「 田舎の怖い話 」 一覧
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自殺名所のつり橋
俺の住んでる県は、オカルト的な場所が少ないんだけど、俺はそう言うの大好きだから県内のオカルトポイントは、ほぼ制覇してる。
これはそのうちの一つ、自殺の名所のつり橋での話。
昼間でも見える人は見えるってほど有名なポイントなんだけど、昼間はそのつり橋の真下で芋煮会(知ってる?)とか、バーベキューやってるような場所なので夜に行って来た。
そのときの同行者は、彼女(現妻・見える人)と俺(全く見えない人)、友達カップル×2(見えるかは不明)の6人。
つり橋の上を車で通って何も見えなかったから、そのまま車を路肩に止めて川原に降りる事になった。
流石に川原に降りると、9月でも少し肌寒い。
彼女があまり拒否反応を示さないから、ヤバイ霊は居ないんだろうと安心して周囲を探検しまくってたんだけど、急に喫煙室のエアカーテンをくぐったような、飛行機のドアが開いたときのような、そんな空気の層を突っ切ったような感覚があって、ちょっとふらついた。
隣を見ると、彼女が腕にしがみついて硬直してる。
ちょっと離れた所に居る友達も、みんな動きを止めてキョトンとしてた。
もう川原に降りてから20分~30分くらい経ってるし、ちょっとヤバイかも知れないと思い、
「そろそろ帰るべ」
と促して車に戻って、またつり橋を渡って帰って来たんだけど、つり橋の上でまた空気の層を突っ切った感じがした。
山を降りたファミレスで青い顔をしている彼女に、
「大丈夫か?」
と聞くと黙ってうなづいていたが、怖い話に飢えてる皆で根掘り葉掘り聞くと、さっきのつり橋で何があったかを話してくれた。
曰く、しばらくは周りに数人の霊がジッとしているだけで何とも無かったんだけど、友達の一人がその霊にすっかり重なってしまった途端、周り中の霊が一気に俺らの周りに密集してきたそうだ。
通勤電車並の密着度で、数十の霊が俺らを取り囲んだ状態。
彼女はもう動けずに居たんだけど、霊に鈍感な俺らが「帰るべ」とか、のんきな事言って逃げ出してくれたので助かったと。
橋の上まで車の周囲を囲んでくっついてきた霊も、橋の真ん中を越えたあたりで、排水溝に吸い込まれる水みたいに橋の下へ消えて行ったそうだ。
わりと大勢で楽しく話をしながら、死にたくなるようなネガった気持ちも持たずに居たから何も無かったけど、これが1人で居たらやばかったかもって言ってた。
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山の女
変な話かもしれないが、不思議な体験をしたので一応。
と言っても10年くらい前ですが・・・・
C学生の頃はラブホに行く金もなく、山で女の子と盛るのが日課になってました。
その山は、住宅街にぽつんとある比較的小さい山で、ドラえもんの裏山を思い浮かべてくれれば分かりやすいと思う。
まぁ今思えば近所の人が散歩代わりに使うこの山で、よくアンアンしてたとw
で、本題。
セ○クスの後、相手を家に帰してから、山頂のベンチで一人タバコを吸うのが楽しみでした。
この日も薄暮の中、タバコの煙を見つめていました。
自分が座ってるベンチの後ろは林になっているのですが、突然その林からガサ…ガサ…となにやら物音。
『やべぇ熊か!』と思って先輩譲りの警棒をスタンバイしてたのですが、姿を現したのは女の子。
年は高校生くらい、痩せ型、目が細い。
今までC学生の女しか知らなかった自分にとっては『大人の女』。
でもその時は予想外の出来事と、薄暮の不気味さで少しビビッてましたw
街灯の光、6月の生ぬるい風、ジーと言う虫の声、そして真っ暗な林から出てきた女。
逃げたくて、でも何故か逃げられなくて、沈黙のまま女と向かい合っていたら
「ねぇ・・・いつもここに来てるよね。女の子と。」
と、先に声をかけられました。
あぁ見られてたのか、と恐怖より恥ずかしさが先にたち、
「そ、、そうだよ」
としか返せませんでした。
その後も少し会話をして分かったこと。
・その子は同じC学の1つ上の学年らしい(見たことはないが)
・俺と女の行為を見ていた
・自分の家が近いので、よくこの山には遊びに来る
そして打ち解けて話せるようになったときに、
「ねぇ・・・うち親、夜遅くまでいないんだけど、来る?」
今なら美人局かなんかと警戒して断るのですが、
当時は『ヤレル!!』しか頭になく二つ返事でOKを出しました。
馬鹿ですこいつ。
階段ではなく、山の傾斜を降りていった方が早いらしく、外灯も何もない真っ暗な林の傾斜の中を二人で降りていきました。
真っ暗な斜面を木の感覚を頼りに小刻みに降りて行くと、そこには小さな村?がありました。
トリックに出てくるような、あんな感じの村。
あれ?こんな所あったっけ?
