「 謎 」 一覧
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ベランダの人
ベランダに干してあった私の下着を盗んだヤツが捕まった。
おまわりさんの話では、その下着泥は高校生で
「ベランダに立っていた髪の長い女の人に憧れていたので、つい盗んでしまった」
と、話したとのこと。
しかし、うちに住んでいるのはショートヘアの私と夫だけ。
高校生が見間違えたのだろうと思っていたが、後日きたセールスマンがチャイムに応えてドアを開けた私を見て
「あれ、いまベランダにいた髪の長い人が奥さんかと思った」
と言ったのでほんのり怖くなったよ。
おまけに上の階に引っ越してきた人と道端で話してたら、その人の子供がうちのベランダを指差して
「お姉さん、泣いてるよ?」
と言った。
見てみたが誰もいなかった。
いったいなにがいるんだ、うちのベランダ!
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元民家の倉庫
もう10年以上前、大学時代のこと。
実家の近所にある小さい運送会社で荷分けやトラック助手のバイトをしていた。
現場を仕切っていたのは、社長の息子で2つ年上の若旦那。
んで、バイト仲間に同じく大学生のAくんがいた。
Aくんは自他共に認めるアホキャラだったが、明るくて元気で同僚としてはすごくイイ奴だった。
会社は町外れの国道沿いにあったけど、隣町の商店街の近くにも倉庫があった。
倉庫といっても普通の二階建ての民家。
一階が広い土間になってて、何年か前までそこで商売をしていたらしいが、借金とかで店を畳んで住人はいなくなり、その運送会社が借金の片?として手に入れたんだって。
ただ、すぐに使う当てもなかったので、とりあえず空き家のままになっていた。
んであるとき、若旦那が嬉しそうに俺に写真を見せてきた。
「見てみ?あの倉庫で写真撮ったらコレよ!」
見ると薄暗い民家の中を撮った写真なんだが、どの写真にも白っぽい丸い光みたいなのとか、白い煙みたいなのがバンバン写っていた。
「うわっこれ心霊写真ですか?」
「凄いやろー。あの家は出るんだよ」
人がバーンと写ってるわけじゃないので、俺は(レンズのゴミだったりして)と半信半疑だったけど、しばらくして若旦那がその家に荷物を入れて倉庫として使うことにした。
若旦那と俺とAくんが移動する荷物をトラックに積んでいると、普段あまり現場に来ない社長が俺たちを呼んで言った。
「中崎(タカサキ?だったかもしれん)の家に行くんやろ。二階には上がんなよ」
何のこっちゃと思ったけど、倉庫として使うのは一階の土間だけと聞いていたし、若旦那も、あーはいはいと聞き流していたから気にしなかった。
そして三人でトラックに乗ってバカ話をしながらその家に到着。
正面のシャッターを開ける。
あまり空気の入れ替えもしないみたいで、中はかび臭かった。
シャッターを開けると4畳半ぐらいの土間があり、その奥は茶の間と台所。
その奥に風呂と便所(らしい)。
向かって左側に、二階へ上がる細い木の階段があった。
奥行きのある家だったから、二階に二間ぐらいあるんだろうなーとか考えていた。
土間を片付けて荷物を積み込み終わると、若旦那がニヤニヤしながら言った。
「・・・なあ、二階行ってみようや」
俺はその日、バイトが終わったら友人と呑む約束があったので早く帰りたかったが、Aくんは
「行っちゃいますかぁ?」
と、ノリノリ。
俺もイヤとはいえず付き合うことになった。
靴を脱いで、若旦那、俺、Aくんの順で階段を上がっていく。
やたらにきしむ木の階段を上がると薄暗い廊下になっていて、右側に部屋が三つ。
入り口はフスマだった。
一番手前の部屋から開けていった。
一番手前(土間の真上)は三畳ぐらいの物置。
真ん中と一番奥の部屋は6畳間で、焼けた畳があるだけでカラッポだった。
白状すれば俺も『社長がああ言ってたし、何かあるかも』とちょっとだけスリルを楽しんでいたが、ぶっちゃけ何も起きなかった。
Aくんは
「何もないすねー」
とか言いながら携帯で写真撮りまくってた。
「まーこんなもんだ。帰るべ」
と若旦那を先頭に俺、Aくんの順番で階段を降りた。
トントントンと俺は土間まで降りて、Aくんを振り返った。
俺に続いて階段の一番下まで降りてきたAくんの様子がおかしい。
いつもニヤニヤしてるような顔なのに、こわばった真顔で、なんでか歯だけゾロっと剥き出して、じっと立っている。
そして、ビデオの逆再生みたいに、今降りてきた階段をこっちを向いたままで後ろ向きに登りはじめた。
俺も若旦那も冗談か?と思ったが、Aくんはそのまま階段をトン、トン、トン、トンと後ろ向きに登っていく。
進行方向を確認したりもせず、顔はずーっとこっちを向いたまま。
真顔で歯を剥きだした顔のまんまだ。
Aくんは後ろ向きのまま階段を上がり切ると、後ろ向きのまま廊下の奥に後ずさって行って見えなくなった。
なんか只事ではないと感じて、俺と若旦那は階段を駆け上がった。
