怖っ!怖っ?怖い話

いろんな怖い話を集めています。

*

「 不気味 」 一覧

no image

トンネルの女の子

ちょっと書かせてもらう。

怖かったんだ。

ほんとに怖かったんだ。

20数年生きてて、心霊現象なんてついぞお目にかかったことがなくてさ。

怖い話は好きだけど、そんなの実際にはありえないって否定派だった。

今は、肯定する気もないけど否定もできない。

もうわかんね。

親戚んち行く時に通る山道にトンネルがあるんだ。

いつもは車で行くし、その日も車で行った。

でさ、そのトンネル、いろんな噂があるんだよ。

色んなつってもまぁ、首なしライダーとかパタパタさんとか都市伝説系。

口裂け女が流行ったのと同時期に、誰かが流したウワサなんだろうね。

そんなくだらない噂でも、やっぱり聞いた後で丑三つ時に通るのは怖いけど。

それでも、その日は夜じゃなかったから、怖い思いもせず平気でトンネルを通過しようとしたんだ。

そしたらさ、トンネルの入り口に猫がいるの。

普通のノラ猫。

あのさ、猫、大好きなの俺。

写メ取らなきゃ!って端っこに車停車させて降りた。

やめときゃよかった……。

携帯カメラを猫に向けて写メろうとするんだけど、近づくと逃げてく。

当然トンネルの中へ。

ダーッって走ってじゃなく、トットットって。

そんで、こっち振り向いてまた停止。

まぁ、微妙な距離の取り方も猫ならよくあることだ。

その様が可愛いから、カメラ向けながら俺もまた追うわけよ。

タッタッタって。

トットット。

タッタッタ。

トトトトト。

タタタタタ。
タッタッタ。

あれ…?足音、ひとつ多くないか…?

って思ったのと、携帯の液晶に不審なものが映ったのは同時だった。

映ったっても目の前の光景じゃなく、トンネル内暗いからさ。

液晶に反射して俺の背後が映り込んだわけ。

居たんだよ。

女の子っぽいのが。

心拍数跳ね上がったけど気付かないふりして、

「にゃんこたんにゃんこたん待てよーwにゃんにゃんにゃん」

とか言いながら猫を追った。

女の子っぽいものも、ずっと猫と俺を追ってきてた、と思う。

あのとき程、トンネルがこんなに長いなんて思ったことはないなぁ。

そんで、たどりついた出口。

良かった、何事も無かった。

さて、車はトンネルの向こう側なわけだがどうしよう。

もうトンネルなんか通りたくない。

こっからは歩けない距離でもないし、ひとまず歩いて親戚んち行こう。

そんで奴の車で一緒に俺の車取りに来よう、なんてもうすっかり安心してた。

なんでトンネルを出ただけで安心しちゃったんだろ。

歩きだした俺は、十数メートル先を見てまた心拍数上がった。

いたよ……。

道の端っこ。

行動範囲トンネルだけじゃないのかよ……。

今度は姿形も視認できる。

多少ボヤけてたけど小学校高学年くらいの女の子だった。

躊躇したけど、行くも地獄戻るも地獄なら、行くしかなかろ?