昔からこの山で遊んでるのに、こんな所初めてだ。
そう考えたのも一瞬、頭の中は女の喘ぎ顔の事でいっぱいでした。
「ここがうち」
と、指をさしたのは明らかに小さい小屋。
不自然なほどタテに細長い。
中に入ると、4畳半くらいでやけに天井が高い真っ白な部屋が一室。
その家(小屋?)の中で床に座りながら女と少し話してたんですが、なぜか圧迫感に似た違和感が強く、もうここにいたくない!
すぐヤってすぐ帰るだな・・・と思い、女の方を向いたら女の目の黒目が異様にでかく、しかも黒目が左右違う方向を向いていることに気がつき、あまりの不自然さと驚きで、
「ひぁ!!」
と、声を出してしまいました。
普通は、二つの黒目は同じ方向を向いてるじゃないですか。
でもこの子の目は、右目の黒目は右の目尻に、左の黒目は左の目尻にそれぞれくっついていて、しかもそれが目の半分を占めていました。
女の細い目の半分が黒目になっていたんでびっくりしました。
そしてその目に驚いて、
「ひぁっ」
と声を出した瞬間、女の細い目がガン!と見開き、
「フヒー!!フヒー!!」
と、甲高い声で叫び(鳴き)はじめました。
その瞬間、部屋の四方をドンドンドンドン!!と何人もが叩く音と、外から数人の男の声で『♪ドンドンドンドンドンドンドンドンドン』と歌う声が聞こえました。
中で目玉ひん剥いて、奇声を発しながら自分のまわりをぴょんぴょん跳ねる女と四方の壁を叩く音、そして変なリズムで歌われる『♪ドンドンドン』と言う歌。
もう怖くて怖くて泣きながら叫んでしまいました。
ドアを開けたら奴ら(歌い手)が襲ってくる、窓を突き破って奇襲を・・・とまわりを見渡すも、窓がない!!!
と、うろたえてたら、
「アベ?アベアベ?」
と、叫びながら女が首にまとわりついてきました。
もう必死で女を振り払い、外にダッシュ!
そして家の方を見ると、数十人の小さな男が家を囲んで叩いてました。
そして家から出る自分を見つけるや否や、男達は、
「ア゙~」
と叫び、両手を前に出してこっちに向かって手を振りはじめたのを見て更に怖くなり、真っ暗な闇の中を駆け抜け傾斜を上り、気がつくといつもの山頂に。
まぁそこからは普通に帰れましたが、帰って鏡を見た後の自分の泥々の顔に笑った思い出があります。
この話をしても『嘘だろ』としか言われずに、悔しい思いをしたので誰にも話してませんがw
てか、自分でも夢だと思っている。
思いたい。
後日、ツレ5人くらいでその辺を散策したのだが、何も変わった村もなく。
あれはなんだったのでしょう。
ちなみにその件から、その山をラブホ代わりにするのはやめました。
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手
俺の嫁は俗に言う『みえる人』で、俺は『0感』。
嫁がまだ恋人の頃、見える人である事を俺に明かし、その後しばらくの間『あそこに女の人が居る』だの『今、足だけが階段を昇っていった』だの言い出し、俺が本気で遺憾の意を表明した時から、一切それ系の実況をしなくなった。
山菜採りが好きな俺と嫁は、いつもの如く山道を車で通行していた。
しがない自営業の俺等は、昨今の不況の折に開き直って、平日の昼間に日がな半日程度、山菜採りに精を出していた。
比較的心地よい疲れに伴い、今日の夕飯は何かな、天婦羅はもう暫く要らないなとか思いながらボケっと運転していた夕刻。
自分の車の前を走る、シルバーの軽。
暑い日だったので、前を走る軽の助手席の窓から手が生えて見える。
運転者は老齢であろう。
決して生き急いでないのが見て取れる様に40k巡航である。
ここまではよくある光景で、次のストレートで追い越しかけるかと思っていた。
その矢先、嫌な事に気付いて、しまったと思った。
その軽の助手席の窓から『手』が生えて見える。
『腕』じゃなく『手』。
指まではっきりと認識できる。
