「 不思議体験 」 一覧
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入れ替えろ
数年前、親父が死んだ。
食道静脈瘤破裂で血を吐いて。
最後の数日は血を止めるため、チューブ付きゴム風船を鼻から食道まで通して膨らませていた。
親父は意識が朦朧としていたが、その風船がひどく苦しそうだった。
その親父がかすれた声で、
「鼻を入れ替えろ、鼻の名前を入れ替えろ」
と言った。
名前?
俺や家族は、『チューブを通す鼻の穴を入れ替えろ』という意味だと思ったんだが、『名前』というフレーズの意味が分からない。
結局、「意識も混濁してるようだから、言い間違えくらいあるだろう」という結論になった。
親父はその次の日亡くなった。
慌しく葬式の用意。
その用意中、献花の配置がおかしいことにお袋が気づいた。
遠縁の親戚からの花が真ん中にあって、親父の勤めてた会社社長からの花が端っこに追いやられてたのよ。
そして葬儀屋に言った訳だ。
「すいません、あの二つの花を入れ替えてください。大変でしたら、花に付いてる名前を入れ替えてください」
その時、俺と祖母が同時に気づいた。
「お袋・・・今、なんて言った?」
「『鼻』の名前を入れ替えろ」
「『花』の名前を入れ替えろ」
親父はこのことを言いたかったのだろうか?
お世話になった会社社長に失礼を働くのが嫌で、こんな予言を残したのだろうか?
もう真実は分からない。
その社長は、とてもとても良い人で、母子家庭になった我が家を助けてくれた訳だが、それはまた別の話。
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山の子供
今から15年程前、私が小5のとき祖父と従妹の三人で、山に山菜取りに付いて行ったときの話です。
山で従妹と遊んでいると、10歳位の男の子が1人でいたので、この子も家族と一緒に山菜取りに来たんだろうと思い、仲良くなって、その子と従妹と三人で一緒に遊んでました。
ケンイチという名前の子でした。
夕方頃、下の方で祖父が
「そろそろ帰るぞ」
というので、その子に
「じゃぁバイバイ」
と言うと、その子は木の枝に掛けてあった祖父のラジオ(熊避け用)を手に取ると、バリバリと食べ始めました。
ラジオは粉々になってました。
その子の口は犬の様に付き出していて、目は真赤に変化してました。
そしてブツブツと何か言ってました。
「ゲルマニウムが・・・」
というのが聴き取れました。
怖くなり、従妹を連れて下の方に居る祖父のもとに一心不乱に逃げました。
その子はラジオをバリバリ食いながらこっちを見てました。
祖父もタダ事ではないと判断し、急いで私達を連れ車に戻り逃げました。
数日後、その話を聞いた猟友会の方々がその山に入りましたが、ラジオのダイヤルだけ見つかり、他は何も怪しい物はみつからなかったそうです。
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古典SFにはまっていた頃のお話
その頃俺は、昔のSF小説にはまってた。
ノリが良くて勧善懲悪なところが、何かスカッとして面白くて、復刻版の文庫を買ってきては読んでいた。
ある晩、本を読みながら眠ってしまった俺は、ふと気配を感じて目を覚ました。
部屋の隅に人が居た。
30過ぎくらいの女で、夏なのにセーターと長くて分厚いスカート。
壁にもたれて座り、本を読んでいる。
ものすごく驚いたが、寝ぼけているせいか不思議と怖くなかった。
おばさんだが、よく見ると前に見た『アメリ』って映画の主人公に似ていて結構見られる。
何となくぼーっと見ていると、女がこっちを向いて笑った。
「こういうの好きなら○○に聞いてごらん。まだあるから」
そう言って、持ってた本をこちらに見せた。
寝る前に読んでた『スペースオペラ』だった。
そこで目が覚めた。
朝になってた。
変な夢だなーと思ったが、部屋の隅を見てびっくりした。
俺のSF本が数冊重ねて置いてあった。
そして、一番上に寝る直前まで読んでた本がきちんと置いてあった。
マジかよ、としばらく頭を抱えたが、ふと気になった。
女が言っていた○○って誰だ?