腹決めて歩き出した。

まぁ、ひらけた道路よりトンネルで遭遇した方が怖いから、なるべく心臓にやさしい方選んだだけなんだけど。

っつうか、あの時は怖すぎるから考えないようにしてたけど、どう見ても俺を追ってきてるよね。

反対車線側を歩きつつも、少しずつ距離が縮まってって、とうとうそれを横切るぞって時。

好奇心に負けてチラ見しちゃったんだ。

そしたら女の子さ、頭怪我してた。

顔半分とコメカミ付近。

少なくとも見た目だけは酷い傷ではなかったから、なんとか心臓は持った。

交通事故かな、かわいそうだな。

なんて思ってさ。

その子がすごく可哀そうで、泣きたくなって……

俺はバカだった。

にわかに父性なんか出しちゃって、その子に近づいてったんだ。

そんで、その子の前でしゃがんで可哀そうにって泣いた。

聖人気取ってた。

ほんとバカだった。

その子、なんかよくわかんない形相になって、俺の顔に自分の顔近付けて、

「う゛ぉぁあ゛あぁあーーー」

そんとき、直感的に気付いた。

あ、ダメだ。

理屈通じない。

やばい、って。

感情とか読み取れないんだ。

っつうか、無いんだ多分。

最初から、近付いちゃいけないもんだったんだ。

後はもう振り向かずに親戚んちまで必死に走って逃げた。

もうトンネルには怖くて二度と近づきたくないから、帰りは遠回りで別の道を送ってもらった。

車は父ちゃんに取りに行ってもらった。

けど、今でもトンネルの側に放置してた車に乗るのが少し怖い。

no image

長い首

今でもわけがわからない。

4年前、前の職場で働いていたときの話。

季節は冬に入った頃、かなり寒くなってきた頃だった。

その時、少し難しい案件の見積依頼を受けていて、担当者である自分一人だけが夜まで事務所に残っていた。

見積書の提出期限が次の日の朝だったからだ。

深夜1時を廻った頃、ふと見たら窓ガラスに誰かが張り付いていた。

事務所はビルの8Fフロア。

窓ガラスはそいつの周辺だけ、真っ白に曇っていた。

両手を押し付けて、赤い服を着ているように見えた。

曇ったガラス越しでぼやけているので、詳しくはわからない。

押し付けた両手と同じ高さに顔があって、輪郭が白くぼやけていた。

張り付いている奴は荒い呼吸をしているらしく、口のある辺りだけ、窓の曇りがやたら濃くなったり、薄くなったり。

何がなんだかわからないまま、呆然とそれを見ていたら、そのまま後ろに倒れるかのように、べり、と剥がれて居なくなった。

疲れて夢でも見てるんだろうか?と、漠然と思ったけど(もしかして今のは、いわゆる幽霊というやつでは?)と考え出したところで、やっと恐怖を感じるようになった。

今のはなんだったのだろうと思って、あの窓ガラスに近づいていった。

曇った部分に触ろうとした時、向いの鏡張りのビルが目に入った。

俺のいるフロアの真上の窓に、さかさまに張り付いている人間らしき姿が見えた。

首を伸ばして、上から俺を覗きこんでいるような格好だった。

俺は弾かれたように事務所を逃げ出したんだ。

深夜で電車も無かったから、始発までコンビニに逃げ込んで、ひたすら立ち読みして始発に乗って家へ帰って、テレビを点けてソファで震えていた。

これ以降は後日談も何もない。

誰にも話さなかったし、別に何も起こらなかったから。

ただ、本当に不思議な経験だった。

あの髪の無い、つるっとした白い後頭部と、長い首が忘れられない。

でも最悪、顔を見なくてよかったとも思う。

no image

貸し別荘

数年前の話を。

この話は一応口止めされている内容の為、具体的な場所などは書けません。

具体的な部分は殆ど省くかボカしているので、それでもいいという方だけお読みください。

高校3年の夏休みの事。

俺と友人5人は、受験勉強でかなり疲れが溜まっていた事や、高校最後の夏休みということもあって、どこかへ旅行に行こうと計画を立てた。

ただし、もう夏休みに突入していたため、観光地はどこもキャンセル待ちの様な状態で、宿泊地を探すのにかなり苦労した。

そして、やっとの事で近畿地方の高原?のような観光地のペンションにまだ空きがあるという情報をネットでみつけ、まあ騒いでも苦情が無いならどこでもいいかと即決でそこに決めた。

旅行当日、早朝に出発し、昼前に現地に到着したのだが、そこで少し問題が起きてしまった。

どうやら旅行代理店とペンションの管理組合?との間で伝達ミスがあったらしく、俺達は今日から2泊3日で予約していたにも関わらず、ペンションの方には宿泊予定が今日から3日後と伝わっていて、今は満室で1つも空いていないと言い出した。

俺達は、ここまで来てそれはないだろうと文句をいうと、最初はふもとの町にあるホテルなどを紹介されたが、俺達は、ただ観光に来たわけでは無く、夜中に騒いでも苦情が来ないような場所が条件だったため、かなり食い下がった。