巨大な手が、前を走る軽の窓枠をがっちりと掴んでいる。
嫁はともかく、今までそんなものが見えた事のない俺は総毛だった。
すぐさま嫁に視線を移すと、以前はこういう不可思議な現象に対してもヘラヘラ笑いながら俺に実況していた嫁が、目を見開いて硬直している。
常時見えている人間にとっても只事では無い事例であろう事が、0感の俺にも容易に推測できた。
そして、その『手』はこちらの熱視線に気付く風でもなく、新たな行動をし始めたのだ。
その『手』は、掴んでいた窓枠を離し、にゅーっと虚空に伸び始めた。
その手首には、タイの踊り子の様な金色の腕輪が付いている。
肘が車外に出ても伸び続け、肩の手前位まで車外に出した。
とんでもないでかさ。
そして、やにわに自分が乗っている軽の天井を叩き始めたのだ。
「ぼん、ぼん、ばん、ばーん、ばん、ばーん」
という音が、すぐ後ろを走る俺等にも聞こえてくる。
そのときの俺はというと、目の前で起こっている映像に脳の認識がついていかず、ただそのままぼーっと軽を追従していた。
「停めて!!!」
嫁の悲鳴交じりの声が、俺に急ブレーキをかけさせた。
前輪が悲鳴を上げ、前のめりのGを受けながら俺の車は急停止した。
今まで眼前にあった、自分の車の天井を叩き続ける巨大な手を生やした軽はゆっくりと遠ざかって行き、その先のカーブから見えなくなった。
夕暮れに立ち尽くす俺の車。
嫁は頭を抱え、小刻みに震えている様にも見える。
俺も小便がちびりそうだったが、努めてなるべく明るく嫁にまくしたてた。
「なんだよ?お前いっつも笑って解説してたじゃん。あんなのいつも見てたんだろ?今回、俺も見えたけど、すげえなあれは。」
暫くの静寂の後、嫁が口を開いた。
「・・・・・あんなの、初めてだよ。・・・・アンタは、気付かなかったろうけど。」
「なにがよ?」
「あの腕。邪悪な感じがしない。かなり上位の存在だよ。」
「・・・じゃあ良い霊とか、神様じゃね?運転手が悪い奴で、なんかそんなんじゃないの?」
「そんな訳無い、絶対におかしい。あんな上位の存在が、あんな行動するわけがない。やっている事は悪霊そのもの。だけどあの腕は光に包まれてた。分からない。自分の無知が怖い。・・・怖い。頭がおかしくなりそう・・・」
嫁の話を聞いていると、俺も頭がおかしくなりそうだったので、わざわざUターンしてその現場から離れ、実家には帰らずに居酒屋に直行、二人で浴びるほど酒を呑んで近くのビジホで一泊した。
あの手は一体何だったのか、俺は未だに全く理解できない。
ただ、あんな体験はこれっきりにしたいもんだと、心底思った。
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川の事故
夏になると一生を通して思い出す話。
この時期になると全国では川で亡くなった方々のニュースが流れる。
しかしながら、全員が全員川の流れに飲まれていったのだろうか。
もちろん川の流れの速さというのは、舐めてかかるととんでもない事になる。
だが、一日に7人以上が行方不明や重体、死亡にまで至るのは本当に事故だけが原因なのか。
事故に遭われた方や、その家族には申し訳ないが、俺はおかしいと思う。
理由は、姉が川で亡くなった出来事。
それも目の前で。
小学生だった姉と俺と友人達はBBQをする為に川原に来てた。
大人達は料理をしたり、組み立て式の椅子やテーブルを出したりと、急がしく動き回っていた。
その真横で姉が流されていき、そのまま帰らぬ人となった。
俺達の目の前で姉は連れていかれた。
『連れて逝かれた』のだ。
大人達がBBQをする為に選らんだ場所は、キャンプ地などでは無く、車乗り入れ禁止の場所だった。
立ち入り禁止区域でもあった。
この事は、今でも両親の心に悔いを残し続けてる。
毎年の夏の命日には花束を持ち、家族で川原の近くまで向かう。
決まって姉の好きだった片白草(半夏生・ハンゲショウ)とオレンジジュースとチョコレートを、その川原の近くにある祠にお供えする為に向かうのだ。
