタシは被害に遭わなかったから、翌朝その話を聞いて不覚にも笑っちゃった。
でも、被害者の中で一人だけ、蛙語を聞き分けた東北出身の女性がいた。
彼女いわく、
「あれは蛙の鳴きマネじゃない。ケェシテケロ(=帰してくれ)って言ってたんだよ」
朝、窓を開けたら裏庭に大きな柿の木があったから
「あの柿の木で首を吊ったんだと思う」
と言っていた。
彼女の話がホントなら、柿の木側の部屋に泊まった人間だけがやられたんだろうね。
戦後は東北から売られてくる娘がまだいたんだねーと、みんなで何となくしんみりしちゃったことを覚えてる。