するとペンションの人が、

「じゃあ、ちょっと待っていて欲しい」

と、携帯でどこかへ電話をし始めた。

電話の内容は良く解らなかったが、かなりモメていたようで、そのまま15分ほど電話していたが、どうやら話が纏まったようで、

「近場に貸し別荘があるので、そこでどうだろうか?料金はこちらの不手際なのでペンションの代金の3割引で良い」

と言って来た。

俺達は、まぁそれならと納得したが、そこから少し雲行きが怪しくなった。

どうも、その貸し別荘は長い事使われていなかったらしく、準備や掃除に少し時間がかかるらしい。

その間、俺達には交通費と水族館の割引券を渡すので、そこで時間を潰して夕方にまた来て欲しいとの事だった。

その水族館はペンションのある場所からかなり離れていた。

というか県外の某大都市にある水族館で、俺達が見終わって戻ってくる頃には午後6時近くになっていた。

俺達は、

「こんなに準備に時間かかるって、どれだけ放置されていたんだよ」

「廃墟とかじゃねーよな?」

「なんか怪しいんだけど」

などと不安を口にしながら管理事務所に向かった。

ペンションに戻ってくると、先程とは違うおじさんが待っており、準備が出来たので案内すると、歩いて15分ほど離れた森の中にある別荘へ案内された。

そこは完全に森の中で周囲には何も無く、余程大声で騒いでも、まず苦情が来ないような場所だった。

そのおじさんが言うには、暫らく使われていなかったので手間取ったが、電気も水道もガスもちゃんと通っているし、携帯は通じないが管理小屋への直通の電話もある。

何の問題も無いとしきりに説明をし始めた。

俺達は、何かおじさんに必死さが感じられてかなり不安になってきたが、今更どうしようもないので別荘の中に入った。

別荘は外観もそうだったが、洋風のかなり古い造りで、築30年か40年くらい経っていそうな建物で、インテリアもそれに見合ってかなり古臭い。

ただし、使われていなかったという割りにかなり小奇麗だった。

今から思うと、小奇麗と言うより『人が使った痕跡が殆ど無い』といった方が良い感じだったが。

一通り別荘内の説明を聞き、建物も2階建てで広いし、まんざらでもないなと荷物を降ろし、夕飯のバーベキューの準備をしようとしていると、おじさんが去り際におかしな事を言い出した。

ここは夜中に熊が出る可能性があるので、深夜の外出は控えて欲しいと言う。

俺達は何故か、かなり念入りに深夜の外出をしない事を約束させられた。

ペンションの密集地から15分しか離れていないこんな場所に??と皆疑問に思ったが、まぁ恐らくガキが夜中に出歩いて問題をおこしたり、事故に合うと面倒なので怖がらせるような事を言って脅かしているのだろうと納得した。

一日目はそんな感じで過ぎ、晩飯を食った後で夜中の森の中を適当に散策し、花火をしたりゲームをしたりと遊んで深夜2時頃に寝た。

その日は特におかしな事は無かったのだが、次の日、友達の1人が変な事を言っていた。

そいつは夜中に小便がしたくなり、トイレに行くと、外から太鼓の音が聞こえてきたらしい。

俺達は何かの聞き間違いだろうと言ってそのまま流し、本人も気のせいだろうと納得したが、その日の夜に事件が起きた。

その日、晩飯の焼肉を食い、腹もいっぱいになったし、する事が無かった俺達は、昼間見つけた林道へ肝試しに行く事にした。

肝試し中は何事も無く、俺達はつまんねーなと別荘に戻ると、入り口に20代後半くらい?の男が立っていて、ドアノブを握っている。

時間は夜10時頃。

こんな時間に管理人の人が来るとも思えず、『空き巣か?』と俺達が近付いていったのだが、その男はドアノブを握ったまま、こちらを振り向こうともしない。

足音も声も聞こえるのだから、泥棒や不審者の類なら逃げそうな物だが、そいつは10mくらいまで近付いても微動だにしない。

何か気持ち悪かったが、メンバーでリーダー格の友達と俺が、

「おっさん何してんだよ」

と、言いながら近付いていき、男の目の前まで来たのだが、それでも動く気配が無い。

埒があかないので友達が、

「聞こえてないのかよ!」

と、そいつの腕を引っ張った。

その瞬間、俺と友達は、

「うわあああああああああ」

と、大声を上げて後ろへ飛びのいた。

何故飛びのいたかというと、そいつの腕を友達がつかんで引っ張った時、その腕の手首から10cmくらいの場所が、まるでゴムのようにグニャッと関節ではない所から曲がったためだった。

何事かと他の友達が近付いてきたのだが、その時になって男はこちらへ振り向いた。

見た目は普通なのだが、目はどこを見ているのか良く解らない風で焦点が定まっておらず、口をだらんと開けて涎をたらし、その時になって気付いたのだが服装もかなりボロボロで、どう見ても普通の人には見えない。