その場所には今でも看板が建ってある。
『事故多数』の文字には姉の事故も含まれている事になるので、ここに来る度に一生涯悔いは残り続ける。
庭に咲く半夏生を好きだった姉が、夏に生涯を閉じるという皮肉にも似た文字の類似が俺は嫌いだ。
周りの葉の白くなっている様が、どことなく死んだ姉の白さを思い起こす。
あの忌々しい場所に近づきたく無いのもあり、俺はあまり行く事に気が進まない。
しかし、命日には必ず家族揃ってそこへ向かうことになっている。
長々と書いたが本題に移ります。
小学生の夏。
姉は『何者』かに連れて逝かれた。
それは子供心に残った姉との死別から生まれた混乱や、トラウマだとずっと思っていたのだが、決まって夢に出てくる最後の姉の姿には何者かが覆いかぶさり、連れて行くのだ。
それは肌が灰色の人だった。
俺や友人達と幾分も変わらぬ場所で遊んでいた、姉だけが流されるという不可思議な出来事の中に急に現れる。
手が届く範囲にいた姉が、一瞬で目の前から消えた。
一言も言葉を発する事も無く。
一瞬の場面が、夢では引き伸ばされたかのように長い。
俺が一瞬、目を親達に向け、直ぐに姉を見た瞬間、姉の真後ろで口をあけた灰色の人が姉の顔を鷲掴みにし、驚きの声を発する事を防ぐかのように姉の口に髪を押入れて、一気に連れて逝くのだ。
その灰色の人は、何故か口の中だけ真っ赤に染色されたかの様に夢の中では映った。
この夢は親には勿論、喋った事は無い。
言えるものでもない。
そして、昨年。
命日の日に、半夏生とオレンジジュースとチョコレートを持って川原に向かった。
何時の頃からかある祠には、俺達家族以外にも同じ様な遺族が居るのか、ビールだったりジュースだったり人形だったり花だったりが置かれていた。
お供えを置き参拝をした後、両親は一年間に何があったかを、そこに姉が居るかのように話かける。
そして何度も謝る。
俺はその日も、いままでと同じ様に、父と母の後ろで川原を見つめて待っていた。
ただその日は違った。
「いやああ、いやああああだあああ。」
と泣き叫ぶ声が聞こえたかと思うと、川の真ん中に灰色の人が立っていた。
横を向いたソレは、
「いやあああ、いやああああ。」
と口を開けて叫びながら、川下をずっと見ながら何者かに下から引っ張られ消えていった。
何がおきているのか理解出来ない俺の目の前に、更に別の灰色の人が川の底から這い出てくる。
そして同じ方向を向き、口を開けて叫び、引き摺られていった。
それは何人も出て来ては叫び、引き摺り込まれた。
何人目かの叫び声の後に川から出てきたソレは他のとは違い、こちらを向いたまま這い上がってきた。
「いやああああああ、いやああああああああ。」
と、必死で叫びながら口を開けてこちらをずっと見てる。
そして両親を見てさらに大きな声で、
「いやああああああ、いやあああああ。」
と叫ぶ。
姉だ!と思った俺は、助けなきゃと泣きじゃくりながら走ってた。
何故姉と思ったのか、助けなきゃと思ったのかは今でもわからない。
泣きながら姉の元に近づく俺の前で、新しい灰色の人が浮かび上がってきて姉を下へ引き摺りこもうとしていた。
姉は、
「いやあああああ、いやああああああ。」
と必死に抗おうと体を振り回す。
もう少しで手が届くと思った瞬間に、俺は両親から川原に引き摺り戻された。
「だずげてーよー。しぬのいやあああああ」
と聞こえた俺は、必死で抗った。
「何をしているの!!」
という母の泣き声に掻き消される様に、目の前の灰色の人や姉は消えていた。
母や父には見えてなかったらしく、散々説教をされた。
そして姉を救えなかったのは、俺のせいでは無いと諭された。
俺は泣きながら目の前で起きた光景を親に言いかけて、止めた。
俺の両親は、姉が死んでからずっと後悔の日々を送ってる。
そんな両親に何と説明すればいいのか。