Aくんは廊下の、一番奥の部屋の襖の前で正座していた。
上半身がふらーりふらーり揺れていて、顔は泣き笑いというか、ホロ酔いで気持ちよくなった人みたいに目をつぶってへらへら笑っていた。
「おいA!」
と、何度呼びかけても反応なし。
そして、Aくんの前のフスマがゆっくり開いた。
Aくんが正座したままフスマの方へ少しずつ動き始めた。
Aくんの体はそのまま部屋の中に入っていって、フスマがまたゆっくり閉まった。
血相を変えた若旦那が俺を押しのけて廊下を走り、フスマをバーンと開けた。
俺も追いかけた。
Aくんはからっぽの部屋の真ん中で、身体を伸ばした気をつけの状態でうつ伏せに横たわっていた。
二人でAくんを引きずり起こした。
そのとき、Aくんがずっと何かを呟いているのに気づいた。
俺にはこう聞こえた。
「さしあげますから。さしあげますから。さしあげますから。さしあげますから。さしあげますから」
そのままAくんを外に引きずっていったが、いくら呼びかけても正気に戻らない。
若旦那が携帯で救急車を呼んだ。
尻つぼみで申し訳ないけど、その後のことは断片的にしか知らない。
その後、若旦那は社長にムチャクチャに怒られてた。
事務所の衝立の向こうで話の内容はよく聞こえなかったけど、他の社員さんがポロッと漏らしたのは、借金で店を畳む時にあの家で人死にがあったらしい。
もちろん社長は知っていて、何かの手続き(お祓い?)を済ませて『きれいになったら取り壊すつもりだった』とか何とか。
それ以上の詳しいことは、若旦那の口からも聞かせてもらえなかった。
Aくんは精神的な発作だろうということで入院した。
何度か見舞いに行くうちにお母さんから話を聞いた。
Aくんは夜になると毎晩ベッドから出て、床でうつ伏せに横になっているとのことだった。
あのときAくんが写真を撮っていた携帯の画像を見せてもらえないかとお願いしてみたが、
「もうお寺さんに預けてありますので」
とのことで、写っていたものは見せてはもらえなかった。
しばらくして俺は大学が忙しくなってバイトを辞め、やがてAくんの見舞いにも行かなくなってしまった。
最後に行った時はもうAくんはガリガリに痩せていたが、それでも毎晩床にうつ伏せに寝ていたそうだ。
軽はずみにあんなことをするんじゃなかった。
俺にもなにか起きるかも…とビビっていた時期もあったが、結局、俺の身の上には何も起きなかった。
今のところはね。
バイトしていた運送会社はまだあるが、こないだ帰省した時に前を通りかかったら、あの倉庫はなくなって駐車場になっていた。
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詮索するな
うちの会社の周りの山について書きます。@四国
うちの会社は、市街地から2~3km入った山中にありますが、普通に敷地内で、猿が追いかけっこをしたり、親子鹿が横切って行ったりする、秘境みたいな所です。
市街地から近いせいか、老夫婦とか、カップルとか散策がてら軽装備で山に入っていきます。
しかしこの山には、林業従事者や地元の人達は絶対にその先は1~2人では入って行かないポイントがあるのですが、散策に来てる人達は知りませんから、平気で入っていきます。
そして、1・2年に一回は遭難者がでます。
うちの会社はそこに施設を構えて5年くらいたちますが、2・3年前の遭難者が何回か見つかったりしました。
普通、注意書きとか、立て看板とか設置するだろと思っていましたが、ここ周辺には一切ないのです。
うちの会社の入り口のすぐ前に、山へ入る道の一つがあるので、昨年の地区会で注意看板を出そうと提案した時も許可がもらえませんでした。
そして、帰り道で地区長さんに言われました。
「余計な事はしないで欲しい。これ以上山の事を詮索するな」と。
去年は、老夫婦の遭難者が見つかりました。
2年前の不明者で、地方版に小さく出ました。
(かなり珍しい。普通はでません)
そして夏、今年もボチボチ川遊びや、トレッキングに来られる人達が見られるようになりました。
皆さん無事にお帰りになって下さいね。
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配達先のおばあさん
あれは俺が小学校四年生のときでした。
当時、俺は朝刊の新聞配達をしていました。
その中の一軒に、毎朝玄関先を掃除しているお婆さんがいました。
そのお婆さんは毎朝、俺が
「お早よう御座居ます」
と言うと、
「ご苦労さん」
と言って、ヤクルトを二本あるうちの一本くれました。
俺はいつしかそれが楽しみになっていました。
そんなある日。
いつものようにお婆さんに挨拶すると、返事がありません。
いつもは笑顔で挨拶してくれるのに、振り向きもせずに黙って玄関先を掃除しているのです。
なんか変やなぁと思いながら、その日は残りの配達を済ませ帰りました。
そして次の日。
お婆さんの所に到着して挨拶をすると、又しても返事もなく掃除をしています。