俺達が呆然と男を見ていると、男は俺達がまるで見えていないかのように、そのままフラフラと森の中へ去って行ってしまった。

俺達はあまりの出来事に動揺し、暫らくその場から動けなかった。

しかし、そのままそこにいるわけにもいかず、俺達はふと我に帰り、大急ぎで別荘内に入りドアの鍵を閉めると、全員で室内の全てのドアの鍵をチェックし、それが終るとリビングに集まった。

そして皆、

「なんだよあれ…」

「幽霊か?」

「でも触れたぞ」

「あの腕の曲がり方ありえないだろ…」

などとパニックになって興奮気味に話していると、今度は外から、

…ドン …ドン …ドン

と微かに太鼓の音?が聞こえて来た。

その音はゆっくりとだがこちらへ近付いてきているようで、俺達はみな押し黙り、聞き耳を立てて音のする方に集中していた。

音が庭辺りにまで近付いた頃、不安が最高潮に達した俺は我慢できなくなり、リビングのカーテンを開けて外を見た。

すると…

暗がりで良く見えないが、何か大きな球状のものが転がりながらこちらへ近付いてくるのが見えた。

太鼓のような音はその球状の物体からしているらしく、…ドンと音がすると転がり、また…ドンと音がすると止まる。

それを繰り返しながら、大通りから別荘へ向かう道をゆっくりとこちらへ向かってきている。

大きさは5~6mくらいあったと思う。

他の友達も、窓を見たまま動かない俺が気になったらしく、全員窓の側へやってきて『それ』を見ていた。

暫らく皆黙ってその様子を見ていたのだが、暗がりで良く解らないので正体がつかめず、誰も一言も話さず、ずっと『それ』を凝視していた。

するとかなり近付いた頃、『それ』は玄関近くまでやってきたため、玄関に付いている防犯用のライトが点灯した。

その瞬間俺は、

「なんだよあれ!洒落になんねーよ!」

と、慌ててカーテンを閉めた。

カーテンを閉める前、一瞬ライトに照らされた『それ』は、なんと表現したら良いのか…

『無数の人の塊』とでも言うような物体だった。

老若男女様々な人が、さっきの男と同じように口を開け涎をたらし、どこも見ていないような焦点の合っていない目の状態で、関節などとは関係なく体と体が絡みつき、何十人もの人が一つの『塊』となって転がっていたのだった。

俺以外も全員、その『人の塊』を見たため、あまりの恐怖に何も言えず、俺達はリビングの端の方に一塊になり、ガタガタと震えながら、

「どうなってんだよ…」

「なんだよこれ…」

などと不安を口にしていた。

暫らくすると、太鼓の音のようなドンという音が聞こえなくなった。

『それ』が、いなくなったのかどうか分からない俺達は、そのままリビングの端でじっとしていると今度は玄関の方から、

ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!

と、激しくドアを叩く音が聞こえてきた。

俺は恐怖と不安でパニック状態で耳を塞ぎ、他の奴も皆耳を塞ぎ、必死で今の事態に耐えていたのだが、暫らくすると今度は建物中のあちこちから、

ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!