姉が苦しんでるとでも言うのか。
そんな事言えない。
その場はただただ、ごめんとだけしか言えなかった。
何があったの?と両親が聞いてこなかったのは、俺がトラウマをもっていると思ったからだろう。
数日後、俺は一人でその場所に向かった。
ただ幾ら待ってもそこには何も現れなかった。
俺は灰色の姉が現れた場所に、近くの神社で買ってきた護符や寺で買ってきた護摩を投げ入れた。
どうか姉が苦しんでいませんようにと。
それ以外に方法が分からなかった。
ただ、その日に姉が笑っている夢を見た。
夜中に飛び起きて泣きじゃくった。
どうしても川の事故は本人の不注意だけの問題じゃないと思う。
事故の遺族であり、目の前で起きた事に対するトラウマからこの様な事を思うのかも知れない。
だけど、昔から日本には川や沼に住む河童だったり、幽霊だったりとかが怪談として語られるように、何か得体の知れない事やモノがいると思う。
来週が命日だから、雨が降ってなければ川原に参拝しに行く事になる。
ここに居る皆も、川などに行くときには気をつけてほしい。
自然に含まれるのは、川の流れや風だけでは無くて別のモノも居るように気がする。
気の付けようが無いものかも知れないが、立ち入りを禁止してるような場所というのは、何か曰くがあるのではないかと思う。
長くなって申し訳ない。
とりあえず、夏が近づいてはしゃぐのはわかるけども、事故が起き易い場所にはあまり行くなよ。
親は一生苦しむぞ。
兄弟姉妹も然り。
それと川に住む妖怪で調べたところ、川男という妖怪が色や姿形が俺の見たものと類似していた。
ただ、その妖怪は悪さをするような奴じゃないらしい。
それに俺の見た姉も灰色の人になっていたから違うと思う。
個人的な見解としては、親や俺の思念の具現化の様な気がしてる。
俺や両親が、その場に張り付けていたのでは無いかと何となく思った。
今は成仏してると思うようにしてる。
もう苦しんでないことを本当に願うよ。
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貸し別荘
数年前の話を。
この話は一応口止めされている内容の為、具体的な場所などは書けません。
具体的な部分は殆ど省くかボカしているので、それでもいいという方だけお読みください。
高校3年の夏休みの事。
俺と友人5人は、受験勉強でかなり疲れが溜まっていた事や、高校最後の夏休みということもあって、どこかへ旅行に行こうと計画を立てた。
ただし、もう夏休みに突入していたため、観光地はどこもキャンセル待ちの様な状態で、宿泊地を探すのにかなり苦労した。
そして、やっとの事で近畿地方の高原?のような観光地のペンションにまだ空きがあるという情報をネットでみつけ、まあ騒いでも苦情が無いならどこでもいいかと即決でそこに決めた。
旅行当日、早朝に出発し、昼前に現地に到着したのだが、そこで少し問題が起きてしまった。
どうやら旅行代理店とペンションの管理組合?との間で伝達ミスがあったらしく、俺達は今日から2泊3日で予約していたにも関わらず、ペンションの方には宿泊予定が今日から3日後と伝わっていて、今は満室で1つも空いていないと言い出した。
俺達は、ここまで来てそれはないだろうと文句をいうと、最初はふもとの町にあるホテルなどを紹介されたが、俺達は、ただ観光に来たわけでは無く、夜中に騒いでも苦情が来ないような場所が条件だったため、かなり食い下がった。
するとペンションの人が、
「じゃあ、ちょっと待っていて欲しい」
と、携帯でどこかへ電話をし始めた。
電話の内容は良く解らなかったが、かなりモメていたようで、そのまま15分ほど電話していたが、どうやら話が纏まったようで、
「近場に貸し別荘があるので、そこでどうだろうか?料金はこちらの不手際なのでペンションの代金の3割引で良い」
と言って来た。
俺達は、まぁそれならと納得したが、そこから少し雲行きが怪しくなった。