それにポストには昨日の朝刊と夕刊が入ったままです。
その横のケースの上にはヤクルトが三本あります。
俺は黙って飲む訳にもいかず、その日も帰りました。
翌日、お婆さんの姿はありませんでした。
そして、その次の日も…
そして2~3日たったのですが、相変わらずお婆さんの姿はありません。
ポストは新聞で一杯になったので、玄関の扉の間から新聞を投函しました。
ヤクルトも数が増えていました。
旅行でも行ったんかなぁと、たいして気にも止めずに、その日も帰りました。
店に帰り、新聞屋の親父にその話をすると、
「あぁ、あの婆ちゃんヤクルトくれるやろ」
と言い、
「そー言えば、あの婆ちゃん一人暮らしやったはずやで。なんか心配やなぁ」
と言いました。
そして、
「とりあえず一回警察に連絡してみるわ」
と言ってましたので、俺は家に帰り学校へいきました。
その次の日、新聞屋に行き配達に出ようとすると、オヤジから
「○○君!あの婆さんの所はもう入れんでもいいよ」
って言われました。
なんでやろ?と思いながら配達を終え、店に戻るとオヤジが、
「あのなぁ~あの婆さん死んだんや。今、警察の方で調べてるけど、死後一週間から十日は経っとるみたいやなぁ」
と言いました。
そして、
「配達に行く前に言たら恐がるやろから、戻って来たら言うたろと思てたんや。まぁ、お前が姿を見た最後の二日間の婆さんは、お前に自分が死んでる事を教えたかったんやと思うでぇ」
と言われ、その瞬間は俺は意味が分からんかったんやけど、意味が分かった時、新聞配達を辞めたのはいうまでもありません。
あれから31年経った今でも、あの婆さんの姿は忘れられません。
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前世での恋人
去年から飲み友達になったMの話。
Mはその日、いつものようにチャリでバイト先の居酒屋へ向かっていた。
すると突然チャリ(後ろの荷台の部分)をひっぱられ、あわてて振り向くと、髪の長い痩せた女が必死に掴まってたんだと。
夜道なだけにすごく恐ろしくて固まってしまい、逃げる事も声を上げる事もできずにいると、女は、
「あぁ、あなたも感じているんですね。会いたかった」
たどたどしい日本語でそんな事を言われ、何がなんだか…
そして女は抱きつこうとしていたらしいのだが、Mには首を絞めようとしている様に見え、女を振り払い、ペダルを踏み、そのまま振り切った。
バイト中、もしかしてこの居酒屋に来るのでは!?とプルプル したが、バイトは無事終了。
そして家に帰ろうと裏口を出た所に、さっきの女が立ってる…
居酒屋へ逃げようとするM。
カバンを掴まれるM。
女は泣きながら、
「私はあなたに会いに台湾かた来ました。話だけでも聞いてください」
女が普通の人間だとわかり強気なり、これ以上付きまとわれても嫌なので話だけ聞いてやった。
女は台湾人の23歳で、スナックで仕送りをしながら暮らしている。
台湾の大地震で頭を打ち3日間意識不明になり、その間、彼女は夢の中で前世の自分を見たそうだ。
女は中世の貴族の娘で……なんかロミジュリみたいな感じ。
女はその夢を見た後、占い師に
「運命の人を探しに行け、きっとこの辺にいるよ」
と、地図を指して言ったらしい。(アバウトな占い師だ!)
それを鵜呑みにした女は、わざわざ日本まで来て運命の人を捜していた。
そして、それがMなんだってさ。
大変ベッタベタな話でまったく信じれないんだけど、妙なことにMの事を言い当てたりした。
たとえば右膝が悪いとか、背中に細長いアザがあること、子供の頃に弟が死んじゃったこと、犬がダメなことなど…当たっているのでした。
とりあえず連絡先を交換してその日は終わったが、それからが恐ろしい。
Mと台湾女の戦いが始まった。
アパートの鍵を隠してある場所がバレ、かってにスペアキーを作られ、怒り狂ったマサオは女に油を投げかけ、火をつけたライターを持って追いかけ回し、アパートから追い出した。
Mがいない間に部屋に侵入。(いると殴られるから)
料理を作ったり、部屋に自分の物を置いたり、歯ブラシが増えていたので、すべて捨ててやったら、Mの歯ブラシをこっそり使った形跡が…。
ブチギレしたMは、ダーツを女に投げて刺した。
奇声を上げながら走り回る男と女。
近所に通報されるが、当時ストーカー法が無かったため痴話げんか止まり。
さらに…玄関を開けると、モジモジしながら裸で立っている女。
そのまま巴投げで追い出すM。(元柔道部、かなり強い)
暑くて窓を開けて寝ていると窓から入って来て(2F)、気づけば添い寝をしている女。
髪をひっつかんで窓から背負い投げした。(この辺からノイローゼぎみ)
そのまま走り去ったらしい…
そして何故か侵入するたび陰毛を大量に落としていく女。
笑うとき台湾語なのか女の癖なのか、
「イイイイイイイイ」
って笑うそうだ。
次に会ったらビール瓶で殴ろうと思っていた頃、強制送還されたのかパタリと来なくなったとさ。