と、窓と言わず壁と言わず、あちこちを大勢の人が滅茶苦茶に叩く音が聞こえてきた。

耐えられなくなった友達が、

「電話しよう、管理事務所直通の電話あっただろ、あれで助けを呼ぼう」

と言った。

俺達はハッとその事に気付き、急いで玄関側にある電話に急いだ。

俺が電話を取り『直通』と書かれたボタンを押すと、2、3コールの後、別荘まで案内してくれたおじさんが電話に出た。

おじさんに必死で事情を話すと、おじさんが独り言のように、

「…まさか、まだ出るなんて…」

と呟いた後、

「説明は後回しで、リビングに神棚があるね?そこにお札とセロテープが入っているから、そのお札をドアに貼って待っていなさい」

と言った。

俺達は意味が解らなかったが他に解決策も無く、とにかくリビングへ戻り、神棚を探す事にした。

神棚は部屋の端の方の天井近くにあった。

椅子を使って中を覗き込むと、確かにお札とセロテープが入っている。

俺達は急いでそれを出すと、玄関とリビングの入り口のドアと窓にお札を貼った。

窓にお札を貼る時、なるべく外を見ないようにしていたのが、一瞬だけ外を見てしまった。

すると、青白い腕が数本、窓をガンガン叩くのが見え、更に腕の向こうに、どう考えても腕の位置とは不自然な形で人の顔が見えた。

その顔は、やはり他と同じように焦点が合っていない目でだらんと口を開けていた。

俺は外で『それ』がどんな状態になっているのか、恐ろしくて考える事も出来なかった。

何時間くらい経ってからだろうか、外が明るくなり始めた頃、壁やドアや窓を叩く音は聞こえなくなった。

それでもまだ『それ』がいるかもしれないと思うと動けず、そのままじっとしていると、遠くから車がこっちへ向かってくる音がし始めた。

車が庭に止まると、数人の足音が聞こえてきて、ドアのチャイムを押す音と、

「おーい、大丈夫か?」

と、声が聞こえてきた。

俺達は、

「助かった…」

と、大急ぎで外に出ると、最初にここの手配をした人と案内した人、その他に3人のおじさんが来ていた。

手配をした人と案内をしてくれた人がすまなそうに、

「本当にすまない、もう大丈夫だと思っていた。事情を説明するからとにかく荷物をまとめてきてくれ、ゴミとかはそのままでいいから」

と言い、俺達はその通りにして別荘を出た。

車に乗せられ、俺達は神社へ案内された。

一緒に来ていた3人の人は、その神社の関係者らしい。

俺達はホッとして緊張感が解けたのと、助かったと言う気持ちもあったが、それ以上に怒りが湧いてきて、

「何であんな場所へ泊めたんだよ!」

と怒った。

すると神社の神主さんらしき人が、こんな話をし始めた。

あそこは昭和40年代までただの森だったのだが、観光地開発をするということで40年代の終わり頃に人の手が入った。

それで順調に開発が進んでいたのだが、あの別荘を建てた昭和50年代前半頃からおかしな事が起こり始めたとか。

別荘が原因なのか、開発そのものが原因なのかは今でも解らないらしいが、とにかくあの太鼓の音や人の塊がその頃から出没し始め、最初の別荘の持ち主と、その次の持ち主はあそこに宿泊中に失踪してしまったらしい。

それで売りに出され、今の管理組合が所有する貸し別荘となったのだが、それからも何度もあの人の塊は現れ、被害者は出なかったが、目撃者から散々苦情を言われたので、神主さんが10年ほど前に御払いをしたとか。

それ以後、貸し出されてはいなかったが、掃除や整備に来た人達は、誰も『それ』を見かけていなかったため、もう大丈夫だろうということで俺達に貸したらしい。

その結果が昨晩の事件。

俺達は完全に巻き込まれた被害者なので、散々文句を言うと、管理人の人がここまでの交通費と食費はこちらが持つ事、別荘のレンタル費用もいらないし、次に旅行をする時は大幅に割引するように代理店に口利きもする、だから本当に申し訳ないけど、この事は黙っていて欲しいと頭を下げてお願いしてきた。

俺達は何か言いくるめられた気もするが、警察にこんな話をしてもどうせ信じてもらえないだろうからと、渋々その話を飲むことにした。

上に書いたように、そういう事情なので詳しい地名などは書けません。

ちなみに、去年割引してくれるというので旅行代理店に電話した時に聞いたのだが、あの別荘は取り壊され、今は更地になっているらしい。

no image

山林のマンホール

学生時代のバイトの話。

といっても、バイト先から帰宅するまでの間の事だけど。

普段は大通りから山林を迂回するルートで帰るんだけど、あんまりバイトが遅くなると山林所有者の私道?ぽい道使って帰るの。

道の途中に変なマンホールがあって、めっちゃ錆てて何の図柄も無いオープナー刺す穴だけある平らなマンホール。

『この下には旧日本軍の忘れられたシェルターが』とか妄想して帰ってた。

ある晩、そこを通ると蓋が開いてて、穴付近に血溜まりの跡のような赤茶けたテカテカの染みでうっすら生臭い臭いと、焚き火?のような煤の臭いがどっからか漂ってくるのね。

たぶん穴から。

よせばいいのに、自転車のライト(乾電池式の車輪回さなくていいタイプ)で恐る恐る中を覗こうとすると、遠い感じがするけど反響でエコーがかった、うっすら演説?してるような声が聞こえてて…

「おい!」

っていきなり声かけられて、ビクっとして振り返るとおまわりさん。

私道に勝手に入った事で怒られるんじゃないかびびったけど、追い払うように、

「こんな時間に危ないから」

って帰された。

帰りつつ何度か振り返ったけど、懐中電灯でこっち照らしてずっと監視するかのように穴の前に突っ立ってた。

ある日、またその道通ったんだけど、マンホールがあった箇所にアスファルトが盛られて無くなってた。

そういや、なんで『おまわりさん』って思ったのかな?