どうも、その貸し別荘は長い事使われていなかったらしく、準備や掃除に少し時間がかかるらしい。
その間、俺達には交通費と水族館の割引券を渡すので、そこで時間を潰して夕方にまた来て欲しいとの事だった。
その水族館はペンションのある場所からかなり離れていた。
というか県外の某大都市にある水族館で、俺達が見終わって戻ってくる頃には午後6時近くになっていた。
俺達は、
「こんなに準備に時間かかるって、どれだけ放置されていたんだよ」
「廃墟とかじゃねーよな?」
「なんか怪しいんだけど」
などと不安を口にしながら管理事務所に向かった。
ペンションに戻ってくると、先程とは違うおじさんが待っており、準備が出来たので案内すると、歩いて15分ほど離れた森の中にある別荘へ案内された。
そこは完全に森の中で周囲には何も無く、余程大声で騒いでも、まず苦情が来ないような場所だった。
そのおじさんが言うには、暫らく使われていなかったので手間取ったが、電気も水道もガスもちゃんと通っているし、携帯は通じないが管理小屋への直通の電話もある。
何の問題も無いとしきりに説明をし始めた。
俺達は、何かおじさんに必死さが感じられてかなり不安になってきたが、今更どうしようもないので別荘の中に入った。
別荘は外観もそうだったが、洋風のかなり古い造りで、築30年か40年くらい経っていそうな建物で、インテリアもそれに見合ってかなり古臭い。
ただし、使われていなかったという割りにかなり小奇麗だった。
今から思うと、小奇麗と言うより『人が使った痕跡が殆ど無い』といった方が良い感じだったが。
一通り別荘内の説明を聞き、建物も2階建てで広いし、まんざらでもないなと荷物を降ろし、夕飯のバーベキューの準備をしようとしていると、おじさんが去り際におかしな事を言い出した。
ここは夜中に熊が出る可能性があるので、深夜の外出は控えて欲しいと言う。
俺達は何故か、かなり念入りに深夜の外出をしない事を約束させられた。
ペンションの密集地から15分しか離れていないこんな場所に??と皆疑問に思ったが、まぁ恐らくガキが夜中に出歩いて問題をおこしたり、事故に合うと面倒なので怖がらせるような事を言って脅かしているのだろうと納得した。
一日目はそんな感じで過ぎ、晩飯を食った後で夜中の森の中を適当に散策し、花火をしたりゲームをしたりと遊んで深夜2時頃に寝た。
その日は特におかしな事は無かったのだが、次の日、友達の1人が変な事を言っていた。
そいつは夜中に小便がしたくなり、トイレに行くと、外から太鼓の音が聞こえてきたらしい。
俺達は何かの聞き間違いだろうと言ってそのまま流し、本人も気のせいだろうと納得したが、その日の夜に事件が起きた。
その日、晩飯の焼肉を食い、腹もいっぱいになったし、する事が無かった俺達は、昼間見つけた林道へ肝試しに行く事にした。
肝試し中は何事も無く、俺達はつまんねーなと別荘に戻ると、入り口に20代後半くらい?の男が立っていて、ドアノブを握っている。
時間は夜10時頃。
こんな時間に管理人の人が来るとも思えず、『空き巣か?』と俺達が近付いていったのだが、その男はドアノブを握ったまま、こちらを振り向こうともしない。
足音も声も聞こえるのだから、泥棒や不審者の類なら逃げそうな物だが、そいつは10mくらいまで近付いても微動だにしない。
何か気持ち悪かったが、メンバーでリーダー格の友達と俺が、
「おっさん何してんだよ」
と、言いながら近付いていき、男の目の前まで来たのだが、それでも動く気配が無い。
埒があかないので友達が、
「聞こえてないのかよ!」
と、そいつの腕を引っ張った。
その瞬間、俺と友達は、
「うわあああああああああ」
と、大声を上げて後ろへ飛びのいた。
何故飛びのいたかというと、そいつの腕を友達がつかんで引っ張った時、その腕の手首から10cmくらいの場所が、まるでゴムのようにグニャッと関節ではない所から曲がったためだった。