俺の周りで○○って名前は父親だけだ。
他に思い当たる相手もいないし、早速仕事から帰ってきたら聞いてみた。
一応夕べの文庫本と、姉から『アメリ』のDVDも借りておいた。
最初、父は『お前大丈夫か?』という顔をしていたが、本とDVDを見た途端に態度が変わった。
「姉ちゃんか・・・そういやもうじき盆だったな。よし、今度の休み墓参りに行くぞ。お前も来いよ」
その姉ちゃんというのは、正確には父の従姉だったそうだ。
父より10歳近く年上で、良く面倒を見てもらったらしい。
何か変わった人で、本と香水と古い香水ビンが大好きで、35で死ぬまで独身だったそうだ。
だけどすごく優しくて、父も周りの人にも好かれていたそうだ。
母とも仲が良かったらしく、そういえば何か話を聞いた覚えもある。
母が宝物にして飾ってあるビンのコレクションが、その人の形見だったとか。
絶版品で貴重品とか言ってて、昔姉が勝手に触って怒られていた。
「何で俺のとこに出てきたんだろう?」
と聞くと父は、
「嬉しかったんだろ。姉ちゃんこういう話好きだったからな」
それから休みになって父の実家に行くと、父の言葉通りに物置からどっさり本が出てきた。
その中に昔のハヤ○ワSF文庫の初版も山ほど混ざってた。
俺の読んでた本もそこにあった。
時々、この人が生きててくれたら、今頃どんな本を読んでたのかと考える。
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時空のおっさん
20年近く前の話になります。
当時、私は小学4年生でした。
近所にすり鉢状の滑り台がある公園があり、それはとても変っているので小学生には大人気で、学校終わってすぐ行かないと取り合いや順番待ち、横暴なジャイアン的上級生の圧政など、面倒なことが増えます。
なので、その日も学校が終わったら、親友のT君とその公園で会う約束をして、走って帰りました。
家に帰るとランドセルを放り投げ、自転車に乗り猛烈に漕ぎました。
最初は何も考えてなかったのですが、何か変だと思い停まったのです。
すると、さっき渡ったはずの信号が、遠くの方にみえました。
というより、今自分が停まってる所はさっき通った所なんです。
どこから同じ道だったのかわかりません。
ただ、その公園へは毎日のように行ってたので、道を間違えるはずもなく、景色も覚えています。
なのに、『はい、今からさっき通ったとこ』という瞬間がわかりませんでした。
いつのまにか同じ道だったのです。
そして、おかしいのが全く人気がないのです。
何の変哲もない住宅街ですが、いつもなら立ち話する主婦、道路で遊ぶ子供、大きい道に抜ける車、なにかしら人の動きがある道です。
それが全くない。
家の中は見えませんが、家自体に人の気配がないのは、子供ながらに感じました。
騒音も全くありませんでした。
とにかく、数百メートル先の信号まで行くことにしました。
でも、漕いでも漕いでも何故か近づけないのです。
はっきりとは見えませんが、信号がだいぶ先に固定されていて、信号のちょっと手前の風景だけが流れている感覚。
どんだけ漕いでも着かないので、遂に疲れ果て、漕ぐのを止めました。
そしてだんだん心細くなって、泣き出したのです。
わんわん泣いていると先の角から、年の頃は40ぐらいのおっちゃんが歩いてきたのです。
今思うと、携帯電話で話しながら歩いてきました。
(当時は携帯電話はなく、トランシーバーだと思った)
そして泣いてる私を見つけると、
「いた、いたわ」
と言い近づいてきて、
「よしよし、怖かったな、お家に帰ろうな」
と言い、頭をなでられた瞬間、いつの間にか騒音もいつも通り。
なんかよくわからん内に、何もかも元に戻ってました。
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めぐりあい
私と旦那は、つきあい始めたその日に結婚を決めたスピード婚。
なので、お互いの家の事もあまり知らなかったんだけれど、結婚して数年し、旦那の本家の墓参りに行って驚いた。
なんと、うちの母方の祖先の寺とご近所だった。
お互い東京出身で、墓は東北にあったからなおびっくり。
「偶然ですね~」
って話してたら住職さんが、
「○○さん(旦那方)のご先祖が戦に負けて追われて来たのを助けて、一族再興に貢献したのが××さん(私方)のご先祖なんですよ!」
って驚きながら話してくれて、寺に残っている記録を見せてくれた。
そうしたら、
・旦那の先祖が追われてきた日=私の誕生日。
・一族を再興させて城を開いた日=旦那の誕生日。
なんていう共通点も見つかったりして、親戚一同ビックリしどおしだった。
前世とか因縁とかあまり信じない方だったけれど、こういうことってあるんだな~と思った。