懐中電灯で顔照らされて、逆光でほとんど相手見えなかったんだけど

no image

肉塊

小さい頃住んでた借家が薄気味の悪い家でね。

近くにお墓がいっぱいあった。

近所では事故や火事が沢山おこっててね。

近くのタバコ屋やってたばあちゃんの家も火事になった。

築何百年かという大きい茅葺き屋根のお屋敷でね。

その家にはタバコ屋のばあちゃんと、その子供のおばちゃんの2人が住んでたんだけど、2人とも火傷程度で難を逃れたのだけれど、焼け跡から巨大な肉塊が発見されたんだ。

その焼けたお屋敷にはどうやら座敷牢があったらしく、消防団が中に入った時には、中でものすごい勢いで燃えてたらしいんだ。

弟の友達のお父さんが消防団やってて、一番に入って行ったから後で聞かせてもらった。

新聞にはその肉塊の事は載ってなくて、居なかった事にされちゃったんだけど、タバコ屋は駄菓子も売ってて、俺が小学生の頃、よくお菓子買いに行ってて、ばあちゃんが古い漫画をくれたんだよね。

ばあちゃんが読まないような少女漫画ばっかりだったから、この本誰のだろうって疑問はあったけど、漫画が結構面白かったから、いつももらってた。

今思えば、その漫画を通して唯一世間と繋がってたのかなって、、、

んで、火事から数週間が過ぎた時に事件がおこった。

火事から数週間過ぎた頃に、その焼け跡に車が突っ込んだのね。

直線道路なのに、どうやったらそこでハンドル切るんだろうって謎な事故で、運転してた20歳の男の人は即死だった。

座敷牢の人に呼ばれたのかなって思った。

それから、そのお屋敷跡の前の道路で事故がまぁ起こる起こる・・・

1年で8件の事故がおこった。

そして周辺で火事も多発し始めて、警察も気がついたのかどうか知らないけれど、座敷牢の人について、聞き込みをしていた時期があったんだ。

ある日、神主さんが焼け跡と近所の無縁仏のお祓いをしてて、そのしばらく後に道路が拡張される事になった。

事故が多発した為だろうけど、その拡張工事がどうにもおかしいんだ。

拡張工事が始まる少し前に我が家は引越したのだけど、近所に住んでた友達の家に遊びに行く時に、数年ぶりにその道路を自転車で通った。

そしたら焼け跡にはアパートが建ってて、普通の光景だったんだけど、その横にトタンで覆われたエリアが道路のど真ん中にあるわけ・・・

それは無縁仏のあった場所で、2車線の道路がいきなりそこで1車線になって、道路の真ん中にポツンと存在してるんだよ。

んで、その前後に道路標識の『黄色にビックリマーク』という意味のわからんのが、10本くらい立ってて、まあ、一目見て異様な光景だったんだ。

だったというのは、現在はそのエリアも取り壊されて普通の2車線道路になってる。

あまりにも気持ちが悪い光景だったので、写真でも撮っておこうかと、使い捨てカメラを持って友達と冗談半分で写真を撮ろうとしてた時に、たまたまそれを見てた近所のおじさんが、ものすごい勢いで怒鳴りつけてきた。

怒鳴りつけてきたおじさんが怖すぎて、俺も友人も一目散に逃げたのだけど、

おじさんは『祟られるぞ!!』って怒鳴ってた。

んで、その後に友人と話をしてて、タバコ屋の火事の話になって、タバコ屋にもうひとり人がいたの知ってる?って聞いたら、どうやらそいつも小学生の時にタバコ屋で駄菓子を買った時に漫画をもらったらしい。

肉塊の噂はお互い知ってたから、あの人の漫画だと思う?って聞いたら、そいつその時になって初めて気づいたみたいで、顔が真っ青になって、漫画はまだ家の本棚にあるからお祓いしてもらわないとって事になった。

んで、友人の家にいって漫画の事を親に話して、近所の神社にお祓いに行く事になった。

そんで神主さんに友人の親が電話で事情を話して、俺と友人は神社に着いた時には神主さんが待ってて、事務所みたいなとこでしばらく待たされている間に、神社に警察がやってきた。