何事かと他の友達が近付いてきたのだが、その時になって男はこちらへ振り向いた。
見た目は普通なのだが、目はどこを見ているのか良く解らない風で焦点が定まっておらず、口をだらんと開けて涎をたらし、その時になって気付いたのだが服装もかなりボロボロで、どう見ても普通の人には見えない。
俺達が呆然と男を見ていると、男は俺達がまるで見えていないかのように、そのままフラフラと森の中へ去って行ってしまった。
俺達はあまりの出来事に動揺し、暫らくその場から動けなかった。
しかし、そのままそこにいるわけにもいかず、俺達はふと我に帰り、大急ぎで別荘内に入りドアの鍵を閉めると、全員で室内の全てのドアの鍵をチェックし、それが終るとリビングに集まった。
そして皆、
「なんだよあれ…」
「幽霊か?」
「でも触れたぞ」
「あの腕の曲がり方ありえないだろ…」
などとパニックになって興奮気味に話していると、今度は外から、
…ドン …ドン …ドン
と微かに太鼓の音?が聞こえて来た。
その音はゆっくりとだがこちらへ近付いてきているようで、俺達はみな押し黙り、聞き耳を立てて音のする方に集中していた。
音が庭辺りにまで近付いた頃、不安が最高潮に達した俺は我慢できなくなり、リビングのカーテンを開けて外を見た。
すると…
暗がりで良く見えないが、何か大きな球状のものが転がりながらこちらへ近付いてくるのが見えた。
太鼓のような音はその球状の物体からしているらしく、…ドンと音がすると転がり、また…ドンと音がすると止まる。
それを繰り返しながら、大通りから別荘へ向かう道をゆっくりとこちらへ向かってきている。
大きさは5~6mくらいあったと思う。
他の友達も、窓を見たまま動かない俺が気になったらしく、全員窓の側へやってきて『それ』を見ていた。
暫らく皆黙ってその様子を見ていたのだが、暗がりで良く解らないので正体がつかめず、誰も一言も話さず、ずっと『それ』を凝視していた。
するとかなり近付いた頃、『それ』は玄関近くまでやってきたため、玄関に付いている防犯用のライトが点灯した。
その瞬間俺は、
「なんだよあれ!洒落になんねーよ!」
と、慌ててカーテンを閉めた。
カーテンを閉める前、一瞬ライトに照らされた『それ』は、なんと表現したら良いのか…
『無数の人の塊』とでも言うような物体だった。
老若男女様々な人が、さっきの男と同じように口を開け涎をたらし、どこも見ていないような焦点の合っていない目の状態で、関節などとは関係なく体と体が絡みつき、何十人もの人が一つの『塊』となって転がっていたのだった。
俺以外も全員、その『人の塊』を見たため、あまりの恐怖に何も言えず、俺達はリビングの端の方に一塊になり、ガタガタと震えながら、
「どうなってんだよ…」
「なんだよこれ…」
などと不安を口にしていた。
暫らくすると、太鼓の音のようなドンという音が聞こえなくなった。
『それ』が、いなくなったのかどうか分からない俺達は、そのままリビングの端でじっとしていると今度は玄関の方から、
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
と、激しくドアを叩く音が聞こえてきた。
俺は恐怖と不安でパニック状態で耳を塞ぎ、他の奴も皆耳を塞ぎ、必死で今の事態に耐えていたのだが、暫らくすると今度は建物中のあちこちから、
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
と、窓と言わず壁と言わず、あちこちを大勢の人が滅茶苦茶に叩く音が聞こえてきた。
耐えられなくなった友達が、
「電話しよう、管理事務所直通の電話あっただろ、あれで助けを呼ぼう」
と言った。
俺達はハッとその事に気付き、急いで玄関側にある電話に急いだ。
俺が電話を取り『直通』と書かれたボタンを押すと、2、3コールの後、別荘まで案内してくれたおじさんが電話に出た。