俺も友人も、近所であった事故と火事の事を、覚えている限り、根堀り葉掘り尋ねられた。

神主さんが警察を呼んだのだろうけど、どうやら肉塊の事を聞き出したいのはわかった。

案の定、その話になって、俺も友人も存在は聞いたけど、見たことは無いし、この漫画がその人の物かどうかはハッキリとわからないとしか答えられなかった。

その1週間くらい後に、友人から聞いたんだけど、タバコ屋の横にあった古い無縁仏のお墓に、どうやら肉塊が埋葬されたという話を親がしてたそうだ。

どういう繋がりで、どういう人物なのかは知らないのだけれど、そういう一族がタバコ屋のばあちゃんのお屋敷に居たというのは間違いないらしい。

そして、友人がその後、怖い事を言い始めた。

トタンに覆われたその無縁仏の墓を覗いて、名前を見たという。

タバコ屋のばあちゃんの苗字は『W』

無縁仏は『T』苗字が違う。

身内ではなかったというのは、そこではっきりしたが、俺も友人も、それが誰なのか知りたくて知りたくてしょうがなかった。

当時中学生だったので、好奇心が恐怖よりも先にきて、変わった苗字だったので調べてみることにした。

俺と友人はまだ中学生だったので、役所で謄本を調べるとかはちょっと無理だと思ったので、市立の図書館で色々と調べてみたのだけれど、その苗字の手がかりは掴めなかった。

2週間くらい、郷土資料館やらも合わせて調べてみたのだけれど、全く成果が無くて結局謎のまま有耶無耶になってしまったのだけれど、それから10年以上過ぎて遂にその苗字を耳にする日がきた。

その変わった苗字を耳にするというより、本人を見つけてしまった。

仕事の関係で会った人なのだけど、どうやらこの人が肉塊の謎を解く重要人物かもしれないと、このチャンスを逃したら一生、肉塊の謎は解けないと思い、近づいてみることにした。

が、今思えば迂闊だった・・・

肉塊一族で間違いはなかった。

無縁仏のあった場所は、現在では直線道路になっていて、お墓はどこか他の場所へ移されているのだが、それが『T』さんの元にあるのは恐らく間違いないと思う。

道路を最初に拡張する時に、さっさと公共墓地にでも移せばいいものを、それをしなかったということは、身内の存在があって何か衝突でもしてたのだろう。

今思えば、警察がわざわざ神社にやってくるなど余程の事だ。

あの時、警察は『T』さんを知っていたのではないだろうか。

そして現在、肉塊は『T』さんの元で供養されているはずなのだ。

俺がもっと早くにこの事に気づいていれば、肉塊の祟りを受けることも無かったかもしれない。

『T』さんに探りを入れたのが間違いだったのだろう。

当たり障りないように、

「変わった苗字ですが、地元の方ですか?」

と聞いた瞬間、顔色が変わったのがわかった。

中学生の時まで地元にいたという話だけで、後ははぐらかされた。

『T』さんと会ったのはそれが最後で、仕事先でも会う事はなかった。

が、どうも俺はその時、『T』さんと一緒にいた肉塊の霊を連れてきてしまったようで、奇妙な事が身の回りに起こり始める。

それまで金縛りにあったことは無かったのだが、肉塊を連れてきたであろうその晩、金縛りになった。

低い声が聞こえて、仰向けの俺の腹の上に黒い何かが乗っている。

体がぴくりとも動かず、油汗をかきながらウンウンとうなっていた。

体が疲れていて、脳だけが覚めている状態で金縛りは起こるらしいが、そういうものではなく、体を何かが押さえつけている感覚だった。

この時、初めて金縛りにあったのだけど、小学生の時、まだ薄気味の悪い借家にいた時、俺の母親も同じものを見た話を思い出してゾッとした。

小学生だった時のある晩、母親が血相を変えて、俺と弟が寝ている部屋へ飛び込んできて、さらにそこで「エーっ?!」という悲鳴をあげたことがあった。

何があったのかと聞くと、母親の枕元に誰かが近づいてきて、そこで座って動かないものだから、俺か弟のどちらかが、いつまでも寝ずにウロウロしていると思い、早く寝なさいっ!と叱りつけたら誰もおらず、慌てて俺と弟を見に行ったら二人とも熟睡している。