おじさんに必死で事情を話すと、おじさんが独り言のように、
「…まさか、まだ出るなんて…」
と呟いた後、
「説明は後回しで、リビングに神棚があるね?そこにお札とセロテープが入っているから、そのお札をドアに貼って待っていなさい」
と言った。
俺達は意味が解らなかったが他に解決策も無く、とにかくリビングへ戻り、神棚を探す事にした。
神棚は部屋の端の方の天井近くにあった。
椅子を使って中を覗き込むと、確かにお札とセロテープが入っている。
俺達は急いでそれを出すと、玄関とリビングの入り口のドアと窓にお札を貼った。
窓にお札を貼る時、なるべく外を見ないようにしていたのが、一瞬だけ外を見てしまった。
すると、青白い腕が数本、窓をガンガン叩くのが見え、更に腕の向こうに、どう考えても腕の位置とは不自然な形で人の顔が見えた。
その顔は、やはり他と同じように焦点が合っていない目でだらんと口を開けていた。
俺は外で『それ』がどんな状態になっているのか、恐ろしくて考える事も出来なかった。
何時間くらい経ってからだろうか、外が明るくなり始めた頃、壁やドアや窓を叩く音は聞こえなくなった。
それでもまだ『それ』がいるかもしれないと思うと動けず、そのままじっとしていると、遠くから車がこっちへ向かってくる音がし始めた。
車が庭に止まると、数人の足音が聞こえてきて、ドアのチャイムを押す音と、
「おーい、大丈夫か?」
と、声が聞こえてきた。
俺達は、
「助かった…」
と、大急ぎで外に出ると、最初にここの手配をした人と案内した人、その他に3人のおじさんが来ていた。
手配をした人と案内をしてくれた人がすまなそうに、
「本当にすまない、もう大丈夫だと思っていた。事情を説明するからとにかく荷物をまとめてきてくれ、ゴミとかはそのままでいいから」
と言い、俺達はその通りにして別荘を出た。
車に乗せられ、俺達は神社へ案内された。
一緒に来ていた3人の人は、その神社の関係者らしい。
俺達はホッとして緊張感が解けたのと、助かったと言う気持ちもあったが、それ以上に怒りが湧いてきて、
「何であんな場所へ泊めたんだよ!」
と怒った。
すると神社の神主さんらしき人が、こんな話をし始めた。
あそこは昭和40年代までただの森だったのだが、観光地開発をするということで40年代の終わり頃に人の手が入った。
それで順調に開発が進んでいたのだが、あの別荘を建てた昭和50年代前半頃からおかしな事が起こり始めたとか。
別荘が原因なのか、開発そのものが原因なのかは今でも解らないらしいが、とにかくあの太鼓の音や人の塊がその頃から出没し始め、最初の別荘の持ち主と、その次の持ち主はあそこに宿泊中に失踪してしまったらしい。
それで売りに出され、今の管理組合が所有する貸し別荘となったのだが、それからも何度もあの人の塊は現れ、被害者は出なかったが、目撃者から散々苦情を言われたので、神主さんが10年ほど前に御払いをしたとか。
それ以後、貸し出されてはいなかったが、掃除や整備に来た人達は、誰も『それ』を見かけていなかったため、もう大丈夫だろうということで俺達に貸したらしい。
その結果が昨晩の事件。
俺達は完全に巻き込まれた被害者なので、散々文句を言うと、管理人の人がここまでの交通費と食費はこちらが持つ事、別荘のレンタル費用もいらないし、次に旅行をする時は大幅に割引するように代理店に口利きもする、だから本当に申し訳ないけど、この事は黙っていて欲しいと頭を下げてお願いしてきた。
俺達は何か言いくるめられた気もするが、警察にこんな話をしてもどうせ信じてもらえないだろうからと、渋々その話を飲むことにした。
上に書いたように、そういう事情なので詳しい地名などは書けません。
ちなみに、去年割引してくれるというので旅行代理店に電話した時に聞いたのだが、あの別荘は取り壊され、今は更地になっているらしい。