枕元に黒い何かが座ったと言ってたのだが、俺の元に現れたのもそいつなのだろう。

母親が黒い影を見たのは、肉塊が死んだ少し後の事だった。

俺は初めて金縛りにあった翌日、交通事故を起こした。

仕事先に向かう途中で、見通しの良い直線道路で時速は50キロ程度だったのだが、体が重くなり、あっと思った瞬間、民家の壁へ突っ込んでいた。

俺はそこで気を失ってしまったのだが、目が覚めてまっ先に肉塊の事を思い出した。

あのお屋敷の前で起こり続けた不可解な交通事故を、自分が起こしてしまった。

ここで俺は肉塊に取り憑かれている事を確信して、肉塊に連れて行かれるのではと怯えた。

事故で頭と胸を打撲していて、右足にもケガをしていたが、俺はとにかくこれはマズイと、その足でお祓いを受けに行く事にした。

事情をよく知っているであろう、あの神主の元を訪ねてみた。

神主はもう亡くなっていて、当時の事情を知る人はいなかった。

火事の事、無縁仏の事を伝えてみたが、誰も知らなかったが、地縛霊のようなものに取り憑かれていると伝えると、お祓いを簡単にしてくれた。

それがとても簡単すぎるものだったので、俺はこれはダメなんじゃないかと不安になったが、案の定駄目だった。

それからも黒い影が度々俺の元に現れた。

事故のケガはさほど重症でもなかったが、胸がとにかく苦しく、黒い影がひどい時には4時間ほど俺の体を押さえつけて、精神がすっかりまいってしまって仕事には出られず、会社も辞めてしまった。

お祓いというよりも、供養が必要なのではないかと思って『T』さんにどうにか連絡を取ろうとしたが、辞めた会社は取り合ってくれなかった。

とにかく供養をしなければと、部屋にはお清めの塩を盛り、線香を3本立て、成仏してください成仏してくださいと唱え続けたが、黒い影は現れ続け、お寺の住職に相談してみたところ、霊が生前に好きだったものをお供えして供養してあげてくださいと言われた。

俺は肉塊が生前、何を好きだったかなんて知らないし、肉塊になったほどだから、やはり肉なんだろうかと、牛肉をお供えしてみたがその夜も金縛りにあった。

肉塊が好きだった物、そうだ、漫画が好きだったに違いない!

タバコ屋のばあちゃんはあんな少女漫画読まないだろうし、肉塊が座敷牢で読んでいた漫画をお供えしてみよう、俺はそう思って本屋へ少女漫画を買いに行った。

俺が小学生の時、タバコ屋でもらった肉塊の少女漫画。

全部で20冊くらいはもらったはずなのだが、タイトルを忘れてしまっていた。

だけどその中に、俺がすごく面白いと思ったものがあって、パパと私という漫画をよく覚えていてた。

片親の大工のお父さんが子供のミヨちゃんにお弁当を作ったり、裁縫をしたり、ほのぼのとした少女漫画があった。

肉塊はこういう少女漫画が唯一の社会との接点で、外の世界を知るには漫画しか無かったのだろうと思うと、俺は取り憑かれているにも関わらず、本屋でパパと私を手にした時、涙がこぼれて止まらなくなってしまった。

パパと私の話の中に、晩御飯はカレーにしましょうという話があって、大工のお父さんが悪戦苦闘してカレーを作るのだけど、俺はその話をよく覚えていたので漫画と一緒にカレーの材料を買って来て、カレーを作ってあげることにした。

肉も多めに入れておいた。

そして、漫画とカレーをお供えに、線香をあげて供養をした。

不思議というか、やはりというか、その日の夜から黒い影は現れず、金縛りにもあわなくなった。

俺は肉塊を供養することに成功したのだろう。

それ以来、一度も彼女には会っていない。

あれだけ苦しめられた肉塊の存在が、何故か最後の日は少女漫画のミヨちゃんのように思えて、俺のそういう思いが伝わって成仏してくれたのだろうと信じる。

俺はあれ以来、カレーを作ると肉塊の行方が気になってしょうがない。

無事に成仏できず、この世を彷徨っているとしたら、また誰かの元に黒い影となって現れているのかもしれない。

もしあなたが金縛りにあったり、黒い影に取り憑かれたらカレーを作って、どうか肉塊の事を少しだけ思い出して、心の片隅で供養してあげてほしい。